ノーマライゼーションとは?意味や定義、取り組み事例をご紹介

ノーマライゼーションのイメージイラスト

障害のある方や、障害者と接する機会の多い方であれば、ノーマライゼーションという言葉はご存じかもしれません。「障害への配慮」「障害のある人が生きやすい社会づくり」というイメージで、この言葉をとらえている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ノーマライゼーションという言葉の正しい定義や概要をご説明します。ノーマライゼーションの考え方に基づく職場探しについてもご紹介しますので、就職や転職をお考えの方もぜひご覧ください。

ノーマライゼーションとは

ノーマライゼーションの考え方自体は、1950年代の北欧デンマークにおける知的障害者の家族会の運動から発生した理念です。具体的には、障害者を特別な存在とみなすことや、健常者と異なる特別な扱いをせず、可能な限り平等に扱いながら一般社会での日常生活が送れる社会づくりをめざす考え方です。

障害があるからと言って住居や仕事を健常者とわざわざ分けるなどせず、健常者とともに同じ生活が送れる日常を当たり前のものとすべきである、という考え方と言うとより分かりやすいでしょう。

ノーマライゼーションの8つの原理

ノーマライゼーションの理念を整理し、「8つの原理」にまとめる考え方があります。これは「ノーマライゼーションの育ての親」こと、スウェーデンのベンクト・ニィリエが提唱したものです。
8つの原理は、「社会の主流の状態に可能な限り近い日常生活を、知的障害者も得られること」を目的に定義されています。

1日のノーマルなリズム

朝起きて、身支度をして仕事や学校に通うなど、1日の規則的かつ変化に富む生活ができる

1週間のノーマルなリズム

週5日程度は学校や職場へ通って過ごし、休日は友人などと楽しむことができる

1年間のノーマルなリズム

四季に応じて暮らし方や食べ物を変えながら、たまの長期休暇も楽しむなど、変化に富む1年を過ごせる

ライフサイクルでのノーマルな発達的経験

子ども時代はレクリエーションに親しみ、思春期から青年期はおしゃれや恋愛に興味を拡げ、成人後は仕事や家庭生活で責任感を発揮し、老後は人生経験を生かし知的趣味を楽しむなど、年齢に応じた意義ある生活を送れる

ノーマルな個人の尊厳と自己決定権

個々の自由や希望を主張でき、周囲もそれに理解を示して各個人を尊重できる

その文化におけるノーマルな両性の形態すなわちセクシャリティと結婚の保障

子どもの頃から人と人との良い関係性を築くことができ、成長すれば自然に誰かを愛して恋愛や結婚を考えられる

その社会におけるノーマルな経済的水準とそれを得る権利

どんな人でも経済的な安定を図ることができ、公的な経済援助を受けることができる

その地域におけるノーマルな環境水準

特定の場所への隔離などによる社会からの孤立を避け、暮らしたい地域で住みたい家に住み、地域交流を図れる

上記の8項目を、障害の有無に関わらず誰もが実現できていれば「ノーマライゼーションの8つの原理が保てている状態」だと考えると良いでしょう。

バリアフリーやユニバーサルデザインとは違う?

ノーマライゼーションと同様、障害の有無を問わず同じ日常生活を実現するための取り組みは他にもあります。中でもよく知られているのが「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」の2つでしょう。

バリアフリーとは

バリアフリー住宅

バリアフリーとは、障害のある人や高齢者をはじめとする「社会的弱者」と呼ばれる人が、日常生活において障害となっているものをなくして、より暮らしやすい社会をつくる取り組みです。
例えば、歩行が不自由な方のために床や地面の段差を取り除くことや、視覚に障害のある方のために音声案内を取り入れることなどが該当します。
近年では設備面での改善にとどまらず、社会的弱者の方が生活上抱えがちな心理的ハードルを取り去る「心のバリアフリー」という考え方も浸透しつつあります。
ノーマライゼーションの考え方に基づき、生活環境上のさまざまな障壁をなくしていくことがバリアフリーであると考えると良いでしょう。

ユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザインとは、障害のある米国の建築家ロナルド・メイスによって提唱されたデザイン理念です。障害の有無を問わず、誰にでも親切で扱いやすい製品や環境を実現するため施されたデザインを指します。
バリアフリーが「障害にあたるものをなくす」という観点に基づくのに対し、初めから障壁を設けず、すべての人へ有用性をもたらせることが前提とされています。
設計の段階でノーマライゼーションの考え方を取り入れ、誰にでもやさしいものを作っていくことがユニバーサルデザインと言えるでしょう。

ノーマライゼーションの取り組み事例

国が定める法律や制度、また先に述べたユニバーサルデザインなどとして、ノーマライゼーションが具体的に取り組まれています。ここでは、ノーマライゼーションの考えに基づく主な取り組みをご紹介します。

障害者雇用促進法

日本では、障害者の雇用や就労に関する法律「障害者雇用促進法」があります。障害者の安定した就業を目的とする法律で、主な取り組みとして障害のある方の自立を実現する職業リハビリテーションの推進などがあります。事業主に対しては一定割合で障害者を雇用することを義務付け、また障害のある人への差別を禁止し合理的な配慮を行う義務についても定められています。
障害者雇用促進法における障害者雇用の考え方の根底にも、誰もが同様に日常生活を営める社会づくりというノーマライゼーションの理念が存在しています。

障害者雇用率制度

障害者雇用率制度とは、公共団体や一般企業などの事業者に対し、障害のある方をあらかじめ定めた「障害者雇用率」に相当する人数以上雇用することを義務付ける制度です。
かつては努力義務として設けられていた制度ですが、1976年の法改正で法的義務となりました。当時の障害者雇用率は1.5%でしたが、段階的に引き上げが行われ、最新である2021年の法改正では2.3%となっています。

ノーマライゼーションの考え方を障害者の仕事探しに活用

障害のある方が仕事を探すにあたっては、障害者がはたらきやすい職場環境であるかどうかの見極めが重要です。ここではノーマライゼーションの考え方をベースに、障害者が就職・転職を考える際の職場環境の見極め方についてご説明します。

ノーマライゼーションという言葉の認知・理解

職場でのノーマライゼーションの実現とは、「障害者に対する理解があって協力体制も整っており、特別な扱いが不要となっている状態」です。上長となる人や人事担当者の方がノーマライゼーションという言葉を知っている場合や、その理念を理解し実践している職場であれば、安心してご自身の特性や必要な配慮について相談ができるでしょう。

労働環境の整備

障害者が他の従業員と同様にはたらきやすい環境が整った職場かどうかも、しっかり見ておきましょう。具体的に見ておきたいポイントは、各設備のバリアフリー化が行われているかどうかや、ユニバーサルデザイン製品の設置の有無などです。環境整備の内容がご自身の障害には直接関係のないものだったとしても、「障害に対する理解や配慮のある職場かどうか」を見極めるのに役立ちます。

業務ルールの可視化

行うべき業務が適切にマニュアル化されており、マニュアルを参照することで誰でも正しく業務が行える状況が整っている状態が理想的です。業務ルールが可視化されているかどうかも確認しておきましょう。

dodaチャレンジで障害があっても活躍できる職場を見つけよう

立っている人と車いす利用者

障害者に対する配慮がなされている職場を、一般の就職情報を参考に自力で見つけることは難しいかもしれません。はたらきやすい職場探しがうまくいかない方は、障害者向けの就職・転職エージェントを利用することも一案です。
dodaチャレンジは、障害者向けの就職・転職活動支援サービスです。専任のキャリアアドバイザーによるきめ細かなヒアリングに基づき、ご希望やご経験、障害の特性に合わせた最適な求人をご紹介。求職者の方のご障害内容それぞれについて、個々を理解しながら長く安心してはたらける職場探しをサポートします。

まとめ

ノーマライゼーションとは、障害のある方もない方も同じように、生き生きと暮らしや仕事に取り組める社会を作っていくという考え方です。多様化が発展へのキーワードとされている昨今だけに、さまざまな人材の適正活用を意識している企業も増えています。
dodaチャレンジでは障害者雇用へ積極的に取り組み、個々の障害への適切な理解で力を伸ばせる職場探しのお手伝いをしています。ぜひお気軽にご相談ください。

公開日:2022/6/1

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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