障害者の就活における自己PRとは?構成のポイントや注意点を解説

転職相談

就活や転職活動で欠かせないのが「自己PR」です。ほとんどの履歴書には自己PRの記載欄があり、企業側も選考時の重要な要素としています。さらに、面接でも自己PRが求められるシーンは多いです。そのため内定を得るためには、自身の魅力をアピールできる自己PRの作成が必須です。

障害のある方にとって自己PRは、自分ができることや得意なこと、配慮があればできることを主張できる大切な機会となります。そこで本記事では、障害者の方が就活や転職活動時の自己PRで意識すべきポイントや注意点、例文を紹介します。

就活や転職活動時の「自己PR」とは

就職・転職活動における「自己PR」は、自身がどのような人物であるかを、採用担当者や面接官にアピールするためのものです。

自身の長所や強みはもちろん、短所・弱みやそれを克服した努力についても伝えることで、魅力的な人物像を描き出し、相手に認めてもらうことができます。言い換えれば、相手に「この人を採用したい」と思わせるために、企業にとって自分が有用な人材であることをアピールするために行うのが自己PRなのです。

障害者雇用を目指す方も就活自己PRが大切

障害者雇用での就職・転職を目指す方も、自己PRを丁寧に作成することが大切です。2024年4月より障害者の「法定雇用率」が段階的に引き上げられたこともあり、さまざまな業界や業種で就職・転職を目指す障害者の方が増えることが想定されます。こうした状況下で希望する企業の内定を獲得するためには、自身の魅力を表現して、得意な分野で企業に貢献できることをアピールすることが欠かせません。

障害者の方が就活自己PRで押さえるべきポイント

障害者の方が履歴書・面接で就活自己PRを行う際は、次のようなポイントを特に意識しましょう。

  • 自身の強みをアピールする
  • 根拠や実績を分かりやすく伝える
  • 企業にマッチした人材だと伝える

自身の強みをアピールする

企業が求める人物像に沿う形で、自身の強みを分かりやすく伝えましょう。例えば、実務に直結する知識やスキルがあれば、積極的にアピールすることで魅力を感じてもらいやすくなります。

事前に募集要項やコーポレートサイトなどを読んで、何が必要とされているかを理解し、自身のスキルセットと照らし合わせることが大切です。該当するものがない場合は、「イレギュラーにも柔軟に対応できる」などの長所をアピールするといいでしょう。

根拠や実績を分かりやすく伝える

強みや長所をアピールするときは、その根拠や実績を具体的に示すことも重要です。できることや得意なことを単に伝えても、担当者はそれを事実として認識しづらいことがあります。

例えば業務の能力について伝えたいときは、「社内賞を獲得できた」「資格を取得した」など、具体的にイメージしやすい実績を挙げると説得力が増します。該当するものがない場合は、上司や顧客などから得られた客観的な評価やフィードバックを伝えることで、得意分野や強みの説得力が増すでしょう。

企業にマッチした人材だと伝える

優れた実績や得意分野がある場合でも、企業が求める人材像にマッチしていなければ、採用担当者の目には魅力的に映りません。そのため、自己PRでアピールした内容が企業にとってどのように役立つか、自身がどのように貢献できるかを伝えることが大切です。このとき、業務内容に関連付けて伝えることで、入社後に活躍する姿を採用担当者がイメージしやすくなります。

障害者雇用で就活自己PRを作成するステップ

自己PRを考える

障害者雇用における就活自己PRを作成する際は、次のようなステップで進めましょう。

  • ステップ1:これまでの経験を振り返る
  • ステップ2:障害の特性を客観的にまとめる
  • ステップ3:応募する企業の詳細を調べる

ステップ1:これまでの経験を振り返る

まずはこれまでの経験や経歴を振り返り、受験・仕事・資格やそのほかに努力したことなどをまとめます。困難や課題を感じたことや、解決するために行ったこと、さらにその結果や教訓などを列挙しましょう。就業経験がない場合でも、このステップを丁寧に行うことで、見逃していた長所や強みが見つかることがあります。

ステップ2:障害の特性を客観的にまとめる

自身の障害について客観的にとらえて、その特性についてまとめることも大切です。障害者雇用においては、はたらきやすい環境で就労するために、「できること」や「できないこと」など障害に関する情報を企業と共有しておく必要があります。

重要なポイントは、「できないこと」と「必要な配慮」をセットで整理することです。例えば、車椅子で満員電車に乗ることが困難なため、時差出勤など勤務形態への配慮や広い作業スペースが必要など、自身の障害特性を踏まえて考えましょう。

ステップ3:応募する企業の詳細を調べる

自己PRは「企業が求める人物像」をもとに行うことが大切なので、応募する企業を詳しく調べる必要があります。採用情報や求人票はもちろん、コーポレートサイトやブログなどを確認して、企業理念や業務内容などへの理解を深めることが大切です。すべての企業に通用する自己PRではなく、その企業の特性を踏まえて、「どんなことで貢献できるか」を示すことを意識すると、採用担当者に魅力的に感じてもらえるでしょう。

障害別の就活自己PR例文

履歴書や面接で自己PRを適切に行うためには、自身の障害特性を考慮したうえでアピールすることが大切です。次のような障害別の自己PR例文を参考にしてみてください。

  • 上肢障害がある方の場合の就活自己PR
  • 下肢障害がある方の場合の就活自己PR
  • 聴覚障害がある方の場合の就活自己PR
  • 発達障害がある方の場合の就活自己PR

上肢障害がある方の場合の就活自己PR

交通事故で右上肢に障害が残り、右手で作業をすることができません。元々の利き手が右手なので、左手のみの生活は困難でしたが、リハビリを重ねることでオフィスワークに必要なパソコン操作が左手で行えるようになりました。

高速な操作やタイピングはできませんが、エクセルやパワーポイントなどをスムーズに扱い、事務作業は問題なく可能です。リハビリは心身ともに大変ではありましたが、それを乗り越えたおかげで集中力や根気強さが身につき、業務も着実にこなすことができるようになりました。

下肢障害がある方の場合の就活自己PR

先天的な障害で下肢に障害があるため、移動には車椅子が必要です。学生時代からIT関連の分野に興味があったため、C言語やJavaなどのプログラミング言語を習得し、「応用情報技術者試験」や「情報処理技術者試験」などの資格も取得しました。

これらの知識やスキルを活かし、御社でプログラマとして活躍したいと考えています。なお移動には車椅子が必要なので、移動しやすい位置にあるデスクを使用させていただけると幸いです。

聴覚障害がある方の場合の就活自己PR

数年前に突発性難聴を発症し、治療したものの現在でも右耳に聴覚障害が残った状態です。前職では経理の仕事を担当しており、簿記資格も保有しているため、御社でもその経験を活かしたいと思います。静かな環境でのコミュニケーションは問題ありませんが、聞こえづらい環境や複雑な指示の場合は筆談やタイピング、もしくは文字起こしアプリなどでご対応いただけると幸いです。

発達障害がある方の場合の就活自己PR

発達障害があり、目の前のことにのめり込んでしまい、ほかのことに意識が向きづらい傾向があります。一方で、興味・関心のある分野に集中して同じことを継続することが得意で、プログラミングの専門的な知識を身につけてきました。

専門学校のときに制作したゲームを出展したときに優秀賞を取得したことがあり、現在はPythonでAI開発にチャレンジしています。発達障害により、話の意図をつかみづらい場面がありますので、業務の指示などは具体的にいただけますと幸いです。

障害者雇用で就活自己PRを成功させるポイント

集団面接

障害者雇用の履歴書・面接で自己PRを成功させるためには、次のようなポイントを意識することが重要です。

  • 複数パターンの自己PRを用意する
  • 「配慮があれば可能」であることを伝える
  • 焦点はあくまで知識やスキルに当てる

複数パターンの自己PRを用意する

自己PRは複数のパターン、特に複数の制限時間に対応できるものを用意することが大切です。面接では「1分以内」や「3分以内」など、一定の制限時間内での自己PRを求められる傾向があります。

その時間内で過不足なく自身をアピールできるように、何をどのように話すべきか事前にシミュレーションしておきましょう。事前に自己PRを行う練習をして、最適な声のボリュームや話すスピードを把握しておくと、実際の面接で好印象を与えやすくなります。

「配慮があれば可能」であることを伝える

障害の種類や程度、できることやできないことは人によって異なり、採用担当者には見当がつきません。そのため、障害の影響でできないことを伝えることが必要ですが、「合理的配慮があれば可能」であることも伝えるのも重要です。これにより、対応できる業務の幅が広がるため、就業の機会もより得やすくなるでしょう。

焦点はあくまで知識やスキルに当てる

自身の障害特性やその経験について説明することは重要ですが、障害がメインの自己PRになると自身の強みをアピールしづらくなってしまいます。企業が求めているのはあくまで「知識」や「スキル」なので、障害を乗り越えたエピソードではなく、自身が企業にどう貢献できるかに焦点を当てることが大切です。もちろん、障害特性や配慮が必要なポイントを伝えることも必要なので、そのバランスを意識しましょう。

障害者の方の就活には「dodaチャレンジ」がおすすめ

障害者の方が就活を成功させるためには、自身の障害特性や企業の「求める人材像」を踏まえた、適切な自己PRを行うことが大切です。これまでの経験を振り返って知識やスキルを洗い出したうえで、できることやできないこと、配慮が必要なことをまとめましょう。

自身の障害特性や配慮事項を客観的にまとめるには、キャリアアドバイザーに相談するのがおすすめです。企業の求める人材像についても、キャリアアドバイザーが的確なアドバイスを行い、企業が魅力的に感じる自己PRの作成をお手伝いしています。

障害者の方のための転職・就職支援サービス「dodaチャレンジ」では、さまざまな障害のある方が安心してはたらける企業の求人を紹介しています。キャリアアドバイザーへの相談も無料で行えるので、就職活動や自己PRでお悩みの場合は、この機会にぜひご相談ください。

公開日:2024/7/19

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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