発達障害がある人はIT業界に向いている?その理由や必要なスキルを解説

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発達障害がある人は、IT業界に向いているのでしょうか。諸説ありますが、IT業界では集中力や観察力が求められるため、障害特性によってはIT業界に適している可能性があると考えられています。そこで本記事では、発達障害がある人がIT業界に向いているといわれる理由や、IT業界ではたらくためのポイントについて解説します。

発達障害がある人がIT業界に向いている理由

「発達障害がある人がIT業界に向いている」といわれていますが、その理由について次のポイントから解説します。

  • 発達障害の障害特性がIT職と相性が良い
  • 大手IT企業では発達障害のある人が活躍している

発達障害の障害特性がIT職と相性が良い

発達障害の障害特性として、「特定分野への強い集中力」や「細部への優れた観察力」などが挙げられます。IT業界では論理的思考力が問われる場面が多いため、知的好奇心から生じる興味の偏りがIT分野に向けば、高いパフォーマンスを発揮できる可能性があるのです。

また、発達障害がある人はコミュニケーションが苦手な傾向がありますが、IT職では対人関係が求められる場面が比較的少ないため、IT職との相性が良いと考えられています。ただし、発達障害の特性や本人の性質には個人差があるため、必ずしもIT分野に向いているとは限らないことに注意が必要です。

大手IT企業では発達障害のある人が活躍している

GoogleやMicrosoftなど、世界的な大手IT企業が集まるアメリカのシリコンバレーでは、発達障害やその傾向がある人が活躍しているといわれています。企業によっては、障害者雇用枠での採用者に対し、ITに関する研修を一定期間行う企業もあるほどです。

その背景として、発達障害がある人の「論理的・規則的な法則を意識しがちな特性」と、IT分野に必要な論理的思考やプログラミングなどの要素の親和性があると考えられています。日本国内においても、一部のIT系企業で発達障害がある人を積極的に採用する動きが進んでいます。

発達障害がある人に向いているIT系の職種

発達障害がある人には、IT業界のなかでも次のような職種が向いていると考えられます。ただし、個人の障害特性や適性などにより向き不向きがあるため、あくまで転職時の参考にしてください。

  • プログラマ
  • AIエンジニア
  • Webエンジニア
  • データアナリスト
  • ゲームプログラマ

プログラマ

IT系の職種と聞いてまず思い浮かべることが多い「プログラマ」は、システムやソフトウェアなどの機能を実装する職種です。プログラミング言語を駆使して、必要とされる機能を組み込んでいくため、高度な集中力や論理的思考力が欠かせません。

システムエンジニアの場合でも、システム設計の工程に関しては一人で黙々と課題に取り組むことが多いため、対人コミュニケーションが求められるシーンは比較的少ない傾向があります。

AIエンジニア

「AIエンジニア」は、AIやマシンラーニング・ディープラーニングなどの開発を担う職種です。マシンラーニングやディープラーニングは、AIが大量のデータを学習・解析するための技術であり、そのプログラム構築を担う職種は「機械学習エンジニア」と呼ばれることもあります。

AIエンジニアには、高度なアルゴリズムを駆使した実装が求められるため、専門的な知識・スキルはもちろん、論理的思考力や数学的知見が必須です。ASDやADHDなどの障害特性を活かして、知識・スキルを習得することで、先端IT分野のスペシャリストを目指せる可能性があります。

Webエンジニア

Webエンジニアは、顧客の要望に合わせてWebサイトを構築する職種です。マークアップ言語やプログラミング言語の知識は必要ですが、Web系の言語は習得難易度が低い傾向があるため、未経験の人でもチャレンジしやすいといわれています。

Web系サイトやサービスの開発ではデザインセンスも求められますが、この分野では発達障害の特性である「集中力が高い」「発想力や想像力が豊か」などの個性が生きやすいでしょう。近年のWeb業界では、在宅ワークやフリーランスで対応できる案件も増えているため、対人関係がストレスになりやすい人に向いています。

データアナリスト

「データアナリスト」は、アルゴリズムや統計などの情報科学理論を駆使して、さまざまなデータを分析する職種です。分析したデータから一定のパターンを導き、仮説を立てて企業や組織のプロジェクトの改善に役立てることが目的です。

例えば、商品やサービスなどの売上高に課題がある場合は、データアナリストがデータを分析して改善に効果的な情報を提供します。AIエンジニアと同じく、高度な数学的な知識や分析能力などが求められます。

ゲームプログラマ

ゲームプログラマは、ゲーム開発に特化したプログラマです。通常のプログラマと同じく、プログラミングやアルゴリズムに関する知識・スキルが求められますが、ゲームプログラマには数学・物理・グラフィックスに関する知見も必須です。

チームメンバーとのコミュニケーションは必要ですが、コーディングやデバッグなど個々のタスクには単独で取り組む傾向があります。また、ゲーム分野では独創的な発想やアイデアが求められることもあるため、その点でも発達障害がある人に向いているといえるでしょう。

発達障害がある人がIT業界ではたらくためのポイント

データアナリスト

発達障害がある人がIT分野ではたらくためには、次のようなポイントを意識するといいでしょう。

  • IT分野に興味をもって業務を理解する
  • 自身の発達障害の特性を理解する
  • コミュニケーションのコツを理解する
  • プログラミングの知識・スキルを習得する
  • 発達障害者向けの転職エージェントを利用する

IT分野に興味をもって業務を理解する

発達障害がある人は、特定分野への意欲や集中力が非常に高い傾向がありますが、それがIT分野に向いている必要があります。言い換えれば、IT業界に向いている特性があったとしても、IT分野に興味がなければはたらき続けるのは難しいということです。IT分野への興味関心があり、業務の内容を理解して必要な知識・スキルを習得することで、IT分野で活躍できるようになるでしょう。

自身の発達障害の特性を理解する

ひとくちに発達障害といっても、「ADHD(注意欠如・多動症)」「ASD(自閉スペクトラム症)」「LD/SLD(学習障害/限局性学習症)」は、それぞれ障害特性が大きく異なります。

そのため、自身の障害特性を理解して得意分野と苦手分野を把握することが、向いている仕事を判断するために欠かせません。障害特性を理解できていると、就職・転職のときに企業の担当者に説明しやすくなるため、適切な合理的配慮が得られて他メンバーと協働しやすくなるはずです。

コミュニケーションのコツを理解する

IT関連の業務では、チームで開発を進めることが一般的です。ほかの業種とは異なり、対人コミュニケーションが求められる機会は少ないです。しかし業務を円滑に進めるために、上流工程の担当者やほかのメンバーと一定のコミュニケーションは求められます。

プログラムの設計者の意図を引き出したり、ほかのエンジニアと連携したりするためには、「相手の主張を理解する力」や「相手に分かりやすく説明する力」が必要になります。とはいえ、臨機応変な雑談が求められるわけではないため、コミュニケーションのコツを理解することで、対応できる範囲が広がるでしょう。

プログラミングの知識・スキルを習得する

IT業界ではたらくために必須のスキルがプログラミングのスキルです。必要なプログラミング言語は前述した職種によって異なりますが、AIやビッグデータのような先端ITであれば「Python(パイソン)」が主流となっています。Webサイトであれば「JavaScript」、高度な演算やゲーム分野であれば「C++」などが必要です。

いずれのプログラミング言語であっても、プログラミングの基本的な手法や論理的思考力が求められる部分などは同じです。ただしビッグデータなどの先端IT分野や、高度なシステム・ゲーム開発などの場合では数学的な知識も必要になります。

発達障害者向けの転職支援サービスを利用する

発達障害がある人がIT業界を目指す場合は、自身の障害特性に合った「はたらきやすい」職場を探すことが大切です。しかし、そうした職場を独力で探すのは簡単ではないため、発達障害者の転職に関する専門知識があるプロのサポートを得るのがおすすめです。障害特性や自身の得意分野に合わせた仕事や環境を選ぶことで、合理的配慮を得ながら安心してはたらき続けることができるでしょう。

発達障害のある人が活用できる就職・転職サービス

発達障害がある人がIT業界への就職・転職を目指す場合は、次のようなサービスを活用することで、自身に適した「はたらきやすい環境」が見つかる可能性が高まります。

  • 発達障害者支援センター
  • 就労移行支援事業所
  • 障害者向けの転職エージェント

発達障害者支援センター

発達障害者支援センター」は、発達障害のある人を対象として、日常生活や仕事のサポートを提供する機関です。2025年時点で全国に90カ所前後あり、地方自治体・社会福祉法人・NPO法人などが運営しています。障害者手帳は必須ではなく、ハローワークとの連携もあるため、就職・転職について気軽に相談できます。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、障害がある方の職業準備性を整えたうえで、はたらくための知識やスキルの習得、就職・転職活動のサポートを提供している機関です。転職後も定着支援としてスタッフと定期的に連絡ができるため、困ったことや悩みがある場合の精神的なサポートも得やすくなっています。

なお、先端ITに関する仕事をお探しの発達障害がある人には、AIやデータサイエンスなど先端ITが学べる就労移行支援事業所「Neuro Dive(ニューロダイブ)」がおすすめです。後述する転職エージェント「dodaチャレンジ」との連携もできるため、理想的な職場が見つかるでしょう。

障害者向けの転職エージェント

障害者向けの転職エージェントは、障害者の転職支援に特化したサービスで、自身の希望や適性に合う求人の紹介が受けられます。キャリアアドバイザーに無料で相談し、自身の障害特性に合わせた適切な転職先について知ることが可能です。また、就職・転職活動で欠かせない履歴書や面接などの対策サポートも受けられるので、安心して就職活動ができます。

発達障害がある人の就職・転職には「dodaチャレンジ」がおすすめ!

ITエンジニア

発達障害者がある人は、「プログラマ」「Webエンジニア」「データアナリスト」など、IT業界の職種と相性が良い可能性があります。発達障害がある人がIT業界ではたらくためには、自身の障害特性を理解することや、プログラミングの知識・スキルを習得することが大切です。ただし、独力でIT業界に進むのはハードルが高いため、プロのアドバイスが得られる転職サービスを活用してみましょう。

発達障害がある人がIT業界への転職を目指すときは、パーソルダイバースの転職支援サービス「dodaチャレンジ」がおすすめです。dodaチャレンジの転職支援サービスでは、発達障害および二次障害について専門知識を持ったキャリアアドバイザーが一人ひとりの就職・転職を支援します。あなたに合った求人情報を探してご紹介するほか、面接・ 応募書類作成のサポートや面接対策、個別のご相談なども行いますので、安心して転職活動に臨めるでしょう。


公開日:2025/3/28

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア開発支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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