W杯の盛りあがりを
Bリーグにつなげたい
ソフトバンク株式会社 『バスケットLIVE』担当中田 匠さん
バスケットボール
中田 匠(なかだ・たくみ)さん 37歳
ソフトバンク株式会社
サービス企画本部
スポーツ事業統括部 制作渉外部
映像制作課
学生時代から映像制作に携わり、エンタメ業界、音楽業界を経てスポーツ業界へ。TV番組の制作に関わった経験を活かしつつ、WebやSNSを主戦場とし「バスケット界を盛りあげたい」とのアツい思いを持って映像を作り続ける。企画、提案から取材、編集、配信まで、 これまで培った技術をフル活用してバスケットの魅力を伝える。(2019年8月1日取材)
レコチョクを経てTVバンクへ
これまでの経歴を教えてください。
学生時代に映像の専門学校に通い、卒業後はアルバイトをしながら友人たちとフリーで映像制作をするという生活を24歳まで続けました。特に多く携わったのはインディーズバンドのライブビデオやプロモーションビデオですね。それから24歳のときにワーキングホリデーでカナダのトロントに行き、25歳で帰国して就職を考える中で、やはり映像の仕事がしたいと探して出会ったのが『アンビション・インターナショナル』という会社で、そこでWeb動画サイトの制作を担当しました。
そこはどういう会社だったのでしょうか?
社員が10人ぐらいのベンチャー企業で、取材や撮影、Webのコーディングやエンコードなど、すべて1人でやりました。芸能人の方にブログの書き方を教えたり、動画コメントを撮って編集してアップしたり、ファンクラブ向けのコンテンツを作ったりもしました。そこに3年ぐらいいて、あるとき、会社の友人が「音楽が好きで映像ができるんだから、『レコチョク』という配信会社を受けてみれば?」と言ってくれて。転職サイトを見たら自分にぴったりの会社だったので面接を受けたところ採用していただき、転職しました。そこではアーティストのコメントなどを撮影して編集してアップし、最終的に「着うた」や「着うたフル」の販促につなげるという業務を担い、そこでも3年ほど勤めました。
『ソフトバンク』に転職したきっかけと、これまでどんな業務を担当してきたのかを教えてください。
ガラケーからスマートフォンに移行する流れで『レコチョク』の映像部門がなくなり、そのタイミングで『TVバンク』という『ソフトバンクグループ』と『ヤフージャパン』の子会社に転職しました。『TVバンク』では動画のエンタメ系サイトの運用をしていました。サイトの編成やSNSの運用をやりつつ、もともと制作の経験があったので、現場での制作チームとの調整もしていました。その後2016年2月から出向元のソフトバンクに籍を置き、『スポナビライブ』というスポーツサイトに移って編成や制作をやるようになりました。それから2年後の2018年5月に『スポナビライブ』のサービスが終了したことを受けて、現在は『バスケットLIVE』というバスケットボール専門のサイトで映像の配信を担当しています。
バスケ業界はまだまだ伸びる
現在の業務内容を教えてください。
制作担当ですね。主な取材対象はBリーグ、Wリーグと男女の日本代表です。試合のライブ配信に関しては他社が中継する映像をインターネット用にもらうんですが、ビデオ・オン・デマンドや企画ものの素材に関しては、ぼくたちが企画、提案をして取材に行き、自分たちのカメラで撮って編集して映像を配信するところまでやっています。
これまでスポーツやバスケットボールとの関わりはあったのでしょうか?
仕事として関わるようになったのは『スポナビライブ』が立ちあがったときからですね。バスケットボールに関しては、1年前に『バスケットLIVE』がスタートしてからで、それまでは野球とサッカーがすごく好きでした。野球は小学1年から中学2年まで自分でもやっていましたし、サッカーは小学校高学年のときにJリーグが開幕し、それから鹿島アントラーズがずっと好きで、今も試合を見に行っています。体を動かすことが好きで、今はボクシングとフットサルをやっていて、『スポナビライブ』時代には「スポナビライブカップ」という大会を自分で企画して開催しました。バスケットボールはやっていません、見る専門ですね(笑)。
バスケットボールの一番の魅力はどういった部分でしょうか?
競技面では、背が高い選手たちが激しくぶつかり合う姿は圧巻です。また、Bリーグはエンターテインメント性を重視していることもあり各アリーナの演出も魅力的ですね。加えて女性ファンが多く、八村塁(ワシントン・ウィザーズ所属)選手のブームもありますし、まだまだ伸びるジャンルだと思います。Bリーグがスタートして4年目、年々ファンと観客動員数が増えて、SNS上の施策も他ジャンルに比べて活発にやっているので、その部分を一緒にやりながら、映像というコンテンツを使ってもっとファンを増やしたいですね。子どもたちにはプロを目指す、その先のNBAを目指すという目標が見えてきたので、『バスケットLIVE』の映像でプレーを勉強したり、テンションを上げてもらったりして夢を見られるようになればいいなと思います。
コンテンツを制作する際、特にこだわっている部分を教えてください。
動画は写真と違って被写体が動くので、なるべく選手の人間性や中身の部分を表現できるような撮影やインタビューをするよう心がけています。こわもての選手も笑うとかわいいなど、意外な一面が結構あるので、それを引き出せるようなインタビューをしたいですし、編集時もそういう部分を使うようにしています。編集しすぎると作り物っぽくなってしまうので、なるべく撮ったものをそのままユーザーに届けたいなと。また、バスケットボール選手は一般の方より身長が高い方が多いので、例えばバスケットゴールの下で撮影してゴールを触ってもらうなど、サイズ感が伝わるようなシチュエーションを考えることもあります。その際、三脚は普通より高いものを使わなければなりませんし、背の低いスタッフが撮影する場合は台に乗って目線を合わせるなど、いろいろ工夫しています。カメラを見下ろす感じだと怖く見えてしまいますからね(笑)。
映像制作におけるポイント
学生時代、前職時代の経験で活かされていることはありますか?
同じ映像関連業界でも、地上波の番組を作っている制作会社に勤めるのと、IT業界で仕事をするのとではだいぶ違うと思います。ぼくは地上波番組を作るアルバイトやADもしていたんですけど、IT業界の中で創成期から映像に携わってきて、Web用の映像コンテンツの企画や立案ができて実際に作ってきたのは大きいと思います。テレビで見てもらえるコンテンツを作るのと、SNSでバズる映像を作るのとでは大きく違います。Webの仕事をずっとしてきて知識もあるので、その部分は良かったと思いますね。
Web向きの映像にはどのような特徴があるのでしょうか?
頭の6秒だけを見て、その後も見続けるかどうかが判断される傾向があるので、そこにポイントを置いて作っていますし、今だと逆に長尺の映像でも見てもらえるかな、ということも考えています。YouTubeならこのほうがいい、Twitterならこう、スポーツナビならこういうコンテンツがいいなど、プラットフォームによっても違いがあります。もちろんSEOで検索されやすくする工夫もしていますし、あとはサムネイルですね。今なら八村選手を使うとクリック率が伸びます。
8月31日からバスケットボール・ワールドカップが開幕します。
『バスケットLIVE』では試合のライブ配信はできないので、合宿などの取材で得たオフの部分を大々的に伝えたいですし、2019-20シーズンのBリーグが10月初頭に開幕するので、W杯の盛りあがりをBリーグにつなげたいですね。もちろん代表チームが強いのが一番だと思うんですが、4年目を迎えるBリーグもさらに盛りあげたいと思っています。
スポーツ業界に欲しい人材、一緒に働きたい人はどんな人でしょうか?
コンテンツを愛せる人がいいですね。何をやるにしても、好きな人には勝てないと思っているんですよ。仕事だからやっているだけの人より、「好きだからやらせてください」という人間が周りにいたほうが自分のスキルが上がったり、見えていないところが見えたりすると思います。また、チームワークをうまく取れる人がいいですね。映像制作の知識や専門技術については、最低限、動画が撮影、編集できれば十分です。