SOGIハラとは?職場におけるSOGIハラの事例・対処法について
職場におけるハラスメント(嫌がらせ)として、セクハラ(セクシャルハラスメント)やパワハラ(パワーハラスメント)などは広く一般的に知られるようになりました。
さらに近年は、ハラスメントが内容別に細分化される流れが進んでいます。2010年代半ばごろから問題視されるようになり言葉が一般化した「マタハラ(マタニティハラスメント)」のように、「SOGIハラ」と呼ばれる職場内ハラスメントに関する言及が増えています。
この記事では、SOGIハラ(SOGIハラスメント)の意味や概要、実際にあったSOGIハラ事例や、職場でSOGIハラに遭った際の対処法などをご紹介します。
目次
01.SOGIハラとは?
近年、大きな問題となりつつある「SOGIハラ(SOGIハラスメント)」とは、どのようなものなのでしょうか。
ここでは、SOGIハラという職場内でのトラブルについて、この言葉の元である「SOGI」の意味合いを含めてご紹介します。
そもそも「SOGI」とは?
「SOGI」とは、「Sexual orientation and gender identity」を略した呼び名で、読み方は「ソジ」が一般的ですが、「ソギ」と読むケースもあります。
SOGIを直訳すると、「性的指向と性自認」です。性的指向は好きになる人の性のこと、性自認とは自分自身で認識している自分の性のことを指します。
つまりSOGIとは、異性愛・同性愛・無性愛を問わずすべての人が持つ性的指向や、個々の性自認の属性を意味しています。
SOGIハラ=性的指向および性自認に関するハラスメント
SOGIハラスメントとは、性的指向や性自認に関する嫌がらせのことです。職場で性的指向や性自認を理由に不利な待遇を強いたり、希望を聞き入れなかったりすることにとどまらず、うわさ話や陰口などで本人の心を傷つける行為などもSOGIハラに含まれます。
なぜSOGIが注目されているのか?
SOGIは、マジョリティやマイノリティ関係なく、全ての人が生まれ持った特性であるため、「周りに合わせる」という概念そのものが当てはまりません。それだけに、SOGIハラを受けるほど本人の心の傷は深くなってしまいます。深く傷ついた状態が長期化することで、結果的にうつ病などの精神障害につながるケースも以前から存在はしていました。しかし、これまでは性自認や性的指向に関してタブー視される傾向があったため、明るみに出ることが少なかったのです。
近年はビジネスの世界でも個々の多様性を尊重する流れができ、それによって以前からあったSOGIハラによる問題が顕在化してきたと考えられます。
02.SOGIハラ防止が盛り込まれた「改正パワハラ防止法」について
2020年(令和2年)6月1日に、改正された「職場におけるハラスメント関係法令(通称・パワハラ防止法)」が施行されました。この改正法には、先述したSOGIハラの防止に関する事項も新たに含まれています。
ここでは、この改正パワハラ防止法について、SOGIハラに関する事項を中心にご紹介します。
パワハラ防止法が改正された背景
2020年ごろから、職場においてSOGIハラを受け続けたことが原因で、うつ病などの精神障害を発症した事例が複数報告されました。このため、被害を受けた方の「心理的負荷」を評価する項目にパワーハラスメント(パワハラ)が加わり、職場におけるSOGIハラを含む広義的なパワハラが全面的に禁じられることとなったのです。
パワハラ防止法の改正内容
改正パワハラ防止法におけるSOGIハラに関するおもな改正事項は、SOGIハラに関する具体的な防止策を組織として講じることが義務付けられた点です。以下の期日までに、各企業は自社におけるSOGIハラ対策を組織的に講じなければなりません。
・大企業:2020年6月以降
・中小企業:2022年4月以降(2022年3月31日までは努力義務期間)
詳しくはこちら ⇒ 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
03.職場で起こりうるSOGIハラについて
職場で起こりうるSOGIハラの例
日常的に起こっている出来事のなかにも、SOGIハラにあたるものがあります。例えば、以下のような言動や行為もSOGIハラにあてはまります。
・差別的な言動や呼称
同性愛者の蔑称である「ホモ」や「レズ」などの言葉を本人に浴びせたり、性的指向に対し批判や揶揄などを込めた言葉(例えば「オトコ女」など)をかけたりする行為は、たとえ発言者に悪気がなかったとしても、本人の心を傷つけるSOGIハラにあたります。
・望まない性別での勤務体制を強制
本人の性自認を無視し、戸籍上の性別が女性だからと女性用ユニフォームの着用を強制したり、使用するトイレに関する配慮を行わなかったりすることもSOGIハラの一つです。
・不当な異動や解雇
性的指向や性自認をあげつらい、「男のくせに化粧をしているのが不快なので異動させる」といったように不当に異動や解雇を言い渡すことも、SOGIハラです。
・SOGIを無許可に公表する(アウティング)
その人の性的指向や性自認を知る人が、無断で別の第三者にそれを教えることを「アウティング」と呼び、この行為も本人の不利益につながる可能性のあるSOGIハラです。
なお、「カミングアウト」は本人自ら周囲に自身の性的指向や性自認を伝えることを意味し、他人が勝手にそれを触れ回るアウティングとは異なります。
職場で実際にあったSOGIハラの事例
はたらく人にとって、職場で日常的にSOGIハラに遭うことはとても心理的負荷が大きいことです。実際にSOGIハラによって心身の不調を起こした人も少なくなく、さまざまな事例が明るみになっています。
【SOGIハラ事例・1】性自認に関する嫌がらせを受け続け、うつ病に至った事例
女性であるという性自認に対し、職場でそれを聞き入れられず男性として扱われ続け、さまざまな言葉での嫌がらせを日常的に受けた結果、うつ病を発症し、数年にわたる休職を余儀なくされた事例があります。
休職後に復帰しようとしたところ、引っ越しが必要となる遠方への転勤を言い渡されるなど不利な待遇を強いられ続けました。労組を通じて職場と相談することで遠方への転勤は回避できましたが、この件で被害を受けた方は労災認定を申請中です。
【SOGIハラ事例・2】性別変更を周囲に認められず、精神障害を発症した事例
女性としての性自認にしたがって性別適合手術を受け、男性から女性に戸籍上の性別変更を行った方が、性別変更後に勤め始めた職場でそれを同意なく公表(アウティング)され、同僚から侮辱などの嫌がらせを受け続けました。その結果、精神障害を発症し、自殺未遂に至ったという事例です。
この事例では本人が労災認定を申請し、パワハラ(SOGIハラ)があったことが労働基準監督署に認められ、労災認定を受けています。また、性別変更をアウティングした件について職場側を提訴しました。
04.職場でSOGIハラを受けたときの対処法
もし職場でご自身のSOGIに関連する嫌がらせを受けた場合には、どのようにして対処すれば良いのでしょうか。
会社のパワハラ・セクハラ相談窓口に相談する
先述した改正パワハラ防止法によって、多くの職場でパワハラやセクハラに関する相談窓口が設けられていると思います。もし自社内外に窓口があれば、ご自身が受けているSOGIハラについて相談しましょう。親しい同僚や上司へ先に相談したくなるかもしれませんが、デリケートな問題のため、専門の部署にまず一言伝えることから対処を始めることをおすすめします。
労災申請をする
もしSOGIハラが原因でうつ病や適応障害などの精神障害などを発症している場合は、労働災害と認められる可能性があります。一般的に「精神障害は労災認定されにくい」といわれますが、SOGIハラなどのハラスメントが原因でその証拠を提出可能な場合は、労災として認められやすくなっています。
SOGIに対する理解が深い企業へ転職する
職場内での解決が望めないと判断した場合は、SOGIに対し理解の深い企業への転職も検討すると良いでしょう。
例えば、求人広告や募集要項に「LGBTフレンドリー」を掲げているなどの特徴に注目しながら、転職活動を行うことをおすすめします。
05.障害とSOGIへの理解が深い企業への転職を
SOGIハラをはじめとする、職場での心理的負荷によって精神障害を発症し障害者手帳を取得した方や、LGBTQをはじめとするセクシュアル・マイノリティの方で免疫機能障害等の身体障害がある方の場合、「障害者採用枠」で転職することも選択肢の一つです。
障害者採用枠での転職を成功させるには専門家への相談がベスト
「障害者採用枠」とは、障害者手帳を持つ方だけが応募できる採用枠のことです。障害者の雇用を前提として求人が行われているため、就職後も障害や疾患について配慮を受けられるなどのメリットがあります。
⇒ 障害者採用枠のメリット・デメリットなどについて詳しく解説している記事はこちら!
障害者採用枠で転職するには、障害者雇用に関する専門知識を持つ人の助言があると、スムーズに転職活動ができます。例えば、障害者雇用枠の採用基準を一般採用と同等としている企業への転職活動対策や、面接時の給与交渉などはご自身だけで行うことが難しい場合もあります。
専門家に相談しながら転職活動を進めることで、さまざまなサポートを受けられ、自分だけでは見つけられない求人を一般求人・非公開求人の両者から比較検討することができます。
dodaチャレンジでは障害者手帳をお持ちで、かつLGBTQをはじめとしたセクシュアル・マイノリティである方の転職や就職のための活動を支援しています。
SOGIに関する問題では特に「LGBTQ」が話題に上りやすく注目されがちですが、dodaチャレンジの就職・転職サポートではLGBTQに限らず、あらゆるSOGIに起因した心身の障害にも配慮したサポートを行っています。
個々のSOGIを理解し職場に生かしているLGBTフレンドリー企業への紹介だけでなく、はたらく人の障害に対する配慮も含め、総合的なキャリアプランを相談可能です。休職者の方の社会復帰に際し障害へ配慮してもらうことや、将来のキャリアプランなども含め、総合的にヒアリングいたします。
06.まずはdodaチャレンジへお気軽にご相談ください
「職場で自分の性的指向を笑われ続け、心が折れそう」「本当は性自認に合った姿で仕事をしたいのに、職場で認められないことがつらい」など、SOGIハラによって心に傷を負った状態ではたらいていくことに関するお悩みはありませんか?
SOGIハラを受けたことによってうつ病を発症した方や、以前からの精神疾患や身体の機能障害を治療しながら転職を考えているセクシュアル・マイノリティの方は、ぜひdodaチャレンジまでご相談ください。皆さまの個性を尊重し、最適な選択肢に向かえるためのサポートを全力で行います。
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まとめ
長いあいだ、個人の性的指向や性自認に関しては「仕事には関係ないこと」「周りの多くの人と違っているなら、がまんして周りに合わせるべき」などと考えられていましたが、世界におけるダイバーシティ(多様性)尊重の流れから、どんな人もその人らしく生きる権利が認められつつあります。ただし、すべての企業にその考えが浸透しているとはまだ言いがたい、というのが日本の現状です。
職場の同僚や上司からSOGIハラを受けたり、ご自身のSOGIを無理に隠したりすることなく、堂々と本当の自分としてはたらきたいとお考えの方は、LGBTQなどセクシュアル・マイノリティに理解のある企業への転職をおすすめします。転職活動にあたって、ご自身のSOGIと精神疾患に関する不安や懸念をお持ちの方は、ぜひdodaチャレンジの転職支援サービスまで一度ご相談ください。
公開日:2021/10/28
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士