低音障害型感音難聴とは?仕事を休む必要性と治療と両立するポイント
低音障害型感音難聴とは、ある日突然低い音が聞き取れなくなる障害です。耳がよく聞こえなかったり、難聴のせいで体調が悪くなったりすると、今の仕事が続けられるのか不安になってしまいますよね。
この記事では、低音障害型感音難聴の症状の特徴と、仕事上や日常生活における過ごし方の注意点を解説します。もし休職・退職した際の新たな仕事を見つけるポイントも紹介しますので、耳が聞こえづらくてもより良くはたらく方法を探している方はぜひ参考にしてください。
目次
低音障害型感音難聴とは
まず、低音障害型感音難聴とはどのような障害なのかを説明します。特徴のほか、原因や治療法、類似障害との違いを踏まえて、理解を深めていきましょう。
低音障害型感音難聴の症状の特徴
「低音障害型感音難聴」とは、聴覚障害の一種であり、500ヘルツ以下の低い周波数の音がよく聞こえない状態になることです。突発的に発症するケースは、急性低音障害型感音難聴と呼ばれます。
なお、低音障害型感音難聴を発症した場合の聴力は26~40デシベル。小声での会話に支障が出る程度であり、難聴としては軽度の分類です。診断基準には、その名の通り低音が聞こえにくくなることのほか、以下のような項目が挙げられます。
- 耳が詰まったり水が入ったりしたような感覚がある
- 自分の声が耳の中で反響する
- 低い声が聞こえづらい
- 低音の耳鳴りが続く
低音障害型感音難聴は、20〜40代の若い世代に多い障害です。完全に聞こえないわけではなく、症状が日によって変わるため、発見が遅れるケースも多いといえます。さらに難聴全般にいえることですが、聞こえが悪いことはそれ自体が大きなストレスです。ゆえにQOL(生活の質)が下がりやすく、うつ病になりやすい傾向にあるといわれています。また再発の可能性も高く、受診・治療が遅れると長期化しがちなうえ、悪化の恐れも否めません。
こうした事情を踏まえ、低音障害型感音難聴で聴力レベルが以下のいずれかに該当する場合には、身体障害者手帳が交付されます。
1. 両耳で70デシベル以上
2. 片耳の平均が90デシベル以上かつもう一方が50デシベル以上
障害者手帳の等級は、重度の方から2級〜6級(1級は言語機能3級との併発の場合)です。申請の際は、主治医に診断書の記入をお願いしたうえ、お住まいの自治体の障害福祉窓口へ相談してください。
低音障害型感音難聴の原因と治療法
低音障害型感音難聴の直接の原因は、内耳の蝸牛(かぎゅう)にリンパ液が溜まり過ぎ、低周波音に反応しづらくなったせいだといわれています。また、耳(外耳、中耳)の異常による聞こえづらさが生じる伝音性難聴と合わさり、混合性難聴として発症するケースもあるようです。
低音障害型感音難聴は治らない障害ではありません。治療は主に投薬で行われ、リンパ液の排出や代謝を促す薬を基本とし、睡眠や気分に変調をきたした際は睡眠導入剤や抗不安剤が使われます。
さらに、低音障害型感音難聴の原因となるリンパの詰まりはストレスや不規則な生活習慣で誘発されやすいため、睡眠時間や食事の見直しも必要です。指導に従って服薬および日常生活の過ごし方の改善を徹底すれば、数週間で症状が快方に向かうこともあるといわれています。
低音障害型感音難聴とほかの難聴との違い
低音障害型感音難聴の類似障害として、突発性難聴とメニエール病が挙げられます。両者とも低音障害型感音難聴と似た症状を呈しますが、同じ病気ではありません。以下では、それぞれの違いを比べていきます。
低音障害型感音難聴と突発性難聴の違い
低音障害型感音難聴 | 突発性難聴 | |
---|---|---|
症状の出方 | あるときから耳が詰まったような感覚が出る | ある日突然聞こえなくなる |
発症の年齢 | 20〜40代と比較的若め | 幅広い年齢で発症するが50〜60代に多い |
めまいの有無 | なし | ぐるぐると回るようなめまいを伴う |
発症の部位 | 片耳・両耳いずれもある | 片耳のみに出やすい |
聞こえにくい音域 | 低音のみ聞き取りづらい | 音域に個人差がある |
再発の可能性 | 再発の可能性が高い | 再発の可能性は低い |
低音障害型感音難聴と突発性難聴は名称が同じ「難聴」で混同されやすい傾向にありますが、上記のポイントで見分けられます。
低音障害型感音難聴とメニエール病の違い
低音障害型感音性難聴とメニエール病も同じく感音性難聴の一種であり、両者とも耳にリンパ液が溜まって低音が聞こえづらくなります。しかしメニエール病では、低音障害型感音障害とは異なりめまいが主症状であり、難聴はその随伴症状です。症状が悪化すると聞こえづらい音域が拡大し、慢性化しやすくなるという特徴もあります。また低音障害型感音難聴の悪化により、メニエール病を発症することもあるようです。
低音障害型感音難聴になったら仕事を休む必要はある?
低音障害型感音難聴は、とにかく早期の治療が肝心です。放っておくと悪化する可能性が高いため、聞こえに気になる症状があるときは、まずは半日だけでも仕事を休んで速やかに受診してください。治療を開始したあとは、体調や医師の診断、通院治療との両立に問題なければそのまま仕事を続けることも可能です。
しかし、職務に支障をきたす場合や、今の職場に強いストレスを感じているときは、心身をゆっくり休ませるためにもいったん休職・退職を検討するほうがよい場合も少なくありません。休職する際は、まず主治医に診断書の発行を依頼してください。健康保険に加入しているなら、傷病手当金が受給できる可能性があるので、職場へ相談するとよいでしょう。
また、症状がなくなっても再発するケースも多く、復帰のタイミングは慎重に見極めなければなりません。いきなり前と同じようにはたらくのは負担が大きいことから、徐々に身体を慣らしていくことが大切です。
低音障害型感音難聴のある方が仕事と治療を両立する5つのコツ
低音障害型感音難聴のある方がはたらくうえでは、同時に治療を続けることが大前提です。仕事と治療を両立するためには、次の5つのポイントに着目してみてください。
- はたらきやすくなる工夫をする
- 勤め先に相談する
- 現在の働き方を見直す
- 日常生活の過ごし方を改善する
- 仕事を変える
はたらきやすくなる工夫をする
低音障害型感音難聴があっても、自分の特性に合わせた工夫を凝らすことでぐっとはたらきやすくなります。離れた場所や背後、特定の方向からの声や音に気づきにくいため、口頭での指示は対面からお願いするほか、筆談・メールに切り替えるとよいでしょう。なお、席の配置を調整することで、コミュニケーション上の問題が解消することもあります。
また、騒がしい場所での会話や大人数での会話が難しく感じるので、会議の際は音声認識や文字起こしなどのツールを活用してみてください。電話対応が困難なときは、ほかの人に変わってもらうのも一つの方法です。
勤め先に相談する
低音障害型感音難聴の治療と仕事の両立には、周囲の理解が欠かせないため、勤め先への相談が必要です。現在の勤め先に事情を話し、今後の方向性を擦り合わせることで、安心してはたらけるようになるでしょう。くわえて、社内の産業医や、カウンセラーなどへ相談できるとより良いといえます。
現在の働き方を見直す
低音障害型感音難聴を発症した場合は、今の自分の状態に合わせて働き方を見直すことも必要です。なお見直す内容には、以下のような例が挙げられます。
- 障害の特性に合った業務・部署への配置転換
- 定期的な休憩時間の挿入
- 夜勤や残業を控える
- 時短勤務
- 仕事を変える
どのような働き方なら無理なくはたらけるかを考え、現在のワークスタイルへ反映できないか検討してみてください。
日常生活の過ごし方を改善する
低音障害型感音難聴には生活習慣が大きく影響しているため、不規則な生活やストレス過多な状態の継続が最もやってはいけないことです。もし現在の生活や心身の状態が乱れがちなら、早急な見直しが求められます。どこを改善すればよいか迷ったときは、次のポイントを意識してみてください。
- 決まった時間にしっかりと睡眠を取る
- 栄養バランスの整った食事を取る
- 定期的に軽い運動を取り入れる
- カフェイン含有量の多いコーヒーなどの飲料摂取を控える
- 自分に合ったストレス解消法を探す
十分な睡眠と栄養バランスの整った食事をとれば、自律神経が整うほか、免疫力も向上するため低音障害型感音難聴の治療の効率が上がります。睡眠を妨げとなるカフェインの摂取は控え、溜まったストレスを発散する自分なりの方法を見つけておくとよいでしょう。
仕事を変える
耳が聞こえないと危険な業務や、平衡感覚を要する職種、障害に理解がない職場では、仕事の継続は困難です。また、長時間座ったまま動けない仕事も、血液やリンパの流れを阻害して症状が悪化する恐れがあるためおすすめできません。
今の仕事が低音障害型感音難聴の症状や治療との両立と相性が悪いと感じたら、はたらきやすい仕事に転職することも検討してみてください。なお、低音障害型感音難聴のある方に向いている仕事は以下の通りです。
- 入力作業がメインのデスクワーク
- 人と話す機会が少ない職種
- マイペースでできる業務
また、障害者手帳を取得している場合は、障害者雇用枠ではたらくのも一つの選択肢です。障害者雇用枠の仕事は、障害があることを前提とした求人のため、はたらきやすい環境が整っています。
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低音障害型感音難聴は、通院での服薬治療と生活改善で治療できます。また、勤務と治療が両立できる働き方が見つかれば、仕事をやめる必要もありません。ただし、仕事自体がストレス源になっているときや、合理的配慮に理解が得られない場合は、症状の悪化を防ぐため転職も検討するほうがよいでしょう。
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公開日:2024/9/25
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士