発達障害のある方が仕事を続けるコツは?特徴が活かせる仕事を探そう
自分は発達障害かもしれないと思っている方や、すでに発達障害の診断を受けた方の中には、「どんな仕事が自分に合っているのか分からない…」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
発達障害のある方が長く仕事を続けるにはどうすれば良いのか、今回はそのヒントとなる情報をご紹介します。
目次
01.発達障害とは?種類とそれぞれの特徴
発達障害はADHD(注意欠如・多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害)、LD(学習障害)に分類されます。まずは、それぞれの特徴について見ていきましょう。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
ADHDのある方は、2つの特徴があります。その1つとして、まず「不注意」が挙げられます。ADHDのある方は忘れ物が多く、大切なものをなくしてしまうこともよくあります。他のことに気が散りやすいため、すぐに注意が散漫になってしまい集中力が続かない傾向があります。
そして、もう1つの特徴は「多動性・衝動性」です。時間をかけて考えることや、じっくり待つことが苦手で、衝動的に行動する傾向があります。思いついたことをすぐ言いたくなるので失言が多く、他の人の話に割って入ることもあります。
2つの特徴を併せ持つ方もいれば、どちらかの特徴のみを強く持つ方もいます。
ASD(自閉症スペクトラム障害)
ASD(自閉症スペクトラム障害)の特徴は、主に2つあります。1つ目は「社会性・コミュニケーションの難しさ」で、相手の立場に立って考えることが苦手だったり、言葉を文字通り解釈する傾向があります。結果として相手との適切な距離感がつかめず、不用意な発言をするなど、困難を招く場合があります。
2つ目は「行動のパターン化・強いこだわり」です。物・場所・時間・仕事内容など、いつも同じ状態であることを望み、急な変更があると強いストレスを感じます。ASDの方には「ゆずれないこだわり」があるので、妥協することが難しく、相手を困らせてしまうこともあります。
LD(学習障害)
LD(学習障害)とは、「読む」「書く」「計算する」などの学習能力に大きなかたよりがあり、日常生活や学校生活に困難が生じる発達障害のことです。特性の出方は人によって違うので、何が苦手なのかは個人差があります。
02.発達障害のある方の長所は?
問題が多いと思われがちな発達障害ですが、見方を変えれば特性が長所になることもあります。
ADHD(注意欠如・多動性障害)の方の長所
ADHDのある方の長所は、行動力と独創性です。いつまでも悩んでいることなくスピーディーに決断し、行動に移すのも早いという特性があります。さまざまなことに好奇心を持ち、常識にしばられずに柔軟な発想で、新しいことにも意欲的にチャレンジします。
ASD(自閉症スペクトラム障害)の方の長所
ASDの方は、決められた仕事をサボることなく、まじめに取り組むのが長所です。記憶力の高い方が多く、かなり昔のことでも鮮明に覚えていることがあります。興味のあることへの集中力が高く、数字や論理が得意な方も多いです。
LD(学習障害)の方の長所
LDの方は「読む」「書く」「計算する」などが極端に苦手ですが、その反面、他の人よりも優れている能力があります。人によっては、位置や方向など空間を正しく把握する力や、他人にはない優れた発想力を持っています。
03.発達障害のある方の短所は?仕事で抱える悩みについて
発達障害の特性が強く出た場合、はたらく上で問題が発生してしまうこともあります。努力をしてもなかなか改善できなかったり、努力が伝わらなかったりするケースも多く、自信を失いストレスを抱える発達障害がある方もいます。
ADHD(注意欠如・多動性障害)の方の仕事上の悩み
整理整頓がうまくいかないのもADHDの特性です。例えば、机を片づけようとしても他のことに意識が向いてしまい、机の片づけを忘れてしまいます。毎日そのくり返しなので、片づけはなかなか進みません。
また、仕事の重要度を判断するのが難しいので、タスクやスケジュールを管理することがとても苦手です。優先順位がつけられないので予定がゴチャゴチャになり、約束や期日を忘れてしまうこともよくあります。そこからトラブルにつながり、悩む方も多くいます。
ASD(自閉症スペクトラム障害)の方の仕事上の悩み
ASDの方は、上司や同僚とうまくつき合うことができず相手を困らせたり、仕事がうまく進まなかったりすることがあります。また、興味のないことには無関心な特性も、職場では問題となりがちです。
LD(学習障害)の方の仕事上の悩み
LDがあると、他の人が当たり前にしていることが難しくなります。仕事中に以下のようなことができず困ったり、のちのちトラブルとなったりすることがあります。
・読むのが苦手な方 → マニュアルや資料の内容をすぐに理解することが難しい
・書くのが苦手な方 → 記録やメモをとることが難しい
・計算が苦手な方 → 暗算が難しい
04.発達障害と向き合い、仕事を続けるには?
発達障害の特性からくる短所は、ときとして仕事に大きな影響を及ぼすこともあります。しかし、すぐさま短所を直すのは簡単なことではありません。
発達障害のある方がご自身の特性を受けとめて、仕事を続けていくにはどうすれば良いのでしょうか。
職場に自分の不調パターン・苦手分野を伝える
自分の特性を周囲に伝えずにいると、職場で「困った人」「トラブルメーカー」と判断されてしまいます。自分が苦手なことや、努力だけではどうにもならないことは事前に伝え、障害への理解を求めることができれば、お互いのストレスは大きく解消されるでしょう。
上司との報連相をルール化する
発達障害のある方が長く仕事を続けるには、上司との関係性が重要になってきます。良い関係をたもつためには、報連相(報告、連絡、相談)をはじめとしたコミュニケーションが大切です。日々の業務についての報連相をルール化して、上司とのコミュニケーションを無理なくとれるようにしましょう。
自分の特性に合った仕事を見つける
発達障害のある方は、まずご自身にどんな特性があるのかをよく知ることが必要です。どんな仕事内容が自分に合うのか、避けたほうがいいのはどんな職場かなど、障害の特性に合わせた仕事を理解することで、楽しくはたらき続けられる職場探しがしやすくなります。
05.発達障害のある方に向いている仕事とは?
ここでは発達障害のある方に向いている仕事を、障害種別ごとにご紹介します。特性を長所として強みにすれば、たくさんの可能性が広がっていきますよ。
ADHD(注意欠如・多動性障害)の方に向いている仕事
ADHDのある方に向いているのは、長所である「行動力」「感受性」「発想力」が活かせる仕事です。デザイナーやプランナーなどのクリエイティブ職のほか、できるだけ自由度の高いはたらき方を選ぶことで、ストレスなく実力を発揮できます。
ASD(自閉症スペクトラム障害)の方に向いている仕事
ASDの方に向いているのは、「毎日やることが決まっている仕事」と「人との関わりが少ない仕事」です。ルールやマニュアルが整ったルーティン作業が中心の仕事や、数字や論理が好きな方であればプログラマーなど、ご自身に合った職場環境を見つけることで、特性を強みにしてはたらくことができます。
LD(学習障害)の方に向いている仕事
LDの方は、苦手分野によって向いている仕事が違ってきます。得意なことに合わせて仕事を探せば、自分に向いている仕事が分かってきます。
また、近年はさまざまなITツールやアプリケーションがあるため、このようなツールで苦手なことをカバーすることもできます。事務職などは発達障害のある方には難しいイメージがあるかもしれませんが、デジタル化が進んでいる職場であれば、読み書きや計算が苦手なLDの方でも問題なく仕事ができる場合もあります。仕事内容や職場環境などは、プロの就職・転職エージェントに相談し、詳しく調べるとよいでしょう。
06.発達障害のある方に向いていない仕事は?
世の中にはさまざまな職業がありますが、発達障害のある方はできるだけ避けたほうがいい仕事もあります。
ADHD(注意欠如・多動性障害)の方に向いていない仕事
タスク管理を苦手とする方が多く、複数の作業を同時進行する力(マルチタスク)が必要になる職業は注意が必要です。
ASD(自閉症スペクトラム障害)の方に向いていない仕事
ASDの方は、コミュニケーションをとるのが苦手な方が多いです。接客や販売など対人がメインの仕事は、苦手とするケースが多いでしょう。
LD(学習障害)の方に向いていない仕事
LDの方が避けたほうがいいのは、ご自身の苦手分野がメインになる仕事です。例えば読み書きが苦手な方は、一般事務職やライターなどの職種は苦労するかもしれません。
07.発達障害のある方におすすめの就職・転職方法
発達障害のある方にとって迷うことの多い就職・転職は、何もかも自分ひとりでやろうとするのではなく、プロのサポートを受けることが賢い選択です。発達障害の認知度は格段に高まっているものの、理解度はまだまだ低い現状なので、ご本人と会社の間に入ってくれる存在が必要です。
dodaチャレンジの転職支援サービスでは、障害について豊富な知識を持ったアドバイザーがあなたの就職・転職を支援します。求人情報をご紹介するだけでなく、条件交渉や面接のサポートなども行いますので、転職活動がはじめての方でも安心して取り組んでいただけます。
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まとめ
今回は発達障害の方が仕事を続けるためのコツや、ADHD、ASD、LDの方に向いている仕事についてご紹介しました。
ご自身の障害特性を受け入れることは簡単にできることではなく、精神的に厳しいこともあります。ただ、これまでの失敗やトラブルは特性によるものだと知ることで、自分を責める気持ちが消え、気持ちが楽になることもあるでしょう。
発達障害の特性を理解し、プロの就職・転職エージェントに相談しながら、ご自身の障害の特徴を活かせる仕事をぜひ見つけてみてください。
公開日:2021/9/6
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士