コミュニケーション障害とは?コミュ障との違いや仕事への影響について

コミュニケーション障害

コミュニケーション障害とは、本来は精神医学的診断に基づく疾患を表す言葉です。しかし近年は「コミュ障」という言葉が一般化し、症状の有無に関係なく、日常会話でもよく使われるようになりました。
この記事では、コミュニケーション障害といわゆる「コミュ障」の違いや、医学的な意味でのコミュニケーション障害に関する概要、診断例や困りごとへの対処法をご紹介します。

コミュニケーション障害とコミュ障の違いは?

「自分はコミュ障なので……」と、会話中で使ったり聞いたりしたことがある方も多いでしょう。しかし、その際にコミュ障を深刻な病気や症状の一端とみなしているケースはあまりないはずです。
ここでは、コミュニケーション障害の概要をご説明しつつ、俗語としてのコミュ障との違いもご紹介します。

コミュニケーション障害とは

米精神医学会による『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』によるコミュニケーション障害の定義は、「言葉を使うことに対して障害が発生する複数の疾患の総称である『コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群』」を指すものとされています。
コミュニケーション障害は、医学的根拠に基づいて正確に診断される疾患の名称(診断名)と考えて良いでしょう。

コミュ障とは

上記のとおり、コミュニケーション障害は医学的な診断に基づく疾患の名称です。対してコミュ障は、病気などではなく性格上の悩みといったような、比較的軽い意味合いで用いられることが一般的です。
俗語としてのコミュ障とは、以下のような性格的特徴を意味しています。

人とうまくコミュニケーションがとれない

人間関係に悩む人

人に話しかけても思ったような反応が得られない、いつも期待と異なる回答をされてしまうなど、対人コミュニケーションがうまくいかない状況を招きがちな性格や特性が挙げられます。
人と話すこと、対人関係が苦手
そもそも「人見知り」である、話しかけられてもうまく返答できない、人との交流に強い苦手意識があるなど、コミュニケーション能力に関してコンプレックスを持ちがちな性格もコミュ障の一端です。

コミュ障の2分類
コミュ障はさらに「ダウナー系コミュ障」と「アッパー系コミュ障」の2種類に細分化される場合があります。

1.ダウナー系(静的)コミュ障
自己主張が苦手でおとなしく目立たず、周りの空気を読み過ぎて自分が苦労しがちなコミュ障です。あまり良い言葉ではありませんが「根暗」「陰キャ(陰気キャラの略称)」などと呼ばれることもあります。

2.アッパー系(動的)コミュ障
目立ちたがりで自己主張も強いものの、周囲の空気を読めず、人との距離感を見誤りがちです。人の話をじっくり聞くことが苦手な側面もあり、相手によっては「鬱陶しい」と思われることもあります。本人はコミュニケーション能力に一定の自信を持っている場合もありますが、周囲は引きがちになり、逆説的にコミュ障と呼ばれてしまうパターンです。

コミュニケーション障害の種類

ここからは、疾患としてのコミュニケーション障害についてご説明します。コミュニケーション障害は症状の詳細によって細分化され、主に以下の5つに分けられます。

言語症、言語障害

話すことや書くことが困難な特性から診断される疾患です。使う語彙の少なさや文章構成力の弱さ、表現力の乏しさなどが主な症状です。

語音症、語音障害

言葉の発声がうまく行えないことで診断される疾患です。周囲の人に自身の言いたいことをうまく理解させられず、対人コミュニケーションを円滑に行えない場合があります。
診断の条件として、社会参加、学業成績または職業的能力のうち1つ以上に影響が出ていることが特定できているかどうか、などがあります。

小児期発症流暢症、小児期発症流暢障害

「吃音(きつおん)」や「どもり」とも呼ばれ、会話中の言葉がとぎれとぎれになることや、突然話が止まるなどしてしまう症状から診断される疾患です。

社会的コミュニケーション症、社会的コミュニケーション障害

社会生活での対人コミュニケーションに困難を感じる特徴から診断される疾患です。適したあいさつや敬語の使用ができない、対人関係のルールを理解できず適切な交流を図れないなどの症状が挙げられます。

特定不能のコミュニケーション症、特定不能のコミュニケーション障害

これまで述べた疾患のいずれにも該当しないものの、日常生活でのコミュニケーションに苦痛を感じたり、コミュニケーション障害のような症状が現れたりしているときに診断される疾患です。

コミュニケーション障害の特徴・診断されるケース

コミュニケーション障害と診断されるケースにでは、具体的にどのような特徴が見られるのでしょうか。ここでは、米精神医学会による『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』を基にコミュニケーション障害と診断される場合の主な特徴をご紹介します。

環境に合わせて話し方を変えることが苦手

多くの人は無意識のうちに、家庭や職場、友達同士などTPO(時・場所・場合)に合わせて敬語や口語(くだけた話し方)を使い分けています。この使い分けがうまくできない場合の度合いによって、コミュニケーション障害の診断がおこなわれます。

非言語的なコミュニケーションが苦手

身振り手振りや表情、目線など、言葉以外での感情表現も、コミュニケーションの重要な要素です。これらのいわゆる「非言語的なコミュニケーション」をうまく読み取れず、円滑なコミュニケーションに支障をきたしているケースです。

あいまいな表現を理解することが苦手

マルかバツか悩む人

日本語には、「大丈夫です」「結構です」のようなイエスともノーとも取れる言葉がいくつかあります。また、主語や目的語をわざと省略して話をすることもあります。
コミュニケーション障害のある方は、このようなあいまいな言い回しを上手に理解できないことがあります。

子どものころから症状が見られる

コミュニケーション障害は、現れる症状によっても異なりますが、多くは幼少期・小児期に発症する疾患とされています。そのため、診断にあたって「子どものころからコミュニケーション障害の症状があったかどうか」を確認されることが多いです。
ただし、子ども時代は症状があまり目立たなかったり、問題になっていなかったりしたものの、社会人になってから顕在化することもあります。

上記のような症状によって社会参加や学業・仕事に影響が出ている

ご説明してきた各症状でコミュニケーション障害と明確に診断されるのは、それらが具体的な困りごととなり、学校や職場での苦労が絶えないなど日常的な影響が見られる場合となります。

上記の診断は、主に米精神医学会のDSM-5に基づいて行われています。ご自身だけで判断することは難しいため、深刻な困りごとを抱えている場合は専門家や専門医に相談することが重要です。

コミュニケーション障害のある方が抱える仕事や職場での悩み

コミュニケーション障害のある方は、抱えている症状が原因で「仕事が続かない」「対人関係がつらくて辞めたい」などのお悩みを抱えている場合も少なくありません。
「言いたいことが伝わらずトラブルになりがち」「自分から孤立を招いてしまい、居心地が悪くなる」など、人間関係でのお悩みの方もいらっしゃることでしょう。コミュニケーション障害によって引き起こされるお悩みや強いストレスがうつ病などの精神障害を引き起こすこともあるため、我慢や放置は禁物です。
就職や転職をお考えの場合は、ご自身の特性に合った仕事を見つけることが大切です。

コミュニケーション障害のある方に向いている仕事・向いていない仕事は?

あくまで目安ですが、コミュニケーション障害のある方に向いている・向いていないとされる仕事には、以下のようなものがあります。

コミュニケーション障害のある方に向いている仕事

・パソコンスキルを活かした仕事
・基本的に一人で完結させられる仕事
・解析や品質管理など、集中して黙々と作業できる仕事 など

基本的に単独で作業でき、人と関わる機会が少なくても成果を上げられる業務が適しています。

コミュニケーション障害のある方に向いていない仕事

・営業職や販売員など、接客中心の仕事
・上記以外でも、不特定多数の人と関わりを持つ機会が多い仕事 など

コミュニケーションに困難が生じる方は、人と接する機会が多いと苦痛を感じやすいため、強いストレスになることがあります。人と関わる機会の多い業務は避けたほうが良いでしょう。

コミュニケーション障害のある方におすすめ!長く続けられる仕事をご紹介

コミュニケーション障害があっても、ストレスを感じにくく長続きさせやすい仕事には、どのようなものがあるのでしょうか。

エンジニア・プログラマ

パソコンを使い単独で集中してできる作業中心のため、コミュニケーションが苦痛でも続けやすい代表的な仕事の1つです。

アクセス解析

緻密な調査や検証を黙々と繰り返すため、コミュニケーションによるストレスが比較的少ない仕事です。

品質管理

検品や記録を行う作業が中心となるため、限定的なコミュニケーションで仕事が成立します。観察力に自信がある方や、細部を細かに見ることが好きな方に向いています。

データ入力などの事務ワーク

データの記録に集中できるバックオフィス作業中心の事務であれば、コミュニケーションをとる機会が少なく、ストレスが少なめです。一方で、パソコン作業と並行して電話や来客対応も求められる秘書業務や一般事務・営業事務は向かないでしょう。

工場作業員

生産ラインで決められた作業を繰り返す業務も、コミュニケーションをほぼ求められないためコミュニケーション障害のある方に適しています。

配送ドライバー、警備員

最小限のコミュニケーションは発生しますが、その応対は定型業務に近い内容に限られるため、コミュニケーション障害のある方でも苦になりにくい仕事と言えます。

コミュニケーション障害のある方に伝えたい、自分に合った職場の探し方

ご自身に合った職場を、自分一人だけの力で見つけることは大変です。自分を客観視しながら適職を探すには、第三者の視点やアドバイスが欠かせません。これらを就職活動に取り入れたい場合は、就職・転職支援サービスを利用することがおすすめです。
就職・転職支援サービスを利用するメリットには、以下のようなものがあります。

・特性やスキルを客観的に分析した上で、ご自身に合った職場を紹介してもらえる
・職場見学などができ、仕事内容や職場の雰囲気などをよく知ることができる
・求人紹介の他、履歴書や面接における対策などさまざまなサポートを受けられる
・入社後も職場へ定着できるよう、アドバイスやサポートを受け続けられる

dodaチャレンジは、障害者手帳をお持ちの方または申請中の方のご登録・ご利用が可能な就職・転職支援サービスです。一般には公開されない非公開求人をはじめとする求人紹介から入社後のサポートまで、障害のある方の就職・転職活動をトータルでサポートしています。一般的には少ないと言われる障害者向け求人ですが、dodaチャレンジでは豊富な求人数からご紹介ができます。ぜひ、お気軽にご相談ください。

まとめ

単なる「コミュ障」で片付けようとしても、それでは済まないストレスや苦しさを感じてしまっていませんか? 実はそれはコミュニケーション障害という、深刻な症状が原因かもしれません。早めに専門医に相談し、ストレスを低減する方法を講じましょう。発達障害や知的障害が要因のケースでは、診断を経て障害者手帳を申請し交付を受けることで、障害者専門の就職・転職エージェントによる支援サービスを受けることも可能です。
dodaチャレンジは、障害者手帳をお持ちの方および申請中の方が利用できる就職・転職エージェントです。障害者の方のお悩みをしっかりヒアリングし、豊富な求人数から適職をご提案いたします。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

公開日:2022/8/1

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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