障害者控除とは?住民税や所得税の負担を軽減できる要件・金額・申請方法

控除と書かれたフキダシと電卓とお金

障害のある方には、制度によるさまざまな優遇措置が設けられています。そのなかでも手厚い制度の1つが、障害者の税負担を低減する「障害者控除」という制度です。
この記事では、障害者控除という制度の概要からその対象となる方、申請の手順まで解説します。まずは制度をよく知り、ご自身が対象に当てはまる場合はぜひ申請を検討してみてください。

障害者控除とは

障害者控除とは、端的にいうと「障害者が納めるべき所得税や住民税の金額を減免してもらえる制度」です。
この制度は、「自身もしくは同一生計配偶者、扶養親族」の方が「所得税法上の障害者」に当てはまっている場合に所得控除を受けられ、納める税金の金額を減らすことができます。

ちなみに「所得控除」とは、所得から課税対象となる金額を一定で減らすことができる制度です。所得控除を受けることで、納めるべき税金の額を実際の所得より、一定の金額を少なく計算してもらえるというわけです。
所得控除で納税額の減免を受けられる税金の種類は、所得税と住民税、そして相続税となっています。

障害者控除の対象者

障害者控除の対象に当てはまり、控除を受けられるのはどのような方なのでしょうか。ここでは、障害者控除の対象者についても見ていきましょう。

障害者控除の対象となる方の区分

  • 障害者の方ご本人
    身体障害および精神障害の認定と手帳の交付を受けている方、知的障害と判定された方
  • 特別障害者の方ご本人
    身体障害1級および2級、精神障害1級の認定を受けた方、重度の知的障害と判定された方
  • 同居特別障害者に当てはまる方
    特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族で、納税者ご自身や配偶者の方、あるいは彼らと生計を同一にしている親族の方のいずれかと同居している方(つまり配偶者や扶養親族と同居中の特別障害者の方)

上記の方々の他に、戦傷病者手帳の交付を受けている方や、12月31日現在で6ヶ月以上寝たきりの状態にある方なども対象者に含まれます。

また上記のように、障害者控除の対象は障害のある方本人だけではありません。そのご家族や同居している方も控除の対象に含まれる場合があります。
参考: 国税庁「No.1160 障害者控除」

障害者控除で控除される金額

お金の疑問を持っているスーツ姿の人

障害者控除では、所得からどのくらいの金額の控除が受けられるのでしょうか。ここでは、障害者控除対象となる3つの区分について、それぞれ控除される金額をご紹介します。

区分 所得税控除額 住民税控除額
障害者の方 27万円 26万円
特別障害者の方 40万円 30万円
同居特別障害者 75万円 53万円

控除対象者の年間の所得から上記の金額を差し引いて、税額を計算してもらう仕組みです。具体的に納税額がどれだけ少なくなるかは、人によって税率などが異なるためここで「いくらの控除が受けられる」と簡単には述べられません。
しかし、おおまかな金額を計算する方法はあり、納税額の目安をある程度知ることは可能です。次の項目では、障害者控除の金額を計算する方法についてご説明します。

障害者控除の計算方法

ここからは、障害者の方が控除によりどのくらい納税額を減らせるか、おおよその目安を計算する方法をご紹介します。まず、障害者控除で控除される金額を計算する式や、計算の手順から見ていきましょう。

障害者控除で減免される金額の計算方法

1. 課税所得金額を計算する
課税対象となる所得金額の計算式は、以下の通りです。

課税対象額=年収-給与所得控除額-(基礎控除額+障害者控除額)

上記の式に、「年収300万円で一人暮らし、精神障害者3級福祉手帳交付済」のA子さんの例を当てはめて計算してみましょう。
まず基礎控除額とは、一定以下の所得の方すべてが受けられる控除で、A子さんの基礎控除額は「48万円」となります。障害者控除額は27万円ですから、上記の式の「基礎控除額+障害者控除額」の部分は「75万円」となります。

次に、給与所得控除額についても調べてみましょう。給与所得控除額は年によって変動します。下記の表は令和4年12月時点の情報を元にしたものですので、最新の情報は「国税庁のWebサイト」でご確認ください。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円から1,800,000円まで 収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)

参考:国税庁「No.1410 給与所得控除」

上記の表に当てはめると、A子さんの給与所得控除額は「300万×30%+8万円=98万円」となります。つまりA子さんの課税対象額は「300万円-98万円-75万円=127万円」となります。

2. 所得税の税率を確認して納税額の目安を計算
下記の表も、令和4年12月時点の情報を元にしたものです。最新の情報は国税庁のWebサイトでご確認ください。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」

上記によると、A子さんの課税所得金額は127万円ですから、税率が5%となることが分かります。

3. 障害者控除で控除される金額に税率をかけて計算する
最後に、A子さんが障害者控除で控除される金額に税率5%をかけて、障害者控除で控除される税額を計算してみましょう。

「A子さんの障害者控除額27万円×5%=13,500円」

A子さんが所得税から障害者控除で引いてもらえる金額の目安は「13,500円」であることが分かります。
ちなみに住民税の税率は、多くの市区町村で10%となっています。これに当てはめると、「27万円×10%=27,000円」が、A子さんの住民税から障害者控除で減免してもらえる金額となります。

障害者控除の申請方法

年末調整の用紙

障害者控除の制度についてご説明してきましたが、控除を受けるためには申請を行わなければなりません。ご自身が対象者であっても、未申請の場合は控除を受けられないため、早めに申請を検討しましょう。

なお、障害者控除を受ける方が個人事業主の場合は、確定申告の際に申請を行うことができます。確定申告書の「障害者控除」の欄に、必要事項を記入することで申請を行えます。
また会社にお勤めの場合は、年末調整の際に申請を行うことができます。その際は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に指定の欄がありますので、そこに必要事項を記入してください。会社勤めの方が年末調整での申請を逃してしまった場合は、確定申告で申請することができます。

障害者控除と扶養控除(配偶者控除)を併用できるケース

障害者控除を受ける場合、他の控除に関する制度も確認しておきましょう。障害者控除と併用できる控除の制度はいくつかあり、特に当てはまる方が多いと思われるのが扶養控除でしょう。
障害者控除は、要件を満たすことで扶養控除と併用して受けることができます。

扶養控除を受ける要件

扶養控除を受けられるのは、扶養親族にあたる人が12月31日現在で、以下要件のすべてに当てはまる方です。

1.配偶者以外の親族(6親等内の血族か、3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された「里子」、あるいは市町村長から養護を委託された高齢者の方
2.納税する本人と生計が同一である
3.年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
4.青色申告者の事業専従者として年間で1度も給与を支払われていないか、白色申告者の事業専従者ではない
参考: 国税庁「No.1180 扶養控除」

上記の扶養親族に当てはまる方というと、ご家庭内ではお子さんが該当することも多いと思います。お子さんの年齢が16歳以上で、お子さんの合計所得金額が48万円以下の場合、障害者控除と扶養控除を併用して受けることができます。

まとめ

障害者控除の概要や控除を受ける手順などをご紹介しましたが、改めてご自身が控除の対象であることを知った障害者の方もいると思います。手続きが難しそうに感じられるかもしれませんが、障害者控除の申請はご紹介した通り、毎年提出している確定申告か年末調整の書類に必要事項を記入するだけで済みます。個別の用紙記入や申請は不要と、思いのほか簡単に申請が完了します。
申請のハードルが意外と低い「障害者控除」ですが、制度をご存じなければ、また年末調整等の書類に必要事項を記入していなければ、受けられる控除も受けられないままになってしまいます。障害者控除で減免してもらえる税金の負担は決して少ないものではありませんので、経済面での不安を減らすためにもぜひ申請を考えてみることをおすすめします。

dodaチャレンジの転職・就職ガイドでは、障害がある方の転職活動に関するアドバイスのほか、障害年金の受給方法などの「障害者の方の経済面の不安を軽減できる制度」に関する情報も掲載しています。現在のお仕事や、今後の生活について不安やお悩みをお持ちの方は、ぜひ他のコラム記事もご覧になってみてください。

公開日:2022/12/27

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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