ADHDのある方に向いている仕事とは?「できない」を「できる」に変えるヒント集
自分はADHDかもしれないと感じている方や、医療機関でADHDと診断された方の中には「仕事に向いていない」「今の職場を早く辞めたい」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。障害特性から、精一杯頑張っているのに思わぬケアレスミスをして叱責されると、自信がなくなってしまいますよね。
そこで今回は、大人のADHDの特性から、向いている仕事と不利な職種、職場でのミス対策を紹介します。就職・転職したいと考えていても一歩を踏み出せずにいる方や「ADHDがある自分は仕事ができない」と思い込んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ADHDとは?
ADHDとは「Attention Deficit Hyperactivity Disorder」の略称で、発達障害の一つです。日本名では、注意欠如・多動性障害と呼ばれます。
ADHDは、脳の機能の発達や成熟の偏りが原因だとされており、根本的な治療は困難です。しかし、自身の特性を理解して対処法を身につけたり、家族・友人や職場に受け入れてもらったりすることで、生きづらさの解消につながるでしょう。
また、心療内科や精神科などの医療機関で治療を受ければ、障害特性を抑える薬物療法や「認知行動療法」「ソーシャルスキルトレーニング」などの心理療法が受けられます。
以前は、ADHDは子どもの発達障害とされていました。ところが最近は、大人になってから仕事や対人関係の困りごとが増えて気づくケースや、うつ病・適応障害などの精神疾患で受診した際にADHDが背景にあったと分かるケースも増えています。
こうした背景を受け、近年はADHDのある方を含む精神障害者雇用市場が拡大し、特性に応じた多様な働き方が実現しつつあります。
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ADHDの主な特徴
ADHDの特徴は、主に「不注意」と「多動性・衝動性」の2つです。いずれか一方の特徴のみが出る方もいれば、両方を併せ持つ方もいます。以下では、それぞれの特徴による症状や、職場などでの困り事をみていきましょう。
不注意
ADHDがあると、注意力散漫で集中が長く続かない方が多い傾向にあります。忘れ物や物をなくすことも多々あるほか、決められたルール・約束をつい忘れてしまいがちです。
多動性・衝動性
ADHAのある方は多動性・衝動性が強く、一箇所にじっとしているのが苦手です。自分の欲求や言動がうまくコントロールできないため、TPOに適した行動が取りづらいほか、やりたいことをどうしても我慢できません。よく考えずに思ったことをすぐ言ってしまったり、突発的に行動したりして、トラブルになることもあります。
ADHDのある方の長所は?仕事に活かせる5つの強み
ADHDの特性はマイナス面ばかりが強調されがちですが、ポジティブに捉えると長所にもなります。次のような長所を仕事で発揮できれば、短所だと思っていた部分が、逆に自分の強みとなるかもしれません。
- 発想力や独創性に富む
- 好奇心が強い
- 感受性に優れる
- 行動力がある
- 好きなことに抜群の集中力を発揮する
発想力や独創性に富む
ADHDのある方は、発想力や独創性が豊かで、新しいものを企画することが得意だといわれています。他者とは異なる視点から、誰も考えないような新鮮なアイデアを生み出すこともあるようです。
好奇心が強い
ADHDがあると好奇心や意欲が強い傾向にあり、興味があることが見つかるとどんどん突き進んでいきます。常識や前例に捉われないため、初めてのことでも果敢にチャレンジできるでしょう。
感受性に優れる
ADHDがある方はさまざまなことから刺激を受けやすく、変化や新たな情報、トレンドにも敏感です。自分が良いと思ったことは積極的に取り入れるほか、どんな人とも分け隔てなく接する人懐こさも長所だといえます。
行動力がある
ADHDの多動・衝動性をポジティブに捉えると、行動力と決断力が高いと言い換えられます。いつまでもくよくよ迷い続けたり、判断を保留したりすることはあまりなく素早く結論を出します。また一度決めたらすぐ行動に移すので、成果を上げるのもスピーディーです。特性がうまくはたらけば「仕事ができる人」だと評価されるでしょう。
好きなことに抜群の集中力を発揮する
ADHDの特性は興味が向かないと不注意が目立つものの、自分が好きなことには抜群の集中力を発揮します。作業スピードも非常に速く、仕事からプライベートの趣味まで存分に楽しめるでしょう。
大人のADHDの特性による仕事でよくある悩み事
大人のADHDでは、多動性が外面的には目立たなくなるといわれています。しかしその分、相対的に不注意が目立ちやすくなるため、仕事で以下のような失敗をよくすることに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
- 片づけが苦手
- ケアレスミスが多い
- 段取りがうまくできない
- 気が散りやすい
- 興味のないことに取り組むのが難しい
片づけが苦手
ADHDのある方は片づけが非常に苦手で、デスクやロッカーなどが物で溢れ、ゴチャゴチャになってしまいがちです。仕事で大切な道具や書類をどこに置いたか忘れやすいうえ、探すのにも時間がかかり、業務に支障が出てしまうこともあります。
ケアレスミスが多い
何かに気をとられると、ほかのことは忘れてしまいやすいのがADHDのある方の特徴的な性格です。例えばメールに誤字脱字があったり、重要な書類などを持ってくるのを忘れたりして注意を受けた経験がある方もいるかもしれません。また、あらかじめ決められていることがあっても、興味がないとつい忘れてしまうため、仕事上での正確で迅速な記録や報告などの業務も苦手です。
段取りがうまくできない
ADHDのある方の頭の中は常にさまざまな情報でいっぱいなので、うまく優先順位をつけて段取りが組めません。マルチタスクやTPOの判断も難しく、目先のことに気を取られがちです。そのため、後から指示された急ぎの仕事を先送りにしたり、大事な予定に間に合わなくなってしまったりすることが珍しくありません。さらに急な変更があると混乱しやすく、臨機応変な対応が困難です。
気が散りやすい
ADHDがあるとちょっとしたことで集中力が途切れやすく、ひとつのことをなかなかやり続けられません。会議中に気が散ってしまい、重要な話を聞き逃すこともあるでしょう。集中できていない様子から、上司や先輩、同僚から「不真面目」「真剣さに欠ける」などと評価されてしまうこともあります。
興味のないことに取り組むのが難しい
ADHDのある方は、自分の関心のないことにどうしても気が乗りません。興味がない仕事は着手が遅れがちで、いざ始めても気分が向かないため注意力が散漫になり、たびたび作業の手が止まったりなかなか進まない様子もよくみられます。また興味が持てない仕事で失敗が続くと嫌になり、衝動的に辞めてしまうこともあるため、一つの仕事が続かない方もいるようです。
ADHDのある方に向いている仕事一覧
ADHDの特性を自分自身で正しく把握し、それに適した働き方を考えることで、ぐっと仕事がしやすくなります。ここでは、ADHDの長所を活かせる仕事の種類や職種についてみていきましょう。
興味・関心を追究する仕事
ADHDのある方にとって、自分がやりたいと強く感じる仕事こそ天職です。強い興味・関心があれば、持ち前の決断力と行動力が遺憾なく発揮され、斬新なアイデアを思いついて高評価が得られるかもしれません。具体的には、以下のように業務の自由度が高く、興味・関心を突き詰めていく職種が向いています。
- プランナー
- 研究職
- 広告ディレクター
- 興味や関心のある分野を取り扱う営業職
自身の興味・関心に基づく働き方を選ぶことで、ADHDであるがゆえの長所が活かせるはずです。
想像力が活かせる仕事
ADHDのある方には、障害特性による強みといえる想像力が活かせる職種がぴったりです。例えば、次のように自由度が高くクリエイティブな仕事で奇抜な発想力や従来にないアイデアが認められれば、その道の第一人者として活躍できるほどの力を秘めています。
- デザイナー
- イラストレーター
- 絵画・造形などのアート作家
- コピーライター
- 文筆家
実際に、その豊かな想像力を発揮し、自分の好きなことを仕事にしている方も少なくありません。
専門的な技術が必要な仕事
ADHDのある方は、興味のある分野をとことん極める性質を持つので、その専門性の高さが研究・開発などの専門的な分野の現場で重宝されます。例えば、以下のようなIT関連の職種や専門資格を必要とするスペシャリストなどはADHDをはじめとする発達障害のある方も多く、転職のチャンスもたくさんあります。
- エンジニア
- プログラマ
現在、IT関連のうち、特に先端・高度分野にかかわる技術者は慢性的に不足している状況です。ADHDのある方の中から、先端IT特化型の優秀な技術者を生むための就労移行支援事業所なども設立され、世間の注目を集めています。
先端ITスキルを身につけたい方や、就業準備をしたい方におすすめなのが「Neuro Dive(ニューロ・ダイブ)」。最先端のAI・機械学習や、データサイエンスなどの技術が学べる就労移行支援事業所です。さらに、コミュニケーションスキルや自己分析、応募書類作成・面接のノウハウの提供など、転職をめざすADHDの方に必要なサポートを提供しています。
ADHDのある方が活躍しづらい仕事
ADHDのある方は、興味のあることには全力で取り組める反面、それ以外のことはまったく続かなくという自覚がある方もいるでしょう。次の項目では、主に「集中力」と「興味関心」に起因するADHDの特性を踏まえて、あまり向いていないとされる職種とその理由を説明します。
ただし、仕事の向き不向きは一般論であり、実際は特性に個人差があるため、すべてのADHDのある方に当てはまるわけではありません。また、向いていない仕事でも、適切なサポーターの存在で活躍できる可能性も十分にあるので、あくまでも参考情報としてお役立てください。
マルチタスクを要する仕事
ADHDのある方は、仕事の段取りが苦手な方が多いので、マルチタスクを要する仕事はハードルが高いといえます。なおマルチタスクとは、複数の仕事を同時進行で行うことです。例えば以下のような仕事は、不特定多数との同時コミュニケーションや、複数の対象へ一遍に注意を払う必要があるため、十分な検討が必要です。
- 販売・飲食ホール業務などの接客業全般
- 電話応対や接客対応を伴う一般事務
- 介護職
- 運転手
上記の仕事に興味・関心がある場合は、周囲からの合理的配慮があるかどうかではたらきやすさが大きく変わるので、仕事選びの際にチェックしてみてください。
完璧を求められる仕事
ADHDのある方には、完璧にこなすことが求められる責任重大な仕事はあまり向いていません。興味・関心や適性にもよりますが、医師・看護師などの医療従事者や教育職など、ちょっとしたミスが重大なトラブルに発展する恐れのある仕事は負担が大き過ぎます。
ADHDがあっても大丈夫!仕事のできる人がやっているミス対策5選
仕事で衝動的な行動や不注意による失敗が多い場合、ADHDの特性が影響している可能性があります。ADHDの特性は見方によって長所にも短所にもなるため、自己理解と仕事への影響を正しく知り、事前に対策を立てることでミスがぐっと減らせるはずです。ここからは、ADHDの特性を踏まえたミスの対策方法をお伝えします。
整理整頓の時間を積極的に取る
ADHDのある方にとって、仕事をしながら整理整頓もこなすのは難しいので、片づける時間を別に取るようにするのがおすすめです。仕事が終わった後や、昼休みの時間を整理整頓の時間と決め、毎日の習慣にすると苦手な片づけも実行しやすくなります。
メモやチェックリストを活用する
タスクや必要なものなどをうっかり忘れてしまわないよう、小さなメモ帳を常に持ち歩いタスクや必要事項などをうっかり忘れてしまわないよう、小さなメモ帳を常に持ち歩き、大切なことを書き留めておくのもよいアイデアです。就業時間の前に「今日やるべきこと」をリストアップし、TODOリストを作成しておくと、後で忘れることが少なくなります。手書きのほか、スマホのメモアプリなどさまざまな記録手段があるので、管理しやすい方法を探してみてください。
スケジュール・タスク管理表を作成する
仕事の予定や課題を忘れがちな方は、それらの情報を一つにまとめた管理表の作成をおすすめします。管理ツールやテンプレートなどを自分が使いやすいように調整し、日々のチェックリストと併せて活用できるようにすると便利です。あらかじめ管理表を上司に見せておき、定期的に確認してもらうのもよいでしょう。
持ち物などは前日に準備しておく
忘れ物が多いADHDのある方は、持ち物の準備を出掛ける間際ではなく、前日のうちに済ませておけばミスが減らせます。余裕を持って早めに準備しておくことで、忘れ物で困ることがなくなっていくはずです。
職場に自分の特性を伝えておく
必要に応じて、ADHDの特性を職場に伝えることも検討してください。職場への障害の開示は必須ではありませんが、あらかじめ上司や同僚の理解を得ておけば、合理的配慮が得られるうえ、対策を一緒に考えてもらうこともできます。
具体的な対策としては、単独で仕事をするのではなくダブルチェックを行うことなどが挙げられます。現在の担当にどうしても集中して取り組めないと悩んでいるなら、特性による得意・苦手に合わせて業務や配置を変えてもらうのも一つの方法です。
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ADHDがあると不注意や多動性・衝動性による困り事に気を取られがちですが、型破りな発想力やスピーディーな行動力など、仕事に活かせる特性もたくさんあります。自分に合わない仕事で悩みながらはたらくより、無理なくはたらける場所を見つけるほうが、長所を発揮して活躍できるはずです。
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公開日:2023/2/8
更新日:2024/11/28
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士