うつ病で休職することになったら?休職期間中の過ごし方や給料・手当について

休職届

うつ病は特別な病気ではなく、誰もがかかる可能性がある病気です。しかし、うつ病となり休職することになった場合、どのように過ごせば良いのか想像がつかない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、うつ病で休職することになった場合の手続きや休職期間中の過ごし方についてご紹介します。給与に関することなど、事前に確認しておくべき重要事項もまとめてありますので、ぜひご参考にしてください。

もしうつ病になったら?

うつ病は特殊な環境や性質によって引き起こされる病気ではなく、どんな方でもかかってしまう可能性がある気分障害です。ここでは、うつ病とはいったいどのような病気なのか、詳しく見ていきましょう。

うつ病とは

うつ病を発症すると、気分の落ち込みや気力の低下・喪失、不眠、食欲不振などのいわゆる「うつ状態」が長く続き、日常や社会生活に大きな支障をきたしてしまいます。仕事に影響するケースもあり、うつ病によって休職する方も実際に多く存在します。

うつ病で会社を休職するときの流れ

うつ病が疑われる場合、最も重要なのは適切な休養を取ることです。うつ病の傾向を自覚し、仕事を休みたいと考えている場合、まずは以下のステップで行動してみましょう。

はじめに専門機関へ相談する
職場に休職を申し出る際、基本的には医師の診断書が必要となります。まずは精神科や心療内科の病院をはじめとする専門機関に相談し、診察を受けて診断書を発行してもらいましょう。

会社の休職制度について就業規則を確認する
あなたの職場で、休職に関してどのような制度が設けられているか確認します。休職制度がある場合は勤め先の就業規則に記載されていますので、それを確かめた上で記載内容に則って手続きを行うと良いでしょう。次の項目では、休職に関する制度で確認すべき事項についてご紹介しています。

休職する場合は会社の休職制度を確認しましょう

チェックリストに記入する人

うつ病の症状が疑われ、休職を検討中の方は、まず休職を申し出る前に確認しておくべきことがいくつかあります。ここでは、職場の休職制度に関して事前に確認しておきたいことをご紹介します。

まず休職が可能か

休職制度は、法律で義務付けられているものではありません。職場によっては休職を可能とする制度そのものがない場合もあるため、事前に職場で休職することが可能かどうかを確認しましょう。

休職期間はどのくらいか

休職ができる場合、休職期間は最長何ヶ月/何年までかを確かめておきましょう。また、休職期間が満了した段階で復職もしくは退職に関してどのように検討するかについても、確認が必要です。
休職可能期間は勤務年数や実績によって変わる場合もありますし、休職期間満了後に復職可能と判断された際には復職支援期間に移行することもあります。いずれも会社の規定によって異なりますので、就業規定を確認するか人事総務部などに問い合わせましょう。
なお、医師が診断書を発行する際に記載する休職期間は、あくまでも目安です。休職中の回復度合いなどによって適宜変更されるのが一般的です。

休職中のお給料(給与支払い)

休職期間中、職場には法的には給与を支払う義務はありません。休職中の給与支払いについては企業によって異なるため、休職期間中の給与や手当支給の有無も確認しましょう。
休職中の給与支払いがない場合や、支給金額が少ない場合は、健康保険から傷病手当金の支給を受けることができます。

社会保険料の納入について

社会保険料の支払いは、休職中であっても免除されないため支払う必要があります。そのため、休職中はどのようにして社会保険料の納入を行うかも人事担当者に確認しておきましょう。

休職中の会社との連絡について

休職中の、上司や同僚、人事担当者などの会社の人間との連絡についても決めておくことをおすすめします。うつ病を治療するためには、仕事のことを忘れてしっかりと休息を取ることが望ましいです。とはいえ、手続きについて人事担当者とやり取りをする必要があったり、業務上どうしても確認が必要なことが出てきたりすることも予想されます。
職場の人間関係に問題があった場合は特に、「直接連絡を取るのは直属の上司と人事担当者だけ」「電話は心理的な負担が高いため基本的にはNG」などのように、連絡手段はメールか電話か、誰といつやりとりするかなど、休職について事前に相談する段階で決めておくと良いでしょう。
休職に際し、どのような手続きが必要か、どのような手順で申請を行うかなどもあらかじめ人事担当者へ確認しておくと手続きがスムーズに進められます。

うつ病による休職期間の平均

うつ病で休職する方は、どのくらいの期間仕事をお休みしているのでしょうか。厚生労働省が発表した平成28年の報告書「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」に調査結果があります。これによると、うつ病を含むメンタルヘルス不調による労働者の病休日数の平均は107日(約3.5ヶ月)となっています。
参照:労災疾病臨床研究事業費補助金「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」

上記はあくまでも調査上の平均値で、休職制度は職場によって規定が異なります。いつまで休職が可能かを正しく知るには、会社側が定める休職可能期間を確認しましょう。
休職している間も、かかりつけ医の指示に基づいて会社と相談しつつ、うつ病の治療に専念することを最優先としてください。
上記の平均期間はあくまで目安ですから、ご自身の病状に合わせて無理なくきちんと治していくことが大切です。

休職中の給与や手当

休職する場合の給与については、職場によって規定が異なることを先にご紹介しました。ここでは、うつ病で休職する場合の休職期間中の給与・手当について、詳しく見ていきましょう。

休職期間中の給与支給の有無は会社によって異なる

先にも述べていますが、職場側は休職期間中の給与支給義務はありません。休職中の給与に関しても職場ごとの規定で定められているため、一切給料が出ない場合もあれば、場合によって一部が支給される場合などさまざまです。
ただし、うつ病で休職する場合は「私傷病休暇(労働者側の事情による休職)」に該当するとされることがほとんどで、このケースでは多くの場合で無給となります。つまりうつ病での休職の場合、多くの職場で給与・手当は支払われなくなると考えて良いでしょう。

傷病手当金

「うつ病での休職は基本無給」と知ると不安になるかもしれませんが、社会保険に加入しているなら大きな心配は要りません。社会保険に入っている方の場合、休職の際に健康保険による「傷病手当金」の申請ができます。

傷病手当とは?
各健康保険が設けている、病気やけがで仕事を休んでも給与が支給されない場合に、支給される手当金制度です。
傷病手当金制度でもらえる手当の金額は、 給与(標準報酬月額)の3分の2とされています。つまり、月給が30万円の場合は、傷病手当金は20万円程度となります。また、傷病手当金が支給される期間には上限があり、 最長で1年6ヶ月となっています。

傷病手当金の申請条件
傷病手当金の「支給を受けられる要件は、以下のようになっています。
1.業務外の理由で病気やけがをし、その療養のために休業が必要であること
2.仕事に就けない状況であること
3.連続する3日間を含み、4日以上仕事ができていないこと
4.休職期間中に給与が支給されていないこと

傷病手当金の申請の流れ
1.業務外の病気やけがで仕事ができなくなったと職場に報告する
2.健康保険のWebサイトから傷病手当金支給申請書をダウンロードする
3.ご自身で「被保険者用記入用紙」に記入を行い、かかりつけ医が「療養担当者用記入用紙」に記入する
4.職場側に「事業主用記入用紙」を記入してもらう
5.規約に沿って必要書類を用意し、加入中の健康保険に支給申請を行う

うつ病の休職中の過ごし方で大切なこと

木々の中で深呼吸をする人

うつ病で休職する場合は、一般的な病気やけがでの休職とは異なり、ただ安静にすることが第一とは限りません。ここでは、うつ病で休職する際の療養中の過ごし方や、注意点をご紹介します。

心と体を休めることが第一

うつ病の原因の多くを仕事が占めている場合は、とにかく仕事から離れて心身を休めることが第一です。その際は先にも述べたとおり、単に安静にしていれば状況が良くなるというものではないことにも注意しなければなりません。
仕事を忘れてのんびりと好きなことに取り組んだり、自然の中でリラックスしたり、栄養豊富な食事をゆっくり摂ったりするなど、心身の休息となりうることを過度な刺激にならない程度に実行してみましょう。

規則正しい生活を心掛け、リズムを整える

「休む」と聞くと睡眠を取ることを連想するかもしれませんが、ずっと寝たままの生活を続けていると生活リズムが崩れてしまい、本来の心身の健康から遠のいてしまうこともあります。休職期間を前向きな治療の機会とするためには、生活リズムを規則正しく整えて適度な運動による体力をつけることも大切です。

気分転換をする

「仕事を休んでいるのに遊ぶのは不謹慎では」と考えてしまいがちですが、うつ病の治療には適度な気分転換も必要です。友達との会話を楽しむ、行きたかった所にのんびり旅行するなど、心に効きそうな気持ちの切り替えの手段は積極的に取り入れましょう。

焦らずにしっかり治す

メンタルヘルス不調による病休日数の平均は107日という調査結果がありますが、二回目の病休日数で見ると、平均は157日です。つまり、二回目の休職期間の方が長くなる傾向にあります。急いで治そうと焦り、再発や悪化を招いてしまったケースも想定されます。
無理をして復職を焦らず、医師やカウンセラーなど専門家の指示やアドバイスを受けながら休職から復帰するタイミングを慎重に図ると良いでしょう。
参照:労災疾病臨床研究事業費補助金「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」

うつ病で悩んでいる方は専門家に相談してみましょう

うつ病を発症したと感じたら、まずは周囲の支援を求めることが大事です。医師などに相談し、適切なアドバイスや指導、治療を受けましょう。また、休職期間中に仕事についてじっくり考え、現職が合わないと感じた場合、復帰せず新しい労働環境を見つけることも1つの手です。
元の職場に戻らず転職する場合、まず就労支援機関の支援や医療機関の治療を受けて職業準備性を整えた上で、転職活動を開始することをおすすめします。

就職・転職支援サービス「dodaチャレンジ」には、うつ病など精神疾患の専門知識を持ったキャリアアドバイザーも在籍しています。休職後の転職をお考えの方は、dodaチャレンジまでぜひご相談ください(dodaチャレンジは、障害者手帳を取得済み/取得申請中の方がご利用可能な就職・転職支援サービスです)

まとめ

うつ病は「特別な人がかかる病気」でも、「心の弱さが原因でかかる病気」でもありません。特徴や性格を問わず、どんな方でもうつ病になる可能性があります。
うつ病の治療には休息が重要なため、就業中の方が休職することも珍しいことではありません。仕事を長期間休むことに対して不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ご自身の体を第一に考えることをおすすめします。
休職できる期間や休職中にお給料が出るかどうかについては、会社によって異なりますが、休職中の給与が出ない場合でも傷病手当金を受け取ることができます。休職中の過ごし方は、まずは心身の回復に専念し、気持ちに余裕が出てきた時点で復職や転職についてゆっくり考え始めると良いでしょう。

dodaチャレンジでは、うつ病などの精神疾患で休職中の方のご相談もお受けしています。今の仕事を続けるかどうか悩んでいる方や、新たな可能性を試してみたいとお考えの方は、ぜひご相談ください。

公開日:2022/9/1

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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