障害者雇用枠の条件とは?求人紹介の対象者と制度のメリット・デメリット
障害のある方がより良くはたらける仕事を見つけたいなら「障害者雇用枠」の求人が一つの選択肢となります。応募に際していくつか条件はありますが、一般雇用枠より有利に就活を進められるかもしれません。
今回の記事では、障害者雇用枠の対象者となる条件と、雇用主に課される義務化の内容を解説します。障害者手帳なしで就活する場合と比較したメリット・デメリットもまとめました。
一般雇用枠ではなかなか仕事が見つからないと悩んでいる障害者の方は、ぜひご一読ください。
目次
障害者雇用枠とは
まず、障害者雇用枠とはどのような求人なのかを説明します。
障害者雇用枠の概要
障害者雇用枠とは、原則として障害者手帳を取得している方向けの求人です。一定の条件を満たす企業・組織に障害者雇用を義務付けることにより、障害者雇用の安定化を目指しています。
障害者雇用とは
障害者雇用は、障害の有無にかかわらず、すべての方が公平な就業機会を確保できる社会の実現を目標とする措置として設けられました。障害者雇用は、障害のある方本人はもちろん、障害者を雇用する会社側にとってもさまざまなメリットがあります。
企業は、障害者雇用枠を設置することでより幅広い人材が確保できるほか、社会貢献に積極的な姿勢をアピールすることにもつながるでしょう。また、一定の要件を満たせば各種助成金が支給されるため、障害者雇用にかかる経済的負担も軽減できます。
こうした背景から、障害者雇用は年々増加傾向です。厚生労働省による令和6年の調査では、雇用障害者数・実雇用率ともに過去最高を更新しました。
出典:厚生労働省 「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」
障害者雇用枠と一般雇用枠の違い
障害者雇用枠と一般雇用枠の違いは、就活・就労時における障害の開示の有無にあります。
一般雇用枠では、障害があることを雇用主および周囲に伝えるかどうかは任意です。採用後は障害のない人と同じ条件ではたらくため、職場に障害があることを開示していない場合は適切な配慮が得られるとは限りません。
対して、障害者雇用枠は障害者を対象とする求人のため、オープン就労が前提です。特性に応じた配慮や調整がなされるため、障害のある方がより良くはたらける可能性が高いといえます。
障害者雇用枠の求人に関する必須条件
次に、障害者雇用枠の求人について、応募する障害者の方にどのような条件が課されるのかをみていきましょう。参考までに、企業に義務化されている条件も解説します。
障害者雇用枠に応募できる条件
繰り返しとなりますが、障害者雇用枠は、原則として障害者手帳を取得している障害者が対象です。障害者手帳があれば、その等級にかかわらず求人に応募できます。
逆にいうと、障害者手帳なしには就職支援機関からの紹介が受けられません。また、障害者専門の転職・就職エージェントも、利用条件を障害者手帳の取得者に限定しているサービスが大半です。
以下で、障害者手帳の種類と、その等級についてまとめました。
身体障害者(身体障害者手帳)
「身体障害」とは、先天的・後天的に身体のいずれかの部位に障害がある状態です。障害者手帳の種類は「身体障害者手帳」となります。身体障害の分類ごとの等級は以下のとおりです。
身体障害の分類 | 等級 |
---|---|
視覚障害 | 1級〜6級 |
聴覚障害 | 2級〜6級 |
平衡機能障害 | 3級、5級 |
音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害 | 3級、4級 |
上肢障害・下肢障害 | 1級〜7級 |
体幹障害 | 1級〜3級、5級 |
脳原性運動機能障害(上肢機能または移動機能) | 各1級〜7級 |
心臓機能障害 | 1級、3級、4級 |
腎臓機能障害 | 1級、3級、4級 |
呼吸器機能障害 | 1級、3級、4級 |
膀胱または直腸の機能障害 | 1級、3級、4級 |
小腸機能障害 | 1級、3級、4級 |
HIV免疫機能障害 | 1級〜4級 |
肝臓機能障害 | 1級〜4級 |
出典:厚生労働省 「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)」
なお、同じ等級に2つ以上該当する障害特性がある場合は、1つ上の等級となります。
知的障害者(療育手帳)
「知的障害」とは、脳の染色体異常や出生直後の怪我などにより知能が著しく平均を下回る状態を指します。障害者手帳の種類は「療育手帳(愛の手帳)」となり、主に18歳未満の発達期までに発症した方が交付対象です。
18歳以上で知的障害のある方における障害区分と各等級は、以下の表をご参照ください。
知的障害の程度 | 判定基準 |
---|---|
重度(A) | IQ(知能指数)35以下程度かつ以下のいずれかに該当する 1.日常生活に個別の配慮が必要もしくは問題行動のいずれかに該当する 2.50以下程度で、何らかの身体障害がある |
上記以外(B) | 重度(A)に該当しない知的障害がある |
自治体によっては、最重度や中度、軽度など区分をさらに細分化している場合もあります。
精神障害者(精神障害者保健福祉手帳)
「精神障害」とは、先天的もしくは後天的に次のような障害を有する状態を指します。
- 統合失調症
- 気分(感情)障害
- 非定型精神病
- てんかん
- 中毒精神病
- 器質性精神障害
- 発達障害(ASD:自閉スペクトラム症、ADHD:注意欠陥・多動症、LD:学習障害・限局性学習症)
- その他の精神疾患
障害手帳の種類は「精神障害者保健福祉手帳」であり、等級は精神疾患(機能障害)と能力障害(活動制限)の程度によって1級〜3級に分類されます。
会社・組織などの雇用主に義務化された雇用条件
障害者雇用促進法により、民間企業や公的機関といった組織には、以下が義務付けられています。
- 一定の法定雇用率の達成
- 合理的配慮の義務化
- 採用活動での障害を理由とする差別の禁止
法定雇用率は、2025年現在、従業員が40人以上の場合、1人以上の障害者を雇用するルールとなっています。ただし、上記は見直し前の据え置き措置であり、2026年7月以降は改訂される予定です。
なお合理的配慮とは、障害のある方の障害特性に応じて就労条件や環境を整えることを指します。以前は努力義務でしたが、2016年の法改正により、障害のある人とそうでない人が公平な条件ではたらくために必要な措置として義務化が決まりました。
また、企業・組織は障害者を不当に採用候補から除外したり、不利な労働条件を付けたりしてはいけません。複数の候補者がいる場合に、障害の種類や程度を基準に優先・優遇することもルール違反です。
こうした措置から分かるとおり、障害者の受け入れ体制は以前よりもぐっと整ってきています。職場全体で障害に対する理解を深め、はたらきやすい環境・条件を整えることに前向きな企業が増えました。
法定雇用率は5年に1度は見直されることとなっており、障害者の方の仕事や職業選択の幅が大きな広がりをみせています。
障害者雇用枠ではたらくメリット
障害のある方が障害者雇用枠の求人に応募・就職することで、次のようなメリットが得られます。
- 手帳なしで就活するより選択肢が広がる
- はたらきやすい職場環境が整っている
- 定着しやすい
手帳なしで就活するより選択肢が広がる
一般雇用枠に加え、障害者雇用枠の求人にも応募すれば、障害がある方の職業選択の幅が広がります。障害者雇用枠では、障害特性への適切な配慮の下ではたらけるため、応募したいと思える仕事が見つかりやすくなるほか、未経験でもチャレンジしやすいでしょう。
はたらきやすい職場環境が整っている
障害者雇用枠の求人は、合理的配慮が義務付けられているため、障害がある方にとってはたらきやすい環境が整っていると考えられます。障害のある方とその周囲ではたらく方が相互に理解を深め、より良くはたらけるはずです。
定着しやすい
障害者雇用枠の求人は、合理的配慮に基づく環境調整が徹底されているため、一般雇用枠で就職するより3ヶ月〜1年後の定着率が高い傾向にあります。障害およびその特性を理由とする不当な扱いも禁止されていることから、安心して長く勤められるでしょう。
障害者雇用枠のデメリット
障害者雇用枠は就業を希望する障害のある方にとってたくさんのメリットがある制度です。その反面、次のようなデメリットがある点にも注意しましょう。
- 求人数が一般雇用枠より少ない
- 活躍の幅が限定される場合がある
求人数が一般雇用枠より少ない
障害者雇用枠の求人は、一般雇用枠より少ないです。そのため、自分が希望する職種・条件ではたらける仕事が見つからないと感じる場合もあるでしょう。
しかし、非公開求人を含む多くの求人の紹介が受けられる転職・就職支援サービスを利用すれば、仕事探しの選択肢が大きく広がるはずです。
活躍の幅が限定される場合がある
障害者雇用枠の求人は、障害特性に配慮されている分、職種や業務内容が限定的になる場合があります。またスキルアップの機会があまり得られず、就職後のキャリアに悩むこともあるかもしれません。
キャリアアップを実現させるポイントは、障害者雇用の専門家であるキャリアアドバイザーに相談することだといえます。今後の方向性についてもよく相談したうえで応募先を決めれば、理想のキャリアが実現しやすくなるでしょう。
障害者雇用枠に応募する方法
障害者雇用枠の求人は、主にハローワークもしくは障害者専門の転職・就活エージェントで紹介・応募が可能です。ここからは、上記それぞれの方法の特徴を紹介します。
ハローワークの障害者窓口で紹介を受ける
ハローワークの障害者窓口では、一般雇用枠のほか、障害者雇用枠の求人の紹介も行っています。就活の助言・指導のほか、地域の障害関係機関と連携した包括的なサポートを受けることが可能です。
障害者専門の転職・就職エージェントに登録する
障害者雇用枠の求人を探すなら、障害のある方向けの転職・就職エージェントの利用をおすすめします。通常の障害者雇用枠はもちろん、一般的な支援サービスでは取り扱われていない「非公開求人」の紹介も受けられるためです。求める条件の仕事がぐっと見つかりやすくなるほか、障害者雇用のプロが就活から定着までしっかりサポートしてもらえることも大きなメリットだといえます。
希望の条件に合う障害者枠の求人を探すなら「dodaチャレンジ」へ!
就活の選択肢を障害者雇用枠の求人まで広げることで、障害者にありがちな仕事が見つからないという悩みが解消される可能性があります。合理的配慮が徹底されている仕事や、柔軟な環境調整に対応してもらえる職場が多いため、障害があっても安心して長期的にはたらけるでしょう。
障害特性に合った働き方のできる求人を探している方は、ぜひ「dodaチャレンジ」へご相談ください。非公開求人を含む多数かつ多彩な求人から、ご自身に最適な仕事を紹介します。就活はもちろん、定着するまですべて無料でしっかりフォローしますので、ぜひお気軽にご登録ください。
まずは、キャリアアドバイザーに転職相談を

電話orオンライン
でお気軽にご相談ください
転職について不安なことも
障害者雇用の知りたいことも
キャリアドバイザーが親身にお話をうかがいます
公開日:2025/2/27
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア開発支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士