障害者採用枠でも時短希望はできる?時短で転職するポイントとは
はたらき方の多様化とともに、近年大きく注目されているのが時短勤務です。育児や介護中の方が一定期間に限り利用するイメージが強いと思われますが、障害者雇用枠でも時短勤務を取り入れている事例が増えています。
そこでこの記事では、障害者雇用枠の時短勤務希望転職についてご紹介します。時短勤務制度の概要から、時短希望で転職する際のポイントまで解説しますので、障害者雇用枠の時短勤務制度に興味をお持ちの方はぜひご参考にしてください。
時短勤務とは
時短勤務の正式な呼び名は「短時間勤務」で、「1日の労働時間を通常より短縮して勤務すること」を指します。国の定義では「フルタイム勤務の場合、1日あたりおよそ8時間とされる労働時間を6時間へ短縮すること」とされています。
しかし、企業によっては、さらに短い時間のみでの勤務が可能な「超短時間労働モデル」「IDEAモデル」と呼ばれる就業モデルも存在します。この超時短勤務は東京大学准教授の近藤武夫氏が提案したもので、厚生労働省の検討会でも資料が紹介され、議論がされています。
参考:
「第9回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会|厚生労働省」
「超時短雇用IDEAモデルの現況について|厚生労働省」
時短勤務が注目されている背景
時短勤務が近年注目されている背景には、2010年代半ばころに大きく報道された「はたらき過ぎ」や「過労死」の問題があります。いわゆるブラック労働への従事などで、心身に不調を来す労働者の増加が危惧されるとともに、ワーク・ライフ・バランスの実現をめざす政策が設けられたものこの時期です。はたらき方の改革をめざす流れが国策として確立して以降、時短勤務制度を積極的に活用する企業も急増しました。
現在ではブラック労働をなくす取り組みだけにとどまらず、子育てや介護などとの両立への対策も兼ねた時短勤務の導入や拡大に注目が集まっています。
障害のある方の時短勤務とは?
身体障害や知的障害、精神障害、発達障害などがある障害者の方も、その特性や症状によってフルタイムでの勤務が困難となるケースが少なくありません。時短勤務は、障害のある方への配慮を目的としても多くの企業で取り入れられています。
主に以下のような障害者の方が時短勤務を検討・活用していますので、当てはまると感じた場合には時短勤務でのはたらき方が適しているでしょう。
- 身体的・体力的にフルタイム勤務は困難だが、短時間であればはたらくことができる方
- 治療や通院、リハビリなどと仕事との両立が必要なため、短時間しか勤務できない方
- 一定期間の休業から復職を図るにあたり、まず短時間から社会復帰を考えている方
上記のような障害者の方が、実際に時短勤務に就いているケースも数多くあります。具体的な勤務時間としては「週20時間」「週30時間」、あるいは「週3日勤務」など、さまざまな選択肢からご自身に合うはたらき方を選んで活躍しています。
障害者の時短勤務は増加傾向にある
障害者の時短勤務(20時間以上30時間未満)の割合は年々増加傾向にあります。ここでは、厚生労働省の調査結果による時短勤務に従事する障害者の割合をご紹介します。
出典:厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査」
このように、障害のある方が時短勤務という選択によって、社会的な安定や自立を実現できていることが分かります。また、「心身の状態をしっかり維持・管理しながら、自分にとって最適な労働時間ではたらきたい」「障害があっても、いつまでも自分らしくはたらきたい」といったニーズへのマッチングも良好といえるでしょう。
多様なはたらき方を希望する障害者の方が増え、今後もいっそう時短勤務の普及や拡大が進むと考えられています。
労働市場の変化で時短勤務は追い風に
なぜ、近年急速に時短勤務の普及・拡大が図られるようになったのでしょうか。その理由は、労働市場におけるはたらき方の変化にもあると考えられています。
1.メンバーシップ型からジョブ型への移行
メンバーシップ型雇用とは、採用をする際に、勤務地や業務の内容を限定せずに雇用契約を結ぶ雇用システムのことです。日本の従来型の雇用手法で、教育や研修で時間をかけて人材を育てる方式ともいえるでしょう。
一方で、ジョブ型雇用とは、採用の際に職種や勤務地などを明確に決めて雇用契約を結ぶ雇用スタイルのことです。
メンバーシップ型雇用は、はたらいた時間を軸に評価されることがほとんどでした。しかし、それでは時短勤務のような柔軟なはたらき方には対応できません。そこで、多様化するはたらき方に対応できるよう、成果を軸とした評価ができるジョブ型雇用を採用する企業が増えてきたのです。
2.Society5.0の提唱
Society 5.0とは、あらゆるものがインターネットによって人とつながり、多くの知識や情報が共有されることで新たな価値を生み出す社会づくりのことです。従来ある課題や困難を克服し、世代を越えて互いに尊重し合い、一人ひとりが快適に活躍できる社会を目指します。そのなかには個々のはたらき方の多様化も含まれています。
多様なはたらき方の一般化にともない、労働政策審議会でも雇い入れの際の助成制度を充実させるなど、企業側への促進施策が活発に検討されています。また企業としても、短時間勤務の労働力で人手不足の補完が可能です。このため、従来のようにフルタイム勤務に偏らず、時短勤務従事者の積極採用を目的とした求人が増加しています。
このように時短勤務の拡大は、企業側にもメリットをもたらすものと考えられるでしょう。したがって、今後も時短勤務を含めた多様なはたらき方の普及は継続的なものとなることが予測できます。
障害者の方が時短勤務で転職する際のポイント
時短勤務の求人に応募して、転職をしたいと考えている障害者の方も少なくないでしょう。ここでは、障害者雇用枠で時短勤務求人に応募しての転職を考える際に押さえたいポイントをご紹介します。
1:応募する企業の時短勤務制度の内容をよく確認する
時短勤務制度は企業がそれぞれ就業規則を定めているため、職場によって選べる勤務時間やその他の制度が異なります。転職してから「自分が想定していたはたらき方と違った」という事態を招かないよう、応募企業がどのような時短勤務制度を設けていて、どのような規定があるのかを慎重に確認してから応募を決めましょう。
2:時間ではなく成果によって評価されるはたらき方ができるかを確認する
時短勤務ではたらくということは、フルタイムよりも勤務時間が減るということです。このため、その分収入減となってしまうことも考えられます。場合によっては、昇進や賞与額に響くこともありえます。
できれば勤務時間だけでなく、成果もしっかり評価してもらえる職場を選ぶと安心です。求人に書かれている内容にとどまらず、応募先の評価の仕組みなどもよく確認すると良いでしょう。
3:自分の強み・弱みを明確にする
ご自身の得意分野・不得意分野を意識して転職活動に臨むことも大切です。時短勤務を希望する場合は特に、持っているスキルを活かすことが将来的な安定や自立につながります。ご自身の強みが最大限に活かせて、弱点がデメリットとならない職場選びが重要となるでしょう。
4:障害理解・配慮のある企業かを確認する
障害者雇用枠で求人に応募する場合は、ご自身の障害特性を理解し、配慮に努めてくれる職場であるかどうかの確認は必須事項ともいえます。その職場ではたらくこと自体がストレスになってしまわないよう、理解や配慮の行き届いた職場を見つけましょう。
5:障害者雇用の専門知識のあるエージェントに相談する
障害者雇用枠での求人はハローワークや一般求人エージェントでも見つけられますが、一般的な人材サービスで紹介される障害者雇用枠の求人数はかなり限定的です。
障害者雇用枠での求人からご自身に合った職場を選んで見つけるには、障害者の就職・転職に特化した専門のエージェントに相談することが得策でしょう。
dodaチャレンジが時短勤務での転職をサポート
まとめ
時短勤務の障害者求人は、探すのが大変と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
障害者求人のご紹介に特化したdodaチャレンジでは、さまざまなご障害の方に多くの時短勤務求人をご紹介、転職をご支援しています。時短勤務での転職を考えている障害者の方は、求人紹介から就職後のサポートまでさまざまな支援をきめ細かに実施しているdodaチャレンジをぜひご活用ください。
障害のある方で時短勤務をご検討されている方へ、キャリアアドバイザーへのご相談はこちら!
公開日:2022/10/24
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士