障害者の転職は難しい?その理由や対策方法を解説
障害者の方は、障害特性や症状などの影響で、業務において困難なことが生じがちです。現在の職場の条件や環境が良くない場合は、「転職」を考えることもあるでしょう。しかし、「障害者の転職は難しい」という話もあるため、不安な方も多いかもしれません。そこで本記事では、障害者の転職が難しいといわれる理由や対策について、詳しく解説します。
目次
障害者の転職の現状
障害者の方の転職事情について、まずは次のポイントから解説します。
- ハローワーク申し込み後の就職率は約44%
- 「法定雇用率」は2.5%に引き上げられている
ハローワーク申し込み後の就職率は約44%
厚生労働省の発表によると、ハローワークに申し込んだあとの障害者の就職率は約44%となっています。一方で、健常者を対象とした同様の調査では就職率は26%となっており、むしろ健常者のほうが就職率が低いのです。したがって、障害者だからといって転職が難しいというわけではなく、就職率だけを見れば比較的良好であるといえるでしょう。
「法定雇用率」は2.5%に引き上げられている
ハローワークにおける就職率が高い理由として、近年の「法定雇用率」の上昇が考えられます。法定雇用率とは、障害者雇用促進法43条第1項により、企業が雇用すべきと定められている障害者の割合です。
例えば従業員数120人の企業の場合は、「120×0.025=3」となり、少なくとも3人以上の障害者を雇用する必要があります。この法定雇用率は、2018年4月に2.2%、2021年3月に2.3%、2024年4月から2.5%と段階的に高まっており、2026年7月からは2.7%となります。言い換えれば、以前と比べて障害者雇用枠で就労できる可能性が高まっているということです。
障害者の転職が「難しい」といわれる理由
障害者の転職事情は以前と比べて好転していますが、それでも次のような理由から「障害者の転職は難しい」といわれています。
- 安定的にはたらける体調・状態ではない
- 自身の障害への理解が不足している
- 必要なスキルが不足している場合がある
安定的にはたらける体調・状態ではない
障害の種類にもよりますが、治療が必要な状態もしくは症状に波がある場合は、「不安定」と見なされて採用されないことがあります。そのため転職を目指す場合は無理をせず、まずは体調回復や治療に専念しましょう。体調が安定してきた段階で職業準備性を整えて、リワーク(復職支援)プログラムに参加したり、就労移行支援事業所を検討したりするなど、主治医と相談しながら転職活動を進めることが大切です。
自身の障害への理解が不足している
障害者が就労する場合は、基本的に「合理的配慮」が必要となります。しかし自身の障害を理解していなければ、「どんな配慮が必要か」が明確化できず、企業側に懸念を与えてしまいかねません。そのため、自身の障害について理解し、「何ができないか」「どんなサポートがあれば就労できるか」を考えることが大切です。
必要なスキルが不足している場合がある
就労経験が少ない場合は、知識やスキルが不足していることがあります。法定雇用率が上昇したとはいえ、企業側の採用要件が下がったわけではありません。採用される可能性を高めるために、まずはできることから学習したり、資格を取得したりしましょう。
障害者の転職に関する企業側の事情
次のような企業側の事情から、障害者の転職が難しいこともあります。
- 合理的配慮の提供が容易ではない
- 障害への理解がある管理職が少ない
- 障害者の離職率が高い傾向がある
合理的配慮の提供が容易ではない
障害者を雇用するにあたり、企業側は障害特性や体調に合わせて、合理的配慮を行う必要があります。例えば、車椅子でも移動しやすいデスク環境を整えたり、フレキシブルな勤務時間に対応したりするなどです。しかし、業務内容の都合上、合理的配慮が提供できない部門や職種で、障害者の受け入れができないこと場合があります。
障害への理解がある管理職が少ない
管理職が障害者のはたらくうえでのニーズに対応しきれないケースもあり、それが障害者雇用のハードルとなっていることもあります。例えば、コミュニケーションの取り方や配慮の仕方、人材活用の方法などでさまざまな配慮が必要です。
しかし、管理職にその知識や経験がなければ、健常者の雇用を優先してしまうことがあります。制度上は障害者雇用が促進されてはいますが、臨機応変に対応できる体制や知見が企業側にないなど、障害者に対する現場の理解がまだ追い付いていないのが現状です。
障害者の離職率が高い傾向がある
健常者と比べて障害者の場合は、一般的に転職後の定着率が低い傾向があります。厚生労働省の「障害者雇用の現状等」によると、障害者が転職してから1年後の平均的な定着率は7割前後です。一方で健常者を対象とした調査では、大卒者の就職1年後の離職率は10.6%、つまり約9割が定着しています。
企業は採用活動に相応のコストをかけるため、できるだけ自社で長期間はたらいてくれる人材を求めます。しかし、障害者と健常者では1年後の離職率に約3倍もの開きがあるため、どうしても健常者の雇用を優先してしまいがちなのです。
障害者の方が転職を成功させるためのポイント
障害者の方を取り巻く雇用環境は、制度上は改善しつつありますが、企業側の体制が整っていないため、障害者の転職が難しい場面もあります。そのため、次のようなポイントを意識することが大切です。
- 自身の障害特性について理解する
- 「障害者雇用枠」での転職を目指す
- 各種支援機関のサポートを受ける
自身の障害特性について理解する
まずは自身の「障害特性」を適切に把握しましょう。障害特性は人それぞれで、無理をしないことが特に大切なので、「どんな仕事を避けるべき」「どんな配慮を受ければはたらきやすいか」を理解することが大切です。障害者雇用枠やオープン就労を目指す場合は、合理的配慮を受けるために、自身の障害特性について企業側に開示する必要があります。クローズ就労の場合でも、自身の体調と向き合うために障害特性への理解が欠かせません。
「障害者雇用枠」での転職を目指す
前述したように、企業側の受け入れ体制が整っていない場合、障害者の転職は難しい傾向があります。そのため、一般雇用枠ではなく「障害者雇用枠」を目指すのがおすすめです。障害者雇用枠では、企業側の体制が整っており、障害特性に応じた合理的な配慮が受けやすいため、安心してはたらくことができます。ただし、障害者雇用枠は障害者手帳が必須となるため、障害者手帳がない場合は一般雇用枠でのオープン就労がおすすめです。
各種支援機関のサポートを受ける
障害者の転職はさまざまな理由から難しいことがあるため、自分だけの力では成功させづらいものです。そこで各種支援機関やサービスを活用することで、自身の障害特性に応じた仕事を探したり、はたらきやすい職場の紹介を受けたりすることができます。
障害者の転職におすすめの支援機関・サービス
障害者の方が転職をスムーズに行うためには、次のような支援機関・サービスを利用するのがおすすめです。
- ハローワークの障害者向け相談窓口
- 就労移行支援事業所
- 障害者向けの転職エージェント
ハローワークの障害者向け相談窓口
全国のハローワークには、障害者向けの相談窓口が設けられています。障害者雇用に関する専門知識がある担当者が対応してくれるので、自身の障害特性や体調に合う障害者枠の求人を紹介してくれます。履歴書作成や面接対策など、転職活動に必要なサポートも受けられることが魅力です。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、はたらくための知識やスキルの習得、転職活動のサポートを提供している機関です。転職後も定着支援として、困りごとや悩みの相談ができるので、障害者の就労の課題である離職の対策としても安心です。なお、就労移行支援事業所では求人の紹介は行っていないため、転職活動はハローワークのような機関で行う必要があります。
障害者向けの転職エージェント
障害者向けの転職エージェントは、障害者の就労に特化したサービスで、自身の障害特性や適性に合う求人の紹介が受けられます。キャリアアドバイザーに無料で相談して、障害特性を考慮したはたらきやすい職場について知ることができるのも魅力です。また、転職活動で欠かせない履歴書や面接などの対策サポートも受けられるので、安心して就職活動ができるでしょう。
障害者の転職には「dodaチャレンジ」がおすすめ!
障害者の転職事情は、法定雇用率の引き上げにより改善しつつあり、ハローワークの就職率も伸びています。しかし、一般企業は障害者の受け入れ態勢が不十分なこともあり、それが「障害者の転職が難しい」といわれる理由でもあります。そのため、障害者雇用枠やオープン就労などでの転職を目指すのが理想的です。
障害者の方が障害者枠での就労を目指すなら、パーソルダイバースの転職支援サービス「dodaチャレンジ」がおすすめです。dodaチャレンジでは、さまざまな障害のある方が安心してはたらける企業の求人を紹介しています。キャリアアドバイザーへの相談も無料で行えるので、この機会にぜひご相談ください。
まずは、キャリアアドバイザーに転職相談を
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転職について不安なことも
障害者雇用の知りたいことも
キャリアドバイザーが親身にお話をうかがいます
公開日:2024/10/30
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士