障害者雇用でキャリアアップを目指すには?キャリア形成の方法や支援機関を解説

キャリアアップ

障害者雇用で仕事をしていて、「給料をアップしたい」「正社員になりたい」「仕事の幅を広げたい」と考えたことはないでしょうか。障害者雇用の場合も、現職に慣れて体調が安定したり、理想のキャリアに応じたスキルを身につけたりすることで、キャリアアップを目指すことが可能です。

本記事では、障害者の方がキャリアアップを実現する方法や、利用できる支援機関などについて分かりやすく解説します。ご自身のキャリアについて課題や悩みがある方は、ぜひ参考にしてみてください。

障害者雇用におけるキャリアアップの実態

障害者雇用におけるキャリアアップの実態について、障がい者総合研究所が発表した「障がい者のキャリアアップに関する調査Report」を基に、次のポイントから見ていきましょう。

  • 約8割の障害者がキャリアアップに関心がある
  • 無理をしないためにキャリアアップを避ける人が多い
  • 入社後に昇進や昇格がない割合は87%にのぼる

約8割の障害者がキャリアアップに関心がある

調査結果によると、障害者雇用で就職した人のうち正社員は4人に1人であり、9割以上が役職に就いていないことが分かりました。また、約8割がキャリアアップに関心があり、「仕事の幅を広げること」の優先順位が高い傾向があります。一方で、一般雇用の従業員と比較するとキャリアアップの障壁があり、それがキャリアへの満足度の低さにつながっていると考えられます。

無理をしないためにキャリアアップを避ける人が多い

キャリアアップに関心がない人の割合は約2割ですが、その理由として最も多いのが「あまり無理をしたくないため」というものでした。責任の重さやプライベート時間の減少を避けたいという理由は、障害がない人の場合でも上位にありますが、心身への負担を避けたいというのは障害者雇用で特に顕著なものです。

たとえキャリアアップに関心があったとしても、障害との付き合い方や企業の体制・環境などの理由により、キャリアアップに後ろ向きにならざるを得ない現状があるのです。

入社後に昇進や昇格がない割合は87%にのぼる

入社後に昇進・昇格をしていない人の割合は87%と多い一方で、一般社員と同等もしくは早く昇進・昇格した人はわずか9%となりました。障害があることでキャリア形成の支援が受けられない、一般社員と同じことができないため評価が下げられるなど、障害のある方のキャリアアップには課題が多いことが分かります。

さらに、キャリアアップでは「仕事の幅が広がること」を重視する人が66%であることからも、多くの障害者が業務範囲に制限がある働き方を余儀なくされていると考えられます。

障害者雇用でキャリアアップを目指すために必要なこと

障害者雇用でキャリアアップを目指すためには、まずは無理をせずに現職に慣れて、体調を安定させることが大切です。そのうえで次のようなポイントを意識してキャリアアップを目指しましょう。

  • 「キャリアデザイン」で将来像を描く
  • 「キャリアプランニング」で行動計画を立てる
  • 「キャリアカウンセリング」で専門家のアドバイスを受ける
  • 「キャリアパス」が明確な仕事を探す

「キャリアデザイン」で将来像を描く

「キャリアデザイン」とは、どのような仕事をしたいか、将来的にどう活躍したいかなどを構想することです。キャリアデザインを丁寧に行うことで、自分に向いている業種や職種を絞り込んだり、具体的な行動計画を立てたりすることができます。

キャリアデザインには、自己分析を行って自分自身を見つめ直すことが大切です。自身の長所と短所、経験や活かせるスキル、障害特性などを考慮して、やりたい仕事と照らし合わせてみましょう。必要な資格や職業訓練などが明らかになれば、早めの対策でキャリアアップを目指せます。

「キャリアプランニング」で行動計画を立てる

「キャリアプランニング」とは、前述したキャリアデザインを基にして、職業の選定や行動計画の策定を行うことです。どのようなキャリアを築きたいか、仕事で何を目標にしたいかなどを決めることで、必要なスキルや資格が明らかになります。

キャリアプランを立てることで明確な目的意識が生まれるため、意欲的にスキル向上に取り組み、キャリアアップを実現しやすくなります。なお、キャリアデザイン・キャリアプランニングの結果、現職ではなく転職が有効だと考えられる場合に、転職することで理想的なキャリアアップが叶えやすくなるでしょう。

「キャリアカウンセリング」で専門家のアドバイスを受ける

「キャリアカウンセリング」は、障害者のための就労支援機関や転職エージェントのスタッフが、障害のある求職者に職業に関するアドバイスをすることです。

キャリアカウンセリングを受けることで、自身に合う職業や必要な知識・スキルを身につける方法などについて、適切なサポートを得ることができます。また、前述したキャリアプランニングの支援や職場実習が利用できるケースもあるため、より具体的なキャリアプランが描きやすくなります。

「キャリアパス」が明確な仕事を探す

「キャリアパス」は、職位や収入などを向上させるために何が必要かについて、企業側が明確化したものです。キャリアアップの道筋を企業側が従業員に提示することで、モチベーションやスキルの向上を促すことができます。キャリアパスが示されている企業、なおかつキャリアパスと自身のキャリアプランが合う企業ではたらくことで、理想的なキャリアアップを実現しやすくなるでしょう。

障害者雇用における職種別キャリアアップの例

キャリアアップ

障害者雇用でどのようなキャリアアップを目指すことができるのか、その一例を次の職種別にご紹介します。

  • 事務職
  • 技能職
  • 営業職
  • ITエンジニア

事務職

事務職としてキャリアアップを目指す際は、その「専門性」がポイントになります。事務には経理事務・金融事務・英文事務などさまざまな種類のものがありますが、専門性に特化したスキルを身につけることでキャリアアップが目指せます。例えば経理事務は日商簿記、英文事務はTOEICなど、スキルを証明するためのスキルを取得すると効果的です。

技能職

技能職には、分野ごとにさまざまなスキルや資格が求められます。さらに責任者や管理職を目指す場合は、チームをまとめるためのコミュニケーション能力も必須です。作業工程や品質の管理や分析、課題を解決するための論理的思考力などを身につけることで、キャリアアップにより有利になることもあります。

営業職

営業職のキャリアアップとして、営業管理職やマネージャーなどの職種が一般的です。営業スキルそのものより、マネジメント能力を身につけることが重要で、次のような要素から構成されます。

  • チームの目標を達成するためのマーケティング能力
  • チームメンバーをまとめるためのコミュニケーション能力
  • プロジェクトを管理するためのプロジェクトマネジメント能力

ITエンジニア

経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」によると、ITエンジニアの人材不足は年々深刻化しており、2030年には最大79万人が不足すると予想されています。ITエンジニアには、PCスキルやプログラミング言語などの知識・スキル、チーム開発のためのコミュニケーション能力などが求められます。

ITエンジニアのキャリアアップとして、ITスペシャリスト・ITコンサルタント・AIエンジニア・データサイエンティストなどが一般的です。それぞれ必要とされる専門知識は大きく異なるため、目指すキャリアに合わせた学習が必要です。

キャリアアップには支援機関やサービスを活用しよう

転職支援機関

障害者雇用のキャリアアップを考える際は、障害者の就労のための支援機関のサポートを活用することが大切です。代表的な支援機関として、「障害者就業・生活支援センター」「就労移行支援事業所」などの公的機関や、障害のある方の転職に特化した「転職エージェント」などがあります。

これらの支援機関では、転職活動に関するアドバイスはもちろん、専門知識があるスタッフのキャリアカウンセリングが受けられることもあります。現職のままで理想のキャリアアップが難しい場合は、転職を検討してはいかがでしょうか。

転職エージェントでは、求人紹介に加えて丁寧なキャリアサポートも受けられることが魅力です。自身がどんなキャリアプランを描いて転職を希望しているかを伝えることで、理想的なキャリアアップを実現しやすくなるでしょう。

障害者雇用のキャリアアップには「dodaチャレンジ」がおすすめ

障害者の方がキャリアアップを実現させるためには、キャリアプランニングを丁寧に行い、自身の理想とするキャリアアップを実現するまでの道筋を明確化することが大切です。

自身のキャリアプランを客観的にまとめるためには、専門知識があるキャリアアドバイザーに相談するのがおすすめです。キャリアアップの実現には転職が必要と判断した場合は、現在の知識やスキルを踏まえたキャリアプランの適切なアドバイスを受けることができ、転職活動を有利に進められるでしょう。

障害者の方のための転職・就職支援サービス「dodaチャレンジ」では、さまざまな障害のある方がキャリアアップを実現できるような求人を紹介しています。キャリアアドバイザーへの相談も無料で行えるので、キャリアアップでお悩みの場合はこの機会にぜひご相談ください。

公開日:2024/8/29

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
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  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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