LGBTQ当事者/気分変調症(精神障害)/40代 の転職ストーリー

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LGBTQ当事者であり、精神障害を抱えてきた私が、転職で人生を大転換。
社会を変える、これが私の使命

今 将人さん 40代 気分変調症(精神障害)

転職活動期間
10ヶ月
前職
人事・総務事務職
現職
損害保険ジャパン株式会社 人事部 ダイバーシティ推進グループ

「トランスジェンダーとして抱える生きづらさとは何なのか」研究の道を進むも・・・

私は、幼稚園の頃から「周りとの違和感」による「生きづらさ」を感じていました。その違和感や生きづらさは何なのか?自分自身のことを知りたくて、大学では心理学を専攻し、卒業後は大学院へと進みました。院進学の理由の一つは、社会に出て企業に就職をすると、性別役割を期待される、そのことへの抵抗があったからです。女性社員は女性らしい仕事を、男性社員は男性らしい仕事を、と期待されるであろうことが自分には引き受けられないと考え、その時は就職の道は選択しませんでした。

院では社会学を専攻しました。私は、トランスジェンダーとして生きづらさを抱えて生きてきて、その研究をすることで自分を説明する言葉を持ちたいと考えていました。しかし、大学院でも性別役割への期待は一般社会と変わらず、この頃から、体調や心身のバランスが不安定となり、25歳でうつ病と診断されました。

うつ病とアルコール依存症だった20代後半~30代後半

不眠から始まり、寝返りができないほどの倦怠感、手すりに掴まらないと歩けないほどのめまいを感じ、最初は、脳や免疫、内臓系の疾患かと考え、内科、耳鼻科などを受診しました。なかなか診断がつかずにいたところ、精神科を紹介され、うつ病と診断されました。その後も体調・心身の不調は良くならず、寝付くためにアルコールを摂取することが習慣となり、アルコール依存症と診断されたのが32歳のときです。これまで精神科の主治医にも相談をしていましたが、社会生活が送れているならアルコール依存症ではない、と言われていました。診断のきっかけは、転院です。結婚により東京で暮らすことになり、転院先の新しい主治医から、「アルコール依存症」とはっきりと診断され、治療に踏み切れました。何度も断酒と再飲酒を繰り返しながら当事者会にも通い、2012年12月からは断酒に成功し、今も継続しています。

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dodaチャレンジとの出会いで、転機が訪れた40歳

幼少期の周りとの孤立感から自己肯定感が低い私は、うつ病やトランスジェンダーであることや、また結婚し家事をしていることを理由にして、正社員としてはたらくことを避けざるを得ませんでした。塾講師、交通警備員、工場勤務など非正規社員として仕事をしていましたが、私の人生を大きく変えたのは、dodaチャレンジとの出会いでした。

当時、リネンサプライ企業で事務職のアルバイトをしていたのですが、労働時間分の賃金を支払いたくないと言われたとき、「働いた分の給料も払わない会社で人生をすり減らしたままではいけない」と、はっと目が覚めたんです。それからは片っ端から、インターネットで障害者の就職市場や採用情報について現状を調べました。そこで見つけたのが、dodaチャレンジでした。
インターネットの普及によって、生きづらさを抱える人たちにとっても、情報収集手段が一気に加速したのではないでしょうか。私も、長い間、情報がなく社会から孤立して生きていました。

最初に相談したキャリアアドバイザーは、私の話を親身になって聴いてくれました。何をしたいか、など「就活の軸」を持ち合わせていない状況でしたが、唯一の条件として、精神障害があることをオープンにした私を採用してくれることを希望しました。そこでキャリアアドバイザーに大手IT企業を紹介いただき、契約社員としてすぐに内定をいただきました。これまでの不安定な就業状況から人生が一変しました。

はじめての企業経験で、見出した使命とは?

就職した大手IT企業では、給与計算や社保管理など人事関連の事務職を担当することになり、はじめての業務で仕事は面白かったです。また、『ダイバーシティ通信』といったコラムを発信することもできました。しかし、保守的な慣行が強い会社で、評価の不透明さや、業務のマニュアル化など新しい取組みへの抵抗感がありました。その中で追い打ちをかけるように、上司からは、「LGBTQの人なの?そういうことは言わない方がいいよ」と言われました。親切で助言してくれたのだと思いますが、「自分が生きやすい社会に変えなければ、ずっと苦しいままだ」そう強く思いました。「障害もセクシュアリティもオープンにできる会社に転職をして、ダイバーシティに関わる仕事をしよう!一般企業で当たり前のように私のような人間が仕事をすることで社会が変わる」。このことをきっかけに、仕事に希望を見出しました。

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2回目の転職活動

私は、さっそくdodaチャレンジに相談しました。私の意志と思いを理解してくれたキャリアアドバイザーからは、ダイバーシティ関連職のポジションで採用する企業があったら連絡します、とお約束いただきました。それから10ヶ月ほど経って、担当の方から、「損害保険ジャパン日本興亜様(現:損害保険ジャパン様 ※以降、損保ジャパン)でダイバーシティ担当を募集されているのでご紹介いたします」とご連絡をいただきました。私は、このチャンスを必ず手に入れたいと念入りに準備しました。私がこれから会社で実現させたいこと、私にできること、これまでの経験が新しい社会づくりに役に立つことなどを整理して、どう話せば伝わるか、どういった言葉を選択するのが有効か、など何ページにもわたって、キャリアアドバイザーと一緒に作戦を練りました。今でもその作戦ノートを大事にしています。

期待も大きいが、やりたいことができる環境

損保ジャパンに入社して早々、会社から期待されるレベルの高さを感じました。私はアソシエイトの役職についていますが、社員に期待するということは、その人が持つ力に敬意を払っているということであり、その力を引き出すことで人を大事にする会社であると私は捉えています。役職や、障害の有無、ジェンダー、年齢、国籍、宗教は関係ありません。まさにダイバーシティを体現している会社だと感じました。

地道な取組みで、社内に共生の意識を芽生えさせる

今は、社内のイントラネットで情報発信をしたり、LGBT-ALLY(LGBTQを理解・支援する意志のある方)コミュニティの事務局を担当し、LGBTQ当事者や障害のあるお客さま向けの商品設計に情報提供を行うなどの、様々な業務に挑戦させてもらっています。

各部署向けにカスタマイズした社内勉強会も積極的に開催しています。例えば、学生時代に男女別の授業に馴染めなかったこと、現在「誰でもトイレ」を使っている理由、同性のパートナーと暮らし子供を育てている方の事例など、当事者だからこその目線を大事にしていますね。
障害の有無やジェンダーに限らず、マイノリティを大切できる社会の実現には、これまでの社会の当たり前を疑う、という前提に立つことが大事です。そういった姿勢を可視化するために、名刺やメールの署名にALLYであることを記載したり、ALLYステッカーを社員の目に触れるところに貼ったりしています。LGBT-ALLYコミュニティメンバーの発案で、当社のマスコットキャラクター「ジャパンダ」がレインボーフラッグ(多様な性と生の象徴としてLGBTパレードなどで使用される)を持った新しいイラストを作ったりもしました。日常の中で共生の意識を芽生えさせていくことが大事であると考えています。

ダイバーシティ推進が私の使命

私が目指す「すべての人が、自分で選びたい人生を、自分で選択できる社会」を実現するために、損保ジャパンでの取組みや成果を社内だけでなく、社外にも発信していきたいと考えています。精神障害があり、またトランスジェンダーでもある私が、一般企業で当たり前に仕事ができていることを社内外に発信することで、ロールモデルがないと感じている人を勇気づけられると思うからです。すべての人にとって「安心で安全で健康でいられる社会になったら」、そう考えるだけでわくわくします。

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『トランスがわかりません!!―ゆらぎのセクシュアリティ考』『恋愛のフツーがわかりません!!―ゆらぎのセクシュアリティ考2』(アットワークス・共著)

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メッセージ

転職・就職活動の際は、自分にできることは何か、できないことは何か、ご自身のキャリアやエピソードに客観性をもつことが大事だと思います。そして、何よりも重要なことは、転職・就職の目的を明確にすることです。例えば、年収アップが希望なのであれば、何のためにアップさせたいのかまで考えてみましょう。目的が原動力、エネルギー源になります。
私もうつ病、アルコール依存症を経験し、いまでもうつ病の薬は服用していますが、「不本意な自分」を受け入れることができたとき、これまで見ていた世界が違って見えてきました。また転職をしたことで、資格取得などの目的が見つかりました。焦らずに、まずご自身の状態が整うことを待ちましょう。プロのキャリアアドバイザーに、話を聴いてもらうことから始めてみてはいかがでしょうか。

今将人(いま まさと)
2008年3月佛教大大学院社会学研究科修士課程修了後、精神疾患の治療をしながら塾講師、交通警備員、工場労働などの非正規雇用を経て、19年5月損害保険ジャパン株式会社に入社。著書に『トランスがわかりません!! ゆらぎのセクシュアリティ考』(アットワークス・共著)、『恋愛のフツーがわかりません!!―ゆらぎのセクシュアリティ考2』(アットワークス・共著)がある。

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