大学では経営学を専攻し、また、音楽系のサークルに入っていました。気の合うバンド仲間と楽しく過ごす一方で、今振り返ってみると、大学時代にもADHDの特性が表れていたと思います。例えばアルバイトが長続きしなかったのが、その一つです。周りとのコミュニケーションがうまく取れなかったり、同じ失敗をしてしまうことが多々ありました。アルバイト先に居づらくなって辞めたりして、自信がなくなり、そのうち在学中は積極的にアルバイトをすることもなくなりました。他には、仲の良い友人から「アスペルガー症候群では?」と言われたこともありました。当時は発達障害という言葉も普及しておらず、そのときは、私自身、深く気に留めることもなかったのですが、その傾向があるよという話をしたことを、今も記憶しています。
新卒入社した半年後、営業の仕事に行き詰まる
就活は苦労した末、ある卸売業界に就職しました。しかし、入社して半年経った頃くらいから、配属された営業部での仕事に行き詰まってしまいました。失敗を繰り返してしまうんです。「今度は絶対ミスをしないぞ!」と思って取り組むのですが、別の失敗をしてしまうなど悪循環でした。
例えば、営業の仕事で車を運転しながら、助手席に乗っている上司と会話することが苦手でした。また、電話しながらメモを取るのも難しく、複数の作業を同時にこなすことができなかったんです。他の同期にできることが、自分はできないことが辛かったです。
異動した経理の仕事にも合わず、退職へ
2年目は経理部に異動になりましたが、スピードと正確性が求められる業務も私には合いませんでした。誰かに相談すれば良かったのですが、当時の私は、自分の努力が足りないからだと思い、何とか状況を打開しようとしていました。しかし何をやってもうまくいかず、これ以上、続けることはできないと思い、入社して3年経たずに退職しました。
アルバイト生活で生計を立てた10年間
最初は、正社員で転職活動をしましたが、どの企業も1次面接以降、次に進みません。私は一人暮らしで、生活費を稼ぐ必要があったので、小売業界でアルバイトをしながら転職活動をすることにしました。アルバイトは週4~5日で、仕事内容はレジや商品陳列などのルーチン業務で、目立った失敗をすることもなく、そこで10年近くはたらきました。
アルバイトを始めて2年くらい経った頃、「正社員として、社会ではたらいていくにはどうすればよいか、何かスキルや資格をみにつけるべきではないか?」とインターネットで調べたりや本を読んで情報収集していました。そんな中、発達障害に関するサイトを見つけ、発達障害やADHDの症状を知りました。例えば、「忘れ物が多い」「時間に遅れる」「コミュニケーションが人とは違う」などは自分にも当てはまると思いました。もし、自分も発達に特性があるならば改善した方が良いのではないか?と考えるようになりました。
発達障害を認識し始めて3年後に精神科を受診
自分は発達障害かもしれないと思い始めておよそ3年、私は30代半ばになりました。アルバイトは続いていましたが、「このままの生活でいいのか」と思い立ち、「できることはやってみよう」と精神科を受診することにしました。受診先として、発達障害に関する書籍を出している先生がいる病院を選んだのですが、患者数も多く、予約できたのは半年先でした。初診からその後2回のテストを受けました。主治医に「結果についてどう思いますか?」と聞かれた私は、「自分はADHDだと思います」と答えました。その回答に対して、主治医からは、「まさにその通りですね。典型的なADHDです」との返答でした。私は、「やっぱりそうだったんだな」という気持ちでしたね。