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イニエスタ選手とビジョンを
共有しながら進めるビジネス戦略

楽天株式会社 グローバル スポンサーシップ オフィス堀 弘人さん

その他

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堀 弘人(ほり・ひろと)さん
楽天株式会社
グローバル スポンサーシップオフィス
ヴァイス オフィスマネジャー

大学卒業後、米系広告代理店でキャリアをスタートさせ、アディダス、リーバイス、ナイキ、タグ・ホイヤーと世界的に業界をリードするブランドでマーケターとして活躍。楽天入社後には、思いがけない流れから世界的なサッカー選手、アンドレス イニエスタ選手とのプロジェクトに携わり、戦略立案から実行に至るまでを監修し、日本のスポーツマーケティング業界に新たなムーブメントを起こそうとしている。(2019年4月16日取材)

アディダスやナイキ、タグ・ホイヤーなどでキャリアを積み重ねた[写真]山口剛生

一流ブランド企業でキャリア形成

スポーツマーケティングに携わるようになった経緯を教えてください。

祖父が地元で小さな広告業を営んでいて、学生のころから手伝っているうちに広告業界に興味を持ち始め、大学卒業後にアメリカ系の広告代理店に就職しました。当初は日本コカ・コーラ社を担当する営業職だったのですが、クライアント先に出向することになり、1年半ぐらいコカ・コーラ社内に籍を置かせていただき、クライアント側の名刺も持ち、セールスプロモーションやクリエイティブ開発の業務に携わらせていただきました。そこで得た気づきは、広告代理店側から見ていた世界とは情報の深度や濃度が違うことで、世界的なブランドに身を置いてキャリアを形成したいという思いがとても強くなりました。また、国内外の広告を研究していく中で、人の心を動かすような広告やクリエイティブがスポーツ関連の作品から生まれることが多いと分かったんです。スポーツ業界に携わって、消費者に感動を与えるような仕事をしたいと思い立ち、スポーツ業界での仕事を探しました。そこでご縁があったのがアディダスで、2005年に初めての転職をしました。

アディダスではどのような業務を担当されたのでしょうか?

ドイツ本国で開発されたリテールコンセプト「アディダス パフォーマンスセンター」という当時の最新フォーマットを日本に導入し、それを全国に拡大していく業務が中心でした。分かりやすい事例で言うと、渋谷の文化村通りに現在「アディダス ブランドコア ストア」と呼ばれる大型リテールがあるのですが、あの店舗のプロジェクトに私が中心となって携わらせていただきました。渋谷は日本人にとっての情報発信拠点のみならず、海外から多くの観光客もいらっしゃるので、ブランドを発信する拠点とするために、現在のDirect-To-Consumer(DTC)と言われる流通を構築するためのマーケティング戦略を担当しました。その後は、リーバイ・ストラウス ジャパン(リーバイス)に転職し、ブランド再生、及び流通戦略の改編などの業務に従事しました。当時は、外資系ファストファッションが日本に上陸したてのころで、ジーンズがあらゆるお店でリーズナブルな価格で売られる時代になり、ブランド価値自体を見直し、再構築する必要がありました。そこで、ブランド再生で有名な当時の社長の下で、「ブランドとは、かくあるべき」という哲学を学びました。

その後、スポーツ業界に戻り、ナイキに転職したそうですね。

私は学生時代からバスケットボールをやっており、1990年代のNBAやマイケル ジョーダン選手、ドリームチーム等の黄金期を見て育ってまいりましたので、アメリカのバスケットボールに対する憧憬が非常に強い世代でした。そして、その競技の中心として世界的に君臨していたブランド、そして私が思春期のころからあこがれていたブランド。それがナイキでした。さまざまなブランドでのお仕事に携わる中でも「ドリームジョブ」とも言える仕事に出会えたのは幸運なことでした。ナイキでは主にスニーカービジネスや、ライフスタイルアパレルのマーケティング担当者としてキャリアを積みました。2015年には、日本のスニーカー文化の象徴でもある『エアマックス95』の発売からちょうど20周年のタイミングで、日本固有のカルチャーをどのように再燃させ、現代の消費者に新しい解釈として提案をしていくのか。私自身も『エアマックス 95』にあこがれ、欲しくても買えなかった世代なので、自分の当時の思いさながらに、プロジェクトには情熱を注ぐことができました。しばらくナイキに在籍し、自分の中である種の達成感を得られた感覚があったので次のチャレンジとしてLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)傘下の高級時計ブランド、タグ・ホイヤーにマネジメントとして参画することを選びました。ブランド戦略の見直しや、ミレニアム世代へのアプローチを推進する中で、戦略の柱となるのがスポーツマーケティングでした。スイス本社との連携によりJリーグとのオフィシャルパートナー契約や、錦織圭選手、香川真司選手をはじめとしたアスリートとの取り組みを強化するための戦略構築を行いました。(※契約選手名などは当時の契約に基づく)

これだけ著名なブランドでも、短期間で職場環境を変え続けることの意図は?

いずれのブランドでの職務も非常に有意義で、その反面、快適な空間にとどまることって精神的には楽なんですけど、基本的には率先して環境を変え、自らにチャレンジを課すことを心掛けています。新しい職場に身を投じると環境の違い、文化の違い、またそこから生じる摩擦などがあって最初は順応するのが大変なのですが、リーバイス時代の上司、齋藤貴社長(当時)に「道が2つあったら、難しいほうを選びなさい。そのほうが結果が付いてくるから」と言われたことがあって、その考え方が今でも自分の判断の指標になっていますね。

現在はイニエスタに関わるプロジェクトを担当する[写真]山口剛生

スーパースターが持つブランド力を分析し活用

現在、楽天ではヴィッセル神戸に所属するアンドレス イニエスタ選手に関連するプロジェクトを主に担当されているそうですね。

楽天に転職したのは2018年期中です。入社当初は、楽天の広告事業の中で、グローバルでビジネスを展開するインターナショナルブランドと楽天とのビジネスの接点を開拓するという役割だったのですが、入社早々に「イニエスタが来るらしいぞ」と。そこで「堀くん、スポーツマーケティングできるかな?」と言われて「ぜひ」と答えました。ただ、キャリアの一貫性という観点で考えると、自分のキャリアは、1.ブランドビジネスに携わること、2.インターナショナルな感覚を持ち続けること、3. スポーツマーケティングに関わること、という3つが構成軸になっており、楽天でもたまたまその3つの軸に関わる業務とめぐり合うことができたわけです。

具体的に日々、どんな業務を行っているのでしょうか?

「イニエスタ プロジェクト」は大きく分けて4つのビジネスポートフォリオに分類されます。1つ目がスポンサーシップ事業で、イニエスタ選手をコーポレートアンバサダーやブランドアンバサダーとして起用していただける企業と結びつける業務です。2つ目はマーチャンダイジング事業。彼が持つ世界的なブランド力やソーシャルネットワークでの影響力を活用して商品を開発し、販売することで収益を得る。楽天は元来、Eコマースのプラットフォーマーですし、その強みを活かしながら商品開発をしてビジネス化していきます。3つ目は、今年6月の本格開校が決まったイニエスタ選手本人監修のサッカースクールです。もともと、彼がスペインで開発した6歳から18歳までを対象にした「イニエスタ メソドロジー」という育成プログラムがあり、そのコンセプトを忠実に再現し、日本に最適化した形でスクール展開をします。最後の4つ目は『イニエスタTV』というメディア事業。彼の日本での生活をフィルムに収め、それをメディアとして世界中のイニエスタファンに届けるというメディアプロジェクトも走っています。

現在の業務で特に難しいと感じる部分はありますか?

スポーツに関わる方々って情熱的な方や、自分の業務に誇りを持っている方がすごく多いので、その意味ではお互いの主張の中で激しい意見交換などはありますね。ただ、目指すゴールは同じなので、何かやりづらさを感じることはありません。むしろ、今までも外資系でそういった建設的な意見交換や議論を通してプロジェクトを形作ってきたので、自然なプロセスでもあり、社名のとおり「楽天」的なメンタリティで業務に取り組んでいます。

イニエスタに関連したプロジェクトは大きく分けて4つある

日本のスポーツマーケティングを変革する

楽天は堀さんにとって初の日本企業ですが、実際に働いて驚いたこと、外資系企業との違いを感じる部分はありますか?

一番大きく違うのは、基礎となる戦略やコンセプトがどこから出てくるか、という部分ですね。外資系企業は本部が置かれている国から発信されるケースが多く、その考え方を輸入して理解することから始まるんですけど、楽天の場合はここ日本がグローバルヘッドクオーターですし、世界に対して情報を発信し、自分たちで事業構想や、戦略構築を進められるという意味においては大きな違いがあると思います。一方で、楽天は社内公用語が2012年から英語になっていますし、かなり人種、性別、言語、文化、思想なども多様化された環境ですので、その意味においては日本企業で働いている感覚は個人的にはあまりないかもしれません。

今後の目標や夢を教えてください。

これは今の業務から少し離れますが、将来的に取り組みたいことが2つあります。1つは日本の社会にスポーツをできる場所がもっと増えたらいいなと思います。スポーツをする音や行為に対する社会の不寛容性、例えばスポーツで出す声や、ボールをつく音や、蹴る音を単純に騒音として捉えてしまう。それゆえに大人のみならず、子どもたちが純粋にスポーツを楽しむ場が少なくなっている気がします。それを改善するすべを将来的に見いだしていきたい。2つ目は、スポーツ文化の価値自体を向上させるような取り組みをできたらいいなと思っています。欧州サッカークラブやNBAチームを見ると、セルフブランディングを戦略的に手掛けているチームが増えているんですよ。例えば、パリ・サンジェルマンや、ユベントス、ロサンゼルスFC、ドルトムントなどは参考になります。一貫性を持ったブランディングの下で、うまく設計されたコミュニケーションやデザインを展開し、その中ですべてのファンのうねりがより大きなものになっている。海外スポーツでのブランド戦略は非常に学びが大きく、日本ではサッカーでも、野球でも、バスケットボールでもそのレベル感でブランディングに意識的に力を入れているチームってまだ存在していないと感じます。クラブやチームのブランディングを強化することにより、ファンとの感情的な結びつきをもっと強固にすることができるのではないかと思っていますし、ブランドマーケターでもある自分が貢献できる領域でもあると考えています。

楽天でも、それらの夢がかなえられそうですね。

そうですね、本当にそう思います。選手やクラブとの距離感も極めて近いですし、共通のゴールを持つ仲間も多い。それに加えて、何しろトップマネジメント(三木谷 浩史会長 兼 社長)のコミットメントが半端なものではありませんので(笑)。2019年は、これまでの日本のスポーツマーケティングでは起こり得なかったエキサイティングなことが起こりますし、スポーツ産業に対するイノベーションという観点で楽天がこれからその中心的な存在を担えたらこんなにうれしいことはありません。そして、そういう仲間がこれからもっと増えていけばいいなと思っています。

スポーツチームのブランディング強化にも関心を寄せる[写真]山口剛生

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