PTSDになったら休職すべき?休職・復職の手順や転職のポイントを解説
「PTSD」は過去に受けた心の傷が原因となり、精神的な不調が生じる疾患です。ふとしたことでPTSDの症状が出るため、日常生活や仕事にさまざまな影響があります。
そのため、PTSDと診断された場合は休職を検討することが大切ですが、その手順が分からなかったり、復職できるか心配だったりするのではないでしょうか。そこで本記事では、PTSDがある方が休職・復職する手順や、 転職を目指す際のポイントを解説します。
目次
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは
PTSDについて、まずは次のポイントから見ていきましょう。
- 心の傷(トラウマ)が原因となる精神疾患
- PTSDの主な症状は3種類
- 「急性ストレス障害」との違い
心の傷(トラウマ)が原因となる精神疾患
「PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)」は、日本語では「心的外傷後ストレス障害」と呼ばれ、過去に受けた心の傷が原因でさまざまな症状が出る精神疾患です。
例えば自然災害や事故、暴力・虐待などの被害、職場におけるパワハラ・セクハラが心の傷(トラウマ)になります。時間が経ってからも、ふとしたきっかけで辛いことを思い出し、症状が出てしまうのです。
PTSDの主な症状は3種類
PTSDの主な症状として、次の3種類のものが挙げられます。
侵入症状 | トラウマが突然蘇る「フラッシュバック」が起こる |
回避症状 | トラウマの原因に関連する場所や話題を極力避けようとする |
覚醒症状 | 常に精神が張り詰めて「不眠」や「イライラ」などの症状が生じる |
フラッシュバックによる精神的・身体的な苦痛はもちろん、それを避けるために他人との関わりや思考を避けようとすることで、社会生活に困難が生じてしまいます。
「急性ストレス障害」との違い
PTSDと「急性ストレス障害」は、症状や原因が基本的に同じなので混同されることが多いです。急性ストレス障害はいわばPTSDの前駆症状であり、急性ストレス障害の症状が1週間以上続くと、診断名がPTSDに変わります。つまり、両者には深い関係があるということです。
PTSDと診断された場合の対処法
仕事をしている方がPTSDと診断された場合は、次のような対処について検討が必要となります。無理してはたらき続けると症状が悪化してしまうため、医師やカウンセラーと相談して慎重に検討しましょう。
- まずは医師の診断を受けて通院する
- 現職で配慮を得てはたらき続ける
- 休職を検討して治療に専念する
- 復職が難しい場合は転職を検討する
まずは医師の診断を受けて通院する
PTSDは多くの場合、数ヶ月で回復する可能性がある疾患です。早めの対応と適切な治療、しっかりとした休養などにより、重症化を防いで回復させることができます。
PTSDの状態が1年以上など慢性化して長引くほど、うつ病や不安障害などを併発しやすくなるため、社会生活に影響が出てしまうリスクが高まります。そのため、まずは医師に相談して診断を受けて、その後の対応を慎重に検討することが大切です。
現職で配慮を得てはたらき続ける
PTSDの原因となるトラウマは、医師の診断を受けることではっきりすることが多いです。そのため、次のような「配慮」を職場で得てストレスの原因から離れることで、今のままはたらき続けられる場合があります。
- 業務量を減らす
- 短時間勤務へ移行する
- 休憩や休日を増やす
- 職場環境を変える
例えば、事故や上司のパワハラ・セクハラがトラウマの原因であれば、別の部署へ異動するなどの対応で症状を軽減できる可能性があります。そのほかにも、仕事量が多過ぎることでストレスが溜まると、それがトラウマの原因ではなくても症状が悪化するため、業務量や仕事内容の調整も大切です。
ただし、前述したようにPTSDの状態が長引けば悪化してしまうので、後述するように休職も検討してみましょう。
休職を検討して治療に専念する
現職で十分な配慮を得るのが難しい場合や、PTSDの症状が深刻ではたらくのが困難な場合は、「休職」を検討する必要があります。まず医師に相談して「診断書」を作成してもらい、休職が必要な旨を上司に報告しましょう。
なお、ほとんどの企業において「私傷病休職」は無給扱いとなっていますが、給与補償制度や傷病手当金などの支援制度が利用できることがあるので、職場に確認してみてください。
復職のタイミングについては、主治医の許可が出たうえで、自身も「はたらきたい」という意欲が出るまで待つことが大切です。急いで復職すると再びPTSDの症状が出て、再度の休職が必要になってしまいかねません。
復職が難しい場合は転職を検討する
職場環境や人間関係など、現職の環境が原因でPTSDになった場合は、休職で症状が緩和したとしても復職が難しいことがあります。その場合は、無理をせずに転職して職種や環境を変えることで、PTSDのフラッシュバックの原因から遠ざかり、安定してはたらける環境が手に入るでしょう。
PTSDで休職して症状を改善するポイント
休職中は次のようなポイントを意識して、治療と心身の回復に専念することが大切です。
- ストレスが軽減できる環境で過ごす
- 復職を急ぐことなく症状の回復を待つ
- 症状の改善後はリワークを活用する
ストレスが軽減できる環境で過ごす
休職期間の初期は、とにかく心身を休ませることが大切なので、ストレスができるだけ少ない環境で過ごす必要があります。自分にとって何がストレスになるかを把握したうえで、ストレスの原因を遠ざけましょう。
また、休職中は時間に余裕ができるため、生活習慣が乱れることがあります。しかし、メンタル不調の原因になりかねないので、規則正しい生活リズムを意識することもポイントです。
復職を急ぐことなく症状の回復を待つ
仕事を休むことに罪悪感が出たり、「このままではいけない」と焦ったりすることがありますが、それがストレスになり症状悪化の原因となることがあります。
PTSDの治療の初期段階では、心身の疲労から判断力が低下しているため、今後のことを考えるのは症状の改善を待ってからにしましょう。「休み方が分からない」という場合は、「何もしないこと」も治療のひとつだということを意識してみてください。
症状の改善後はリワークを活用する
PTSDの症状が十分に改善されたら、「リワーク」を活用して復職の準備を進めることも有効です。リワークとは、精神疾患が原因で休職している人に向けて、復帰のためのリハビリを実施するプログラムです。
リワークは医療機関や地域障害者職業センター、企業などで行われており、再就職・転職を想定した「はたらくための訓練」が行われます。主治医と相談の上で利用を検討するとよいでしょう。
PTSDの方が受けられる就労に関する支援・サービス
PTSDのある方が受けられる支援やサービスには、次のようなものがあります。
- 傷病手当金
- 就労移行支援
- 障害者向けの転職エージェント
傷病手当金
「傷病手当金」は、病気や怪我で休職中の人に向けて、生活を保障するために設けられた健康保険の制度です。次の条件を満たすことで、傷病手当金の支給が受けられます。
- 業務外の事由による病気やケガが原因で休職中
- 連続する3日間を含み4日以上就労できていない
- 休職期間内に給与の支払いを受けていない
傷病手当金の制度を利用することで、経済的な不安を減らして治療に専念しやすくなるでしょう。
就労移行支援
「就労移行支援」は、一般企業への就職を目指す障害者の方を対象に、就労に必要な知識や能力の習得をサポートするサービスです。就職活動とその後の定着支援なども受けられるため、復職や転職に備えることができます。
ただし、障害者の方や障害者総合支援法の対象となる難病がある人が対象なので、PTSD単独では利用できないことが多いです。PTSDはうつ病や不安障害などを併発するケースが多いので、相談してみることをおすすめします。
障害者向けの転職エージェント
障害者向けの転職エージェントは、障害や疾患がある方の就労に特化した転職支援サービスで、症状や自身の適性に合う求人の紹介が受けられます。サービスは無料で、キャリアアドバイザーに相談して、PTSDの特性を踏まえた「はたらきやすい職場」について知ることができます。
さらに、転職活動で欠かせない履歴書や面接などの対策サポートも受けられるので、安心して転職活動ができるでしょう。
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PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、つらい症状が突然出ることがあるため、社会生活で困難が生じがちです。PTSDは早めの治療で回復できる可能性がありますが、休職や復職が難しい場合は転職を検討してみましょう。
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公開日:2025/1/29
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア開発支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士