うつ病でも仕事は行ける?両立のコツと休職後の復帰・再就職に活用したい制度

笑顔で出勤するビジネスパーソン

うつ病を抱えている方は、「これからも仕事は行けるのだろうか?」「うつ病で休職すると復帰が難しくなるのでは?」といった不安を抱えがちです。
しかしうつ病の場合でも、職場の理解を得たうえではたらき、無理せず休むことを意識すれば、「仕事は行ける」という状態を保てる可能性があります。そこで本記事では、うつ病でも「仕事は行ける」という状態にする方法や、休職・退職からの社会復帰について解説します。

そもそも「うつ病」とは?

まずは、うつ病とはどんな病気なのか、その症状や原因などをあらためて確認していきましょう。

  • 気分の落ち込みが続く気分障害
  • 「うつ病」の主な症状
  • 「うつ病」を発症しやすい人の特徴
  • 人間関係や仕事のストレスがうつ病の引き金になる

気分の落ち込みが続く気分障害

うつ病とは、気分の落ち込みや食欲の低下、眠れない・疲れやすいといった状態(うつ状態)が長期間にわたって続き、日常生活に大きな支障をきたす「気分障害」のことです。

うつ病と似た気分障害の一つに、双極性障害(躁うつ病)があります。双極性障害の場合、上記のようなうつ状態と、過度に活動的で自信過剰な躁(そう)状態が繰り返されます。うつ病と双極性障害は治療方法が異なるため、医師などの専門家による判断が必要です。

「うつ病」の主な症状

うつ病の症状は、次のような精神症状と身体症状に分けられます。ただし、以下の内容はあくまで一例であり、うつ病の症状は人それぞれ異なります。

【精神症状】
  • 気分が落ち込んでいる
  • やる気が起きない
  • ネガティブな考えばかりが浮かぶ
  • イライラする
  • 食欲がわかない
  • 趣味を楽しめない
  • 涙もろくなる
【身体症状】
  • 体がだるい・疲れやすい
  • 眠れない
  • 寝すぎてしまう・朝起きられない
  • 頭痛・肩こり
  • 下痢・便秘
  • 口の中が渇く
  • 喉の奥が詰まった感じがする

「うつ病」を発症しやすい人の特徴

うつ病を発症しやすい人の特徴として、真面目で責任感が強く周囲への気遣いもできることが挙げられます。また、うつ病を発症した人の多くは「自己洞察力」が低いことも分かってきていて、自身の心身の変化を捉えにくい人ほど、ストレス状態が悪化しやすいことを意味します。うつ病を発症しやすい人の特徴として、次のようなものが挙げられます。

【循環気質】
・躁状態と抑うつ状態を繰り返し、双極性障害になりやすい
・社交的で親しみやすい一方で、激しい一面も持っている

【執着気質】
・仕事熱心、完璧主義、几帳面、正直
・一生懸命仕事を完璧にするので仕事の質は高いが、量をこなせない
・優先順位を付けられない
・白黒はっきりさせたい

【メランコリー親和型気質】
・他人の評価を気にする
・常識を重んじ、常に周囲に配慮し円満な関係を保とうとする
・トラブルが起きると悲観的になり、自分の責任だと考える

人間関係や仕事のストレスがうつ病の引き金になる

うつ病の原因はまだ正確には分かっていませんが、ストレスや生活環境などの要因により、脳のはたらきに不調が生じることが影響すると考えられています。うつ病になるきっかけとして、次のような例が挙げられます。

  • 家族や親しい人との死別・離別
  • 家庭内や職場での人間関係の悩み・トラブル
  • 就職や引越し、結婚、出産などの生活環境の変化
  • 昇格や降格、業務量の変化などの職場での役割の変化
  • 遺伝的要因
  • 病気の発症や治療薬の投与

家族や友人関係、職場でのストレスが、うつ病に結びつきやすいことが分かります。特に、仕事上の変化は睡眠時間や家族関係、金銭面にも影響するケースが多いです。仕事内容や職責の変化、職場の人間関係などが原因でうつ病になることもありえます。

⇒ 月100時間以上の残業などの影響でうつ病を発症したI.K.さんが転職を成功させるまでのストーリーはこちら

うつ病でも仕事は行ける?

うつ病と診断されたら、まずはストレスの要因を避けて休養することが最優先です。しかし、さまざまな事情から休職や退職が難しいこともあるでしょう。それが難しい場合は、専門医の診断を受けたうえで治療を続けながら、職場で次のような配慮を行ってもらうことで、「仕事は行ける」という状態にできる可能性が高まります。

  • 業務内容を現状に合わせて配慮してもらう
  • ストレスの要因によっては、人間関係を調整してもらう
  • 職場の環境にストレス要因があれば、環境を改善してもらう

「うつ病」が仕事に与える影響

うつ病になると、これまで問題なくできていたことが難しくなります。例えば仕事面では、以下のような影響が出ることが想定されます。

  • 遅刻や当日欠勤してしまうことが増える
  • 日中、眠気に襲われることが増える
  • 会話の受け答えが上手にできなくなる
  • 判断力が低下する・適切な判断ができなくなる
  • ケアレスミスが多くなる
  • 整理整頓ができなくなる

自分自身でもこのような変化に気づく場合があれば、周囲からの指摘などで初めて気づく場合もあります。うつ病により上記のような影響が出ている場合、症状が悪化しないよう適切に対処することが大切です。

「うつ病」が発症した場合の対処法

うつ病への対処法は、症状や周囲の環境などによって異なります。職場に相談して業務量を減らすだけで良い場合もあれば、数ヶ月ほどの自宅療養や入院が必要なケースもあります。どのような治療が必要かは、専門家による診断が必要です。そのため、自分自身や職場の人間の意見だけで判断せず、心療内科医・精神科医や会社の産業医へ相談しましょう。

「うつ病」と仕事を両立させるコツとは?

うつ病に理解のある和やかな職場

うつ病の治療をしながら仕事を続けていくためには、次のようなポイントを意識しましょう。

  • 理解ある職場を選択する
  • 自分に合った仕事に就く
  • 心身の調子が優れないときは無理せず休む
  • 生活リズムを整えて体調管理を心がける
  • うつ病の症状に波があることを知る
  • 治療には時間がかかることを理解する
  • 継続して医師の診断と治療を受ける

理解ある職場を選択する

うつ病と仕事を両立させるためには、職場の理解が必要不可欠です。例えば、うつ病とはどのような病気なのか、どのような配慮が必要なのかを上司や同僚が理解し、対応してもらえることが理想的です。うつ病の症状や治療について配慮してもらえる職場を選べば、うつ病とうまく付き合いながらはたらき続けられるでしょう。

心身の調子が優れないときは無理せず休む

うつ病は、心身の調子の変化が激しいケースも多いです。症状が強く出て、はたらくのがつらいと感じるときもあります。無理して仕事をすると、症状がより悪化したり、仕事のパフォーマンスが落ちて自己嫌悪に陥ったりする可能性があります。体の調子が悪いときや気分の落ち込みが激しいときは、無理せず仕事を休みましょう。

心身の調子が優れないときはきちんと休む

うつ病は、心身の調子の上下が激しいケースも多いです。症状が強く出て、仕事をするのがつらいと感じるときもあるでしょう。
無理をして仕事をすると、症状がより悪化したり、仕事のパフォーマンスが落ちて自己嫌悪に陥ったりする可能性もあります。体の調子が悪いときや気分の落ち込みが激しいときは、きちんと仕事を休むことをおすすめします。

生活リズムを整えて体調管理を心がける

うつ病の症状を抑えるためには、心身の状態を整えることが大切です。生活リズムが乱れると体内時計が乱れ、うつ病の症状が悪化しやすくなるといわれています。食事をとる時間帯や起床・就寝の時間帯を一定にし、生活リズムを整えましょう。

日中に軽い運動をしたり、外へ出て日光を浴びたりするのも効果的です。運動は寝付きを良くする効果もあるので、自身の体調と相談しながら散歩やエクササイズなどを実施してみてください。

うつ病の症状に波があることを知る

うつ病には「気分の浮き沈み」の波があるため、治療を行っていてもその波があることを理解する必要があります。一般的には、起床時に抑うつ感やだるさなどの症状が最もつらく、午後や夕方になるにつれて少しずつ楽になることが多いです。

さらに、季節の変わり目には心身の不調が重くなりやすい傾向があり、冬場は気分の落ち込みや不安感が激しくなることも珍しくありません。

治療には時間がかかることを理解する

うつ病は治療開始からすぐに回復することはなく、改善と悪化を繰り返しながら少しずつ快方へ向かっていきます。少し良くなったと思っても、また強い抑うつ状態になることがあるため、プレッシャーを感じたり悲観的になったりすることもあるものです。

そうしたことが続くと、「もう治らないかもしれない」と思ってしまうかもしれません。しかし、うつ病はそのような疾患なので、理解したうえでじっくり時間をかけて治していくという意識が必要になります。

継続して医師の診断と治療を受ける

うつ病の治療を続けると、心身の調子が良い日が増えることがあります。しかし、そこで通院や服薬などの治療を疎かにすると、症状が再び悪化してしまうケースが珍しくありません。そのため、決して自己判断で通院や服薬を中止せず、もし通院ペースや服薬について懸念がある場合は、主治医に相談しましょう。

また、投薬と「認知行動療法」を組み合わせることもあります。認知行動療法は、思考や行動にはたらきかけて、気持ちを楽にしたりストレスを軽減したりする治療法で、潜在的な心理回復能力を活性化させるために活用されています。信頼関係を築いた医師のもと治療を続けることで、うつ病とうまく付き合いながらはたらきやすくなるでしょう。

職場で利用できるうつ病に関する制度

職場で次のような制度を活用することで、うつ病を治療しながら自身のペースではたらきやすくなるでしょう。

  • 産業医に相談する
  • ストレスチェック制度
  • メンタルヘルス研修

産業医に相談する

職場に産業医が常駐している場合、まずは産業医に相談してみましょう。業務で受けるストレスの度合いや心身への影響などを考慮し、はたらき続けられるか休養が必要か判定してくれます。

かかりつけ医の立場では、職場での事情や労働環境などを考慮しきれない場合がありますが、産業医は職場の実情に即した判定ができます。常駐しない嘱託産業医の場合も、症状や仕事との両立などについて相談できます。

ストレスチェック制度

ストレスチェック制度とは、労働者のストレス状態を把握して職場改善を進めることを目的として、50名以上の労働者がいる企業に義務付けられた制度です。

ストレスチェックの検査結果により、自身がどの程度のストレスを職場で受けているか確認できます。ストレスの影響が強いという結果が出た場合は、職場の面接指導を受けたり医師へ相談したりする必要があるでしょう。

メンタルヘルス研修

メンタルヘルス研修とは、職場で従業員のストレスによる心身不調を防ぐために実施される研修活動です。自身が受けているストレスの影響に気づき、ストレスをコントロールしながらはたらくためのヒントが得られることがメリットです。休職や離職を考えていた場合でも、メンタルヘルス研修をきっかけとして、はたらき続けられるようになるかもしれません。

社会人がうつ病になった場合の選択肢

休職届

社会人がうつ病になった場合は、次のような選択肢を検討してみましょう。それぞれのメリット・デメリットを解説します。

  • そのままはたらき仕事と両立させる
  • 休職する
  • 退職する

そのままはたらき仕事と両立させる

今までと同様にはたらき続けながら、うつ病の治療と仕事の両立を図るという選択肢です。この方法を選ぶ場合は、自己判断ではなくかかりつけ医や産業医とよく相談し、職場でのストレスの度合いなどを考慮して慎重に決めることが大切です。通院・服薬を必ず継続することで、うつ病であっても「仕事は行ける」という状態を維持できるでしょう。

休職する

仕事を一定期間休み、休養に専念するという選択肢です。休職中は健康保険からの傷病手当金を受けることができるため、完全な無収入になることは回避できます。職場によっては休職中でも給与が支払われる場合もあるため、就業規定などを確認しましょう。

ストレスの要因が仕事にある場合、休職によりストレス要因から離れて治療に専念しやすくなります。ただし、休職中に職場からの連絡がきて心が休まらなかったり、復帰後に無理をして再び症状が悪化したりする可能性もあります。

退職する

現在の仕事が大きなストレスの要因になっており、環境を完全に変えない限り回復の見込みがないと考えられる場合は、退職を検討しましょう。

休職の場合は「休職期間は最長6ヶ月」などの規定が設けられている場合もありますが、退職であれば期間を気にすることなく休養に専念できます。回復後に社会復帰する際も、よりはたらきやすい仕事や転職先を選ぶことが可能です。

ただし、離職期間が長期にわたる場合は社会復帰のハードルが高くなる可能性があるため、慎重に検討することが大切です。

うつ病の方が利用できる経済的支援制度

治療のために休職・退職する場合は、その間の生活費に関する不安があるでしょう。そこで、次のような支援制度を活用するのがおすすめです。ただし、健康保険の加入状況やうつ病の症状などにより、受けられる支援の内容が変わる点にご注意ください。

  • 傷病手当金
  • 自立支援医療制度(精神通院医療)
  • 精神障害者保健福祉手帳

傷病手当金

傷病手当金は、休職時に利用できる支援制度です。病気や怪我で長期間仕事を休む場合に支給されるもので、うつ病や精神疾患に限らず、さまざまな病気や怪我に適用されます。

連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいることや、業務外の病気や怪我が理由であることなどが支給条件です。支給期間は最長1年6ヶ月で、支給額は給与の3分の2が基本ですが、健康保険の加入期間や休職中の給与支給の有無によって支給額が変動する可能性があります。

自立支援医療制度(精神通院医療)

自立支援医療制度は、うつ病などの精神疾患の治療費を軽減する制度です。この制度を利用すると、医療費の自己負担額が通常の3割負担から1割負担へ軽減されます。また、所得ごとに1ヶ月当たりの支払い上限額が設けられます。ただし、入院費や保険対象外の治療については、対象外となるので注意が必要です。

精神障害者保健福祉手帳

うつ病の程度によりますが、精神障害者保健福祉手帳(障害者手帳)を取得できるケースもあります。障害者手帳を取得すると、税金の控除や公共交通機関の運賃の割引などの支援サービスが受けられます。また、障害者採用枠での就職も可能になるため、うつ病に対して理解のある職場への転職もしやすくなるでしょう。

上記のほか、障害年金や生活保護などの制度を利用できる場合もあります。

うつ病の方におすすめの転職支援機関・サービス

通院や治療を続ける中で「社会復帰に向けて準備をしたい」という気持ちが芽生えてきたら、次のような転職支援機関・サービスの利用を検討してみましょう。

  • 就労移行支援事業所
  • 地域障害者職業センター
  • 障害者向けの転職エージェント

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、はたらくための知識やスキルの習得に加えて、就労に向けた総合的なサポートを求職者に提供している機関です。転職後も定着支援として、困りごとや悩みの相談ができるので、うつ病の症状に悩む方でも安心して利用しやすいことが魅力です。

ただし、就労移行支援事業所では求人の紹介は行っていないため、転職活動はハローワークのような専門の機関で行う必要があります。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害がある人に専門的な職業リハビリテーションを提供する機関です、全国の都道府県に設置されていて、ハローワーク・企業・医療と連携したサポートが受けられるため、安心して治療に専念しながら社会復帰を目指せます。

障害者向けの転職エージェント

うつ病の方が自分に合った仕事・職場を見つけるためには、サポート実績が多く知見が広い転職・就職のプロによるサポートを受けるのもおすすめです。通院や支援機関の利用を通じて、「また仕事をしたい」という意欲がわいてきたら、転職支援サービスを活用してみましょう。

専門知識があるキャリアアドバイザーに相談することで、どのような仕事・職場ではたらくことでストレスを軽減できるかなど、詳しく知ることができます。さらに、うつ病の症状や個人の特性に合う働き方の提案が受けられるので、安心して転職活動ができるでしょう。

うつ病の方の転職にはdodaチャレンジがおすすめ!

転職エージェント

うつ病の治療を続けながらの社会復帰を目指す場合、まずは主治医に相談したうえで、定期的な通院治療やセルフケアを続けることが大切です。職場の理解・協力が得られれば、うつ病を治療しながらはたらくことは可能です。ただし、職場環境や仕事内容が合わないと感じる場合は、転職を検討してみましょう。

無理なく仕事を続けていくために転職をお考えなら、「dodaチャレンジ」へご相談ください。うつ病などの精神疾患に理解のあるアドバイザーが、自身に合う仕事を紹介してくれます。

dodaチャレンジの転職支援サービスでは、うつ病などの精神疾患について専門知識を持ったキャリアアドバイザーが一人ひとりの就職・転職を支援します。あなたに合った求人情報を探してご紹介するほか、面接・応募書類作成のサポートや面接対策、個別のご相談なども行いますので、安心して転職活動に臨めるでしょう。

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公開日:2023/2/8

更新日:2024/12/25

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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