Uターン・Iターン・Jターン転職・就職のメリットとは?障害者が使える支援や補助金制度をご紹介

地元・地方ではたらいている人

はたらき方を変えるときや就職・進学のタイミングで、「Uターン」「Iターン」「Jターン」といったスタイルがよく聞かれるようになりました。これらはそれぞれどのような違いがあり、障害のある方の転職・就職においてどのようなメリットを持つのでしょうか。
今回は、Uターン・Iターン・Jターンという言葉の意味や転職・就職時におけるメリット、その際に障害者が利用できる支援などをご紹介します。

Uターン・Iターン・Jターン転職・就職とは

Uターン・Iターン・Jターンのイメージ

まずUターン・Iターン・Jターンという言葉の概要から、ご説明します。この3つの言葉は、いずれも「就職や転職を機に地方、地元に移住する」という意味では同じといえます。3つを合わせて、UIJ(ユーアイジェイ)ターンやUJI(ユージェイアイ)ターンと呼ぶこともあります。
ここでは3つの違いをご説明します。

Uターン転職・就職

地方出身の人が進学などでいったん都会へ移住したのち、再び生まれ育った出身地に戻って就職・転職することを指します。

Iターン転職・就職

都会出身の人が、そのまま生まれ育った出身地で勤務・就学したのち、地方に移住して就職・転職することを指します。

Jターン転職・就職

地方出身の人が都会へ進学・就職し、その後地元から近く少し規模の大きい地方都市に移住してはたらくことを指します。

Uターン・Iターン・Jターンの違いと共通点

Uターン・Iターン・Jターンの3つは、「出身地」と「移住先」がそれぞれ異なります。
都会から離れた、落ち着いて暮らせる緑豊かな土地へ移住してはたらく、という点はすべてに共通しています。

UIJターンで地元就職・転職を希望する人が増加している

近年、UIJターンで居住地を移す形での就職・転職が増加しています。ここでは、Uターン転職などが増えていることの社会的背景や要因などをご説明します。

地元(Uターン含む)就職を希望する学生が増えている

進学で他の地域に居を移した学生が就職活動をするにあたり、地元に戻って就職を希望するケースが多くなっているためです。これには「両親の近くで生活したい」「実家から通えて経済的に楽だから」「友人が近くに住んでいるから」などの理由が多く挙げられており、経済面や生活のしやすさが大きな要因と考えられます。
家庭の都合などで、出身地に戻るUターン就職を避ける学生もいますが、そのような場合でも都市圏を離れた地方都市へ移住するJターン就職を選ぶケースがあります。

障害のある方にとってのUターン・Iターン・Jターン転職・就職のメリット

ここからは、障害のある方にスポットを当ててのUターン・Iターン・Jターン転職・就職について見ていきましょう。障害者の方が地方で就職・転職する主なメリットは以下のとおりです。
・家族や友人のサポートを受けられる
・自然が豊かで過ごしやすい
・人との交流が深くなる

家族や友人のサポートを受けられる

地方出身者が地方に戻る大きなメリットの1つとして「住み慣れた町で家族のサポートを得られること」が挙げられます。経済的・身体的なメリットはもちろんのこと、家事負担を軽減できることや、家族が近くにいることで精神的な余裕が生まれるケースも想定できます。
特に障害のある方の場合、身近に信頼できてサポートも得られる存在がいるとより心強いでしょう。

自然が豊かで過ごしやすい

安定して仕事を続けるには、生活環境の良し悪しも重要なポイントです。地方は自然が豊かな場所が多く、自然に触れることによるストレス緩和やリフレッシュが期待できます。大都市圏でありがちな満員電車や、駅のホームでの混雑などの「通勤ストレス」から解放されることもメリットです。
また、地方は都会よりもゆったり時間が流れるように感じられ、ワークライフバランスが保ちやすくなることも期待できます。仕事や通勤でのストレスによる後天性の障害(うつ病、パニック障害など)を契機に、地方に転職するケースも少なくありません。

人との交流が深くなる

障害者の方がUターン等を希望する理由は「地元に戻りたい」「家族と会いやすくなる」「知り合いが多く安心できる」などです。家族や知り合いの多い地元の住み慣れた町であれば、何か困ったことがあっても頼りやすい点がメリットでしょう。
また、都会特有の浅く広い付き合いではなく、一人ひとりと向き合って狭く深い交流ができる点にも、人によっては居心地良さを感じられるのではないでしょうか。

障害のある方がUターン・Iターン・Jターン転職・就職をする際の注意点

Uターン等で地方での就職・転職を考える際には、メリットだけでなく注意すべき点も意識しなければなりません。ここでは、障害者の方がUターン・Iターン・Jターン転職・就職を検討する際の注意点と、その解決方法をご紹介します。

求人の数や種類が少ない

地方は、大都市圏と比較して求人の数自体が少ないため、希望に合った仕事には就けない可能性があります。
最近では、完全在宅で就労可能な職種も増えてきました。しかし、地方在宅でのはたらき方に対応した大都市企業の求人を探すことは、なかなか難しいことです。
大都市の企業が募る地方在宅の仕事を探したい場合、転職エージェントを活用し求人を紹介してもらうのがおすすめです。

給与が下がるケースがある

職種や地域によって異なりますが、地方ではたらく場合は都会と比べて給与が低くなるケースもあります。
とはいえ大都市圏と地方部とでは、生活にかかるコストも大きく異なります。地方で暮らせば物価や家賃が安くなり生活費が抑えられるケースもあるほか、移住にともなう支援金を受け取るなどすることで、給料ダウンの影響を抑えることも見込めるでしょう。

勉強会やイベントの機会が少ない

仕事のスキルを向上させるための学習機会は、都会と比べて少なくなりがちです。向上心が高くスキルアップ志向の方には少し物足りなく感じるかもしれません。
ただし近年では、地方都市でのイベント開催やオンライン勉強会も増えているので、それらを活用するのがおすすめです。参加のハードルが低いオンライン勉強会や研修は、外出に困難を伴う障害者の方にとっては適したスタイルともいえます。身体障害のある方にとっては移動しなくて良いメリットがありますし、精神障害のある方なら心理面での安心感があるでしょう。

UIJターンでの転職・就職で利用できる移住支援・補助金制度

サポートしてくれる人

Uターン・Iターン・Jターンの転職・就職活動をする際は、情報収集などのために現住居と地元(地方部)を行き来することになります。事前の準備や引っ越しにともなう資金が必要となるため、利用できる支援制度は先に確認しておくのがおすすめです。
ここでは、地方部への移住にともなって活用できる支援制度について、簡単にご紹介します。

地方就職支援コーナー(UIJターンに関するハローワーク窓口)

ハローワークでは、都会から地方への就職に向けた職業相談や職業紹介を実施しています。その一環として、東京と大阪のハローワークには「地方就職支援コーナー」が設置されています。
地方就職支援コーナーには専門の相談員が常駐し、就職希望地域での住宅や教育、医療などの情報を含めた職業相談をしたり、職業紹介を受けたりすることが可能です。

移住相談センター

各地方自治体やNPO法人などが、各地に移住相談センターや移住相談窓口を設置しています。なかでも特によく知られているものに、東京・有楽町の「ふるさと回帰支援センター」があります。全国47都道府県すべてへの移住相談を受け付けている唯一の施設として、多くの移住希望者で日々にぎわっています。
都会で地方への移住相談をするパターンと、移住先に出向いてその土地への移住相談をするパターンの2つがありますので、ご自身のライフスタイルに合わせて相談先を選ぶと良いでしょう。

Uターン向け就職セミナー

企業や自治体などが、Uターン希望者に向けた就職セミナーや相談会を開催しています。現地へ出向くことが難しい場合も、近年はオンライン開催でのセミナー・相談会が多くなっていますので、ケースバイケースで活用すると良いでしょう。

地方創生移住支援事業(移住支援金・起業支援金)

「地方創生移住支援事業」とは、東京23区に在住・在勤している方に向け交付金を支給し、地方へ移住しての起業・就業をすすめる事業です。移住先となる都道府県や市町村が共同で実施しています。
支援される金額は、世帯で移住する場合は100万円以内とされており、18歳未満の家族がいる場合は1人あたり最大30万円が加算されます。また、単身の方の場合は60万円以内です。
いずれも移住先の各都道府県が金額を設定していますので、詳細は移住を希望する都道府県に確認しましょう。

障害のある方がUターン・Iターン・Jターン転職・就職を成功させるために

Uターン等で地方へ移住して転職・就職を考える際、成功のために気をつけたいことにはどのようなことがあるのでしょうか。ここでは、Uターン等を検討するとき留意したいポイントをご紹介します。

地方へ移住する目的を明確にする

「なぜ地元や地方部へ住んではたらきたいのか」を、はっきりさせて転職・就職活動に臨みましょう。たとえば「地元に貢献したい」「そのエリアでしかできない仕事がある」など、はたらく場所がその地方でなければならない理由を考えてみてください。目的を明確化した上での就活が、成功のカギになることでしょう。

焦らず自身に合った転職・就職先を見つける

Uターン等の地方移住は、引っ越しなどの予定を立てた上で行う必要があります。このため早く仕事を探そうと、焦ってしまうことも少なくないでしょう。急ぎたくなる気持ちも分かりますが、ひとまず冷静になってしっかり希望条件に合った求人を見つけることが重要です。

転職エージェント・就職エージェントを利用する

現職と並行しての職場探しを1人で行うのは大変ですし、なかなか転職・就職がうまくいかないこともあるでしょう。そのような場合は、就活を手伝ってくれる専門のエージェントに相談するのがおすすめです。
障害者のための転職・就職エージェント「dodaチャレンジ」もその1つ。障害者手帳をお持ちの方・申請中の方向けのサービスで、無料で利用でき、転職・就職に関する幅広いサポートを受けられます。

まとめ

コロナ禍を経て、障害者の方に限らず注目を集めているUターン・Iターン・Jターンでの転職・就職。ワークライフバランス実現への近道ともいわれ、障害のある方に向いているはたらき方でもあります。
Uターン等で転職・就職をお考えの方は、まず現在の状況などを踏まえてしっかりと事前準備を行いましょう。その上で、転職・就職エージェントなどのサポートも受けつつ転職活動・就職活動を進めていくことが大切です。

公開日:2023/4/4

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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