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「今がターニングポイント」玉木一郎が語る日本の音楽業界の未来|ラジオアーカイブ

「今がターニングポイント」玉木一郎が語る日本の音楽業界の未来|ラジオアーカイブ

後編:2023.10.15(日)放送回
玉木 一郎さん
ユニバーサル ミュージック合同会社上席執行役員

ラジオ音源はこちらから

「空想メディア」ロゴ04

放送作家の高須光聖さんがゲストの方と空想し、勝手に企画を提案する『空想メディア』。
社会の第一線で活躍されている多種多様なゲストの「生き方や働き方」「今興味があること」を掘り下げながら「キャリアの転機」にも迫ります。

今回のゲストも前回に引き続き、ユニバーサル ミュージック合同会社上席執行役員の玉木一郎さんです。Spotifyから同じ音楽業界であるユニバーサル ミュージックに転職した玉木さん。その理由は、ある夢を実現するためでした。数多くのアーティストを支える玉木さんが描く夢と、日本の音楽業界の未来図とは? 意外なキャリアの転機も必見です!

  • 玉木 一郎さん

    玉木 一郎(たまき・いちろう) ユニバーサル ミュージック合同会社の上席執行役員。
    『Spotify』の日本での普及に貢献。

  • 高須 光聖さん

    高須 光聖(たかす・みつよし) 放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティーなど多岐にわたって活動。
    中学時代からの友人だったダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。

ストリーミングの登場で多様化したJ-POP。音楽がより身近な時代になってきた

高須:ここからどうなっていくんですか? 音楽業界っていうのは。

玉木:どうなっていくんですかね。ストリーミングサービスが始まって、聴く人がどんな風に変わるのかなと思ったんですけど、実は意外と変わらなくて。自分の体感ですけども、日本で変わったなぁと思ったのはアーティストでした。音楽ってゼロから作るものじゃなくて、誰かの何かに…。

高須:触発されて。

玉木:そう。触発されたり、何かヒントを得て自分のものを作っていくと思うんですよね。知らないものを吸収すればするほど、音楽って幅が広がっていくものじゃないですか。人が持てるCDの数には限界がありますけど、ストリーミングサービスは無尽蔵に音楽があるものですから。ありとあらゆる新しい音楽のテイストを聴いて、それを吸収したアーティストが作品を作り出す。なので、J-POPはこの5年ぐらい、すさまじく幅が広がっていると私は思っているんですよね。この多様性を生み出したのは、きっとストリーミングだと思いたい。

高須:本当にそうだと思います。生活のいろんな局面で音楽がひっついてくる回数が昔より増えていますもんね。

玉木:増えていますね。人生の中に音楽がちょいちょいと顔を出してくるっていうのが、時代感だなと思っていまして。

高須:確かにね。

玉木:コロナから最も大きな変化があったのは、TikTokとかのいわゆるショート動画といわれるような分野。もともとTikTokのようなショート動画の本質って、「みんなにちょっと見てほしい部分」で。その動画の裏側に、必ず音楽が使われるわけですよね。それで人々が音楽に触れる種類が猛烈に増えた感じがします。

高須:なるほど。ああ、それはそうだわなぁ。

玉木:しかもTikTokだと、ある意味全然言葉が関係なくて。例えばインドネシアの人が面白いことをやっていても、映像の力があるので思わず引き込まれるじゃないですか。それで何回か見ていると、なんか音楽も気になってくる。

高須:そうなってきているんですね。

音楽もお笑いも、世界化するターニングポイントが来ている

玉木:藤井風さんが昨年の夏に、タイのTikTokでバズったんですね。それがインドネシアやフィリピンやベトナムに飛び火していって。フィリピンとアメリカや南米は流行が近いところにあるから、今度そこに飛び火している。ヨーロッパにも飛んで、Spotifyで初めて日本人として1,000万人の月間リスナーをつくったアーティストになったんですよね。

高須:すげ。そんなことになるんですね。

玉木:はい。こういう爆発的な変化って、今までなかったなぁと。

高須:飛んでいかないですもんね。

玉木:地球上を楽々と音楽が飛んでいく感じっていうのが、すごい事だなと。

高須:すごいなぁ。だから音楽ってすごいですよね。バラエティやお笑いは基本飛ばないんですよ。スタイルを変えないで世界に飛んでいくっていうのは、「可能性あるなぁ、音楽って」と思いながら。

玉木:お笑いってものすごく文化への理解を必要とするじゃないですか。

高須:そうなんですよ。ほぼほぼ、根付いているそこの文化の上に成り立っているので。あと気分も違うんですよ。お笑いって今の状態で話さないと、同じ話でも昨日と今日とではウケるウケないが大違いみたいな。

玉木:生モノなんですねぇ。

高須:そうなんですよ。

玉木:でもひょっとすると、いよいよ日本文化の土台を理解して、お笑いの今を理解しようとする人が世界中に生まれ始めているような気がしていて。それは自分が今「(日本の)音楽は世界化するはずだ。やらなきゃいけない」っていうものを強く思っているという理由でもあるんですけど。なぜなら、かつて日本の音楽は理解されなかった。だけどJ-POPがものすごく多様化されて、(多様化した)日本の文化そのものを理解する人もどんどん増えてきた。そんな中で例えばVTuberとかそういう人たちは、世界中にファンがいるわけですよね。日本の文化をいろんな形で理解している(海外の)人たちが、率先してそれを自国内に広めてくれる土壌ができたなぁと。そうすると日本の音楽が本当に世界に行くぞという思いがあるんです。高須さんの話を伺って、(お笑いも)いよいよ。

高須:いよいよですか? 本当に?

玉木:いよいよ。高須さんにぜひお笑いの世界化っていうものを、音楽とともに。

高須:できるんですかね、そんなこと。できたらやりたいですけどね。

玉木:やるしかないんじゃないかと。ひょっとすると、音楽もお笑いもここがちょっと…。

高須:世界を変えるポイントかもしれないですよね。

玉木:そう。なんかここがターニングポイントになるような気がして。

高須:うわぁ、なんか心強い。

玉木:なんかちょっとワクワクしてきますよね。

玉木一郎さんのキャリアの転機|仕事を辞めて専業主夫に。修行のような育児の中で変わった意識

高須:あなたのキャリアの転機を教えてくださいというコーナーがあるんですけども。

玉木:実は一番の転機は、専業主夫になったことなんですよ。

高須:え?

玉木:あるとき、一男一女の双子を授かりまして。当時は200人ぐらいの組織のリーダーをやっていたもんですから、仕事がものすごく忙しかったんですよね。朝から深夜まで仕事をして、家に帰ってくると、奥さんがもうぐったりとしていて。

高須:本当に大変ですからねぇ。

玉木:2人なので、もう24時間一睡もできないみたいな状態が続いて。「これはなんとかせないかん」といろいろ考えて、「家族が自分を必要とするときには、自分を投げ捨てるしかない」と。20年ぐらい前の話なので、イクメンみたいな言葉もないわけですよね。

高須:うわぁ。それはそうですよね。

玉木:それで「これはもうやるしかない」と思って会社を辞めて。

高須:ええ?

玉木:毎日おむつ・着替え・食事・散歩みたいなのをひたすらやるっていう。

高須:どれぐらいやられたんですか?

玉木:1年半ぐらいやっていまして。ただ、そこだけ言うとすごいカッコイイ話なんですけど、実際は始めてみたら、「俺は家族のために大事な仕事を辞めた」みたいな気持ちになっているわけです。でも奥さんからしたら、いつまで経ってもお手伝いさんみたいな態度で当事者意識がないと。「お前当事者意識あんのか!」と怒鳴られまして。

高須:(笑)

玉木:でも3カ月もするうちに「俺はヤンエグ(ヤング・エグゼクティブ)だ」みたいに肩肘をはっていたのがなくなって、ただの一人の人間に戻るわけです。そうしたらようやく子どもと自然に向き合えるようになって。毎日が単調じゃないですか。おむつをひたすら替え続けるって。だから専業主夫期間が終わった後に「おむつを千枚替えてこそ見える世界がある」みたいなことをよく人に自慢したんですけど(笑)。

高須:(笑)

玉木:ていねいに、ていねいに、それをやり続けて。そのおかげでいろんなことが勉強になって。家族のためにやろうと思って始めたことだったんですけど、終わってみたらなんて(良い)人生修行だったんだろうっていう。

高須:本当ですよね。いや、分かるなぁ。

玉木:実は後日談があってですね。1年半が近づいたころに、もうこれはそろそろやばいと。「これ以上主夫だと、誰も雇ってくれないかもな」みたいな。

高須:しばらく前線から遠ざかっているから(笑)。

玉木:そうそう(笑)。だからいよいよ就職活動を始めるわけですよ。役員の方とか社長の方と面接するわけですが、その方たちってもう子育てを終えた方たちなんですよ。で、「玉木さんは何をやられてるんですか?」「主夫です」みたいな話をするわけです。すると「玉木さん、私には2人の娘がいます」と。「2人とも成人していますが、もう私には一言も口を利いてくれません」と。

高須:なるほど(笑)。

玉木:「もし私が20何年前、玉木さんと同じ決断ができていたら…」みたいな懺悔が始まるんですよ。

高須:もうある程度の年齢の方なんで。

玉木:そう。子育てが終わって、結果を知っている方なんですよ。おかげで行く先々から採用されて。

高須:(笑)。逆に良かったってことですね。

仕事のマイルール|あえてまったく分からない世界に飛び込む。追い込まれるからこそ得られる成長がある

高須:マイルールを教えていただきたいなと思うんですけど。

玉木:社会人になって、自分の知識経験や人脈が活きるような転職はしないって決めたんですよ。

高須:へぇー。じゃあまったく新しいところにどんどんいく。

玉木:はい。そういう意味では、今回人生で初めて同じ音楽業界に移った。それはあまりにも音楽が好きだからっていうのがあるんですけど。実はそれまでは、業種と職種を一気に変える転職をひたすら繰り返してきたという。

高須:ええー! 不安じゃないんですか?

玉木:ほっといても勉強とかができる人間ではなくて、追い詰められないと変われないタイプなものですから。そうすると、自分でそういう環境をつくるしかないと。何か自分の今まで培ってきたことが活かせるとなった瞬間に、多分楽をしようとするだろうって自分で分かるんです。

高須:分かります。ぼくもそうです。

玉木:そうなりたくないなぁと。何も自分の経験が活きなければ、とにかく転職先で人に頭を下げながら学んでいくしかない。でもそれをやっていけば、きっと自分が苦手なことができるようになる。まったく新しいことを自分で一からやるしかないと思って。実はある時期、会社を辞めてスタートアップを立ち上げたこともあって。

高須:それもやってそうな気はしました。

玉木:ドイツに行ったり、ドイツの会社に勤めたり、IT企業に転職したり、子育てやったりっていうのは、それぞれが自分の中では十分に新しい刺激とチャレンジになっていて。だから子育てしたことの反動かもしれないんですけど、子育て後に「よし起業だ」みたいな気持ちになって。40歳になってから、いい歳して。

高須:いや分かりますよ。全然いい歳してじゃないと思いますけど。

玉木:そこからまったくやったことない業種でやってしまったもんですから、まあ辛酸をなめるんですけど。

高須・玉木:(笑)

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世界的アーティストを見出し、支えたい。時代に並走すべく、常に新しいことに挑む

高須:今はユニバーサル ミュージックでガツガツやっていこうっていう感じなんですか?

玉木:ユニバーサル ミュージックに来た最大の理由は、「アーティストに近いところで、アーティストの成功の役に立ちたい」ということで。それが自分の非常に大きな目標になってしまったんですね。

高須:へぇー。

玉木:ユニバーサル ミュージックに来てみると、あまたのアーティストの方がいて、それぞれがいろんな課題や夢を持っていて。世界に行くということに関しても、かつて野茂英雄が道を切り開いたように、本当の意味で道を切り拓けるアーティストが、日本から近いうちに間違いなく出てくるという実感があるんですよね。

高須:なるほどね。

玉木:これをいっしょに実現して、「俺はその裏側で、世界のアーティストになるのを支えたんだ」みたいな。

高須:見たいんですよね。

玉木:そうなるアーティストを見たいんです。アーティストの成功を見て、自分が支えたっていう気持ちになりたい。これがものすごい大きな動機に今なっていまして。それを見極めないと次に進めないんですよ。

高須:次に進めない(笑)。

高須・玉木:(笑)

高須:そりゃそうですよね。

玉木:これは何がなんでも今やらなあかんと。だから高須さんがお笑いを世界化されると同時に私も。

高須:いやいや、そんな。でも少しでもいっしょにできるようなことがあれば、ぜひぜひお願いします。

玉木:ぜひです。実は原宿の竹下通りのど真ん中に、新しく世界で初めてユニバーサル ミュージックのコンセプトストアを作りまして。

高須:竹下通りに? ええー!

玉木:いろんなアーティストと、ファンの皆さんをつなぐ体験の場所みたいにして、グッズ販売もしつつ、展示会みたいなこともしつつ。ファンの方が自分でカスタマイズしたメッセージを送れるサービスとか、そんなことをやろうかなと思って。

高須:なんかあまり今までの音楽業界でやってこなかったような仕掛けですよね。そういうことを考えるのが大好きな感じですか?

玉木:それをみんなで形にして、良いものにしていくのが楽しいなっていう。

高須:あるものをやっても楽しくないですからね。やっぱり新しいものがないと面白くないですもんね。

玉木:そうですね。なんか同じことをやっていると後ろに進んでいる感じがして。常に新しいことをやって、ようやく時代といっしょになるみたいな。

高須:いや、ありがとうございました。

――玉木さんの世界を見据えた夢のお話、いかがでしたか? 次回のゲストは島田珠代さんです。お楽しみに!

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