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二人三脚で世界と渡り合う。TIDEの人生を変えた運命の出会い|ラジオアーカイブ

二人三脚で世界と渡り合う。TIDEの人生を変えた運命の出会い|ラジオアーカイブ

後編:2024.2.4(日)放送回
TIDEさん
アーティスト

ラジオ音源はこちらから

「空想メディア」ロゴ04

放送作家の高須光聖さんがゲストの方と空想し、勝手に企画を提案する『空想メディア』。
社会の第一線で活躍されている多種多様なゲストの「生き方や働き方」「今興味があること」を掘り下げながら「キャリアの転機」にも迫ります。

今回のゲストは前回に引き続きアーティストのTIDEさんと、TIDEさんが所属するギャラリー「HENKYO」のオーナー サカグチコウヘイさんです。サカグチさんとの出会いから人生が大きく変わったというTIDEさん。二人三脚で世界と渡り合うおふたりの運命の出会いと、ちょっと特殊な関係性をご覧ください。

  • TIDE(タイド)

    TIDE(タイド) モノクロームで描かれる独自の世界観で、国内外で高い評価を受けるアーティスト。
    代表作は猫をモチーフにしたキャラクターが描かれた『CAT(キャット)』シリーズ。

  • サカグチ コウヘイ

    サカグチ コウヘイ 渋谷区にあるギャラリー「HENKYO」のオーナー。
    TIDEなど国内外で注目されるアーティストのマネジメントを行う。

  • 高須 光聖さん

    高須 光聖(たかす・みつよし) 放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティーなど多岐にわたって活動。
    中学時代からの友人だったダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。

偶然が重なった巡り合わせ。サカグチさんとの運命の出会い

高須:サカグチさんがTIDEさんの絵に「おっ」と思ったのは何年前で、どういうところにですか?

サカグチ:本当に出会う直前なんですけど。2018年か2019年。

TIDE:アクリル画を始めて…。

サカグチ:最初の個展。

高須:たまたま行ったんですか?

サカグチ:はい。大阪の洋服屋さんの地下にある展示スペースみたいな所で個展をやっていたんですけど。それをSNSか何かで本当にたまたま見つけて、なんとなく気になって。

高須:へぇー。

サカグチ:嫁さんに買う前提で「これめっちゃいいんやけど、ちょっと見に行けへん? 大阪やし、あそこでご飯食べようや」って言って。

高須・TIDE:(笑)

サカグチ:事後報告で「作品買いました」って言ったら怒られそうだから、「いっしょに行こうや」って見に行って。やっぱり自分の中でしっくりきた何かがあって、作品を3枚買って。

高須:えっ? 3枚も買ったんですか?

TIDE:サカグチさんが帰られた後、ギャラリーの方からぼくの所に電話があって。「いでくん(※)、すごいよ。今、一気に5枚も売れたよ」って(笑)。

(※)TIDEさんは以前「いでたつひろ/IDETATSUHIRO」名義で活動していた。

サカグチ:その5枚のうちの2枚っていうのは、ぼくが3枚買ったときに近くにいた若い女性が買ったもので。ぼくが横で「これと、これと、これもください」って言うもんやから、「え…、私も買おうかな。でもこっちとこっち迷うな」って言っているのが聞こえてきて。「こういうのは出会いやから、ほんまにいいと思ったら両方買っても値段的に絶対後悔しないと思うよ」って、そこにいた知らない女性に言って(笑)。

高須:すごっ! すごいねー!

TIDE・サカグチ:(笑)

サカグチ:それで5枚が同時に売れたんです。

高須:出会いやね。本当に巡り合わせというか。

TIDE:はい。

高須:その3枚買いました。それで?

サカグチ:個展から岡山の自宅に戻る途中で、中目黒でわりとアートの展示企画もしている洋服屋の友達 に「こういうアーティストの展覧会に行ったんだけど、めっちゃ良かったからチェックしてみれば?」って連絡したんですよ。そうしたら「えっ? この人明日会うよ」って。

高須:えっ? 偶然?

サカグチ:はい。

高須:なんでまた?

サカグチ:そこで展示が決まってて、その打ち合わせだったんですよ。

高須:ええー。偶然やね。すご! 点と点があって線になって。えらい巡り合わせと思うよね。

サカグチ:はい。絵を買った人がギャラリーをやっているって言ったらちょっと変に思うから、「ぼくのことを(TIDEさんに)言うな」ってその友人に言ったんですけど…。

高須:言ったんだ。

サカグチ:でも結果、共通の知り合いが間にいたことで、「じゃあ何か企画できるか話しませんか? 会いましょう」っていう連絡をしたんですよ。それが出会いです。

売れる流れを作った『CAT』初登場の展示会

高須:何がきっかけで急に絵がフィーチャーされるようになったんですか?

TIDE:絵自体が売れ始めたのは本当にその大阪の展示。今までとは違う枚数が売れたので、アクリル画に転向してからその流れは来たなっていう。

高須:そうか。じゃあ大阪でサカグチさんが買ったときから流れがぶわっと変わったんやね。

TIDE:もう肌感でそれは感じていましたね。売れるということに関しては。

高須:すごいね。で、いろんな人が見に来てくれるようになったと。

TIDE:はい。

サカグチ:その中で著名な方々がそれぞれ評価してくださったっていうのも相まって、時代の機運ももちろんありましたけどね。

高須:それすごいね。いい状況がいっしょになってワッと来たんだ。

TIDE:ね。なんでなんですかね。ああいうのって。

高須:やっぱり人生がぐっと変わるときって、不思議と自分の力だけで動かない、時代がバッと押し上げるときはあるから。ピタッといろんなものがそこで合ったんじゃないですか? たぶん一気に時代が動いたんやろうね。

TIDE:タイミングってすごいなと思いましたね。

高須:あの『CAT』が生まれたのはどこからなんですか?

TIDE:その大阪の個展で初めて猫を1枚描いて。

高須:ご自身の耳にも入ってくるわけじゃないですか。「売れたよ」とか「こんな人が買っていったよ」って。それはどうでした?

TIDE:単純にうれしかったですね。そのときも描くのが楽しかったので。

高須:そこからいろんな人が買ってくれてまた値段が上がり、海外からも欲しいっていう人が来る。これ、どういうふうになっていっちゃうんですか?

TIDE:もう落ち着いているんじゃないですか(笑)?

高須:落ち着いているって言いながらも、すごい額で取引されてるじゃないですか。この間なんか…いくらでしたっけ?

サカグチ:落札価格が5,060万っていうやつですよね?

高須:ね。あれもすごいですよね。

TIDE:あれはオークションなんですよ。だからぼくには金銭的には全然関係なくて。

高須:でも世の中はそうやってTIDEさんの作品が欲しいっていう人が増えているわけじゃないですか。海外で個展とかもされて。それってどうなんですか?

TIDE:広く認知されたのはあれが一つのきっかけだったって今は思いますけどね。そのときは結構静観していたというか、「そんなにお金を払う酔狂な人がいるんだな」ぐらいな感じで(笑)。ぼくはなんか離れたとこから見てる感じだったんです。

同じ目標に向かう相棒。オーナーとアーティストを超えた特殊な関係

高須:ギャラリーとアーティストって、どういう関係なんですか?

TIDE:ぼくたちは特殊かもしれない。

サカグチ:だいぶ特殊だと思います。もともとは自分が面白いなと思う作家に声をかけて展示をしてもらうスタイルでやっていたんですけど、彼との出会いをきっかけにプライマリーという所属アーティストをマネジメントしていく方針に切り替えて、「HENKYO」っていうギャラリーを造ったんです。

高須:じゃあもうファミリーみたいなもんだよね、ある種。

サカグチ:関係としてはファミリーだと思うんですけど、ぼくとTIDEっていうのはやっぱり特殊で。0→1にするのをいっしょに考えたり。

高須:へぇー、じゃあいっしょにアイデアも出したりとか。

サカグチ:絵に関しては基本的にアーティストをリスペクトしていますけど、「業界でこういうことがありました」とか「次の企画どうしようか」とか、結構ざっくばらんに。本当に普段からよく会って、たくさん話をして。

高須:それがいちばんやね。

TIDE:そうですね。作品に関してはぼく、全然人の言うことを聞かないで好き勝手に描いているだけなので。

高須:じゃあ方向性も決めず、自分の中で思い付いたものをどんどん作品にしていくって感じですか?

TIDE:そうですね。打ち合わせみたいなこともあるんですけど、言うことを聞かないというか。

高須・TIDE:(笑)

高須:でもそれはそれでいいんですよ。たぶんそこで曲げて描くよりは、やっぱり自分で描きたいものを描いているほうがパワーが宿るからね。

TIDE:本当そうですね。もともと自分のために描き始めた絵なので、それを曲げたらおかしなことになっちゃうので。

高須:ね。そこはまあ、プロデュースをする方がうまいことこう…ね。

TIDE・サカグチ:(笑)

サカグチ:でも「これ描け」「絶対嫌だ」みたいな関係ではないですよ?

高須:もちろん、もちろん。「2024年はこんなことをやっていこう」とか話し合ったりするんですか?

TIDE:そんなに具体的じゃないですけど、最終的には美術館に作品が所蔵されるとか、美術館で個展ができることを今のところ目標にしていて、そこに行くにはどういうプロセスを経たらいいのかっていうところですね。

高須:そうやね。戦略的に考えていかなくちゃいけないところが1個出来上がってくるもんね、この先はね。

TIDE:かといって作戦どおりにいくわけでもないですし。

高須:でも逆にそれを超えていく可能性もあるから、分かんないですよね。下回る可能性もあるかもしれんけど、もっと大きく上回る可能性もあるから作品って不思議ですよね。

TIDE:本当そうですね。それを考えて描くことはほとんどないですけど、本当にタイミングと流れ次第っていうのも重々承知しているので。

仕事のマイルール|無理はしない。芸術家であり続けるため踏み出した新たなステップ

高須:どこかでもう一つ違う所に行くときには、作風って変わっていくもんなんですか? それとも、作風が勝手に動き出すものなのか。どういう意識で見ているんですか? この先の大きな突破っていうのは。

TIDE:まさに今、新しく『1984』って個展をやっていたんですけど、それは本当に今まで皆さんが知っているような『CAT』とは全然違うものを出したんですね。なんでそれになったのかは、自分でもまだちょっと答えが出ていないんですけど。でも、今までと同じことをやっていてもダメだと思ったんですよね。

高須:そうだね。進まないと。紆余曲折あれど自分が進まないと、ずっと同じ所を回っているだけになっちゃうもんね。

TIDE:そうなんですよ。だから前のものも描こうと思えば描けるんですけど、でも作家を続けていくために、今はこれを。

高須:描かなくちゃいけないみたいなね。

TIDE:そうなんですよ。それでもういろんなことを振り切って、そういうものを押し出したっていう。

高須:なるほど。サカグチさんも同じような感覚で?

サカグチ:正直、びっくりしたんです。なぜなら去年の1月にニューヨークの知名度があるギャラリーでショーをやらせてもらって。大作がどーんと並んで。そうそうたる方々に買っていただいて、大成功させて戻って。「さあ、次どうしようか」っていう一区切り。第2章があるとするなら、第1章の最後がニューヨークだったと思うんです。そのニューヨークを経て、国内では2 年ぶりのショー。期待してくださっている方々がいる中で。

高須:全然違ってるから、みんなびっくりするよね。

サカグチ:最初はぼくも「あ、これ来たか」って思ったんですけど。でも、どこかのタイミングで絶対に必要なプロセスだと思ったんです。

高須:なるほど。

サカグチ:それはやっぱり芸術家なんで。同じことをずっと続けて、需要に応えるためのクライアントワークとして作品を描き続けていくと、いつの間にか芸術から作業に変わっていって、何も感動しない、誰も心が動かないものになっていく。まあ、大げさに言うとですけど。

高須:いや、分かりますよ。ものすごく分かります。

サカグチ:そうなっていくのはやっぱりね、長いスパンで考えたときには良くないんで。ぼくは芸術家だと思って接していますし、美術館で個展を開いたり所蔵してもらったりするような流れに持っていくためにも。『CAT』というキャラクターが独り歩きしていた部分もあるので、相反するまったく違うアプローチをどこかのタイミングで発表したいと思っていたんですけど。「今か」っていう(笑)。

高須:(笑)

TIDE:早過ぎたっていうね。

高須:でもいや、たぶん合ってるんやと思うよ。だってそう感じたんやもんね?

TIDE:そうなんですよ。

高須:てことなんですよ。たぶん。仕事のマイルールみたいなものがもしもおありになるなら、どういうマイルールがありますか。

TIDE:マイルール。まあ、無理はしないということですかね。

高須・TIDE:(笑)

高須:結構無理しているように見えるけど、無理はしてないんですね、全然。

TIDE:無理はしてないですね。本当マイペースにやらせてもらってるんで。作品描くにしても、仕事の一日の過ごし方にしても。

高須:じゃあ無理しないというマイルールなんですね。

TIDE:ですね。

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TIDEさんのキャリアの転機|作風を変えたわが子の誕生。人生を変えたパートナーとの出会い

高須:人生の中で、考えてみたらそこが一番の転機かなっていう転機ってどこですか?

TIDE: 作品を描く上では子どもが生まれたところ。いろんな人に見てもらえるようになったのは、やっぱりサカグチさんと会ってから。

高須:じゃあ二つだね。

TIDE:そうですね。

高須:今サカグチさんが、「ええぞ」っていう感じで手をクッてやって。

高須・サカグチ:(笑)

TIDE:2018年、2019年。そこですね。

高須:それはいい出会いで良かったよね。そういう人がいてないと、ひょっとしたらグルグル同じとこ回って、なかなか前に出られてなかったかもしれへんもんね。

TIDE:そうですね。本当にそう思います。

高須:出会いやんねぇ。出会いは不思議だなぁ。

サカグチ:ぼくもそうです。彼と出会ったのが、人生の(転機)。

高須:どっちもが新しい人生を歩む上で必要なパートナーやったんですね。

――TIDEさんとサカグチさん。互いの人生を変えた運命の出会いのお話、いかがでしたか?

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