障害者手帳があることは職場にバレる?就職・転職や年末調整で気を付けるポイント
障害者手帳を取得することで、障害のある方はさまざまな経済的・福祉的なサポートを得ることができます。しかし、自身の障害を開示せずに一般企業や一般雇用枠で就労する「クローズ就労」の場合は、「障害者手帳を所持していることが勤務先にバレる可能性があるか」が心配なこともあるでしょう。
そこで本記事では、障害者手帳のことがクローズ就労でバレるかどうか、またバレる可能性を気にせずに安心してはたらく方法について解説します。就労について不安を抱えている障害者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
障害者手帳を取得していることは会社・職場にバレる?
障害者手帳を所持していることが、会社・職場にバレるかという点について、次のポイントから解説します。
- そもそも障害を勤務先に「オープン」にする必要はない
- 障害者手帳があるだけでは基本的にバレることはない
- 「障害者控除」で年末調整を行うとバレるので要注意
- 「還付申告」を行えば会社にバレるリスクが低くなる
そもそも障害を勤務先に「オープン」にする必要はない
「障害があること」は勤務先に開示する必要はなく、法的な義務も存在しません。そのため、自身の障害特性が業務の遂行や安定した就労に影響せず、なおかつ職場環境や働き方が心身に悪影響を与えないのであれば、オープンにする必要はないといえます。
このように、障害をクローズにしてはたらくこと自体に問題はなく、オープンにするかどうかは個人の自由です。しかし、障害者手帳を取得していることが職場にバレるかどうか、心配な場合は以下に示すような「各種手続き」に注意が必要になります。
なお、オープン就労やクローズ就労の詳細やメリット・デメリットについては、次の記事も併せてご参照ください。
障害者手帳を取得しているだけでは基本的にバレることはない
障害者手帳を取得しているだけでは、「障害があること」が会社や職場にバレることは、基本的にはないと考えられます。詳細は後述しますが、「障害者控除」を利用していない限りは、会社側から積極的に労働者の障害情報を入手する手段がないからです。
また、障害者手帳を使用して交通機関や公共施設などを利用したとしても、その情報が会社や職場に伝わることはありません。ただし、外部から見て明らかに分かるような障害がある場合や、障害者手帳を職場の人に見られた場合は、当然のことながら障害者であるとバレることになります。
「障害者控除」で年末調整を行うとバレるので要注意
年末調整で「障害者控除」を利用している場合は、会社が年末調整を行うタイミングで障害者手帳を取得していることがバレると考えられます。なぜなら、年末調整の申告書で「障害者控除」の項目に障害者本人の氏名を記載する必要があり、勤務先の担当者がその内容を確認するからです。
ちなみに障害者控除とは、障害者手帳を取得しているなど一定の条件を満たすことで、次のように控除が受けられる制度です。
区分 | 控除額 |
---|---|
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
また、年末調整ではなく自身で「確定申告」を行って障害者控除を申請した場合でも、翌年の住民税額が通常より減るため、勤務先の担当者が住民税決定通知書を確認すればバレる可能性があります。なお、障害者控除については次の記事で詳しく解説しているので、ぜひご参照ください。
「還付申告」を行えば会社にバレるリスクが低くなる
会社にバレることなく障害者控除を利用したい場合は、「還付申告」を行うことで、障害者控除が適用されていない分の税金を取り戻すことができます。2年以上前の所得に対して行えば、住民税決定通知書への影響がないため、障害者手帳を取得していることがバレるリスクは軽減できます。詳細については、管轄の税務署にお問い合わせください。
マイナンバー制度で障害者手帳を取得していることがバレる可能性は?
年末調整や確定申告のほかに、「障害者手帳を取得していることがバレるリスクがあるのでは」と心配になる要因が「マイナンバー制度」ではないでしょうか。マイナンバーと障害者手帳の関係についても、次のポイントから見ていきましょう。
- 国民の個人情報が民間企業に開示されることはない
- 企業がマイナンバーで従業員の障害情報を調べることはできない
国民の個人情報が民間企業に開示されることはない
まず大前提として知っておきたいのが、マイナンバーに紐づけられている国民の個人情報は、民間企業に開示されることはないということです。
デジタル庁のQ&Aによると、法令または条例で定められた行政手続に必要な場合を除き、民間事業者が従業員に特定個人情報を収集することはできないと定められています。マイナンバー制度は、あくまで行政機関同士の情報共有を効率化するための制度であり、民間企業や組織がマイナンバーの個人情報にみだりにアクセスすることはできないのです。
企業がマイナンバーで従業員の障害情報を調べることはできない
前述したように、マイナンバーに紐づけられている個人情報は厳重に管理されています。つまり、「障害者控除」や「障害年金」などの個人情報についても、民間企業に開示されることはないため、マイナンバーで障害者手帳を所持していることがバレる心配はないのです。たとえ企業側から従業員の障害情報を積極的に調べようとしても、システムや制度上不可能となっています。
障害者雇用なら「障害がバレないか」という心配をする必要がない
冒頭でも解説したように、労働者が自身の障害について「企業に開示しなければならない」という義務はありません。そのため、障害者手帳を取得していることを開示せず、一般雇用枠のクローズ就労で就職・転職することには何の問題もありません。
しかし、何らかのタイミングで障害者手帳を取得していることがバレた場合、職場に居づらくなってしまうケースがあります。障害をクローズにして業務を遂行できるかどうか不安がある場合は、「障害者雇用枠」を選ぶという選択肢も有効です。障害者雇用枠での就職・転職には次のようなメリットがあります。
- 職場で合理的配慮が受けやすい
- 支援機関のサポートが得られる
- 安心してはたらき続けられる
職場で合理的配慮が受けやすい
障害者雇用枠を利用して就職・転職をする場合は、必然的に自身の障害について企業に開示することになります。これにより企業側が障害特性を理解できるため、合理的配慮やサポートが受けやすくなるのです。例えば、業務内容・タスク配分や支援ツールの導入など、自身の障害に合った「合理的配慮」が得られるため、安心してはたらけるようになるでしょう。
支援機関のサポートが得られる
障害者雇用枠での就労では、各種支援機関のサポートが受けやすいため、就職・転職後の定着率が高い傾向があります。例えば「就労移行支援事業」は、就労のために必要な知識やスキルの習得に加えて、就職後の定着サポートも受けられる就労支援サービスです。
「障害者職業総合センター」の調査によると、障害者の就職から1年間の職場定着率は一般求人のクローズ就労の場合は約30%ですが、就労継続支援を受けた場合は約70%に達しています。これは大きな違いだといえるでしょう。
安心してはたらき続けることができる
障害者の方が一般雇用枠で障害を「クローズ」にしてはたらく場合は、職場から合理的配慮が得られないことや、前述した「障害者手帳の所持が会社にバレないか」など、さまざまな不安があります。一方で障害者雇用枠であれば、もし体調が悪化したり対応が難しい業務が発生したりしても、職場で協力を得て対処しやすくなるので安心です。
障害者手帳を取得している方が障害者雇用枠で就労する方法
障害があることを隠してはたらき続けるのが難しいと感じた場合や、障害者手帳を取得していることがバレる不安を抱えてはたらくのがつらい方は、障害者雇用枠で障害を「オープン」にしてはたらくことを検討してみてはいかがでしょうか。障害者手帳を取得している方が障害者雇用枠で就労する方法には、次のようなものがあります。
- ハローワークの障害者向け相談窓口
- 障害者専門の転職エージェント
ハローワークの障害者向け相談窓口
全国のハローワークには、障害者向けの相談窓口が設けられています。さまざまな障害や障害者雇用に関する専門知識がある担当者が、自身の障害特性や体調に合う障害者枠の求人を紹介してくれる窓口です。履歴書作成や面接対策などのサポートも受けられるので、安心して転職活動ができるでしょう。
障害者専門の転職エージェント
障害者専門の転職エージェントは、障害者の就労に特化したサービスで、自身の適性や障害特性に合った求人の紹介が受けられます。自身で探すことが難しい大企業の求人も、非公開求人も含めて取り扱いが多いため、知識・スキルを発揮できる転職先が見つかりやすいことが魅力です。また、ハローワークと同じく履歴書作成や面接対策などのサポートも受けられます。
障害者雇用枠での就労は「dodaチャレンジ」へ!
障害者手帳を取得しているだけでは、勤務先に障害のことがバレる可能性は低いですが、年末調整で障害者控除を利用すると確実にバレてしまいます。クローズ就労そのものは決して悪いことではありませんが、「障害がバレるかどうか」不安を感じながらはたらき続けるのはつらいでしょう。障害を開示して「オープン就労」であれば、安心してはたらける環境が手に入るはずです。
合理的配慮やサポートを受けながら安心してはたらきたい障害者の方には、パーソルダイバースの転職支援サービス「dodaチャレンジ」がおすすめです。dodaチャレンジでは、さまざまな障害のある方が安心してはたらける企業の求人を紹介しています。キャリアアドバイザーへの相談も無料で行えるので、障害者手帳や就労についてお悩みの場合はこの機会にぜひご相談ください。
まずは、キャリアアドバイザーに転職相談を

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キャリアドバイザーが親身にお話をうかがいます
公開日:2025/3/28
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア開発支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士