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華やかじゃない。でも面白い。元テレ東のヒットメーカー 高橋弘樹が語るテレビの裏側|ラジオアーカイブ

華やかじゃない。でも面白い。元テレ東のヒットメーカー 高橋弘樹が語るテレビの裏側|ラジオアーカイブ

前編:2023.5.21(日)放送回
高橋 弘樹さん
映像ディレクター・プロデューサー

ラジオ音源はこちらから

「空想メディア」ロゴ04

放送作家の高須光聖さんがゲストの方と空想し、勝手に企画を提案する『空想メディア』。
社会の第一線で活躍されている多種多様なゲストの「生き方や働き方」「今興味があること」を掘り下げながら「キャリアの転機」にも迫ります。

今回のゲストは映像ディレクター・YouTubeチャンネル『ReHacQ(リハック)』のプロデューサー高橋弘樹さんです。2023年2月までテレビ東京のプロデューサーとして『家、ついて行ってイイですか?』など数々の人気番組を手掛けてきた高橋さん。初対面の二人ですが、同じ業界で活躍する者同士、仕事に対する考え方に共通点があるようです。二人のヒットメーカーが語るテレビの裏側のお話、お楽しみください。

  • 高橋弘樹さん

    高橋 弘樹(たかはし・ひろき) 元テレビ東京プロデューサー。現在は株式会社AbemaTVに勤務しながら、株式会社tonariの代表としてYouTubeチャンネル『ReHacQ』を手掛ける。

  • 高須光聖さん

    高須 光聖(たかす・みつよし) 放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティーなど多岐にわたって活動。
    中学時代からの友人だったダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。

期待した華やかさはなくとも未体験の面白さがあったテレビの世界

高須:ずっとテレ東にいたんですよね?

高橋:そうなんですよ。18年間テレビ東京にいて。

高須:そもそもテレビの仕事をやろうとか、テレビ東京に入ろうと思ったきっかけってなんだったの?

高橋:運です。見境なく銀行とか生命保険会社とかテレビ局も全局受けた中で、たまたまテレビ東京に引っかかって入らせていただいて。

高須:そのときはもうテレビしかないと思ったの?

高橋:今振り返るとたいしたことないんですけど、松浦亜弥とかと付き合えるかもしれないみたいな下心がちょっと…。

高橋・高須:(笑)

高須:いやでもね、当時テレビは日本のエンタメのトップやったから、人気アイドルやタレントがいるテレビ局にいたら、「俺もひょっとしたら…」っていう気持ちはあったよね。

高橋:入社前はありましたけど、入ったらやっぱりなくなりましたよ。他局はどうか分からないですけど、そんなに華やかな世界ではなかったですね。

高須:本当に? でも番組を一つ当てると、ちょっと周りの反応が変わるじゃない?

高橋:そういう瞬間も確かにあったんですけど、ぼくの周りにいた人ってビビる大木さんとか矢作兼さんとかおじさんばかりで。おじさんと仲良くなるっていうことが起こりましたね。

高橋・高須:(笑)

高須:テレビ自体は昔から好きだった?

高橋:好きでしたよ。テレビっ子でした。高須さんもそうかもしれないけど、ぼくらの時代ってやっぱり夜の娯楽はテレビしかなかったから。

高須:なかったよ。テレビ、ラジオくらいで。本当になかったよね。入社してからはテレビで見ていた人を間近で見て、番組の制作現場を知っていくわけじゃない? その現場を見たときはどうでした?

高橋:感動しました。すごいですよね。スタジオに入るとライトがカッとなって。多分あれ画面で見る以上に明るいんですよね。華やかな世界だなと思いましたし、それがオンエアされていくことにすごい感動しました。

高須:そうだよね。なんか一つ一つに感動するよね。初めてディレクターや演出をやったのはどんな番組だったの?

高橋:初めて担当したのは『TVチャンピオン』の『ゆるキャラ王選手権』っていうミニコーナーでした。大学ではずっと政治学とか学んできたのに、「ゆるキャラを全国200体ぐらい集めて相撲させよう」なんて味わったことのない経験で、めちゃくちゃ面白かったですね。

高須:テレビチャンピオンって、いまだにあったらいい箱やなと思うけど。あの番組が終わったとき、なんかいろいろ試しやすい箱が一個消えた感じがしたのね。

高橋:意外にスター発掘枠ではありましたよね。

高須:あれ財産やね。今ならすべてYouTubeの動画になるやんか。

高橋:あれを今YouTubeで回したら200万回再生くらいいくでしょうね。

高須:恐ろしいね。しかもファンがもっと付いてくると思うのよ。テレ東の文化としてすごくいい番組だったのに。

高橋:もう一回やればいいのになあ。

高須:もう一回やればいいのにね。

どんな番組にも本気で取り組む。コスパが悪くても好きだからやりたい

高須:ミニコーナーをやった後は自分で企画を出したりしていたの?

高橋:企画書はずっと出していて、初めて通ったのは『ジョージ・ポットマンの平成史』っていう企画でした。深夜だったんでマイナーですけど、例えば不倫の歴史とかファミコンの歴史とか、教科書に載らない日陰のような歴史を平安時代ぐらいまで振り返っていくような番組をやっていました。

高須:そこからいろいろな番組を当て出して、みんなから評価されてくるじゃない? 評価されたことで自分の考えとか演出方法が変わったことはあったの?

高橋:一切ないですね。ぼくはひたすら編集しているほうだったんで。

高須:編集好きなほう?

高橋:編集好きでしたね。

高須:編集いいよね。素材から見直していいのがあった瞬間に、宝探ししているみたいになるから。なんかパズル解いたみたいな感じになるよね。

高橋:なります、なります。編集とか素材から見ることもあるんですか?

高須:全然あるよ。この年になっても。自分のせいになっちゃうから。

高橋:自分で生み出した企画だから、編集が悪いと自分がスベってるみたいになりますよね。

高須:そうなの。だからどうしても時間がかかってくるんだよね。プロデューサーになってからも編集はやってたの?

高橋:ぼくはずっとプロデューサー兼演出でしたね。演出やりながら編集もしていました。

高須:やっぱりそういうのが好きなんだね。自分で編集もできるってことは、パッケージを作るのがうまかったんやね。

高橋:うまいっていうか好きだからやっていたんですけど、会社的には迷惑だったと思いますね。深夜2時の番組とかも本気で編集しちゃうから時間のコスパが悪いんですよね。

高須:確かに、割り切れたらこんなに楽な商売はないけど、割り切れんかったらこんなに時間のもったいない商売もないよね。

高橋:時給換算するとやばいじゃないですか。そういう意味では金銭的に報われる仕事なのかって疑問はちょっとありますよね。楽しいですけど。

追い込まれたときほど、アイデアがひらめく。ストレスは発明の母

高須:楽しいよ。だからやっぱり迷うのよね。ぼくも、もう40年弱ずっとテレビに関わっていると、「楽しいけど、こんな大変なことまだやるか?」って迷うこともあって。

高橋:60歳になるんですよね?

高須:そうなのよ。今年ね。

高橋:でも夜中まで働いているんですよね?

高須:全然夜中に働いてるよ。

高橋:結構体に悪いですからね。

高須:めっちゃ悪いよ。だから日々できるだけ栄養を取り。

高橋・高須:(笑)

高須:しっかり寝て、常にストレスをためないようにはするけど。

高橋:どうやってストレスためないようにしているんですか?

高須:編集中に素材が見当たらなくて「あれ? これ全然あかんやん。面白くならへんやん」ってなったときに「これをなんとか面白くせなあかん」って考えると意外とアイデアが浮かぶのよ。しょうがなく。

高橋:難しいときほど。

高須:そう。難しいお題を投げられたときほど。パズルのピースがちゃんとはまった感じがして、それがまた心地よかったりする。素材が足りなくてちょっと怒っている中でも「どう編集しよう」と思うとすごいうれしくなってくる。

高橋:めっちゃポジティブですね。

高須:すっごいテンション上がんねん。怒ってんねんで、最初は。半分怒りながら考えているけど、「あ!」と思い付くともうテンションが上がってる。

高橋:でも思い付かないときもあるわけですよね?

高須:あるよ。そしたらめっちゃ怒ってるから。

高橋・高須:(笑)

高橋:ブチギレたまま帰るわけですね(笑)。

高須:そう。でも傷口を最小限に抑えるために、どうごまかしていくか考えるしかないから。問題点がないと新しいものを生み出そうなんてあまり思えへんもんね。

高橋:確かに。そうだよな。発明の母ですね。

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想像と現実は違う。リアルな顔を狙うから撮れた予測できない面白さ

高須:演出ってなんとなく型があるとぼくは思っているんだけど、どういう番組が得意?

高橋:ドキュメンタリーっぽいのが得意でした。

高須:リアルな顔を見せる?

高橋:そういう感じです。タレントでも一般の方でもいいんですけど、その人の本音を引き出していい話風にまとめていくのが得意ですね。

高須:ぼくもリアルな顔を撮るのが好きで、昔大阪の番組で『豪快!御影屋』っていう、ほとんど素人さんのドキュメンタリーみたいな番組をやってたの。その番組で東京駅にカメラを入れてシンデレラエクスプレスを撮った企画がよかったんだよね。

高橋:なんですか? シンデレラエクスプレスって。

高須:東京と大阪で遠距離恋愛している人は最終電車で帰らなくちゃいけないから、その最終電車が“シンデレラエクスプレス”って言われてたの。

高橋:なるほど。

高須:日曜日の最終の新幹線の3つ前ぐらいから、新幹線のドア越しにいろいろなカップルが別れを告げて、彼氏や彼女が大阪に帰る。東京駅にそういうシーンがたくさんあったの。それで俺、“追い越し”っていう企画を思い付いて。

高橋:まさか?

高須:まさかやけど、「この新幹線追い越されへんかな」と思ったのよ。で、駅で別れた彼氏か彼女が大阪で待ってたらびっくりするやろうなあっていう企画を考えたのね。

高橋:すごいなそれ。

高須:彼女が乗った新幹線がスーッと走って行ったところで彼氏のところにカメラが寄って、「帰っちゃいましたね」「そうなんですよ」なんてインタビューして。そこから「今からなんですけど、彼女追い越しません?」って提案したの。「ヘリを用意してるんで追い越しませんか?」って。

高橋:すげぇ(笑)。

高須:最初は断られたけど「彼女をドッキリにかける機会なんてもうないよ?」って言ったら彼氏も納得してやる気になって。そのままバイクの後ろに彼氏を乗っけて新木場まで走って、新木場でヘリコプターに乗せて大阪まで飛ばして行って。

高橋:追い抜けるんですか?

高須:普通なら全然追い抜ける。でもそのときはヘリポートから駅までの間で事故渋滞になって間に合わないと。もう新幹線見えてんのよ。「あと何分で来る? もう見えてる! あー!」…ってダメになって。

高橋:すげー…。

高須:でも彼女が降りる地下鉄の駅で待つことになったんだよね。待っている間に彼氏に彼女への思いを聞いたら、結婚したいと思っていると。それを聞いて「彼女をびっくりさせた勢いで告白しちゃったらいいじゃん!」って盛り上がって。彼氏も「そうですね!」って盛り上がったまま駅の前で待っていたら彼女が来て。

高橋:来たんだ。

高須:そこでバッと彼氏が前に出たら、彼女が「ギャーーッ!」って。

高橋・高須:(笑)

高須:俺らも「えーーっ!」って(笑)。全然喜んでへんやんみたいな。

高橋:まあ引きますよね(笑)。軽く気持ち悪かったんですかね?

高須:彼女はずっと「なんで? なんで?」って戸惑ってて。でも男は感動に浸ってるんだよね。彼だけは告白する気分だけど、彼女からしたらなんで彼が大阪にいるのかっていう疑問がずっと取れへんから「へえ〜(笑)」みたいな反応で。まったくもって気持ちが合っていなかったの。

ぼくらは彼女も驚いた瞬間に、ほろりとくるだろうなと思っていたけど、そうかと。男はそのつもりでずっとしゃべっているから感動するかもしれんけど、女はまったく感動しないんだなと思って。

高橋:よくよく考えたら、女の子は新幹線に乗った瞬間に「ああ、これでようやく家ですっぴんになって寝られるわ」と思っていたかもしれないですね。なんで来たんだこいつってね。

高橋・高須:(笑)

高須:そうなの。だから頭の中で考えることと、現場で起こることって違うんやなと思って。

高橋:でもそれリアルでめっちゃいいですね。女の子が引いてるってところがいいですよ。今やったらめっちゃバズりそうじゃないですか? 今そういう枠少なくなっちゃいましたからね。欲しいなあ。

高須:だからそういうの楽しいじゃん。

高橋:そういうのやりたいな。

――次回も高橋さんをゲストに、テレ東退社後のお話や仕事に対する思いなどをお伺いします。お楽しみに!

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