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『SPOTAG』事業の成功と
女性参加者の増加を目指す

東京マラソン財団 事業運営部山田 佳史さん

その他

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山田 佳史(やまだ・よしふみ)さん 33歳
一般財団法人 東京マラソン財団
事業本部
事業運営部

大学最後の年、初めて東京マラソンを走り、その魅力に取りつかれた。導かれるようにして、自身のキャリアも日本一のマラソン大会に接近していった。そして2018年4月、東京マラソン財団の一員となる。持ち前のバイタリティで数多くのイベントを作りあげ、さらにウェルネス事業を推進し、東京マラソンを側面から盛りあげる。(2019年9月24日取材)

東京マラソン本大会以外のイベント運営を担当する[写真]兼子愼一郎

年70~80回ものイベントを開催

現在の業務内容を教えてください。

ぼくは事業本部に所属しており、東京マラソンの本大会に直結する業務ではなく、『ONE TOKYO』という財団の会員向けのランニングイベントやサービスを企画、立案、実施することをメインの業務としています。また、『SPOTAG』という自動計測システムを活用したランニング、ウォーキングを誰でも気軽に楽しめる環境整備の新規事業にも関わっています。

イベントと言うと、本大会以外にも大きなものとして東京マラソン財団はオフィシャルイベントを年2回実施しています。

今年は春に『有明・お台場リレーハーフマラソン』を行い、秋に『東京トライアルハーフマラソン2019』を実施します。イベントはそのほかに年70から80回ほど行っていて、ほぼ毎週末開催しています。

具体的にどんなイベントを実施しているのでしょうか?

東京マラソン財団がプロデュースするランナーサポート施設『ジョグポート有明』を拠点として、メダリストや一流選手を講師に招いたランニング教室や、実業団のエリート選手を迎えての上級者向けの練習会を実施しています。最近は地方自治体と連携したイベントも行っており、先日は静岡県裾野市でのランニング合宿や埼玉県上尾市でのランニング教室などを実施しました。

かなりの数のイベントを行っていますが、何人で担当しているのでしょうか?

事業本部の中だとぼくと上司の2人です。ぼく自身新しいことをやるのが好きで、イベントの回数も増えています。運営などで外部の方々にサポートしていただいていますが、同時並行でいろいろなイベントを企画したり、調整したりしていて大変ですね(苦笑)。

オフィシャルイベントのほか、地方自治体などと連携したイベントも実施[写真]兼子愼一郎

『SPOTAG』を全国の公園へ

イベントはどういう流れで内容を決めていくのでしょうか?

まず、自分なりに「こういうイベントがやりたい! ランナーに響くはず!」という大枠を考えて、コーチをキャスティングして、トレーニングメニューや対象レベルなど詳細な中身をコーチと一緒に考えていきます。運営費については基本的に参加費でまかなっています。概要が固まった後は主にONE TOKYOの会員向けのメルマガで告知しています。

会員は現在どれぐらいいるのでしょうか?

東京マラソンの優先エントリーができる有料会員を含めて約58万人います。無料会員でもイベントの優先参加権がもらえ、イベントによっては参加費が安くなります。

先ほどお話のあった『SPOTAG』はどういうきっかけで開発されたのでしょうか?

東京マラソン財団スポーツレガシー事業のテーマの一つである“スポーツの礎(環境整備)”の一環として、ランニングコース整備に数年前から取り組んでいます。当初は、東京マラソン本大会で採用している計測機器を都内の公園に常設設置しようと関係各所と交渉、調整していたのですが、さまざまな理由でなかなか話が進まない状況でした。あれこれ試行錯誤している中、物流や在庫管理などで採用されているRFID技術を活用すれば、計測機器をコンパクト化でき、設置工事もずっと簡易的に、かつ費用も抑えることができるということを知り、東京マラソン財団として独自開発することになりました。

今後どう運用していく予定ですか?

現在実用化に向けて、さらなる改良を行っているところです。将来的には全国の国営公園を中心に展開する予定で、『SPOTAG』さえあれば、ランナーだけでなく公園を利用される多くの方々が健康増進のためにコース上でタイムや距離を計測できるようになります。

山田さん(右)はランニングイベントでペースメーカーを務めることも[写真]東京マラソン財団

初マラソンで好タイムを記録

現在東京マラソン財団に所属されていますが、これまでどういうキャリアを歩んできたのでしょうか?

新卒で家具やインテリアを扱う企業に就職しました。大学時代に1年間イギリスに留学し、海外と関わる仕事に興味を持ったのですが、そこは物流を含む商社のような会社だったので面白そうだなと。ただ入社前に東京マラソンを走ることになり、実際に走ってみてマラソンがすごく好きになったんです。その後も働きながらレースに出て、どんどんタイムも良くなってより好きになっていきました。

タイムはどれぐらいだったんですか?

最初に走ったときは2時間54分でした。それから年に数回マラソン大会に参加し、最高タイムは2時間29分です。今も毎日走っているぐらいマラソンが好きで、ランニングを教える仕事をしたいと思い、新卒で入社した会社で1年ぐらい働いて、ランニング施設を運営する会社に転職しました。そこではランニングステーションの店長として、イベントの企画やランニングの指導を行っていました。そこには2年半ぐらいいて、それからマラソン大会専門の会社に移りました。

転職した理由は?

ランニングステーションのイベントはだいたい20から30人規模で、もっと大きなイベントに関わりたいなと。大会専門の会社は100キロマラソンなど競技者向けのイベントを開催しているところで、飛騨高山や富士五湖、白川郷などを走るイベントを実施していました。大きな大会だと5000人が参加するのですが、その分、運営は苦労しましたね(笑)。

そこから東京マラソン財団へと転職します。

もともと東京マラソンにはすごく思い入れがあって、いつかは行きたいなと。それで募集があったタイミングで応募し、2018年4月に採用されました。

マラソンの魅力にのめりこみ、2018年4月に東京マラソン財団へ[写真]兼子愼一郎

女性参加者の増加を目指す

ちなみに、財団に所属されている方は皆さんフルマラソンを経験されているのですか?

いや、走ったことがない人もいますよ(笑)。でも半分以上は一度は走っているかな。ぼくもそうですけど、毎日のようにお昼休みに走っている人もいます。タイムでいうと、今はおそらくぼくが一番ですけど、過去に実業団にいた人もいて、その人は以前、2時間10分台で走っていたそうです。

さまざまな企業で働いて、財団の職場環境はいかがですか?

好きなことをやらせてもらっていますし、めちゃめちゃ働きやすいですよ。今の上司はぼくの意見を尊重してくれますし。オフィスではみんな黙々と作業していますけど、早めに上がれるときは結構飲みにも行きます。

イベント事業が中心ですが、東京マラソン当日は手伝いなどをしているのでしょうか?

東京マラソンの直前に、商店街や施設で東京マラソンの関連イベントを開催する「東京マラソンウィーク」に携わっていますが、大会本体の運営にはそれほど関わっていません。今年の大会当日は「フィニッシュ担当」として、完走したランナーの誘導を手伝っていました。

事業本部としてこれから挑戦しようとしていること、実施に向けて動いていることなどありますか?

まずは『SPOTAG』事業を成功させることです。現在はタイム計測のみの機能ですが、今後は心拍数などさまざまなデータを計測、管理できるツールに進化させ、全国の国営公園に設置して認知度を高めることが目標です。こうしたウェルネス事業、健康事業は個人的に強い関心があり、例えば人事の評価の一つに『健康』があってもいいんじゃないかと思っています。その数値が高いと給料も上がるような、そうした社会の仕組みができたらいいなと。そうした“健康を測る”ツールの一つとして『SPOTAG』が活用されればと考えています。イベントでは、今の参加者の男女比率が8対2から7対3で、女性の比率が小さく、なかなか伸び悩んでいます。20代、30代の女性は本当に少ない。女性参加者を増やすためにも、女性限定のイベントや女性に響くコンテンツを作れればと思っています。

競技者としての目標は?

そっちもがんばります(笑)。なかなか難しいですけど、野口みずきさんが持つ女子マラソンの日本記録である2時間19分12秒を超えたいなと。2時間半を切ると、そこから1分短縮するのが本当に大変なんです。1キロあたり1秒縮めても42秒ですから。すごくシビアな挑戦ですけど、これからもお昼休みにトライしていきます。自分でも毎日アホみたいに走って変人だなと思いますけどね(苦笑)。

自身もランナーとして女子マラソンの日本記録に挑む[写真]兼子愼一郎

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