「てんかん」がある人に向いている仕事とは?就労時の注意点や支援サービスを解説

頭痛のイメージ

「てんかん」は、けいれんや意識喪失が突然起こる疾患です。そのため、「はたらき続けることが不安」「向いている仕事が分からない」などの不安があるのではないでしょうか。てんかんがある方でも、適職を選べば問題なくはたらき続けることが可能です。

そこで本記事では、てんかんのある方の仕事探しのポイントと、利用できる就労・転職サービスについて解説します。

「てんかん」とは

てんかんについて、まずは次のポイントから解説します。

  • けいれんや意識喪失などが繰り返し起こる疾患
  • てんかんの種類と原因
  • てんかんのある方の仕事上の困りごと

けいれんや意識喪失などが繰り返し起こる疾患

「てんかん」とは、脳の神経細胞が過剰に活動し、発作が繰り返し起きる慢性的な疾患です。てんかんの発作が起きると脳内の電気信号が乱れるため、全身のけいれんや意識喪失などが発生します。てんかん自体は基本的に命に関わる疾患ではありませんが、発作は突然起きるため日常生活・社会生活で大きな影響があります。

てんかんの種類と原因

てんかんには、「症候性てんかん」と「特発性てんかん」の2種類があります。症候性てんかんは、ほかの疾患や外傷、例えば脳卒中・脳腫瘍・アルツハイマー病などが原因で起きます。特発性てんかんは、脳に明らかな異常がないにも関わらず発作が生じるタイプです。多くの方は抗てんかん薬の正しい服用によって、社会生活を支障なく送ることが可能です。

てんかんのある方の仕事上の困りごと

てんかんがある人は、仕事をするにあたって次のような「困りごと」やストレスを感じやすい傾向があります。

  • 発作がいつ起こるか不安になる
  • 発作時に周囲に迷惑をかけてしまうことが心配
  • 通院や治療のために仕事を休む必要がある
  • 現職でてんかんの症状との付き合い方が分からない
  • 職場でてんかんへの理解や配慮が受けづらい

現職で抱えている困りごとを洗い出してまとめておくことで、症状への対応や勤務先への配慮の申し入れがしやすくなります。また、自分に合った働き方を探す際にも役立つでしょう。

てんかんがある人に向いている仕事

てんかんがある場合でも就労は可能です。ただし、身体的な負担を軽減したり、万が一発作が出たときに対処したりするために、次のように屋内ではたらける仕事・職種が向いています

  • 一般事務
  • プログラマー
  • Webデザイナー
  • 動画編集者
  • 軽作業

一般事務

「一般事務」は資料作成・データ入力・電話対応など、事務作業全般を担う仕事です。座った状態で行える業務が大半で残業も少ないため、身体的な負担を減らしながらはたらくことができます。また、ノルマに追われないので精神的ストレスも少ないでしょう。

さらにオフィス内ではたらくため、事前に説明しておくことで、万が一発作が起きたときも対応が受けやすいので安心です。

プログラマー

「プログラマー」は、ソフトウェアやアプリなどの機能をプログラミング言語で実装する仕事です。パソコンと向き合ってはたらくため、自動車の運転や肉体労働が必要なく、前述した一般事務と同様に身体的な負担を減らせます。さらに、IT人材の需要は高まり続けているため、キャリアアップの選択肢としてもおすすめです。

Webデザイナー

「Webデザイナー」は、Webサイト・アプリのデザインやコーディングを担う仕事です。プログラマーと同様に身体的負担が少なく、なおかつフリーランスとして独立しやすいため、てんかんの症状と付き合いやすい仕事だといえるでしょう。

動画編集者

「動画編集者」は、映像素材のカットやトリミング、テロップやBGMの追加などを行い、動画を仕上げる仕事です。SNSの普及により、動画配信をする企業や個人が増えたことから、動画編集者の需要が高まっています。デスクワークで完結するため、てんかんがある人でもはたらきやすいことが魅力です。

軽作業

商品の仕分けやピッキングなどの軽作業は、デスクワークではないものの業務内容が単純なので、てんかんの発作リスクを抑えながらはたらきやすい仕事です。専門知識やスキルを求められることが少なく、未経験でもチャレンジしやすいことが魅力です。

てんかんがある人に向いていない仕事

車を運転中の人物のイメージ

てんかんがある人には、次のような仕事・職種は向いていない、もしくは危険を伴うことから制限・禁止されている場合があるため、就職・転職の際は注意が必要です。

  • 自動車の運転が必要な仕事
  • 高所作業や危険を伴う仕事
  • 夜間のシフトを含む仕事

なお、てんかんがある人が航空機搭乗や船員などの業務に携わったり、銃砲・刀剣類の所持許可や狩猟免許などを取得することは、法律で禁止されています。

自動車の運転が必要な仕事

前述したように、てんかんは全身のけいれんや意識喪失などが発生する疾患です。万が一運転中にてんかんの発作が起きると、自動車やバイクが制御不能になるため、自身や周囲に多大な危険が及びます。そのため、タクシー・トラック・バスなどのドライバーはもちろん、配達なども含めて運転する機会がある仕事は避けましょう。

高所作業や危険を伴う仕事

高所作業や危険を伴う仕事は、そもそも身体的・精神的なストレスが大きいため、てんかんの症状が悪化してしまう可能性があります。さらに、転倒や意識消失を伴う発作が起きた場合、重大な怪我や事故につながりかねません。

夜間のシフトを含む仕事

夜間にシフトがある仕事の場合は、生活習慣の乱れにつながり、疲労がてんかんの症状を悪化させるリスクがあります。睡眠不足がてんかんの発作を誘発させる可能性も考えられるため、可能であれば避けるほうがいいでしょう。

てんかんがある人が仕事を探すポイント

てんかんがある人は、仕事を探すときに次のようなポイントを意識しましょう。

  • てんかんの症状を理解しておく
  • 柔軟にはたらきやすい職場を選ぶ
  • 障害者雇用枠の利用を検討する

てんかんの症状を理解しておく

てんかんのある方は、まず自身の症状や対処法を理解したうえでほかの人に説明でき、なおかつ適切に服薬できていれば、基本的に就労に大きな問題はありません。

一般雇用枠でてんかんがあることを周囲に開示してはたらいたり、障害者雇用枠で就労したりする場合は、症状・対処法について企業の担当者に伝えることが大切です。例えば、どんなときに発作が起きやすく、どのような対処をすればいいかなどを明示することで、勤務形態や配置などの合理的な配慮が受けやすくなります。

柔軟にはたらきやすい職場を選ぶ

てんかんの発作を起こさないようにするためには、適切な生活習慣や定期的な通院・服薬などが欠かせません。そのため、症状に合わせて柔軟にはたらくことができ、生活リズムを整えやすいような職場を選ぶことが大切です。例えば、短時間勤務制度やフレックスタイム制など勤務時間の配慮、もしくはテレワークに対応している職場を選ぶことで、無理なくはたらけるようになるでしょう。

障害者雇用枠の利用を検討する

厚生労働省の資料によると、てんかんは症状によって障害者手帳の対象となるため、取得できれば障害者雇用での就職が可能となります。てんかんの性質上、業務に配慮が必要な方は障害者雇用枠を利用するのもひとつの方法です。障害者雇用では合理的配慮が受けられるため、通院や治療などの時間が取りやすく、万が一発作が出たときも周囲のサポートが得やすいことが魅力です。

てんかんがある人が活用できる就労・転職サービス

てんかんがある人も、前述したように向いている仕事やポイントなどを意識することで、自身に合った職場ではたらきやすくなります。その際は、次のような就労・転職サービスを活用してみましょう。

  • ハローワークの障害者向け相談窓口
  • 就労移行支援事業所
  • 障害者向けの転職エージェント

ハローワークの障害者向け相談窓口

全国のハローワークの障害者向け窓口は、障害者手帳の有無を問わず利用できます。障害者雇用に関する専門知識がある担当者が対応してくれるため、症状や適性に合う求人の紹介が受けられます。また履歴書作成や面接対策など、転職活動に必要なサポートが受けられるため、スムーズに転職手続きを進められるでしょう。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、はたらくための知識やスキルの習得に加えて、就職・転職活動のサポートや復職支援を求職者に提供している機関です。就職・転職後も定着支援として、困りごとや悩みの相談ができるので、てんかんの症状と仕事の付き合い方に悩む方も安心して利用できます。

就労移行支援事業所では求人の紹介は行っていないため、転職活動はご自身で行う必要があります。通所を希望する場合は、まず気になる就労移行支援事業所に問い合わせし、見学してみてください。

障害者向けの転職エージェント

てんかんで障害者手帳を取得している方は、「障害者向けの転職エージェント」も利用できます。専門知識があるキャリアアドバイザーに相談することで、どのような仕事・職場が自分に向いているか詳しく理解できます。さらに、てんかんの症状や個人の適性に合う働き方の提案が受けられるため、はたらきやすい職場が見つかりやすくなるでしょう。

てんかんがある人の就労は「dodaチャレンジ」へご相談を

キャリアアドバイザー相談のイメージ

てんかんがある人も、自身の症状と対処法を理解し、周囲に説明できるようにしておくことで、問題なくはたらき続けることができます。ただし、合理的配慮が受けられる職場や、てんかんの症状と付き合いやすい仕事を選ぶことが大切です。現職でそれが難しい場合は、転職を検討してみるといいでしょう。

てんかんで障害者手帳をお持ちの方が就労・転職を目指すときは、パーソルダイバースの転職支援サービス「dodaチャレンジ」がおすすめです。さまざまな障害に対する専門知識があるキャリアアドバイザーが、一人ひとりの就職・転職を支援します。あなたに合った求人情報を探してご紹介するほか、応募書類作成のサポートや応募企業に応じた面接対策、個別のご相談なども行いますので、安心して転職活動に臨めるでしょう。


公開日:2025/6/26

監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■障害者職業生活相談員
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