てんかんがある方の仕事上の悩みと就活時のポイント

てんかんのある方を支援するイメージ写真

てんかんとは、「てんかん発作」と呼ばれる症状が突然現れては落ち着くということを繰り返す、脳の慢性疾患です。てんかんがある方の中には、業務中や通勤中のてんかん発作を懸念して、転職や就職に踏み出せないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、てんかんのある方が仕事の上で抱えがちなお悩みや、就職・転職を考える際に意識したいポイントについてご紹介します。

てんかんとは?症状や発作の種類をおさらい

まずは「てんかん」の詳しい症状や、てんかんの種類についておさらいしていきましょう。てんかんとひと口に言っても、症状や種類によって特徴が異なります。

てんかんとは

てんかんとは、脳の一部の神経細胞が一時的に異常な電気活動を起こすことで発症する「てんかん発作」を特徴とする慢性疾患です。
てんかんを大きく分類すると、明らかな原因がある「症候性てんかん」と、原因が不明な「特発性てんかん」の2つに分けられます。現在、てんかんのある方の割合は1,000人に5人~8人であり、日本全体で60万~100万人と言われています。
参考: てんかん対策|厚生労働省

てんかんは、どなたでもかかる可能性のある病気で、乳幼児から高齢者まで、年齢・性別に関係なく発症します。てんかんの影響で日常生活に支障が出ている場合は、精神障害と診断さます。また、知的障害や発達障害とてんかんが併存しているケースも少なくありません。

てんかんの症状・種類

てんかんは、症状の起こり方や特徴によっていくつかの種類に分けられます。

部分発作
脳の一部分が興奮することによって、以下のような症状が起こります。

単純部分発作 意識があるまま手足や首のしびれなど、体の一部分に起こる発作
複雑部分発作 無意味な動作や全身の大きな動きが、意識障害をともなって起こる発作
二次性全般化発作 単純部分発作や複雑部分発作を発端とし、全身のけいれんを起こしてしまう発作

全般発作
脳の広い範囲の興奮によって以下の症状が起こり、ミオクロニー発作以外は意識障害をともないます。

強直間代発作 予期せず突然全身がけいれんを起こしてしまう、意識を失ったり呼吸が止まったりすることがある
欠伸発作 突然5~20秒ほどの間動作を止めたり、話や反応ができなくなったり、ぼーっとしたりする発作が起こる、主に小児期に発症
ミオクロニー発作 寝起きによく起こる、全身や手足に突然びくっとけいれんが起こる発作
脱力発作 突然全身に力が入らなくなり、転んでしまったり倒れてしまったりする発作

てんかんのある方の仕事や職場に関する悩み

オフィスで仕事をする人

てんかんのある方にとって、予期せず突然起こってしまう発作は不安なものでしょう。ここでは、てんかんのある方が仕事上で困ることやお悩みについてまとめましょう。

いつどのタイミングで発作が起こるか不安

てんかん発作はいつ起こるか分かりません。頭痛や集中力の低下などの前兆などに気が付くことができないケースも多いためです。
仕事で大事な作業をしているときや、誰かと大事な話をしているときに発作が起こってしまうことには、てんかんのある方ならどなたでも不安を感じるのではないでしょうか。

職場の人間関係に影響しないか

突然の体調不良や通院で急な休みが必要になったり、てんかん発作が起きたときに迷惑をかけてしまったりすることを申し訳ないと気に病む方も多いです。このようなことが影響して、人間関係を悪くしないか心配になることもあるでしょう。

障害への理解、業務上の配慮を伝えにくい

てんかんの症状は多岐にわたり、口では説明しにくい部分もあることから、てんかんの症状やお悩みを職場にうまく伝えられず困るケースも想定できます。

過度なストレスで症状が悪化しないか

仕事に関する悩みや、てんかんの悩み・不安が大きくなりすぎて強いストレスとなると、症状が悪化する恐れがあります。このようなこともまた、不安の種となる可能性があります。

仕事を続けられるか分からない

これまで述べたような困りごとが増えたり大きくなったりすると、ご自身の仕事自体が続かなくなるのではという不安にもつながるでしょう。

てんかんのために上記のようなお悩みや困りごとを仕事で抱えている方は、数多くいらっしゃるかと思います。しかし、てんかん発作は基本的に一過性のため、発作が収まれば元通りの状態に回復できる病気でもあります。
また、多くの方は抗てんかん薬の正しい服用によって社会生活を支障なく送ることが可能です。
てんかんが仕事の支障にならないよう、症状を考慮した仕事を選んだり、てんかんのある方を支援する機関に相談したりすることで、てんかんがあっても安定してはたらくことが可能です。過剰に制限したりせず、てんかんと付き合いながらはたらくために、向いている仕事をじっくり探していきましょう。

てんかんのある方がはたらき続けるためのポイント

てんかんのある方が症状を抑えながらはたらくためには、どのような点に気を配る必要があるのでしょうか。ここでは、てんかんのある方が安定してはたらき続けるためのポイントをご紹介します。

日常生活のリズムを整える

まずは日常生活の基本とも言える衣食住に配慮し、正しい生活リズムを身につけましょう。体調の安定が、就労の安定にとっても何より大切です。

定期的な通院

問診をする医師

てんかんは、通院して治療を継続することが非常に重要な病気です。仕事をしていても、通院する日や時間はしっかり確保して、治療を受け続けることを最優先してください。

自分の症状について把握する

てんかんは予期できない発作が起こることも多い病気ですが、発作の前兆や発作が起きやすい時間帯・状況、発作の原因や対処方法などがある程度分かるようであれば把握しておきましょう。メモ帳に書いておいたり、ヘルプマークをお持ちならタグに記載しておいたりするのも良い方法です。

自分に向いている仕事を見つける

就職・転職を考えている場合はご自身の症状を考慮し、できる仕事と避けたほうが良い仕事を想定して検討しましょう。通院や発作時のことを考えると、勤務形態や勤務時間の柔軟性がある職場が望ましいです。
また、ご自身のてんかんの症状に対して、職場にどのような協力を求めるべきかも考えて仕事を探すことが重要です。

てんかんのある方が就職・転職活動で重視したいポイント

てんかんのある方が就職・転職活動をする際、何を重視して仕事を探すと良いのでしょうか。ここでは、てんかんのある方が就職・転職活動で注意したいポイントをご紹介します。

障害に理解のある職場かどうかを見極める

ご自身のてんかんをはじめとする障害について、職場に理解があり協力的かどうかは、安定してはたらくためにも重要なポイントです。

てんかんのある方の就労に制限がある仕事もある

てんかんのある方は、法律上取得できない免許や資格があります。取得が難しい資格も念のため把握しておきましょう。例を挙げると航空機乗務や船員、銃砲または刀剣類の所持における許可、狩猟免許などがあります。
また、てんかんの症状の程度によっては制限される業務もあります。身近な所だと車の運転が必要な仕事や高所作業、機械操作を要しミスがあると危険をともなう仕事などです。また、生活が不規則になる可能性のあるシフト制の仕事(夜勤をともなう場合など)も体調が不安定になる可能性が高いため、場合によっては回避したほうが良いでしょう。

転職や休職からの復職は、主治医や職場と相談する

てんかんの症状により一時休職をしていて、転職や元の職場に復職をしたいと考えた場合は、まずは主治医や職場に相談しましょう。定期的な通院や薬物療法により、体調が回復したとご自身で判断されることもあると思いますが、てんかんの原因や症状は人によって異なります。社会復帰の適切な時期を相談し、復職において想定される生活環境の変化などを周囲に共有しておくことが大切です。

てんかんについての職場への説明をどうするか

職場にご自身の症状をどのように伝えるかは、就職・転職活動の段階で考えておきましょう。できるだけ詳しく、漏れがないよう説明できる状態にしておくと安心です。
てんかんの告知にはデメリットもあります。そのため、面接では、規則正しい生活と服薬を欠かさないよう自分で生活を管理できていることや、薬で発作をコントロールできていること、そして自分で発作が起きた場合の対処法を身に付けていることを説明しておくことが必要です。
また、継続的にはたらいていくためには、周囲の人に迷惑をかける可能性は低いと説明したうえで、万が一の発作時の対処法を周知しておいてもらうことも大切です。

てんかんのある方が最適な職場を見つけるには

てんかんのある方が就職活動をする場合は、まずご自身の障害特性をきちんと把握することが大切です。その上で、てんかんがあっても安定してはたらきたいという意思を伝えるようにしましょう。
障害者のための就職・転職エージェントを利用して、仕事を探すことも良い方法です。障害者手帳をお持ちの方のための就職・転職エージェントである、dodaチャレンジもその1つ。障害に関する知識と専門性を備えたキャリアアドバイザーに相談することで、一般の就職情報では見つけにくい適職へのチャンスが開けます。

まとめ

今回は、てんかんのある方の仕事上のお悩みと適職の見つけ方についてご説明しました。てんかんがあっても、周りの人と同じようにはたらける職場は意外に少なくありません。しかしその一方で、てんかん発作の性質上、避けたほうが良い仕事や、法令上禁止されている業務などもあります。
てんかんのある方がはたらくにあたっては、さまざまな支援機関があるため、サポートを得ながらの仕事探しが安心でしょう。dodaチャレンジは、障害のある方のための就職・転職エージェントです。一般求人には掲載されない非公開求人を中心に、てんかんのある方にも適した職場を数多くご紹介しています。就職や転職をお考え中のてんかんのある方は、ぜひdodaチャレンジまでお気軽にお問い合わせください。

公開日:2023/3/1
更新日:2024/3/19
監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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