大人のASD(自閉スペクトラム障害)とは?特徴や特性を活かした働き方や支援サービスをご紹介

ASDと書かれたブロック

発達障害の特性の1つとして、メディアなどで見聞きする機会も増えた「ASD(自閉スペクトラム障害)」。ASDとはどのような障害特性があり、はたらき方や就職・転職時にはどのような点に気を配る必要があるのでしょうか。
この記事ではASDの概要をご説明し、その特性や向いているはたらき方、就職・転職時に活用したい支援サービスなどをご紹介します。

ASD(自閉スペクトラム障害)とは

まずは、ASD(自閉スペクトラム障害)の特性を見ていきましょう。

ASD(自閉スペクトラム障害)は発達障害の1つ

ASDとは発達障害の一種です。以前は「自閉症」や「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」などの名称で呼ばれていましたが、現在は「Autism Spectrum Disorder」としてまとめられており、日本語では「自閉スペクトラム障害」や「自閉スペクトラム症」などと呼ばれます。
主な障害特性としては、「対人関係やコミュニケーションで困難を感じやすい」「強いこだわりがある」の2つが挙げられます。一見発達障害がない人にも見られるささいな特徴に感じられますが、ASDの人の場合はその特性のために、日常生活に重大な困難や支障をきたす点が大きく異なります。

ASDとなる原因や診断方法

発達障害であるASDには原因があるのでしょうか。また、医師による診断はどのような形で行われるのか詳しく知らない方も多いことでしょう。
ここでは、ASDの原因や詳しい診断方法をご紹介します。

ASDの原因

ASDが発症する原因は、まだ特定されていません。
ただ、現状では先天的な脳の特徴に起因する可能性が高いといわれています。遺伝的要因が関与している可能性も指摘されています。どちらにせよ、家庭での育て方などの生育環境は原因ではありません。

ASDの特性は、発達の初期段階からすでに現れていることが一般的です。しかし、子ども時代に見られる行動特性は「人と目を合わせない」「においや音に敏感」などが中心で、本人の性格によるとみなされ障害に気づかれないケースもあります。特に知的障害などの併発がなく、知能が平均的もしくは高い子どもの場合は、大きな問題を感じられることなく見過ごされがちです。
このため、社会人になってから人間関係で悩みが増えたり、仕事で特性由来の人為ミスを多発したりするなどして、成人後にASDの診断を受ける方も多いといわれています。

ASDの診断方法

ASDの診断には、「DSM-5」という精神疾患の診断基準が用いられます。DSM-5の正式名称は『精神疾患の診断・統計マニュアル(第5版)』で、米精神医学会が出版しています。

DSM-5によるASDの診断基準には、「対人関係で持続的な困難がある」「特定の行動や興味への強いこだわりがある」「音や触り心地などの感覚に対し過敏に反応する」など複数の条件が設けられています。それらの条件を満たした上で、その特性を知的障害や発達の遅れと結びつけにくいと判断されると、ASDと診断されます。
ただし、その診断にも明確な数値基準や線引きは設けられていません。面談による質疑応答や、日常生活の行動においての特性による困難の度合いなどから、医師が判断します。

ASDの方の主な特徴・特性

ここでは、さらに詳しくASDの方の特性についてご説明します。

コミュニケーションの特性

・自分のペースに忠実な行動ができ、特定の手順を踏む作業やルーティン行動を得意とする
・相手の顔や態度に出ない感情や、あいまいな表現をくみ取ることが難しい
・一般的にいわれる「空気を読む」ことや「人と足並みをそろえる」など、暗黙のマナーの理解が困難

特定のこだわりやマイルールを持っている

・興味や関心の高い特定の分野に対し非常に高い集中力を発揮する
・自身のペースを崩すことが困難なため集団行動が苦手
・急な変更や状況変化があっても臨機応変な対応ができない

感覚に対する過敏な反応

騒音に耳をふさぐ人

・細かいミスや違いに気づきやすい
・人混みなど騒がしい場所が苦手
・音や光、触感などに敏感で、それらの好き嫌いを強く自覚しやすい など

ASDの特徴から仕事上で抱えやすい困りごと

ASDの特性を持ちながら、社会生活をしている人も数多くいます。しかし、ASDの方にとっては、職場でさまざまな人とかかわっていく上での困りごともあります。

対人関係上のトラブル

・円滑なコミュニケーションが困難なため、社員同士の意思疎通がうまくいかない
・相手の立場になって物事を考えることが難しく誤解されやすい
・自分の感情を適切に伝えられず本意を理解されにくい
・冗談を理解できず、真に受けてしまうなどで違和感を持たれがち

急な変化への対応困難

・想定外の状況変化があるとパニックになりがち
・仕事の手順が前後したり、業務の割り込みなどが発生したりすると混乱してしまう
・複数の作業の同時進行がスムーズに行えない
・気持ちや行動の切り替えが難しい など

ご自身でASD特性に心当たりがある方であれば、上記のような困りごとにも思い当たるところが複数あるかもしれません。もし社会生活が難しくお悩みを抱えている場合は、専門医への相談をおすすめします。

得意なことを活かしてはたらける仕事とは?ASDに向いている仕事・向いていない仕事

ASDの方には困りごとだけでなく、得意なことも数多くあります。ここでは、ASDの方の得意分野を活かしてはたらける仕事の一例や、あまり適していない仕事の一例をそれぞれご紹介します。

ASDの方が得意なことを活かしてはらたける仕事(向いている仕事)

・単独で集中してコツコツ行える仕事
・作業がルール化されている仕事や、マニュアルに沿ってできる、変化の少ない仕事

ASDの方が得意なことを活かせるのは、基本的に作業がルール化されている軽作業や、マルチタスク業務があまりないファイリングやデータ入力といった作業です。ルールやマニュアルといった決められたことに沿って仕事をするのが得意なことから、定型作業が向いているとされています。

ASDの方に向いていない仕事

・複数の作業がある仕事
・予測不能な事態が起きやすい仕事

相手の気持ちが読みにくいASDの方は、不特定多数の人と常に接触機会がある接客業のような仕事は、避けたほうが良いでしょう。また、臨機応援に対応することが困難なため、柔軟な対応が必要になる仕事も向いてないことがあります。

ASDの方が仕事探しで重視したいポイント

ASDのある方は、仕事をする上で不安や悩みを抱えている方が多いでしょう。
もちろん、ASD特性のある方に向いている職種や職場もあります。向いている職種・職場を見つけるには、仕事探しの際に重視したいポイントがあります。ポイントは以下のとおりです。

  • 障害や障害者の方に対して理解がある職場
  • 仕事内容に自分が興味や関心を持って取り組める職場
  • 自分の特性による強みを活かせる仕事や職場
  • 障害特性に対するサポートを受けられる環境が整った職場 など

ASDの方が就職・転職する場合に利用できるおすすめの支援サービス

握手

ASDの方がはたらきやすい職場を見つけるには、就職・転職時に就職支援サービスを利用することをおすすめします。ここでは、各支援機関のサービス内容や利用のメリットをご紹介します。

ハローワーク

求人紹介や転職セミナーなどの開催を行っている国の公的機関で、就労に関するサポートを無料で受けられます。障害者の就職相談も行っており、場所によっては発達障害専門チューターに相談できる場合もあります。

障害者就労・生活支援センター

障害のある方の自立と安定を図るために、就労と生活の両面からサポートを行っている施設で、全国各地に設けられています。

就労移行支援事業

障害のある方で一般企業への就職を考えている65歳未満の方を支援するため、就業に必要な技能を習得するためのプログラムの実施や、就活・就職の支援をする事業です。また、就職後に職場で安定してはたらけるよう、定着支援も行っています。

dodaチャレンジ

dodaチャレンジは、障害者の方(精神障害者保健福祉手帳または身体障害者手帳をお持ちか、交付申請中の方)向けの就職活動支援を行っている就職・転職エージェントです。障害に関する知識と理解を持った専属のキャリアアドバイザーが、求職者の方のご希望や困りごとを丁寧にヒアリングし、非公開求人を含む多くの求人から1人ひとりに最適な仕事をご紹介。仕事紹介だけでなく、履歴書作成や面接時のアドバイスもきめ細かに行っています。

まとめ

ご自身の困りごとに解決策が見つからず、お悩みを抱えているASDの方も少なくないでしょう。しかしASDの方には「一般的には気づきにくい細かな違いをすぐ認識できる」「単調な作業にも面白味を感じて意欲的に取り組める」など、仕事をするにあたって長所となり得る特性も数多くあります。
dodaチャレンジは、ご自身の得意分野を活かしてはたらきたい方をサポートしています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

公開日:2022/6/29

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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