大人の愛着障害とは?症状・原因や自分に合う職場の選び方を解説

出勤時間のイメージ

「愛着障害」とは、幼少期に保護者との関係性に問題があることが原因で、精神的な課題が生じる疾患を指します。大人になってからも愛着障害の状態が続くと、情緒面や対人関係に不安が生じ、社会生活に悪影響が出るケースも珍しくありません。本記事では、大人の愛着障害の特徴や困りごと、対処法などについて詳しく解説します。

大人の「愛着障害」とは?

大人の愛着障害について、次のポイントから解説します。

  • 対人関係や社会生活が不安定になる状態
  • 愛着障害の原因は不適切な家庭環境にある

対人関係や社会生活が不安定になる状態

大人の「愛着障害」とは、幼少期における保護者との関係性が原因となり、成人してから対人関係や社会生活が不安定になる状態を指します。

幼少期に保護者と安定した「愛着(アタッチメント)」、つまり情緒的な結びつきが得られなかった場合に、対人関係が不安定で依存的になり、自己肯定感・価値感にも問題を抱えやすくなります。それが原因で日常生活や社会生活などの場面や、対人関係においてトラブルが生じやすいのです。

愛着障害の原因は家庭環境にある

愛着障害の原因は、前述したように幼少期における保護者との関係性にあると考えられています。例えば、虐待やネグレクト(育児放棄)などがあった場合、愛着関係が十分に形成されず愛着障害を発症しやすくなります。

そのほかにも、両親の不在や離婚などで家族の変化が生じるといった、心身の負担が大きい環境に置かれていたことも要因のひとつです。いずれの場合も、保護者との適切なアタッチメントが形成されず、それが大人になるまで解消されなかったことが原因で、大人の愛着障害になります。

大人の愛着障害によって生じる困りごと

幼少期に適切な愛着関係が築かれず、大人になって愛着障害を発症することで、日常生活や仕事で次のような困りごとが生じると考えられます。

  • アイデンティティを確立できない
  • 感情をコントロールできない
  • 適切な人間関係を築きにくい
  • 自身の人生や選択肢への満足度が低い
  • 「二次障害」を発症しやすくなる

アイデンティティを確立できない

愛着障害を抱えている人は、自分が自分であり、さらに自身が他者・社会から認められているという「アイデンティティ」を確立しづらい傾向があります。自身の存在価値について悩むことが多く、自己肯定感が低下してしまいやすいことも特徴です。

感情をコントロールできない

大人の愛着障害がある人は、一般的に傷つきやすく感情的になりやすい性質があります。過去に囚われがちになったり、物事を「0」か「100」かという極端な捉え方をしたりしがちです。そのため、他人の何気ない発言に過剰反応をすることや、柔軟で折り合いをつける考え方がしづらくなります。

適切な人間関係を築きにくい

他者との適切な人間関係を築きづらいことも、大人の愛着障害の代表的な特徴のひとつです。社会生活においても、他人とほどよい距離感が取れないため、家族や恋愛はもちろん、職場における同僚や上司との関係性でも問題を抱えてしまいます。前述したように思考が極端なので、柔軟な人間関係を築きづらいのです。

自身の人生や選択肢への満足度が低い

大人になると、さまざまなことを自分自身で考えて選択する必要がありますが、幼少期に愛着形成が適切に行われなかった人の場合、自己肯定感や積極性が十分に育ちづらいと考えられています。そのため、進学や就職・キャリア選択など人生における重要な決断に苦労したり上手くいかなかったりして、自身の人生や選択肢への満足度が低下してしまいがちです。

「二次障害」を発症しやすくなる

大人の愛着障害の大きな問題が、ほかの精神疾患の発症、つまり「二次障害」につながりやすいことです。例えば次のような精神疾患が、愛着障害の二次障害になりやすいものとして挙げられます。

  • うつ病
  • 心身症
  • 不安障害
  • 境界性パーソナリティ障害

大人の愛着障害は、前途したようにアイデンティティや人間関係などでさまざまな困り事や二次的な障害につながるケースがあるため、さらに注意が必要です。

大人の愛着障害を克服する方法・対処法

医師の診察を受ける女性のイメージ

大人の愛着障害がある人は、社会生活や人間関係においてさまざまな問題が生じやすいですが、適切に対処することで改善し、健全な日常生活や社会生活が送れるようになる可能性が高まります。そのために次のようなポイントを意識しましょう。

  • 早めに専門医の診断・治療を受ける
  • 「心の安全基地」をつくる
  • 自分自身のトラウマと向き合う
  • 他人と無理に関わろうとしない
  • 就労・転職支援サービスを活用する

早めに専門医の診断・治療を受ける

前述したように、愛着障害はほかの精神疾患を併発する「二次障害」につながるケースが珍しくありません。そのまま症状が悪化すると、社会生活や就労に多大な影響が出るため、思い当たる点があれば早めに専門医の診断・治療を受けることが大切です。ただし、愛着障害は何らかの投薬などで単純に解決できるものではないため、以下に述べるような点も意識しましょう。

「心の安全基地」をつくる

大人の愛着障害を克服する手段として、「心の安全基地」の確保が挙げられます。心の安全基地とは、心を落ち着かせることができるような、安心して休める環境を意味する用語です。

大人の愛着障害がある人は、過去に不安や恐怖を感じることが多く、不安定な状況に直面していた傾向があります。そのため、自分自身を守るために心を閉ざしてしまう傾向がありますが、そのままでは自分自身の感情や対人関係などの問題を解決できません。

そのため、例えば友人やパートナー(恋人)などから、かつて保護者から得られなかった愛情を獲得し直すのが効果的です。それが心の安全基地となり、心の壁を開放して適切な感情表現がしやすくなったり、対人関係を築きやすくなったりするでしょう。

自分自身のトラウマと向き合う

しかしながら、自身の心を解放できるような心の安全基地をつくることは、決して容易ではありません。大人の愛着障害がある人の対人関係は、幼少期の保護者との関係性が繰り返されてしまうことが多いからです。

そのため、まず自分自身や過去のトラウマ・経験と向き合い、それらを昇華して過去と現在を切り離す必要があります。専門家のサポートも受けることで、自分に合う方法で取り組みやすくなるでしょう。

他人と無理に関わろうとしない

大人の愛着障害がある人は、社会生活や職場などにおいて「他人との距離感が分からない」「上手くコミュニケーションが取れない」など、対人関係で課題を抱えがちな傾向があります。なぜなら、自己肯定感の低さから被害妄想を抱いたり、他者に気を使いすぎてしまったりするからです。

そこで無理に他人と深い関係を築こうとせずに、あえて距離を置いたり無難にやり過ごしたりすることも大切です。その手段として、対人業務やコミュニケーションの機会が少ない職業・職種への転職を考えるのもいいでしょう。前述したように、自分自身を見つめ直して自分という存在を受け入れることで、他者との関係も徐々に改善できます。

大人の愛着障害がある人が利用できる転職支援サービス

大人の愛着障害がある人で、症状の改善や治療のために現在と異なる職場ではたらくほうが望ましいと考えられる場合は、次のような転職支援機関やサービスの利用がおすすめです。

  • 就労移行支援事業
  • 障害者向けの転職エージェント

就労移行支援事業

就労移行支援事業所は、はたらくための知識やスキルの習得に加えて、就労に向けた総合的なサポートを求職者に提供する機関です。障害者手帳がなくても利用可能な場合があります。転職後も「定着支援」として就労上の困り事や問題解決ができるため、大人の愛着障害の症状に悩む方でも安心して利用できることが魅力です。

パーソルダイバースの「ミラトレ」は、障害のある方の適切な就労をかなえるための就労移行支援事業所です。適職に就いて安定したはたらき方を実現するために、さまざまな支援を行っています。まずはお気軽に見学・ご相談ください。

障害者向けの転職エージェント

愛着障害があり適切な治療をしないまま、うつ病や適応障害、不安障害、依存性・回避性・境界性パーソナリティ障害などの二次的な障害を発症してしまった方は、「障害者雇用枠」での転職を検討してみるのもひとつの方法です。

障害者手帳を所持している方は、障害者雇用専門の転職エージェントで転職相談が可能です。大人の愛着障害を含む、精神障害のある方など個人の特性に合う働き方について、キャリアアドバイザーから適切な提案が受けられます。

大人の愛着障害がある方にも合う職場が見つかります

キャリアアドバイザーの女性のイメージ

大人の愛着障害がある人は、感情のコントロールや人間関係に課題を抱えがちです。症状が悪化すると、うつ病・適応障害・不安障害などの精神障害につながる恐れがあるため、まずは医療機関・専門家の診断を受けるようにしましょう。愛着障害の二次的な障害で精神障害者保健福祉手帳を取得しており、障害者雇用での就労を検討されている方は「dodaチャレンジ」にご相談ください。

dodaチャレンジの転職支援サービスでは、うつ病などの精神疾患について専門知識を持ったキャリアアドバイザーが、一人ひとりの就職・転職を支援します。あなたに合った求人情報をご紹介するほか、応募書類作成のサポートや企業に応じた面接対策、さらに個別相談への対応なども行いますので、安心して転職活動に臨めるでしょう。


公開日:2025/6/26

監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■障害者職業生活相談員
  • dodaチャレンジで、専任のキャリア
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