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担当記者として
“野球”を極めたい

スポーツニッポン新聞社 野球担当柳原直之さん

野球

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柳原直之(やなぎはら・なおゆき)さん 33歳
株式会社スポーツニッポン新聞社
編集局 スポーツ部 野球担当

スポーツ紙の花形とも言える野球担当。現在、大リーグのロサンゼルス・エンゼルス、大谷翔平選手を担当しているスポーツニッポンの記者、柳原直之さんは、前職“銀行マン”という異色の経歴を持つ。2012年の入社以来、数々の瞬間に立ち会い、これまでもこれからもスポーツの魅力や感動を記事にし、スポーツの醍醐味を届ける。(2018年12月10日取材)

北海道日本ハムの担当を経て、大リーグ・エンゼルスの担当に[写真]兼子愼一郎

3度目の入社試験で合格

まずはこれまでのキャリアについて教えてください。

最初は新卒で三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)に入行し、そこで約3年半働きました。その後、2012年4月にスポーツニッポンに入社し、1年目は編集センターに配属され、2年目の4月にスポーツ部に異動。その年の12月に北海道へ転勤となり、14年1月からプロ野球、北海道日本ハムファイターズの担当になりました。2018年1月からは大リーグ、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手を担当しています。

銀行員時代はどういった業務を行っていたのですか?

法人営業担当で融資の提案などを行うことが主な仕事でした。ドラマの『半沢直樹』ではありませんが、中小企業の工場などに行ってよく話を聞いていましたね。大学は経済学部出身で周囲も金融業界に進む人が多かったのですが、今だから言えますが実はあまり興味を持てない分野でした(笑)。でも、実際に働いてみると、興味がない世界のほうが視野が広がることを痛感しました。全く知らない業界でしたが非常に勉強になりましたし、個人的には新卒で銀行を経験し、今の業界に来たことは良かったなと感じています。

銀行での就業経験が良かったと思う理由は?

会社がどのようにお金を借りて、どうやってもうけるのか……そもそも、なぜお金を借りなければならないのか、運転資金や設備投資の必要性、新規事業はどうやって立ちあがるかなど、会社がいかに成り立っているかを理解できたことは今後、どんな仕事をする上でも自分自身の人生において役に立つと思います。幅広い金融知識やコンプライアンス、一人の社会人として働く上で大切なことを学ばせていただきました。

金融関係からスポーツ関連の仕事に転職したきっかけは何だったのでしょうか?

もともとスポーツメディアの業界で働きたいとの思いは強く、大学時代の就職活動でも、スポニチを受験しているのです。でも落ちてしまって。そのときに内定をいただいたのが銀行でした。就職浪人するのも嫌だなと思い入社したのですが、いざ働いてみると、自分が定年まで働くというイメージをなかなか描きにくかった。入社後、慌ただしい日々を過ごしていましたが、チャンスがある限りはスポーツメディア業界に挑戦したいという気持ちが消えることはありませんでした。入行1年目は新人ですから覚えることも多く、考える余裕はありませんでしたが、2、3年目はスポーツ紙の第二新卒の年齢制限を頭に入れていました。そして社会人2年目でスポニチを再び受験しましたが、またも不合格でした。翌年、もう一度受けてようやく合格に至りました。3度目にもなると、さすがに人事部の方々にも顔を覚えられていましたね(笑)。

大学時代は準硬式野球部に所属。ポジションはピッチャーだった[写真]本人提供

一番焦った瞬間は……

現在はスポーツ部野球担当ということですが、主にどういった業務を行っているのでしょうか?

2018年1月から大リーグ、エンゼルスの大谷選手を担当しています。大リーグ担当は2人いて、3カ月間アメリカに行って、帰国して1カ月間ほど国内で働き、また2カ月間アメリカに行くといったように交代制になっています。アメリカにいる間はキャンプや練習、試合の取材や原稿執筆を行っています。日本にいる間は内勤が多く、大リーグに関する外国のニュースを訳したり、通信員さんの記事をリライトしたりする作業が多いですね。

大リーグ取材時は、時差がある分、大変ではありませんか?

日本のプロ野球の試合が行われるのはたいていナイトゲームなので、試合展開が遅いと、取材後30分間で最大800文字ほどの原稿を書かなければなりません。ですから、日本のプロ野球担当記者は原稿執筆のスケジュール的には非常にタイトですね。ただ、大リーグの場合はアメリカの夜中12時ごろに、会社にデスクが出社するので、アメリカの朝5、6時が締め切りになるのです。日本にいるよりも時間的な余裕はあると思います。でも、そんなに時間をかけて原稿を執筆したら睡眠時間がなくなるので、早めに執筆するよう心掛けています。ただ、一度、先に睡眠を取ってしまって、締め切りギリギリになってしまったことがありました。起きたら会社からの着信が20件程度残っていて。最終的には間に合いましたが、2018年で一番焦った瞬間でした(笑)。

以前から英語は勉強されていたのですか?

英語は全然ダメなんですが、好きですね。元々、留学したいという夢があったので、銀行をやめてスポニチに入る前に4、5カ月、アメリカとフィリピンに語学留学をしました。本当は今も英語教室に通いたいのですが、NHKの『基礎英語』など、毎日ラジオを聞いて勉強している程度です。

現在、お仕事をされていてやりがいを感じるのはどんな瞬間ですか?

新聞記事にもネットの記事にも必ず自分の署名が載るのですが、掲載した後は知り合いからは少なからず反響があって。そういうときはやりがいを感じますし、モチベーションになっています。記者になって最初に自分の名前が載った記事は、以前勤めていた会社の上司にも送って、喜んでいただけました。

アメリカ出張時。ヒューストン・アストロズのホーム球場にて[写真]本人提供

優勝記事の達成感

これまでの中で印象に残っている記事や取材はありますか?

2016年に担当していた北海道日本ハムが優勝したときの記事ですね。自分がいい記者かどうかは別として、優勝原稿はそのチームを担当していないと書くことができません。50歳ぐらいの方でも優勝原稿を書いたことがない人がいますし、逆に、優勝原稿を何度も書いたことがある人もいる。スポニチに入社して2019年4月で8年目になりますが、すごく印象に残る仕事になりました。優勝原稿はすごく凝っているんですよ。1面も通常より原稿が長く、3面には監督の手記が載っていたり、対談があったり。2016年の優勝時には当時所属していた大谷選手が子どものころにつけていた「大谷ノート」をうちが独占で掲載させてもらいました。優勝記事はかなり労力と時間をかけているので大変ですが、その分、記事になったときの達成感は大きいですよね。また、2017年12月にエンゼルスタジアムの球場正面で行われた大谷選手の入団会見もとても印象に残っています。屋外での会見は珍しいですし、演出が格好良くて「メジャーリーグってすごい!」と感動したことは一生忘れないと思います。

フロントスタッフや監督、選手との信頼関係を構築するために心掛けていることはどんなことでしょうか?

当たり前のことですが、どんなに小さなことでも上司から指示されたことはすぐに実行する、遅刻をしない、しっかりあいさつをする、積極的に取材をするなど、そういった姿勢は大切だと思います。銀行に勤めていた時代に上司から「お客さまから信頼を得るために一番必要なことは何だ」と聞かれたことがありました。その上司は「どんな小さな仕事でも、馬鹿にせずにやることが大事。意外とそれをできている人は少ない」と言っていました。あとは「うそをつかない、かっこつけない、言い訳しない」ことも口酸っぱく言われました。難しいですが、悩んだり困ったりしたときはこの言葉を思い出して行動するように心掛けています。

逆にまだまだと感じることもありますか?

私自身もまだまだコミュニケーション能力は勉強中ですね。この業界は知らない人にもどんどん話しかけていかなければなりません。最初は大物選手にすごく声をかけづらかったのですが、そこは空気を読んだり、相手の気持ちになったり、どういうタイミングで声をかけるべきか察知するようにしています。

スポーツ界、スポーツメディアに求められる人材はどういった方でしょうか?

個人的にはやはりスポーツが好きではないと厳しいのかなと思いますね。極論ですが、スポーツ記者の仕事は、選手や関係者などの話を聞くのが1割、原稿を書くのが1割で、あとの8割は試合や練習を見ているか、ひたすら取材対象を待っているという仕事だと思っています。本当にスポーツが好きな人でなければ、その「8割」がとても苦痛になると思います。自分の場合は、入社するときに仕事のオンとオフの差をなくしたいという思いからこの業界に入ったことも関係していて、休みの日も普通に野球をしたり、見たりしますし、もちろん、野球以外のスポーツも見ます。また、取材する際は対象者と会話をするわけですが、より多くの知識を持っている人は強いですよね。例えば、ちょっとした共通点で会話が弾んだり、一気に距離が縮まることもありますから。元銀行員の自分は、どこで住宅ローンを借りたらいいのか、どこで資産を運用したらいいのかという会話が多かったです。「今はこういう情勢で」といった感じで、ある程度は話せるようにして。銀行員という前歴は珍しいので、いろいろ質問はされますし、会社の人にも「そこはもっと売り出していけよ」と言われているので、もっと自分の強みにしていきたいなと思っています。

この仕事における今後の夢や目標は?

野球担当の記者としてのキャリアがまだ浅いので、まずは野球を極めたいと思っています。また、大リーグ担当としてはまだまだ英語力も足りないですし、アメリカと日本の野球の制度に関してもさらなる理解と勉強が必要だと痛感しています。今、大リーグでは大谷選手を担当していますが、周りからも「大谷選手(の記事)で1番になれ!」と言われているので、周りからも認められる、そういった深い記事を書けるようなっていきたいですね。

野球担当として「まずは野球を極めたい」と意気込む[写真]兼子愼一郎

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