障害者手帳を持っている人のはたらき方-「障害者採用枠」と「一般採用枠」のメリット・デメリットとは?

障害者手帳を持っている人のはたらき方

障害のある方が就職・転職する場合、「障害者採用枠」と「一般採用枠」という2つの選択肢があります。障害者採用枠で雇用されるためには、障害者手帳が必要です。そのため、障害者手帳を持っていない人は一般採用枠での就労をめざすことになります。
障害者手帳を持っている人は一般採用枠でも就労できるため、どちらの採用枠を選んで応募するべきか悩む人も多いでしょう。どちらを選ぶにしてもそれぞれにメリット・デメリットはあります。正しい情報をもとに、自分にあったはたらき方を考えることが大切です。今回の記事では、障害者手帳の基礎知識や2つの採用枠のメリット・デメリット、障害をオープンにしてはたらくことについて紹介しています。

障害者手帳について

障害者手帳とは、心身の機能になんらかの障害がある人に対し、自治体から交付される手帳の総称です。障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの給付等を通じて、障害のある方の自立や社会参加を促進することを目的としています。

障害者手帳の種類

障害者手帳には「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3種類あり、障害の程度などに応じてそれぞれに等級が定められています。障害者手帳の交付や再交付には、自治体での申請手続きが必要です。

    ■身体障害者手帳
    身体障害者福祉法に基づき、一定の期間以上永続する身体上の障害がある人に交付されます。

    ■療育手帳(愛の手帳)
    各自治体が定める療育手帳制度に基づき、児童相談所などにおいて知的障害であると判定された、原則18歳未満の人に交付されます。自治体によって判定基準や手帳名称が異なる場合もあります。

    ■精神障害者保健福祉手帳
    精神保健福祉法に基づき、一定期間以上精神疾患の状態にあり、日常生活に制限が必要な人に対して交付されます。有効期限は二年で、満了後は更新申請が必要です。

身体障害者手帳の障害区分

身体障害は種類別に1級から7級までの等級が定められており、うち6級以上の障害に対して身体障害者手帳が交付されます。等級によって受けられるサービスが異なることもありますので、ご自身がどの階級になるかは、厚生労働省の等級表を参考にしてください。

対象の身体障害

身体障害者手帳の交付対象となる身体障害は、以下のとおりです。

  • 視覚障害
  • 聴覚または平衡機能の障害
  • 音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害
  • 肢体不自由
  • 心臓、腎臓、呼吸器、ぼうこう、直腸、小腸、肝臓の機能の障害
  • ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症による免疫機能の障害

精神障害者保健福祉手帳区分

精神障害者保健福祉手帳は、1級から3級まであります。2年おきに更新する必要があり、更新するには新たな診断書の提出が必要です。

  • 1級:精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
  • 2級:精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
  • 3級:精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

対象の精神疾患

精神障害者保健福祉手帳の交付対象となる精神疾患は、以下のとおりです。

  • 統合失調症
  • 気分障害(うつ病、双極性障害など)
  • てんかん
  • 依存症(アルコール依存症、薬物依存症、拒食症、過食症など)
  • 高次脳機能障害(脳神経疾患や低酸素脳症、外傷などによって脳機能に障害が生じること)
  • 発達障害
  • その他の精神疾患

療育手帳(愛の手帳)区分

療育手帳の等級区分については、運用方法や支援内容が各自治体によって異なりますが、重度をA区分、中~軽度をB区分と分けられることが多く、自治体ごとに判断は異なりますが、基本的な判定基準は知能指数(IQ)が主となります。
いずれも、お住いの自治体によって障害認定の基準が違うのがポイントです。手続きなども含め、ご相談はお住いの市区町村の障害福祉担当窓口に聞いてみましょう。

療育手帳のA区分(重度)、B区分(中~軽程度)の区分けについて

療育手帳区分において、A区分とB区分にそれぞれ分類される区分けの基準は、以下のようになっています。

重度(A)の基準
知能指数がおおむね35以下であって、次のいずれかに該当する者
・食事や着脱衣など日常生活において何らかの介助が必要である
・異食や過度な興奮など、問題行動がみられる
または、知能指数がおおむね50以下であって、盲・ろうあ・肢体不自由などを有する者

中~軽程度(B)の基準
(A)の基準に該当しない場合
先に述べたとおり、お住まいの自治体ごとに療育手帳の等級区分を判断する基準は異なります。詳細は各自治体の窓口へお問い合わせください。

障害者手帳の申請方法

障害者手帳

就職活動をするにあたって、身体障害者手帳や精神障害者福祉手帳・療育手帳の新規取得をお考えの方もいると思います。ここでは、各種手帳を取得するための申請方法や必要な手続きをご紹介します。

身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳の申請方法

1.申請書を入手する
各市区長村の担当窓口に出向き、申請書を書面でもらうか、市町村のWebサイトから書式をダウンロードします。
2.必要なものを準備する
医療機関が作成した診断書、運転免許証などの本人確認書類、個人番号カード(マイナンバーカード)、ご自身の顔写真など、申請書以外で申請に必要なものを用意しておきます。
なお、身体障害者手帳の申請のための診断書は、「身体障害者福祉法第15条の指定」を受けている医師に依頼する必要があり、発行から1年以内のものが有効とされます。精神障害者保健福祉手帳の場合は、診断書を作成してもらうには初診日から6ヶ月以上経過している必要があり、作成日から申請日の期間が3ヶ月以内のものが有効となります。
3.申請する
必要事項を記入した申請書と必要書類を担当窓口に提出し、申請を行いましょう。交付までの期間の目安は、身体障害者手帳の場合は申請から発行まで約1ヶ月程度、精神障害者保健福祉手帳の場合は2ヶ月程度とされています。

療育手帳(愛の手帳)の申請方法

1.申請書を入手する
各市区町村の保健福祉課担当窓口で、療育手帳交付申請書を入手します。または、市区町村のWebサイトから書式のダウンロードも可能です。
2.必要なものを準備する
必要事項を記入した療育手帳交付申請書、印鑑、本人の顔写真などが必要です。
3.申請する
必要書類を揃えて担当窓口へ申請します。その後、判定機関(児童相談所、知的障害者更生相談所など)で検査を受け、交付の判定が行われ手帳が交付されます。

身体障害者手帳・精神障害者手帳取得のメリット

身体障害者の方が障害者手帳を取得するメリット

身体障害者手帳を取得するメリットのひとつに、就職の際に「障害者採用枠」へ応募できることがあります。障害者雇用では、障害特性に対する配慮を受けながらはたらくことができ、就職にあたって利用できる支援制度の幅も広がります。また、交付を受けた本人と保護者、家族に対して税金が優遇されたり、医療費の助成、さまざまなサービス料金の割引、各種福祉サービスを受ける権利が与えられます。ただし、障害者手帳の種類や障害の等級により受けられる助成内容が異なる場合もあるため、障害者手帳の交付時に配付されるガイドブックや、お住まいの市区町村の障害福祉窓口で確認するとよいでしょう。

精神障害者の方が障害者手帳を取得するメリット

精神障害者保健福祉手帳についても、一部のサービスを除いて、身体障害者手帳と同じく税金の優遇や各種サービスの助成、割引を受けることができます。精神障害者であることを理由に差別を受ける・不都合な経験をされるといったことは障害者差別解消法で禁止されており、精神障害者保健福祉手帳を取得することで直接不利益になることはないですが、期限が自動更新でないために、2年に一度の更新が負担といったことがあります。

障害者手帳を取得すると、就労でさまざまな配慮がある

障害者手帳

障害者手帳を取得したからといって、勤務先などに伝える義務はありません。「障害者採用枠」か「一般採用枠」か、どちらの採用枠で求職活動するのかも本人の自由です。一方で、障害者手帳を開示したうえで就職すると、「仕事に関する合理的配慮を求めやすい」「職場内で相談しやすい」など、就労においてさまざまな配慮や支援を得やすくなります。

「障害者採用枠」とは

障害者採用枠とは、「障害者の雇用を前提にしている採用枠」です。応募できるのは、障害者手帳を持っている人のみで、職場に自身の障害を明かして就職することになります。
障害者採用枠が設けられた背景にあるのが、障害者雇用の推進を目的とした「障害者雇用促進法」です。この法律には「法定雇用率」も定められており、「企業や公共団体はある一定割合以上の人数の障害者を雇用しなければならない」と義務づけています。「法定雇用率」を達成する手段の一つとして、一般採用枠と分けて障害者採用枠を設け、障害者雇用の推進を図る企業が増えています。

43.5人以上雇用している企業は1人雇用が義務

障害者雇用促進法は、障害者雇用の推進と安定を実現するため、これまで改正を重ねてきました。2021年3月に法定雇用率は「2.3%」に引き上げられ、法定雇用率の対象となる事業主の範囲は「従業員43.5人以上の企業」になりました。今後も法定雇用率に関する基準は引き上げられる見通しです。障害者採用枠を設けて雇用の促進と継続を図っていく企業が、ますます増えていくでしょう。

障害者採用枠と一般採用枠の違い

「障害者採用枠」と「一般採用枠」の違いについて、それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

障害者採用枠のメリット・デメリット

障害者採用枠のメリットは、「障害者採用に積極的な大手企業に雇用される可能性がある」ことです。また、「就労移行支援事業所等の就職支援を受けられること」で、障害特性によっては苦手となる、求人選択や面接等を支援員と二人三脚で進められる点が挙げられます。障害を職場に隠す必要がないため、面接時に自分の疾患について詳しく相談でき、就職後の心配を軽減できます。他にも、「障害が理由で仕事に支障をきたしたときに配慮を受けられる」などのメリットもあり、結果として、職場への定着率が高くなります。
主なデメリットは、一般採用枠に比べて「職種や求人数が限られる」「給料水準が低い」などです。給料に関しては改善もみられるようですが、希望する職種で障害者採用枠が設けられていない可能性もあり得えます。また、上司や同僚から障害者として見られることにストレスを感じる人もいるでしょう。

一般採用枠のメリット・デメリット

一般採用枠の主なメリットは、障害者採用枠よりも「職業の幅が広く、求人数が多い」「給料水準が高くなる傾向にある」という2点です。はたらきたい職種や職業、地域にこだわりがある場合は、一般採用枠の方が選択肢は増えるでしょう。
主なデメリットは、「障害によって仕事に支障をきたしたときに配慮を受けにくい」ことがあります。また『独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター』の調査研究データによると、障害者の一般採用枠での早期離職は多い傾向にあるようです。
参考:『障害者の就業状況等に関する調査研究』(2017年JEED)』

採用枠の違いによって、賃金体系や雇用形態に差を設けていない企業も

企業によっては、経営方針において障害者採用枠と一般採用枠とで、賃金体系や人事制度に差を設けていない場合もあります。たとえば、採用試験時に障害に関して配慮してほしい内容を申し出ることで、前向きな対応をしてくれるといったケースです。賃金体系や人事制度などは、企業のホームページを見るだけではわからないこともあります。そのため、面接時に確認したり、障害者の就職支援事業者に相談したりといった方法で、企業の情報を集めましょう。事前の情報収集により、就職後のミスマッチを防止できます。

障害者手帳を開示してはたらくということ

障害者採用枠でも一般採用枠でも、職場内で自身の障害を「オープンにするか」「クローズにしておくか」によって、はたらき方は大きく変わります。障害者採用枠で就職しても、人事や直属の上司以外にはクローズにしたい場合、相談可能な企業は多いです。一方、一般採用枠で就職しても障害をオープンにすることで、「病気のことが、人づてで周囲に知られるのでは?」という不安がなくなり、通院時間や服薬に対する理解も得やすくなります。

障害をオープンにしてはたらくことで、できない仕事や苦手な仕事を理解してもらい、得意な仕事をいかしてはたらける可能性は高くなります。対して、「新しいことに挑戦したい」「多くの仕事に取り組みたい」という気持ちが強いのであれば、障害をクローズにするのも一つの選択肢です。どのようなはたらき方が自分にあっているのかをよく考えながら、自分の進みたい道を探していきましょう。

就職事例:「長く安心してはたらく」ために、障害をオープンにして転職

先天性の心疾患で身体障害のあるM.Y.さんは日常生活に問題はなく、専門学校を卒業後、アパレル業界でのキャリアをスタートしました。いくつかアパレルファッション関係の仕事をした後、結婚・出産を経験。30代後半に障害者採用枠というはたらき方を知り、障害をオープンにして大手企業に転職しました。
M.Y.さんが障害者採用枠で仕事に就こうと考え始めた理由は、この先、症状が変わらない保証はなく、疾患の状態が変わる可能性もあるとの思いからでした。dodaチャレンジの紹介で転職後は、これまでの経験を活かしてはたらいていたM.Y.さんですが、ある日、定期検査で弁膜症を発症したことがわかり、手術が必要に。急な入院でしたが障害をオープンにしてはたらいていたこともあり、周りからの理解を得られ、安心して治療に専念できたそうです。退院後は、元の業務に復帰できました。
※dodaチャレンジ 「身体障害(ファロー四徴症)/40代女性/事務職への転職ストーリー」

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障害者手帳を持っている人は、「障害者採用枠」でも「一般採用枠」でも求職活動をできますが、2つの採用枠にはそれぞれにメリット・デメリットがあります。障害者手帳について正しい情報を知ったうえで、自分にあったはたらき方を考えることが大切です。また、どちらの採用枠の場合でも、ミスマッチを防ぐため、障害をオープン・クローズにしてはたらくかについても、個別に企業とコミュニケーションをとることが望ましいでしょう。自分にあったはたらき方について、一人で悩んでいても答えが出ないという人も多いと思います。納得のいく就職・転職を実現させるためにも、企業のホームページだけではわからない障害者採用に関する取り組みの実態などは、積極的に公的な機関や民間の障害者就職支援事業者に相談しましょう。

公開日:2022/3/30

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルチャレンジ株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルチャレンジ)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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