適応障害のある人がはたらきやすい仕事とは?適応障害の特徴・影響や対処法を解説
「適応障害」とは、生活を送るうえで生じるストレスに適応できず、心身のさまざまな症状が出る精神疾患です。日常生活はもちろん、仕事での困りごとなど社会生活への影響も大きいため、はたらき続けることが難しくなってしまうこともあります。
そのため、適応障害の特徴について理解して、無理をせず早めに対処することが大切です。本記事では、適応障害の症状や対処法、向いている仕事などについて詳しく解説します。
目次
適応障害とは
「適応障害」とは、何らかのストレスが原因で心身の症状が出る精神疾患のことです。私たちは誰しも、嫌なことやショックなことがあれば落ち込むものですが、それが過度になると心身のつらい症状が出てしまいます。
例えば、抑うつ感・不安・怒りなどの情緒的な症状や、全身倦怠感・不眠・頭痛・食欲不振のような身体的な症状が該当します。そうした症状が、日常生活や社会生活に悪影響を与えるのが適応障害です。
特定の出来事や状況が原因で適応障害を発症する
適応障害は、仕事・家庭・学校・人間関係・恋愛など、特定の出来事や状況が原因で発症します。何らかの耐えがたいストレスが生じることで、日常生活や社会生活が健康的に送れなくなってしまうのです。
一見すると「うつ病」に似ているようですが、うつ病の場合は原因がはっきりしないことがあったり、ストレス要因から離れても症状が続いたりすることが一般的です。しかし、適応障害はストレスの原因がはっきりしており、それから離れることで症状が改善していきます。
適応障害の発症原因となる要因
適応障害の発症につながる要因には、次の2種類のものがあると考えられています。
- 外的要因
- 内的要因
外的要因
「外的要因」は、主に外部からの刺激によるストレスを指します。主に環境変化や人間関係、例えば仕事や家庭などが該当し、これらは多くの人が「ストレス」と聞いて、まず想像するものだといえるでしょう。
仕事については長時間労働やパワハラ、業務や異動先の部署に馴染めないことなどが原因になりやすいです。こうした外的要因は、社会生活を送るうえで経験するさまざまなことで生じるため、適応障害の外的要因は多様であるといえます。
内的要因
「内的要因」とは、育った環境や性格などが原因で生じるストレス要因を指します。重要なポイントは、ストレスの影響度が人によって大きく異なることです。こうした違いは、「ストレス耐性」や「ストレスへの対処経験」もしくは楽観的・悲観的な性格など、内因的な要素から生じると考えられています。適応障害は、この外的要因と内的要因が組み合わさって起きる疾患です。
適応障害を発症しやすい人の特徴
社会生活や仕事において、適応障害になりやすい人には、主に次のような特徴があります。それぞれの具体例を見ていきましょう。
- 性格や考え方が繊細である
- 働き方や仕事内容が合っていない
- 職場環境や人間関係に問題がある
性格や考え方が繊細である
次のように性格や考え方が繊細な人は、前述した「内的要因」が強いと考えられます。そのため、後述するような働き方や職務環境などの外的要因の影響を受けやすく、適応障害を発症する可能性が高いといえるでしょう。
- 神経質
- 傷付きやすい
- ストレス耐性が低い
- 悩みを一人で抱えがち
- 他人の視線や評価が気になる
働き方や仕事内容が合っていない
次のように働き方や仕事内容が自分に合わない場合は、業務の負担やはたらき続けることへの悩みなどから、適応障害を発症してしまう可能性があります。
- 業務内容が自身の性質やスキルに合ってない
- タスクが多くて常に仕事に追われている
- 責任やノルマに押しつぶされそうになっている
職場環境に問題がある
次のように職場の人間関係やパワハラなど、はたらく環境に問題があるケースでは、精神的なストレスの蓄積が適応障害につながる恐れがあります。
- 上司や同僚との人間関係が上手くいっていない
- パワハラやセクハラなどを受けている
- 転職や転勤などの環境変化に馴染めていない
適応障害が仕事に与える影響・困りごと
適応障害が仕事に与える影響や困りごととして、次のようなものが挙げられます。
- 精神面での変化
- 身体面での変化
- 行動面での変化
精神面での変化
精神面での変化として、抑うつ感・怒り・不安・焦りなど、うつ病に類似する症状が出ます。同僚や上司と積極的なコミュニケーションができなくなり、以前のようなやる気が出なくなるでしょう。
その結果、業務に集中できずミスが増えたり、気分が沈んで出勤が難しくなったりするなど、社会生活への影響が生じます。これまでエネルギッシュだった人ほど、そのギャップが大きくなりがちです。
身体面での変化
身体面での変化として、頭痛・倦怠感・睡眠不足・食欲不振や、めまい・吐き気などの症状が生じ、業務上のタスクをスムーズにこなせなくなってしまいます。しかし、適応障害は身体的な疾患がないため、「詐病」や「ずる休み」など周囲から理解されづらく、それがまた大きなストレスになることも珍しくありません。そのため、職場での理解を得ることが大切です。
行動面での変化
前述した精神面・身体面での変化が、行動面にも及ぶようになります。例えば、業務への積極性や注意力が低下し、些細なミスが増えてしまうなどです。心身のつらい症状から、これまで温厚で明るかった人が、暴力的・ネガティブな言動を取るようになってしまうこともあります。
適応障害がある人におすすめの仕事の特徴
次のような特徴がある仕事は、適応障害がある人にも向いているといえるでしょう。
- イレギュラーな対応が少ない仕事
- コミュニケーションの機会が少ない仕事
- 自分のペースではたらきやすい仕事
イレギュラーな対応が少ない仕事
日々の業務でやるべきことが決まっていて、臨機応変な対応が求められることが少ない仕事は、適応障害がある人に向いています。一方で、接客業はさまざまなイレギュラーが発生しやすく心身へのストレスが多いため、避けるほうがいいでしょう。工程がマニュアル化されている仕事であれば、精神的な負担が少ないのでおすすめです。
コミュニケーションの機会が少ない仕事
適応障害を発症しているときや、適応障害になりやすい性質がある人は、他者とのコミュニケーションや協働が難しい傾向があります。そのため、周囲とのコミュニケーションが少なく、自身の専門性やスキルで成果を出しやすい仕事が向いています。例えば、エンジニア系やクリエイター系などの職種は、適応障害がある人の適職だといえるでしょう。
自分のペースではたらきやすい仕事
自分のペースではたらきやすい仕事であれば、体調に合わせてはたらきやすくなります。スケジュールや納期に追われる環境では、強いストレスで症状が悪化してしまうかもしれません。そのため、在宅勤務・テレワークができる仕事が向いているといえます。
適応障害になった場合の対処法
適応障害になった場合は、次のような対処法を検討してみましょう。
- 専門医の診断を受ける
- 職場での調整や配慮を申し出る
- はたらきやすい仕事への転職を検討する
専門医の診断を受ける
適応障害を発症した場合、そのまま無理してはたらき続ければ症状が悪化してしまいます。そのため、まずは医師や産業医など専門医の診断を受けて、今後の対処法について指示を受けることが大切です。また、後述するような「職場での配慮」を受ける場合にも、医師の診断書が必要になる場合があります。
職場での調整や配慮を申し出る
適応障害の発症につながったストレス要因が仕事にある場合は、異動や業務量・内容の調整など、勤務先に配慮を求めるのがおすすめです。前述したように、適応障害はストレス要因を除外すれば回復する可能性が高いため、職場で理解を得ることが治療のためにも欠かせません。それでも症状が改善しない場合や、配慮が受けられない場合などは転職を検討してみましょう。
はたらきやすい仕事への転職を検討する
現職ではたらき続けながら適応障害の症状を改善することが難しい場合は、そのまま無理を続けると症状がさらに悪化し、うつ病のような精神疾患につながる可能性があります。適応障害を治療するためには、ストレス要因から離れることが大切なので、はたらきやすい仕事への転職を検討してみることをおすすめします。
適応障害の人が利用できる転職支援機関・サービス
適応障害がある人がはたらきやすい職場を探すために、次のような転職支援機関やサービスの利用がおすすめです。
- ハローワーク
- 就労移行支援事業
- 障害者向けの転職エージェント
ハローワーク
全国のハローワークには、精神疾患がある人向けの相談窓口が設けられています。精神疾患に関する専門知識がある担当者が対応してくれるため、自身の特性や症状に合う求人を紹介してもらえます。
履歴書作成や面接対策など、転職活動に必要なサポートが受けられることも特徴です。また、適応障害が悪化してうつ病などの精神疾患を発症してしまった場合は、「障害者相談窓口」を利用することも可能です。
就労移行支援事業
就労移行支援事業所は、はたらくための知識やスキルの習得に加えて、就労に向けた総合的なサポートを求職者に提供する機関で、障害者手帳がなくても利用可能な場合があります。転職後も「定着支援」として困りごとや悩みの相談ができるため、適応障害の症状に悩む方でも安心して利用できることが魅力です。
ただし、就労移行支援事業所では求人紹介は受けられないため、転職活動はハローワークや転職エージェントなどを利用する必要があります。
障害者向けの転職エージェント
適応障害からうつ病などの精神疾患を発症してしまった場合は、障害者向けの転職エージェントが利用できる可能性があります。適応障害がある人が悪化や再発のリスクを防ぎながらはたらくためには、前述したようなストレス要因が少ない仕事や職場を探すことが大切です。
障害者向けの転職エージェントでは、専門的な知識とサポート実績があります。どのような仕事・職場ではたらくことでストレスを軽減できるかなど、キャリアアドバイザーのアドバイスが受けられます。適応障害の症状や個人の特性に合う働き方の提案が受けられるので、安心して転職活動ができるでしょう。
適応障害がある人の転職にはdodaチャレンジがおすすめ!
適応障害は、繊細な性格・考え方を持つ人や、業務内容・職場環境が合っていない人が発症しやすい傾向があります。そのまま無理をしてはたらきつづけると、うつ病などの精神疾患につながることがあるため、早めに専門医の診断を受けて、職場での配慮を申し出ることが大切です。万が一、うつ病などの二次障害を併発してしまい「職場環境を変えたい」と思った場合は、転職エージェントに相談してみてください。
「dodaチャレンジ」は、障害者手帳をお持ちの方に向けた就職・転職エージェントサービスです。さまざまな精神疾患について専門知識を持ったキャリアアドバイザーが一人ひとりの就職・転職を支援します。あなたに合った求人情報を探してご紹介するほか、応募書類作成のサポートや面接対策、さらに個別相談への対応なども行いますので、安心して転職活動に臨めるでしょう。
まずは、キャリアアドバイザーに転職相談を

電話orオンライン
でお気軽にご相談ください
転職について不安なことも
障害者雇用の知りたいことも
キャリアドバイザーが親身にお話をうかがいます
公開日:2025/5/29
- 監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
- 上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■障害者職業生活相談員