適応障害で退職するのは逃げ?後悔しないために知りたい辞める前後の過ごし方
適応障害を発症し、今の職場での就業に限界を感じていませんか。辞めたくても「自己都合での辞職は逃げだ」「後悔しそう」などの理由で退職をためらっている方もいるでしょう。
この記事では、適応障害での退職にかかわるノウハウをお伝えします。退職前のチェックポイントや辞職の流れ、利用できるサービスを紹介しますので、適応障害で仕事を辞めるのが不安な方はぜひ参考にしてください。
目次
適応障害での退職は逃げではない
適応障害の治療には休養が必要であり、治療に専念する選択は決して逃げではありません。障害の特性で就業の継続が難しいときは、自分の体調を最優先に考えた行動を取るよう心がけてください。
他方で、仕事を辞める前のアクション次第では、より良くはたらくための糸口がつかめるかもしれません。差し迫った状況でないのであれば、退職は一つの選択肢と捉え、事前にできることがないか探してみるとよいでしょう。
適応障害による退職について
はじめに、適応障害とはどのような状態なのかを正しく理解したうえで、特性を理由とする退職のデメリットを考えていきます。
そもそも適応障害とは?
適応障害とは、特定のストレスをきっかけに発症する心因性の諸症状です。主に、次のような症状を呈します。
- 不眠
- 抑うつ
- 意欲低下
- 神経過敏
- 食欲不振・増進
上記はあくまで適応障害の代表的な特性であり、症状の出方は人によって異なります。悪化すると希死念慮を抱くケースも多く、思い詰めた末に自ら命を絶ってしまう危険性のある恐ろしい障害です。
ストレス社会といわれる現代では、誰でも適応障害を発症する可能性があります。実際に、適応障害を原因とする退職者も珍しくありません。
適応障害の治療では、ストレス源から距離を置いたうえ、十分な休養が不可欠です。重症化し、うつ病を発症すると、ストレスの元から離れても回復が困難になります。今の仕事がストレス源になっているのであれば一刻も早く離れ、心身ともに穏やかに過ごすことが大切です。
適応障害で退職するデメリット
適応障害で苦しんでいるときは離職が推奨されますが、以下のようなデメリットが生じることを心配して退職をためらっている方もいるようです。
- 経済的な不安が生じる
- 経歴に空白の期間ができる
- 次によい職場が見つかるとは限らない
上記のような問題はたしかにそのとおりであり、不安に感じるのも当然です。しかし、無理を押してはたらき続けると、症状がさらに悪化して取り返しのつかない事態になるかもしれません。また、悪化すると治療期間もその分長くなり、どんどん不利な状況に自分を追い込んでしまう恐れもあるため、しっかりと休養をとることをおすすめします。
その際、あらかじめ退職にまつわる知識を身に付けておくことで、安心して治療に専念できるはずです。
適応障害で退職を決める前にやるべき3つのこと
適応障害で勤務継続が限界でも、何の準備もなくいきなり辞めると後悔することになるかもしれません。退職を決める前に、まず次の3つのアクションを実践してみることをおすすめします。
- ストレッサーを把握する
- 第三者へ相談する
- 休職を検討する
ストレッサーを把握する
退職前に、自分にとってのストレッサー(ストレス源)を明らかにしてください。ストレッサーが不明確なまま退職してしまうと、適応障害の根本的な原因が分からず、二の舞いになる可能性があります。実は仕事自体がストレス源ではないケースもあり、その場合は退職が必ずしも回復のための最善策にはなりません。
ストレスに感じる状況やそれに対する症状の出方をきちんと把握すれば、再発防止策が見えてくるはずです。なお、今の働き方が原因で適応障害を発症した場合は、厚生労働省が運営する「労働条件相談ほっとライン」へ相談してみるのもよいでしょう。
※出典 労働条件相談「ほっとライン」(Working Hotlne)|厚生労働省
第三者へ相談する
退職が頭をよぎったら、実行に移す前に職場の上司や人事担当者へ相談してください。人事権のある関係者に相談することで、業務量の調整や配置転換などに合理的配慮が受けられ、ストレスなくはたらけるようになるかもしれません。
上司や人事担当者へ直接相談しにくい場合は、産業医やカウンセラーに相談する方法もあります。また企業によってはメンタルヘルス窓口が設置されていることもあるため、活用するとよいでしょう。
会社の関係者への難しいときは、外部の第三者機関へ相談してみてください。例えば、厚生労働省が委託運営する「働く人のこころの耳相談」は、仕事にかかわるメンタルヘルス関連のさまざまな相談の窓口です。客観的な意見を聞くことで、気持ちの整理がつくほか、解決へ向けた何らかの助言が得られる可能性があります。
※出典 相談窓口案内|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
休職を検討する
すぐに退職するのではなく、いったん休職するのも選択肢の一つです。休職して治療に専念し、障害を克服できれば、またはたらけるようになります。
なお休職の際は、復帰の仕方も考えておくことが大切です。また適応障害による休職の場合、傷病手当金が受給できる場合があります。制度の詳細は後述しますが、まずは職場や医師、所属する健康保険組合などに相談してみてください。
くわえて、適応障害で休職した方は、復職前に仕事上および生活面のリハビリが受けられる「職場復帰支援プログラム(リワーク)」が受講できます。受講を希望する場合は診断書が必要なため、主治医に相談してください。
適応障害で退職する流れ
退職の際は一部のケースを除いて即日辞められるわけではなく、一定のプロセスを経る必要があります。ここからは、退職の伝え方とタイミングの2つのステップに分け、それぞれのポイントを確認していきましょう。
退職理由の伝え方
退職することを決めたら、その意思を職場の上司もしくは人事部へ伝え、退職届を提出します。退職理由は明確に伝える必要はないため、一身上もしくは健康上の都合などで構いません。
もし強く引き止められてなかなか辞められないときは、医師に診断書を出してもらうことでスムーズに退職しやすくなるでしょう。
退職のタイミング
法律上、正社員など契約期間に定めのない雇用形態の場合、退職の意思を伝えてから辞められるのは原則として2週間後です。一方、非正規雇用・パートタイマーなど契約期間が定められている雇用形態では、1年以上続けて勤務しているなら即日退職できます。しかし、勤続期間が1年未満での中途退職は、原則として認められません。ただし、家庭の事情や心身の健康上の理由などのやむを得ない事由があるときは、雇用形態にかかわらず即日退職できます。
とはいえ、辞めるタイミングは基本的には就業規定に従うのがビジネスマナーです。また退職の際も有給を取る権利があるため、残日数がある方はそれを消化することで事実上規定より早く退職できます。
適応障害で退職したあとに活用できる5つの制度
適応障害で仕事を辞める際、条件を満たしていれば退職後に次の5つの制度が利用できます。
- 失業給付
- 傷病手当金
- 生活保護
- 自立支援医療(精神通院医療)
- 障害者手帳
失業給付
職場で健康保険に入っていた場合、ハローワークに求職者登録すれば「失業給付(雇用保険の基本手当)」が受給できます。給付日数は離職日の年齢や被保険者だった期間や離職理由などにより、90日~360日の間で決まる仕組みです。
なお失業給付の受給を希望するなら、離職から早期の申請が原則です。申請先は、お住まいの地域を管轄するハローワークへ直接または郵送してください。
また、適応障害などの心身の障害で離職した場合は「特定受給資格者」に該当し、受給期間が長くなります。給付が受けられるまでには待機期間があり、自己都合による退職の場合は通常2ヶ月となるところ、特定受給資格者では7日です。
傷病手当金
「傷病手当金」とは、病気・けがで収入が得られなくなった方へ給与の一部が支給される制度です。本来は休職者を対象としていますが、下記の条件をすべて満たせば退職後にも受給できます。
- 退職日までに1年以上継続した健康保険被保険者期間がある
- 退職日にすでに傷病手当金を受給しているもしくは条件を満たしている
なお、上記の受給の条件とは、退職日の前日から当日を含む連続3日以上出勤していないことです。また、給与やその他の手当・給付金が支給されている場合や、障害年金を受給しているときは、傷病手当金の金額が減額調整されます。
生活保護
適応障害でやむを得ず退職し、その後の生活が厳しいときは「生活保護」の受給も検討してみるとよいでしょう。生活保護とは、障害の有無にかかわらず、資産・能力のすべてを駆使しても困窮している方の最低限度の生活を保障する制度です。申請が下りれば、生活費や家賃、医療費のほか、就労訓練などにかかる費用を保護費として負担してもらえます。
生活保護の申請の際は、各自治体の福祉事務所の生活保護担当もしくは役場へ相談してください。調査ののち認定されれば、世帯構成や障害の有無などによって保護費の支給額が決定されます。※出典 生活保護制度|厚生労働省
自立支援医療(精神通院医療)
「自立支援医療(精神通院医療)」とは、適応障害を含む精神疾患の通院治療に要する医療費の一部を国が負担する制度です。外来受診料や処方された薬代のほか、デイケア・訪問看護などの費用の医療費が1割負担になります。医療費の利用者負担は、本来なら現役世代のほとんどの方が3割負担のため、経済的な負担が軽減されるでしょう。
自立支援医療制度の利用を希望する際は、各自治体の障害・保健福祉窓口へ申請してください。認定されると「自立支援医療受給者証」が交付されるので、受診の際に医療機関へ提出する流れとなります。
障害者手帳
適応障害の特性・症状が重度の方は「障害者手帳」が取得できるかもしれません。本来、適応障害だけでは障害者手帳の対象にならないケースが大半です。しかし、適応障害とほかの精神疾患を複合的に発症している場合は交付される可能性があるため、自治体の障害・福祉支援窓口に相談してみてください。
障害者手帳があれば、各種税控除や公的機関の利用料の割引などが受けられます。また次の就職活動の際「障害者雇用枠」の求人への応募が可能です。
適応障害での退職後の転職・再就職で利用できる支援機関
適応障害による退職後、転職・再就職活動を始めるときは、ハローワークもしくは転職・就職エージェントの利用をおすすめします。なお、転職・就職エージェントは、障害者支援を専門とするサービスを選ぶことが成功のポイントです。以下では、それぞれの特徴を紹介します。
ハローワーク
全国に設置されているハローワークでは、仕事を探すすべての方へ、求人の紹介と就職活動のアドバイスが提供されています。また、ハローワークには障害者専門窓口が設置されており、障害者手帳がなくても利用できるため、自分に合った働き方を相談してみるとよいでしょう。
障害者向けの転職・就職エージェント
障害者向けの転職・就職エージェントは、障害者雇用のプロとしての立場から、心身に障害がある方の良い働き方をサポートする専門サービスです。利用は障害者手帳が必要ですが、就職活動から就業後まで手厚いトータルサポートが受けられるので、ぜひ相談を検討してみてください。
適応障害での退職は逃げじゃない!転職で新しいスタートを
適応障害での退職は治療に必要なプロセスです。とはいえ、退職は人生の一大事であり、辞める前後のポイントをしっかり押さえておくことで、後悔を減らせるでしょう。
適応障害で障害者手帳を取得もしくは申請中の方が再就職・転職するときは「dodaチャレンジ」へご相談ください。いずれも業界トップクラスの求人数を誇り、一人ひとりに合った仕事が転職・就職のプロと一緒に探せます。就職先が決まるまでのサポートから定着まですべて無料でお手伝いしますので、ぜひお気軽にご登録ください。
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転職について不安なことも
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キャリアドバイザーが親身にお話をうかがいます
公開日:2024/9/25
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士