特例子会社の給料は低い?それでも検討すべき理由・メリットを解説
「特例子会社」とは、障害者の雇用促進および安定化を目的として設立された企業です。障害者雇用への認知度は高まりつつありますが、その雇用数はまだまだ十分ではありません。そんな従来の障害者雇用の課題の解決策のひとつとして、特例子会社が注目されています。
一方で、特例子会社は一般企業の「一般枠」や「障害者雇用枠」での就労と比べて、給料が低い傾向があります。それでも特例子会社では、障害特性に応じた合理的配慮が受けられるため、選択するメリットが大きいのです。本記事では、特例子会社の給料や選択するメリットなどについて解説します。
目次
特例子会社とは
特例子会社について、まずは次のポイントから見ていきましょう。
- 障害者の雇用促進のための企業
- 特例子会社は増加傾向にある
- 一般企業の障害者雇用との違い
障害者の雇用促進のための企業
「特例子会社」とは、障害者の雇用促進と安定化のために設立された企業のことです。障害者雇用促進法により、企業は一定数以上の障害者を雇用する義務がありますが、企業規模や業種などにより、それを満たすのが難しい場合があります。
そのような場合に、障害者がはたらきやすい環境を整備した企業を設立して厚生労働大臣の認定を受けることで、特例子会社として運営できるのです。合理的配慮の代表例として、フレキシブルな雇用形態や就業規則、通院休暇や短時間正社員制度などが挙げられます。
特例子会社は増加傾向にある
厚生労働省の「特例子会社一覧」によると、2023年6月時点で598社となっており、その企業数は毎年増加しています。その背景のひとつとして挙げられるのが、障害者の活躍機会を広げるための「法定雇用率」の引き上げです。法定雇用率は2024年時点で2.5%となっており、以降は段階的に引き上げられる予定となっています。
特例子会社における雇用も法定雇用率に含まれるため、各企業が特例子会社を設立する動きが進んでいます。言い換えれば、障害者の方がはたらきやすい就労環境を得やすくなりつつあるということです。
一般企業の障害者雇用との違い
一般企業の障害者雇用と特例子会社は、どちらも障害者の方の雇用促進を目的としたものという点では同じです。しかし、特例子会社は障害者の方を雇用するために設立された企業なので、合理的配慮が得やすくはたらきやすい就労環境が整備されています。
特例子会社では、職場ではたらく障害者の方の数が一般企業より多い傾向にあり、障害のある方がはたらきやすい環境が整っています。障害のある方にとって、特例子会社のほうが個人の事情などによるはたらき方の変化や、予想外の状況が発生した場合も対応しやすいでしょう。
特例子会社の雇用形態や給料
特例子会社の雇用形態や給料について、次のポイントから見ていきましょう。なおデータについては、株式会社野村総合研究所の「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査・調査結果」を参照しています。
- 雇用形態は正社員が多い
- 選べる職種は多岐にわたる
- 給料は一般企業よりも低い
雇用形態は正社員が多い
特例子会社ではたらく障害者の雇用形態として、最も多いのが「期間の定めのない正社員」で約6割となっており、続いて「期間の定めのある契約社員やパート」が約3割となっています。なお、特例子会社ではたらく人の障害種別は、知的障害が「54.5%」、身体障害が「29.4%」、精神障害が「6.4%」です。
選べる職種は多岐にわたる
特例子会社における業務内容で特に多いのが「事務補助」で79.1%、続いて「清掃・管理」が50.0%となっており、製造・物流・情報システムなど職種は多岐にわたります。親会社の業種や業態に左右される部分ではありますが、適切な特例子会社を選ぶことで、働き方の選択肢は増えると考えられるでしょう。
給料は一般企業よりも低い
特例子会社ではたらく障害者の給料は、151万~200万円が33.8%で、201万~250万円が26.3%、101万~150万円が19.7%です。したがって、101万~250万円の範囲が平均的な給料であり、一般企業の障害者雇用と比べると低い水準であるといえます。
特例子会社の給料が低い理由
特例子会社ではたらくメリットとして、次のようなものが挙げられます。
- 「軽作業系」の業務内容が多いため
- 利益目的では設立されていないため
- 低い給料でも採用希望者が多い
- 配慮と処遇のバランスを取るため
「軽作業系」の業務内容が多いため
前述したように、特例子会社における業務内容で最も多いのが、「事務補助」「清掃・管理」「製造作業」などの軽作業系です。これらの業務は一般企業であっても給料は低い傾向があるため、特例子会社でも必然的に給料は低い水準となります。一部は情報システムのようなIT系の業務もありますが、全体として軽作業系が多いため平均的な給料は低くなるのです。
利益目的では設立されていないため
従業員の給料を上げるためには、企業が十分な利益を得ている必要があります。しかし、特例子会社はそもそも「利益目的」では設立されていないため、どうしても従業員の給料が低くなりがちです。
株式会社野村総合研究所の「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査」によると、特例子会社の設立目的として最も多いのが「障害者雇用率の上昇」で80.5%、次いで「CSRへの貢献」が61.5%となっています。このことからも、特例子会社は基本的に利益が上がりにくい体制であることが分かります。
低い給料でも採用希望者が多い
特例子会社は給料が低い場合でも、一般企業と比べて採用希望者が集まりやすい傾向があります。障害者の方はどうしても「安定した雇用」を得ることが難しいため、安心して安定的にはたらけることを最重要視し、「給料は低めでも構わない」という人は少なくありません。だからこそ、特例子会社は給料が低い傾向にありますが、求職者から人気が高いのです。
配慮と処遇のバランスを取るため
一般雇用と障害者雇用の賃金の違いは、「処遇と配慮のバランス」によって発生します。障害者を雇用する際は、オフィス環境の整備やフォロー人員の配置などの配慮が必要です。その結果、障害者は安定した雇用環境ではたらくことができますが、企業側には相応のコストがかかります。確かに特例子会社の給与は一般企業より低い傾向がありますが、この点を考慮すれば、合理的な給与水準といえるのではないでしょうか。
それでも特例子会社ではたらくメリット
特例子会社の給料は低い傾向がありますが、それでも次のような理由から、特例子会社ではたらくメリットは大きいといえます。
- はたらきやすい環境が整備されている
- 雇用が安定している傾向がある
- 安心できる環境ではたらきやすい
はたらきやすい環境が整備されている
特例子会社では、障害者の方に合わせて労働環境が整備されているため、安心してはたらくことができます。また、業務内容や手順なども障害特性に合わせて設計されており、相談員も配置されているため困ったときも相談しやすいのです。さらに、体調の変化や通院などに配慮した短時間勤務制度や、フレックスタイム・半休制度など多様な働き方にも対応しています。
雇用が安定している傾向がある
特例子会社は、基本的に大企業がグループ企業として設立していることが多いため、基本的には安定した雇用が期待できます。CSR(企業の社会的責任)の観点から、特例子会社は持続的な運用が社会から求められているからです。また先ほど紹介したように、雇用形態も正社員が6割以上を占めるため、長期間安定的にはたらきたい人に向いているといえるでしょう。
安心できる環境ではたらきやすい
一般企業の障害者雇用では、周囲の大半が健常者であるため、はたらくうちに疎外感が生じてしまうことは珍しくありません。一方で特例子会社の場合は、部門内やチーム内に自身と同じように障害がある人がいるため、悩みも相談しやすく心強さがあります。
特例子会社への就職・転職サポートが受けられる機関
特例子会社への就職・転職を検討する際は、次のようなサポート機関を利用してみましょう。
- ハローワーク(公共職業安定所)
- 就労移行支援事業所
- 障害者の就労に特化したエージェント
ハローワーク(公共職業安定所)
ハローワーク(公共職業安定所)には、障害者の就職・転職をサポートする窓口があり、特例子会社の求人も紹介してもらえます。さらに就職・転職に関する相談や、面接対策などのサポートも受けられるため、安心して転職活動を進めることができるでしょう。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、はたらくための知識やスキルを身につけることができる福祉サービスです。一般企業や特例子会社への就労サポートが受けられるうえに、転職後の定着率を高めるための支援も受けられます。
障害者の就労に特化したエージェント
就職・転職エージェントには、障害者の就労に特化したものがあり、一般企業の障害者雇用枠以外に特例子会社の求人を紹介してもらえることがあります。キャリアアドバイザーに無料で相談することができ、自身の障害特性に合わせた適切な転職先について知ることができるので安心です。
まずは、キャリアアドバイザーに転職相談を
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でお気軽にご相談ください
転職について不安なことも
障害者雇用の知りたいことも
キャリアドバイザーが親身にお話をうかがいます
特例子会社への転職は「dodaチャレンジ」がおすすめ!
障害者の雇用促進のために設立された特例子会社では、障害者の方が自身の障害特性に合わせた合理的配慮を受けることができ、安心してはたらくことができます。一方で、業務内容が限定的で給料が低めであるため、一般企業の障害者雇用と合わせて検討してみることが重要です。
これから転職を目指す障害者の方には、パーソルダイバースの転職支援サービス「dodaチャレンジ」がおすすめです。dodaチャレンジでは、さまざまな障害のある方が安心してはたらける企業の求人を紹介しています。キャリアアドバイザーへの相談も無料で行えるので、この機会にぜひご相談ください。
公開日:2024/9/25
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士