障害者雇用で正社員になれる?難しいといわれる理由や正社員を目指すポイントを解説

障害者雇用の職場イメージ

障害者雇用において現状、「正社員になるのは難しい」といわれています。そのため、これから障害者雇用で正社員になることを目指している方は、不安を感じているのではないでしょうか。そこで本記事では、障害者雇用における正社員雇用の現状や、正社員になるための方法について分かりやすく解説します。

障害者雇用で正社員になるのが「難しい」といわれる理由

結論として、障害者雇用で正社員になるのは「難しい」といわれていますが、条件を満たせば正社員としてはたらくことは不可能ではありません。それでも「正社員になるのは難しい」といわれているのは、次のような背景が挙げられます。

  • 離職率が高い傾向がある
  • 正社員以外でスタートする求人が多い
  • 障害特性でフルタイム勤務が難しい
  • 正社員に必要なスキルが不足している

離職率が高い傾向がある

障害者の場合は、一般的に就職・転職後の定着率が低い傾向があります。厚生労働省の「障害者雇用の現状等」によると、1年後の平均的な定着率は7割前後です。健常者を対象とした調査では大卒者の就職1年後の離職率は10.6%、つまり約9割が定着しているため、相対的に障害者雇用の離職率は高いといえるでしょう。

正社員以外でスタートする求人が多い

障害者雇用の求人そのものが、非正規雇用から始まるものが多く、正社員の求人が少ない傾向があります。「正社員登用あり」の求人はもちろんありますが、その場合でもアルバイトや契約社員からのスタートです。一定期間勤務して安定就労・フルタイム就労の実績をつくることで、正社員登用に近づくでしょう。

障害特性でフルタイム勤務が難しい

正社員ではたらく場合は、基本的にフルタイム勤務となりますが、障害特性によっては難しいケースがあります。例えば症状や体力的な問題、通院の都合などで、勤務時間が調整しやすい非正規雇用を選ぶケースがあります。詳細は後述しますが、非正規雇用で徐々に仕事に慣れてから、フルタイムの正社員を目指したいという人も少なくないのです。

正社員に必要なスキルが不足している

一般雇用と同様に障害者雇用の場合も、正社員雇用ではスキル・経験などの要求レベルが高い傾向があります。その条件を満たせない場合は、当然ながら内定を勝ち取ることが難しく、場合によっては学び直しなどによるスキルアップが必要になるでしょう。

正社員になれる?障害者雇用の現状

正社員としてはたらくためには、まずは障害者雇用の現状について、次のポイントから認識しておくことが大切です。

  • 障害者雇用の法定雇用率・雇用者数は向上している
  • 雇用形態は障害の種類で大きく異なる
  • 障害者雇用の平均賃金は増加傾向にある

障害者の法定雇用率・雇用者数は向上している

厚生労働省の「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業における障害者雇用者数は約67万7千人で、前年比約3万5千人の増加となっています。また、企業が障害者を雇用すべき人数の割合を定めた「法定雇用率」は、令和7年時点で2.5%となっており、令和8年7月には2.7%になるため、障害者雇用者数がさらに増加することが期待されるでしょう。

なお、法定雇用率を達成している企業の割合は46%にとどまっていますが、これは直近の法定雇用率の引き上げへの対応に後れを取っている可能性が考えられます。

雇用形態は障害の種類で大きく異なる

厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、障害別の正社員雇用率は次のようになっています。

障害の種類 正社員雇用率 前年比(前回の数値)
身体障害 59.3% +6.8(52.5%)
知的障害 20.3% +0.5(19.8%)
精神障害 32.7% +7.2(25.5%)
発達障害 36.6% +13.9(22.7%)

上記のように、身体障害者は約6割が有期・無期を問わず正社員ではたらいています。しかし、そのほかの障害で正社員ではたらいているのは2~3割前後にとどまります。正社員比率は障害の種類によって違いはあるものの、前年比から分かるようにいずれの障害も徐々に高まっていることがポイントです。

障害者雇用の平均賃金は増加傾向にある

障害者雇用の平均賃金は、次のように増加傾向にあります。

障害の種類 平均賃金 前年比(前回の数値)
身体障害 23万5千円 +2万円(21万5千円)
知的障害 13万7千円 +2万円(11万7千円)
精神障害 14万9千円 +2万4千円(12万5千円)
発達障害 13万円 +3千円(12万7千円)

上記のように、障害者雇用の平均賃金は増加傾向にありますが、身体障害とそれ以外では10万円近い差があるなど、障害の種類による違いがあります。前述したように、身体障害者の場合は正社員登用の割合が高く、1週間あたりの労働時間も長い傾向があるため、こうした差が生じていると考えられます。

障害者雇用で正社員としてはたらくメリット

福利厚生のイメージ

障害者雇用で正社員としてはたらくメリットとして、次のようなものが挙げられます。

  • 年収アップが見込める
  • 雇用が安定しやすい
  • 福利厚生が充実している

年収アップが見込める

前述したように、正社員ではたらく場合はスキルや経験が求められる傾向があるため、正社員になることで収入アップが見込めます。ボーナス支給がある企業では、さらに収入が増えるでしょう。また、正社員では基本給が決まっているため、収入が安定することも魅力です。

雇用が安定しやすい

正社員の場合は基本的に無期雇用契約のため、安定してはたらき続けることができます。これにより収入面はもちろん精神面での安定につながり、長期的なキャリアアップも目指しやすくなるでしょう。

福利厚生が充実している

正社員ではたらく場合は、健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険などの法定福利厚生の対象となります。さらに企業によっては「法定外福利厚生」が設定されており、住宅手当や通勤手当などの各種補助が受けられる場合もあります。

障害者雇用で正社員としてはたらくデメリット

障害者雇用で正社員としてはたらくデメリットとして、次のようなものが挙げられます。

  • 業務の責任が重くなる
  • 労働時間が長くなりがち
  • 柔軟な勤務がしづらい

業務の責任が重くなる

正社員は収入や福利厚生などが充実している一方で、相応の責任も発生します。自発的な行動や学習が求められる場面も増えるでしょう。そのため、はたらくうえでのストレスも発生しやすいので注意が必要です。

労働時間が長くなりがち

正社員の収入が高い理由のひとつが労働時間の長さです。前述したように責任も重くなるため、残業や休日出勤が必要な場面もあります。非正規雇用と比べると拘束時間が長いため、合理的配慮が受けられるとはいえ、障害特性や体調によっては負担の重さを感じるかもしれません。

柔軟な勤務がしづらい

正社員ではたらく場合は、基本的に企業が定めたスケジュールではたらくことが求められるため、非正規雇用と比べると働き方の自由度は低いです。休日や長期休暇の取得も難しくなりがちです。ただし、企業によっては柔軟な働き方が選べる場合もあるため、雇用条件等を確認してみてください。

障害者雇用で正社員を目指す方法・コツ

障害者雇用で正社員を目指す場合は、次のような方法・コツを意識しましょう。

  • 正社員の求人に応募する
  • 「正社員登用あり」の非正規雇用から目指す
  • 障害者向けの転職エージェントを活用する

正社員の求人に応募する

就職・転職活動のときに正社員求人に応募して採用されることで、正社員としてはたらくことができます。ただし、前述したように必ずしも正社員があなたに合う働き方というわけではないことや、非正規雇用と比べると求人数や職種が少なく条件が厳しいなど、現実的に正社員で就労できる状態ではないケースがある点に注意が必要です。

「正社員登用あり」の非正規雇用から目指す

非正規雇用であっても、「正社員登用あり」と明記されている求人の場合は、安定就労が可能であると認められた時点で、正社員として就労できる可能性があります。少しずつ仕事に慣れながら安定した就労ができるようになることは、中長期的に大きなメリットがあるといえるでしょう。

障害者向けの転職エージェントを活用する

障害のある方が自分に合う仕事・職場を見つけるためには、「障害者向けの転職エージェント」の活用もおすすめです。障害に関する専門知識があるキャリアアドバイザーに相談することで、どのような仕事・職場がはたらきやすいか詳しく理解できます。

さらに、障害特性や個人の適性に合う働き方の提案が受けられるため、はたらきやすい職場が探せます。パーソルダイバースの「dodaチャレンジ」では、さまざまな障害に理解のあるアドバイザーがご自身に合う仕事を紹介してくれるので、安心して転職活動ができるでしょう。

障害者の方が正社員を目指すなら「dodaチャレンジ」へ

車いすを利用されている方の職場のイメージ

障害者雇用ではたらく場合、正社員になることで、収入アップや雇用の安定化などのメリットが得られやすくなります。しかし、責任の重さや労働時間の長さなどのデメリットもあるため、いきなり正社員を目指すことは現実的に厳しい場合もあります。そのため、まずは非正規雇用ではたらくことに慣れてから、正社員登用を目指すという選択肢も考えてみましょう。

障害のある方が就労・転職を目指すときは、パーソルダイバースの転職支援サービス「dodaチャレンジ」の利用がおすすめです。dodaチャレンジの転職支援サービスでは、さまざまな障害に対する専門知識があるキャリアアドバイザーによる応募書類作成のサポートや、応募企業に応じた面接対策、個別のご相談など、就職・転職支援を行います。

正社員求人だけでなく、まずは契約社員で安定就労できるようになってから正社員登用を目指すことや、最初は時短勤務から体調に無理なくフルタイム就労できるようにするなど、一人ひとりに合わせたキャリアプランをご案内します


公開日:2025/6/26

監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■障害者職業生活相談員
  • dodaチャレンジで、専任のキャリア
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