障害者雇用枠で公務員になるには?障害者が公務員を目指すメリット・デメリット

はたらく女性

社会全体で障害者の就労支援が進む中、障害のある方が公務員として社会に貢献する機会はますます広がっています。しかし、障害者雇用枠で公務員になるための具体的な方法や、公務員としてはたらくことのメリットやデメリットは知らないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、障害者の公務員採用の現状、具体的なステップ、公務員を目指す際のメリットとデメリットについて詳しく解説します。また、障害者雇用枠で公務員としてはたらく際の注意点や、どのような方が適性を持っているのかについてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

障害者の公務員採用の現状

公務員

公務員とは、国や地方自治体に勤務し、社会や国民の生活の土台づくりを担う方たちを指します。
公務員採用には一般枠と、障害者手帳を所持している方向けの障害者雇用枠の2つがあり、障害のある方が公務員としてキャリアを築く機会は年々広がっています。

公務員の種類・仕事内容

公務員は、大きく国家公務員と地方公務員とに分けられます。国家公務員は、主に国家機関や行政執行法人などの機関ではたらく公務員です。総合職、一般職、専門職といった職種に分けられ、外交や国防、社会福祉など、それぞれの専門領域で活躍しています。

一方地方公務員は、都道府県庁や市役所など、地方自治体に所属し、その地域に根ざしたサービスを提供する役割を担っています。仕事の内容は、福祉、教育、産業振興、まちづくりといった幅広い分野におよび、その地域特有の課題解決に努めることで、住民の生活向上に直結する役割を果たしています。

障害者雇用枠での公務員採用状況

令和5年度の障害者の公務員採用状況を見ると、国、都道府県、市町村いずれも前年度に比べて雇用人数が増加しており、公的機関の障害者雇用に対する積極的な姿勢が伺えます。
国では9,940.0人、都道府県では1万627.5人、市町村では3万5,611.5人の障害者が雇用され、いずれも法定雇用率2.6%を上回る結果となっています。(※)
このように、障害者の公務員採用が進むことは、障害のある方本人の自立支援や社会参加促進はもちろん、多様性を尊重する社会づくりにもつながります。

(※)参考:厚生労働省 「令和5年障害者雇用状況の集計結果」

障害者が公務員になるには

障害のある方が公務員になる道は、一般枠と障害者雇用枠があります。障害をオープンにせず一般枠で就労する方法もありますが、障害者手帳を持っている方は、障害者雇用枠の選考試験を受験することができます。

公務員採用試験に合格する

公務員になるためには、まず採用試験に合格する必要があります。そのためには、人事院や志望する機関、自治体のホームページをこまめにチェックし、最新の情報を入手することが重要です。

書類選考や面接は一般企業と同様ですが、公務員採用には筆記試験(教養・作文)も加わるため、十分な準備が不可欠です。筆記試験の難易度は比較的高いため、計画的に勉強に取り組むことが合格の鍵となります。障害の特性を理解し、自分に合った勉強方法を見つけることも大切です。

障害者が公務員を目指すメリット

公務員としてのはたらき方は、障害のある方にとって次のようなメリットがあると言えます。

長くはたらくことができる

公務員は、障害のある方が長く安定してはたらけるというメリットがあります。国の行政機関ではたらく障害者のうち、83.4%が定着しているという国の調査結果(※)もあり、高い安定性を示していることが伺えます。
ワーク・ライフ・バランスがとりやすい職場環境や、充実した福利厚生、しっかりとした休暇制度が、高い定着率を支える大きな理由と言えるでしょう。比較的年間休日も多く設定されているため、障害のある方々が自分のペースで業務を続けられることも、長くはたらくことのできる要因の一つです。

(※)参考:厚生労働省 「国の行政機関の障害者の採用・定着状況等特別調査の集計結果(2020/6/1現在)」

一般枠と障害者雇用枠に給与待遇の違いがない

公務員の待遇は、法令や条例によって定められており、一般枠と障害者雇用枠で給与の違いはありません。障害の有無にかかわらず公平な評価がなされることは、大きなメリットと言えます。社会の一員として平等に評価され、安定した収入を得ることができます。

社会的信用が高い

公務員の社会的信用の高さは、障害者雇用枠でも変わりません。公務員としての就職が決まると、賃貸の入居審査やローンの申請時にも有利になることが多く、日常生活のさまざまな場面で、プラスの影響を受けることができます。社会的な安心感を得られるのは、公務員ならではのメリットと言えるでしょう。

障害者が公務員を目指すデメリット

障害のある方が公務員を目指すことはメリットが多い一方、いくつかの障壁もあります。次に紹介するデメリットを理解し、準備と対策を行うことが重要です。

配属される部署を選べない

公務員としてはたらく際、配属される部署は自分で選ぶことはできません。募集される職種も限られており、必ずしも希望する仕事に携われるわけではない点がデメリットと言えるでしょう。
一方で、新たな発見や成長の機会にもなり得るため、多様な業務に挑戦してみたいという方にはメリットが大きいと言えます。

倍率が高い

公務員は、社会的信用が高いことや、安定してはたらけるというメリットから応募数が多く、倍率が高い傾向にあります。特に障害者雇用枠は、限られた募集に対して多くの応募があるため、倍率は非常に高くなります。また、障害者の法定雇用率が達成されているので、新たな募集が少ないという現実もあり、採用機会が限られています。

公務員試験がある

民間企業は、書類選考や面接で採用が決まることが多いですが、公務員の採用試験には筆記試験があります。筆記試験は難易度が高く、公務員になるためには計画的な勉強が必要です。試験対策などの準備によっては、実際に公務員としてはたらくまでに長い道のりになることも少なくありません。
障害者枠であっても試験は免除されないため、合格するためには心構えだけでなく、日々の勉強が不可欠です。

障害者雇用枠で公務員としてはたらく際の注意点

障害者雇用枠で公務員になることは、安定した職場環境を求める方にとっては、メリットの多い選択肢です。しかし、実際に公務員としてはたらく際には、以下のポイントに注意しておく必要があります。

体調管理に気をつける

公務員として仕事をする上で、休みは比較的多く、有給休暇も取得できるメリットがあります。一方で、安定した勤怠が重要視されるため、日々の体調管理には気をつけましょう。
仕事と健康のバランスをとることは安定した勤怠に直結するため、自身の状態を把握し、健康を維持しながらはたらくための対策をとることが大切です。

民間企業との違いに注意

公務員としてはたらく場合、仕事の進め方やルールは民間企業と異なる場合があります。公的機関では決められた手順やルールに沿って業務を進めることが多いため、流れを理解し、適応することが求められます。
特に、民間企業から公務員へ転職する場合、またはその逆の場合は、仕事のやり方や考え方にギャップを感じる可能性があります。仕事内容だけでなく、職場の文化やコミュニケーションの違いが発生する可能性も、念頭においておきましょう。

障害者雇用枠で公務員になる適性があるのはどんなタイプ?

ガッツポーズをする男性

障害者雇用枠での公務員になる方には、共通の適性が見られることが少なくありません。適性は大きく「公務員試験における適性」と「実際にはたらく上での適性」に分けられます。

公務員試験における適性

公務員試験における適性は、計画的にコツコツと努力を続けられるタイプです。試験準備は一朝一夕にはいかず、長期にわたる勉強が必要です。このプロセスに耐え、自らを奮い立たせることができる方は、公務員試験に適していると言えます。

実際にはたらく上での適性

次に公務員試験の合格だけでなく、実際に仕事をする上での対応能力も、重要な適性の一つです。公務員は多種多様な公的な仕事を担っており、役所や機関によって、障害者雇用枠に求められる役割は異なります。

一方で、明確にやりたい仕事内容が決まっている方や上昇志向、ベンチャー志向の方は、民間企業の方が適している場合もあります。民間企業の中にも公的な業務を担う求人は多数あり、障害者雇用への取り組みも進んでいます。
公務員だけでなく民間企業も含めた障害者雇用枠の幅広い選択肢を検討することで、自分に合う求人を探していくことが大切です。

dodaチャレンジでは、幅広い求人の中から求職者に最適な求人を提案するだけでなく、障害者専任のキャリアアドバイザーが、就職・転職活動全般をサポートします。障害者雇用枠での就職・転職に悩んでいる方は、ぜひdodaチャレンジまでご相談ください。

まとめ

障害者が公務員としてはたらくことは、安定したキャリアを築くことができるなどのメリットがあります。ただし、部署の選択の自由度が低い、公務員試験の難易度が高いなど、挑戦する上で覚えておくべきポイントも多くあります。
公務員の適性があるかどうか不安に思う方や、就職・転職で迷っている方は、キャリアアドバイザーなどの専門家に相談してみることをおすすめします。民間企業も含め、幅広い選択肢から安心して長期にわたりはたらく場を確保するために、ぜひ就職・転職エージェントを利用してみてはいかがでしょうか。

公開日:2024/4/2

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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