【社労士が解説】はたらきながら障害年金はもらえる?受給条件・審査・等級への影響を解説

障害年金のテキストイメージ

「はたらき始めたら障害年金がもらえなくなるのでは?」と不安に思う必要はありません。障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に制限を受ける方を支援する公的年金制度です。「はたらけない人だけの制度」ではないため、障害の状態によっては、はたらきながらでも受給できます。

この記事では、はたらきながら障害年金を受給するための条件や審査のポイント、所得制限や更新時の対策などを、社会保険労務士がわかりやすく解説します。

   

この記事を監修した人

玉上 信明氏

玉上 信明 (たまがみ のぶあき)

三井住友信託銀行にて年金信託や法務、コンプライアンスなどを担当。
定年退職後の2017年1月に社会保険労務士玉上事務所を開業し、執筆やセミナー講演を中心に活動中。人事労務問題を専門とし、企業法務全般・時事問題・補助金業務などにも取り組んでいる。

■資格
社会保険労務士・健康経営エキスパートアドバイザー

■監修・執筆実績
M3 Career 産業医ポータルサイト
Money Forwardクラウド
FREENANCE MAG

障害年金をもらいながらはたらけるって本当?

障害年金を受給したい・している方で、「はたらくと年金受給はどうなるの?」と疑問に思う方は少なくありません。まずは、障害年金をもらいながらはたらけるかについてお答えします。

就労していても障害年金は受給できる

障害年金は障害によって、生活や就労に制限がある方を支援するための制度です。そのため、「はたらけないこと」そのものが受給条件ではありません。障害の状態や日常生活への影響などが基準を満たしていれば、就労していても障害年金を受給できる場合があります

審査で見られるポイント

障害年金の審査では、「はたらいているか」だけでなく、「どのような支援や配慮を受けながらはたらいているか」が重視されます。例えば、職場で業務軽減や休憩・通院への配慮を受けながら就労している場合は、障害の程度を判断する際の重要な事情として考慮されます。

障害によって判断のされ方は異なる

障害の判断はその種類や程度によって、以下のように分かれます。

  • 外部障害(肢体障害、視覚・聴覚障害など)
    障害の状態が明確なため、就労や収入が審査に影響することはほとんどありません。

  • 精神障害(うつ病、てんかんなど)や内部障害(腎機能障害、心疾患など)
    就労状況や日常生活への影響も含めて総合的に判断されるため、就労実態や職場の配慮内容などが、障害等級の判断材料となることがあります。

障害年金における詳しい障害等級表は、日本年金機構サイト「障害等級表|日本年金機構」をご確認ください。

20歳前障害だけは所得制限がある

「20歳前障害による障害基礎年金」のみ、所得制限があります。保険料納付を要件としない制度であることから、以下の段階で所得制限が設けられています。

  • 前年の所得額が3,761,000円超:年金額2分の1支給停止
  • 前年の所得額が4,794,000円超:年金額全額支給停止
※収入でなく、控除後の「所得」ベースで計算

障害年金とは?受給のための3つの条件と申請の基礎知識

障害年金とは、病気やけがによって生活や仕事に制限を受ける方を支援する公的年金制度です。障害年金は「はたらけない人だけの制度」ではありません。障害の状態によって判断されますが、現役世代でもはたらきながら受給できる場合があります。ここでは、障害年金の基礎知識や受給要件、申請時に知っておきたいポイントを解説します。

障害基礎年金と障害厚生年金の仕組み

障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。どちらを受給できるかは、初診日(初めて医師の診察を受けた日)に加入していた年金制度によって決まります。

法令に基づき、障害年金が支給される障害の状態に応じて、障害の程度(障害等級1級~3級)が以下のように定められています。

  • 障害基礎年金:国民年金加入者が対象。1級・2級が支給対象
  • 障害厚生年金:厚生年金加入者が対象。1級〜3級が支給対象

なお、「障害年金」と「障害者手帳」は別の制度です。障害年金の等級は、障害者手帳の有無や手帳の等級とは別に、障害年金独自の基準で等級が決定されます
障害年金の等級は、概ね次の基準で決まります。

障害年金の等級 決定基準
1級 他人の介助を受けなければ日常生活を送ることがほとんどできない状態であること。
2級 必ずしも他人の助けを借りる必要はないものの、日常生活が著しく制限され、労働によって収入を得ることが困難な状態であること。
3級(厚生年金保険のみ) 労働に著しい制限がある、または制限を加える必要がある状態。日常生活への支障は少ないものの、就労には一定の制約がある状態であること。

知っておきたい「3つの受給要件」

受給要件 内容
初診日要件 初診日(初めて医師の診療を受けた日)に、原則として国民年金または厚生年金の被保険者であること。例外として、20歳前に初診日がある傷病や、60歳以上65歳未満で国内に居住している期間中に初診日がある場合なども対象となる。
障害状態の該当要件 障害認定日に、法令で定められた障害等級に該当する障害の状態であること。
保険料納付要件 原則として、初診日の前日時点で、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料の納付済期間と免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること。

年金の受給額と加算の仕組み

  • 障害基礎年金
    令和8年度(2026年度)支給額は、1級が年額1,059,125円、2級が年額847,300円です。また、一定の要件を満たす子がいれば、「子の加算」が支給されます。なお、障害基礎年金の支給対象は1級・2級です。3級相当の障害のみでは支給対象となりませんが、複数の障害がある場合は併合認定により等級が判断されます。
    詳しくは、日本年金機構の公式サイト「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構」をご確認ください。

  • 障害厚生年金
    受給額は厚生年金の加入期間や給与水準などによって異なります。1級は報酬比例年金額の1.25倍、2級・3級は報酬比例年金額をもとに算出されます。また、1級・2級は、一定の要件を満たす配偶者がいる場合に、配偶者加給年金が加算されます。なお、3級より軽い障害でも「障害手当金(一時金)」が支給されることがあります。
    詳しくは、日本年金機構の公式サイト「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構」をご確認ください。

申請の流れと相談先

申請時に必要となる主な書類は以下のとおりです。なお、場合によってはほかの書類の提出が求められることもあります。

  • 受診状況等証明書(初診日を証明する書類)
  • 医師の診断書
  • 病歴・就労状況等申立書
※このほかにも、状況に応じて追加書類の提出が必要となる場合があります。

上記の書類を揃えて、申請先の窓口へ提出します。障害基礎年金は「市区町村役場」の国民年金担当窓口、障害厚生年金は「年金事務所」が主な申請窓口です。なお、申請や相談は、障害基礎年金の場合は市区町村役場の窓口や年金事務所、障害厚生年金の場合は年金事務所で受け付けています。必要書類や手続きの流れは個別の状況によって異なるため、事前に窓口へ確認すると安心です。

障害年金の制度や受給額、申請方法についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

税金・年金保険料の仕組みを整理

障害年金を計算するイメージ

ここからは、障害年金に関わる税金や保険料について解説します。障害年金の受給後は、納めるべき税金や保険料が変わるため、しっかりチェックしておきましょう。

障害年金は「非課税」:所得税・住民税はかからない

障害年金は非課税のため、所得税や住民税はかからず、確定申告での記載も不要です。ただし、就労で得た給与や事業所得などによる収入は、通常通り課税対象となります。

国民年金保険料は「法定免除」される

障害基礎年金受給者は国民年金保険料が全額免除(法定免除)されます。法定免除期間は、老齢基礎年金の受給資格期間として算入されますが、保険料を全額納付した期間と同じ扱いにはなりません。そのため、将来受け取る老齢基礎年金額は満額納付した場合より少なくなります。将来の老齢年金を満額にしたい場合は、追加で保険料を納めることもできます。

はたらく場合は「厚生年金保険料の納付」が必要

障害年金を受給していても、社会保険の適用を受けてはたらく場合は、厚生年金への加入が必要となります。この場合、給与から厚生年金保険料が天引きされますが、その納付実績は、将来受け取る老齢厚生年金の額に反映されます。

就職しても等級は下がらない?更新時の診断書対策

診断書と障害者手帳のイメージ

就職しただけで障害年金が支給停止となったり受給額が減額されたりすることはありません。ここでは、就労が障害年金の認定や障害等級(1級~3級)に与える影響、更新時の診断書で押さえたいポイントについて解説します。

はたらくだけで等級は下がらない

就職した事実だけでは年金の支給停止や減額はありません。ただし、数年ごとの更新(有期認定)時には、障害の状態や日常生活への影響、就労状況などが審査されます。審査の結果、障害の状態に変化があると判断された場合は、支給停止や障害等級の変更となる可能性があります。

更新時に診断書で重視されるポイント

特に精神障害や内部障害では、就労状況や日常生活への支障が重視されます。例えば、障害認定の重要な判断資料である診断書に、「支障なく就労している」などと記載されると、実際の困難さが十分に伝わらず、認定結果に影響する可能性があるため、医師への伝え方は非常に重要なポイントといえます。

就労状況を医師へ正しく伝える方法

実態に即した診断書を書いてもらうためには、就労上の支障や必要な配慮、日常生活への影響を医師へ正確に伝えることが重要です。特に、以下の点は具体的に伝えましょう。

  • 会社からの配慮内容(短時間勤務、業務軽減、周囲のサポートなど)
  • 業務中の支障(疲れやすさ、集中力の維持、薬の副作用など)
  • 勤務時間外の状況(帰宅後や休日に寝込んでいるなど)

障害年金とはたらき方のポイント

障害年金を活用しながら、自分に合ったはたらき方を実現するためには、制度に関する相談先や就労支援サービスを上手に活用することが大切です。ここでは、障害年金や就職・転職に関する主な相談先を紹介します。

障害年金の制度や申請は専門機関へ相談する

障害年金の制度は複雑なため、申請にあたっては専門機関への相談が推奨されます。相談先は次の通りです。

  • 年金事務所、市区町村窓口
    基本的な制度の案内や書類の受付
  • 日本年金機構
    全国の相談・手続き窓口(年金事務所等の検索が可能)
  • 社会保険労務士(社労士)
    個別の就労実態に応じた専門的なサポートや申請・更新のアドバイス
  • 全国社会保険労務士会連合会
    社労士に相談する」より相談先の検索が可能
    (全国47都道府県にある社労士会の所在地、電話番号、会員リストをご案内)

転職・就職時は支援サービスを活用しよう

求人情報だけを頼りに、個人の判断で自分に合った職場を見極めることは簡単ではありません。転職・就職の際は、ハローワークの障害者窓口や就労支援機関、障害者雇用に特化したエージェント(就労支援サービス)の活用も有効です。

障害特性や希望条件に合った求人の紹介のほか、必要な配慮について企業へ伝えるサポートも受けられます。企業の受け入れ体制や配慮内容についても、事前に確認しやすく、入社後のミスマッチも防ぎやすくなります。

例えば、障害者のための転職・就職支援サービス「dodaチャレンジ」では、求人紹介だけでなく、応募書類の作成支援や面接対策、企業との調整も行っています。障害によるはたらきづらさや必要な配慮の伝え方に不安がある方でも、安心して転職・就職活動を進めることができます。

障害年金の受給やはたらきながら受給する際によくある質問

障害年金はアルバイトでも受給できますか?

雇用形態による制限は特にありません。雇用形態が正社員かアルバイトか、ということで、障害年金の受給資格が変わるわけではなく、受給要件やその後の就労の実情に応じて判断されます。

フルタイム勤務で障害年金は支給停止されますか?

必ずしも支給停止とはなりません。例えば、肢体障害や視覚障害、聴覚障害などの外部障害では、フルタイム勤務になったことだけを理由に障害年金の受給へ影響することはほとんどありません。
一方、精神障害や内部障害では、就労状況や日常生活への影響などを踏まえて総合的に判断されます。ただし、職場で合理的配慮を受けながら勤務している実態が確認できる場合は、継続して受給できる可能性もあります。

就職後に年金機構への届け出は必要ですか?

就職しただけで直ちに届け出が必要になるわけではありません。ただし、障害年金の更新時には就労状況が確認されるため、勤務状況や職場で受けている配慮などを説明できるようにしておくことが大切です。

障害者雇用のほうが受給しやすいですか?

障害者雇用のほうが「配慮を受けている実態」を証明しやすく、審査で考慮されやすい面はあります。ただし、一般雇用でも職場で受けている配慮や就労上の支障を適切に伝えられれば受給は可能です。

以前に障害基礎年金の大量支給打ち切りがあったと聞きました。国の方針変更などで、障害年金の停止や減額といったことはないでしょうか?

2018年頃、障害年金の認定を巡る運用が問題視され認定方法の見直しが行われましたが、国の方針変更で受給者全員が一律に支給停止や減額となるわけではありません。一方で、更新時の診断書の内容や、障害の状態によっては、支給停止や等級変更となる可能性はあります。障害の状態や生活・就労の実態を医師へ正確に伝えることが大切です。

障害年金を活用しながら自分らしいはたらき方を

障害年金は「安心してはたらき続けるための支え」となる制度です。就職しただけで支給停止や等級変更になるわけではありません。ただし、更新時には障害の状態や就労状況などが総合的に判断されるため、障害の状態や就労上の困難さを、主治医に正しく・適切に伝えることが大切です。

また、障害年金の申請や更新、転職・就職に不安がある場合は、ひとりで抱え込まず、年金事務所や社労士、ハローワーク、就労支援機関、転職エージェントなどの専門家へ相談することも重要です。利用できる制度や支援サービスを活用しながら、自分らしいはたらき方への一歩を踏み出していきましょう。

公開日:2026/07/31

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