特例子会社とは?障害者にとってのメリット・デメリットと仕事探しに役立つ豆知識
障害者雇用枠の一種に「特例子会社」という制度があることをご存じですか。
障害者雇用に特別な配慮を行うことを前提に設立された子会社であり、障害のある方がより良くはたらく選択肢になるかもしれません。
この記事では、特例子会社とはどのようなものか、一般企業の障害者雇用枠との違いや、就労のメリット・デメリットも踏まえて分かりやすくまとめました。どの働き方を選ぶか迷ったときのヒントや、自分に合った仕事を見つけるポイントも紹介しています。
目次
特例子会社の概要
まず、特例子会社の基礎知識を確認しましょう。
特例子会社とは?
「特例子会社」とは、親会社が「障害者の雇用の促進と安定」を目的に設立した子会社の総称です。厚生労働省が定める一定の要件を満たした子会社のみが、特例子会社として国の認可を受けられます。特例子会社かどうかの見分け方は、厚生労働省が公表している一覧表で確認するほか、求人票の会社名もしくは会社適用欄にその旨が記載されていることもあります。
特例子会社は、1987年の「障害者の雇用の促進等に関する法律(旧:身体障害者雇用促進法)」の改正時に設立された制度です。当時、障害者雇用制度の見直しと拡充が進められていたものの、障害者雇用を積極的に進める企業はまだ少なく、障害がある方の就労の選択肢は限られていました。
そこで、障害がある方の雇用機会を広げる目的で設立されたのが「特例子会社制度」です。2002年になって、特例子会社に雇用されている人数をグループ企業全体の雇用率の算定に加えて良いこととなったのをきっかけに、設置数が増加していきました。
2025年6月1日現在、特例子会社の全国の設置数は631社(関係会社を含め、グループ全体を親会社に合算して実雇用率を算定した設置数は394グループ)であり、41,902名(実人数)の障害者がはたらいているといわれています。法定雇用率が年々引き上げられる中で、特例子会社の設置数と雇用される障害者の人数は、今後ますます増えていくでしょう(出典:特例子会社一覧|厚生労働省、「特例子会社」制度の概要|厚生労働省)。
特例子会社に多い仕事内容は?
特例子会社の仕事は、障害のある方が無理なくはたらけるよう、次のような定型業務が中心となっている傾向にあります。
- 営業支援系事務(各種書類作成、データ入力・集計、印刷・コピー、発送など)
- ミドル・バックオフィス業務支援(経理、人事、総務、施設の運営サポートなど)
- 清掃・管理
- 生産・製造ラインの組立・検品
- 農業
多くの場合、業務内容がマニュアルなどで標準化されているため、突発的な対応や変更はほとんどありません。一つの業務をチーム単位で行う分業制になっている職場も多く、個人の負担を軽減する仕組みになっています。
近年は、非定型業務を行う特例子会社も増えてきていますが、その場合はサポート体制が充実しており、障害のある方が安心してはたらける環境が整えられています。
特例子会社ではたらく1日の流れは?
特例子会社ではたらく1日のモデルケースを見てみましょう。
- 〜10時:出社・スケジュール確認(出社時間は企業や勤務条件などによる)
- 午前中:午前の業務
- 12時〜:昼休み・ランチ
- 〜16時:午後の業務
- 〜16時半:ミーティング・面談
- 〜17時:片付け・退社
1日の始めと終わりに業務の指示や進捗をあらかじめ確認・共有する体制になっていることが多く、その日やるべきことや、優先順位に悩む心配がほとんどありません。また、仕事で困ったことが起きたときは、その都度、もしくはミーティング・面談などで相談できる仕組みになっているので、安心して取り組めるでしょう。
特例子会社」と「一般企業の障害者雇用枠」の違いは?
特例子会社と一般企業の障害者雇用枠ではたらく大きな違いは「就労環境」にあります。
特例子会社は、主に障害がある方を雇用するために設立されているため、同じ職場ではたらく障害者の割合が多い傾向にあります。障害のある方がはたらきやすい職場環境を整えるべく、あらかじめ特別な配慮がなされているほか、個人の事情による調整にも対応してもらいやすいでしょう。
一方、一般企業の障害者雇用枠の職場は、障害のある方だけでなく、障害のない方も大勢はたらいていることが特徴です。障害者と健常者が同じ環境ではたらくため、必要に応じて個別の合理的配慮が提供されます。
とはいえ制度上、特例子会社と一般企業の障害者雇用で、雇用形態や業務内容、配慮の程度などに大きな違いはありません。一般企業の障害者雇用枠でも、特例子会社のような手厚いサポート体制が整っている職場も存在します。従って、イメージで判断するのではなく、企業情報や障害者雇用の実態をチェックしたうえ、自分にとってはたらきやすい環境が整っているかどうかを見極めることが大切です。
特例子会社ではたらくメリット
障害のある方が特例子会社ではたらくメリットとして、主に次の5点が挙げられます。
配慮の提供を前提に業務が設計されている
特例子会社の施設内は、バリアフリー設備や点字・音声ガイドが導入されているなど、障害のある方が気持ち良くはたらける環境があらかじめ整えられています。また、企業と本人の合意の下、調光を工夫する、周囲の音に煩わされない静かな場所に座席を配置するといった、個々の特性に合わせた環境調整も提供されます。
支援制度が充実している
特例子会社では、社内に相談窓口が設置され、相談員や専門の担当者が常駐している、もしくは定期的に派遣されることが多いです。社内の産業医のほか、社外の専門医とも綿密に連携が図られることもあります。そのほか、従業員との定期的な面談を設けたり、こまめに体調をチェックしたりなど、障害のある方が無理なくはたらくための支援やサポートが充実しています。
働き方を柔軟に選べる
近年は、障害のある従業員の通勤や執務、通院などの負担軽減を目的に、柔軟な働き方を導入している特例子会社も増えてきました。例えば、通勤が困難な場合は、在宅勤務やテレワーク、ラッシュ時間帯を避けた時差出勤ができる場合があります。また、長時間就労が困難な方は、時短勤務やフレックスタイム制が選択できるなど、特性や体調に合わせてはたらきやすい仕組みが整ってきています。
職場内のコミュニケーションが活発になる
特例子会社には、さまざまな障害のある方が大勢はたらいています。障害の有無による意識や理解の差が少ないので、意思疎通や交流が円滑になるでしょう。障害者同士でチームを組むケースも多く、助け合ったり、悩みを共有したりしながらはたらけるため、安心感が得られるとともに、活気が生まれやすい環境です。
特例子会社ではたらくデメリット
特例子会社ではたらくことにはたくさんのメリットがある一方で、人によっては、次のようなことをデメリットに感じるかもしれません。
スキルアップが難しいケースもある
特例子会社では、障害特性に合わせて厳選された業務が任されることが多いです。そのため、障害のある方にとってはたらきやすくなる反面、新たな挑戦とそれによる成長の機会が限られてしまうこともあります。幅広い知識や高度なスキルをどんどん習得し、ステップアップを図りたいと考えている方にとっては、物足りなさを感じることがあるかもしれません。
給与水準が一般企業よりも低い
一般的に、特例子会社は、一般枠や一般企業の障害者雇用枠の仕事と比べ、給料が低めに設定されていることがあります。これは、一因として、はたらく上での配慮を手厚くする分、処遇へ回すリソースが少なくなることが、給料に反映されているからです。配慮と処遇のバランスを取るには、納得のいく待遇の求人を探したり、企業と交渉をしたりすることが求められます。
転職や就職の選択肢が限られてくる
特例子会社は一般企業と比べ少数であり、それに比例して、求人数もあまり多くありません。そのため、特例子会社だけに絞ると、仕事探しの幅が狭まってしまうこともあります。自分に合った仕事を見つけるには、一般公開されない非公開求人を取り扱う転職・就職支援サービスを活用するなど、選択肢を広げる工夫が必要です。
特例子会社と一般企業・障害者雇用枠のどちらを選ぶ?
以下では、特例子会社ではたらくことに向いている方と、一般企業に障害者雇用で就職することが向いている方の特徴をそれぞれまとめました。仕事や働き方の向き不向きは個人差があるため、一概には言えませんが、特例子会社と一般企業の障害者雇用枠のどちらではたらくか迷ったときの目安にしてください。
特例子会社が向いている人
特例子会社が向いているのは、以下のような項目に当てはまる方です。
自身の障害特性に合わせた業務がしたい
就労上の制約が多く、特性に合わせてはたらきやすい環境を求めているなら、特例子会社がおすすめです。一人ひとりの得意・不得意やできること・できないことを踏まえた業務・配置に調整してもらえる可能性が高いので、自分らしく活躍できるでしょう。
給料よりも安定した環境ではたらきたい
特例子会社は、障害のある方への配慮が手厚く、心身ともにはたらきやすい環境が整えられています。給与などの条件は一般企業の障害者雇用より低い傾向にあるとはいえ、ほかの職域にはないような高い安心感が得られるので、安定してはたらき続けられる可能性が高まります。
職場で障害について分かり合える仲間がほしい人
一般企業の障害者雇用枠では、障害のある方だけでなく、多くの健常者と一緒にはたらくことになります。そのため、障害のない方には分かりにくい不安や悩み、孤独を感じたとき、相談しにくいこともあるかもしれません。一方、特例子会社には、障害がありながらはたらく方がたくさん在籍しています。「分かり合える仲間がいる」という安心感は、心の安定や就労のモチベーションにつながります。特に、はじめてはたらくときや、就労への不安感が強い方などは、同じ障害者の多い特例子会社ではたらくほうが気持ちも楽になるでしょう。
一般企業の障害者雇用枠が向いている人
次のような理由で転職・就職を考えている場合は、一般企業の障害者雇用ではたらくほうが、満足感が高まる可能性があります。
専門分野ではたらきたい
好きな業種・職種や得意分野、特定のスキルなどがあり、それらに携われる職場ではたらきたいという具体的な希望を持っているなら、一般企業の障害者雇用が適しています。特例子会社より求人数が多い分、業種・職種の選択肢が幅広く、自分の得意やスキルが活かせる仕事を見つけやすいでしょう。
給料をどんどん上げていきたい
一つの企業に長く勤め、評価を高めることで昇給が見込める可能性は、一般企業の障害者雇用のほうが高いと考えられます。一般企業の障害者雇用枠は、一般枠と同じ評価制度が設けられているケースも少しずつ増えてきているからです。実績に伴う評価が得られる仕事を選ぶことで、はたらき始めた時は給料が低くても、頑張り次第で将来的な昇給が見込めるかもしれません。
バリバリはたらいてスキルアップを目指したい
はたらくことが好きで、新しい知識や技能をどんどん習得したいと考えている方は、一般企業の障害者雇用のほうが向いています。特例子会社と比べ、仕事探しや、担当できる業務の幅が広いからです。また、経験を積んだり、資格を取得したりして専門性を高めることで、さらに活躍の場が広がる可能性があるのも、特例子会社にはない魅力だといえます。
特例子会社の求人の探し方
特例子会社の求人を探すときには、次のような就労支援サービスを活用することをおすすめします。
ハローワーク
全国の「ハローワーク」には、障害者窓口が設置されています。障害者手帳を持っている方は、障害者窓口で、障害者雇用枠や特例子会社の求人の紹介が受けられます。また、ハローワークのインターネットサービスには、求人区分に「障害のある方のための求人」があり、地域別・任意条件で募集中の障害者を対象とする求人検索が可能です。
同窓口では、応募書類の作成指導、面接対策など、障害がある方の転職・就職活動に関する個別相談も受けられます。加えて、地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターなど、地域の専門機関と連携した包括的な就労サポートが提供されます。
障害者雇用専門の転職・就職エージェント
求人数の少ない特例子会社への転職・就職を目指すにあたって、一般的な情報だけで希望に合う仕事を見つけるのは簡単ではありません。そこで役に立つのが「障害者雇用専門の転職・就職エージェント」です。
障害者雇用専門の転職・就職エージェントとは、障害者手帳を取得している方を対象に、障害者雇用枠や特例子会社の求人紹介と、就職から定着までをサポートする民間の転職・就職支援サービスを指します。障害者雇用の知識と理解の深いプロのサポートの下、非公開求人を含むさまざまな求人の中から、自分にとって最適な求人の紹介が受けられます。
また、サービスによっては、キャリアアドバイザーが専任制になっていたり、面接の日程調整を代行してもらえたりするのも、転職・就職エージェントの強みの一つです。各サービスを通してしか得られない求人情報やサポートを得ながら転職・就職活動を進めれば、自分にとって理想的な仕事・職場に出会える可能性が高まります。
特例子会社ではたらくには?代表的な3つの就労パターンを紹介
ここでは、特例子会社ではたらく代表的な3つのパターンを見ていきましょう。
ケース1.特例子会社の求人に絞って転職・就職活動をする
1つ目は、始めから特例子会社の求人に絞って仕事探しを進める方法です。主な流れは以下の通りとなります。
1. 特例子会社の求人を検索する
2. 希望に合った求人に応募する
3. 書類選考に通過したら面接に進む
4. 内定後に就労を始める
これから先、ずっと特例子会社ではたらきたいと考えているなら、まずその求人を探すことが就労の第一歩です。ハローワークの障害者窓口や、障害者雇用専門の転職・就職エージェントを活用し、希望条件や障害特性に合った求人を探しましょう。
このケースは、一般企業の障害者雇用枠ではたらく場合と比べると、給与の大幅アップやキャリアアップの機会は限られるかもしれません。とはいえ、その分、業務上の配慮や環境整備の行き届いた環境で無理なくはたらけるため、安定した就労環境と、長期定着を重視したい方に最適です。
ケース2.就労移行支援事業所への通所後に特例子会社に就職する
就労自体に不安感の強い方、はたらく準備がまだ十分に整っていない方は、基礎的なビジネススキルやコミュニケーション力、体調・スケジュール管理のやり方などが学べる「就労移行支援事業所」に通所してみることをおすすめします。就労移行支援事業所を利用した後、特例子会社に就職する主な流れは以下の通りです。
1. 就労移行支援事業所へ通所する
2. 職業トレーニングを受けながら特例子会社への就職活動を進める
3. 内定が出たら就労を始める
就労移行支援事業所でのトレーニングを通して、スキルアップや、障害特性への理解が深められます。また通所中は、一般企業の障害者雇用枠や特例子会社などの求人情報が提供され、職員のサポートを得ながら就職活動を進めることが可能です。企業と独自のつながりを持つ事業所もあり、就労の基礎スキルを高めつつ、自分に合った仕事が見つかりやすいでしょう。
また、職場実習を通じ、業務内容や働き方を体験できるため、就職後のミスマッチが起こりにくいのもメリットです。就職後に職場定着支援が提供されることもあり、就労移行支援事業所への通所経験のある方を積極採用したいと考える企業も増えてきています。「体調管理や生活リズムに不安がある」「これまで就労経験がない」という方などにもおすすめの就労ステップです。
ケース3.特例子会社の経験を活かして一般企業の障害者雇用枠へ転職する
障害のある方の中には、はじめに特例子会社ではたらいた後、スキルアップやキャリアアップを目的に、一般企業の障害者雇用へ転職する方もいます。特例子会社から一般企業の障害者雇用へ転職する流れは以下の通りです。
1. 特例子会社の求人を検索・応募する
2. はたらきながらキャリアを積む
3. 転職活動を行う
4. 一般企業の障害者雇用枠の仕事に転職する
このケースの特徴は、段階的にキャリアが築けることです。実務経験を積むことで、自信を持ってスキルアップやキャリアアップが目指しやすくなります。
また、実務経験があることは、転職活動の際に評価されやすいポイントの一つです。「いきなり一般企業ではたらくのは不安が大きい」「将来的に仕事やキャリアの幅を広げたい」という方は、まず特例子会社の仕事にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
特例子会社・障害者雇用枠のいずれも自分に合った職場を探すことが大事
特例子会社は就労にあたっての配慮の手厚さを重視する方に最適な就職先です。支援体制が整っており、個々の障害特性に応じたサポートが得られるため、無理なく安定してはたらき続けられるでしょう。
とはいえ、一般企業の障害者雇用枠でも、業務や職場環境に関する合理的配慮が整備されています。重要なのは、「特例子会社」や「一般企業の障害者雇用枠」といった名称や区分にとらわれず、希望する職種・業種や働き方、職場環境などを踏まえて「自分にはどのような仕事が合っているのか」という視点で仕事探しを進めることです。
また、特例子会社の求人数は、現段階ではまだ決して多いとはいえません。障害のある方が、自分の力だけで仕事探しを進め、選考に通過することは、容易ではない場合もあります。
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公開日:2022/02/01
更新日:2026/06/17
- 監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
- 上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■障害者職業生活相談員
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