障害者手帳の等級による違いや基準をわかりやすく解説

障害者手帳

障害のある方が転職・就職を機に「障害者手帳」の取得を考えることがあります。手帳を申請しようか迷っているけれど、受けられる支援やサービスについては、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、障害者手帳の内容や等級による違い、基準について詳しく解説します。特にこれから障害者雇用枠ではたらくことを検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

障害者手帳とは

障害者手帳とは、身体障害・知的障害・精神障害・発達障害といった何らかの障害によって日常生活や社会生活に困難を抱えている方に対して、自治体から交付される手帳です。身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の総称でもあり、場合によっては各手帳の略称として使われることもあります。
各手帳の根拠となる法律は異なりますが、障害者手帳を持っていることにより、障害者総合支援法に定められたさまざまな支援を受けられることは共通しています。また、自治体や事業者が独自に行っているサービスの対象となる場合もあります。

身体障害者手帳

身体障害者手帳は、身体障害者福祉法で定められた規定に基づき、身体に一定期間以上永続する障害があると認定された方に交付されます。法によって定められた障害の範囲や程度に沿って、都道府県、指定都市または中核市において認定や交付を行っています。
なお、身体障害者手帳には原則更新はありませんが、認定された障害の状態に変化が予想される場合には、再認定を実施する場合があります。

療育手帳(愛の手帳)

療育手帳とは、各自治体における児童相談所や知的障害者更生相談所にて、知的障害と判定された方に交付される手帳です。知的機能における障害が18歳未満にあったかどうかが判定の原則になり、そのほか判定基準や運用方法は各自治体で定められています。手帳の名称も「愛の手帳」「みどりの手帳」「愛護手帳」などと地域によって異なる場合があります。

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳とは、精神保健福祉法に基づき、何らかの精神疾患のために長期にわたって日常生活や社会生活に制約があると認定された方に交付される手帳です。各自治体の窓口を通して、都道府県知事または指定都市市長に申請を行い、基本的には2年ごとに更新が必要となります。

障害者手帳の申請方法などの詳しい情報は以下の記事でご覧いただけます。

身体障害者手帳の等級について

等級の区分と基準

車椅子を利用するビジネスパーソン

身体障害者手帳の等級は、1級〜7級に分類されています。等級は障害の程度を計るための基準であり、1級に近づくほど障害程度が重くなります。身体障害者手帳の交付は6級以上の認定が対象で、7級単独では交付対象にはなりません。ただし、7級の障害が2つ以上ある場合や、等級の異なる障害が重複してある場合には、交付の対象となる場合があります。

では、実際にどのような等級基準があるのか、2つの障害を例に1級〜3級までを参考にみてみましょう。

・視覚障害
【1級】
  • 視力の良いほうの眼の視力※が0.01以下のもの
    ※万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異常のある者については、矯正視力について測ったものをいう。以下同じ。
  • 【2級】
  • 1. 視力の良いほうの眼の視力が0.02以上0.03以下のもの
    2. 視力の良いほうの眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
    3. 周辺視野角度(I/4視標による。以下同じ)の総和が左右眼それぞれ80度以下、かつ両眼中心視野角度(I/2視標による。以下同じ)が28度以下のもの
    4. 両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの
  • 【3級】
  • 1. 視力の良いほうの眼の視力が0.04以上0.07以下のもの(2級の2に該当するものを除く)
    2. 視力の良いほうの眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
    3. 周辺視野角度の総和がそれぞれ80度以下かつ両眼中心視野角度が56度以下のもの
    4. 両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
  • ・肢体不自由(上肢)
    【1級】
  • 1. 両上肢の機能を全廃したもの
    2. 両上肢を手関節以上で欠くもの
  • 【2級】
  • 1. 両上肢の機能の著しい障害
    2. 両上肢のすべての指を欠くもの
    3. 一上肢を上腕の2分の1以上で欠くもの
    4. 一上肢の機能を全廃したもの
  • 【3級】
  • 1. 両上肢のおや指及びひとさし指を欠くもの
    2. 両上肢のおや指及びひとさし指の機能を全廃したもの
    3. 一上肢の機能の著しい障害
    4. 一上肢のすべての指を欠くもの
    5. 一上肢のすべての指の機能を全廃したもの
  • 参考:厚生労働省 「身体障害者障害程度等級表」

    身体障害者手帳の等級による違い

    身体障害者手帳の等級の違いは、受けられるサービスや支援内容に反映されます。
    受けられるサービスや支援はお住まいの地域によって異なりますが、共通している内容は税金の控除です。所得税や住民税などの控除金額は、1級と2級、3級〜6級でそれぞれ定められています。また、JRなどの公共交通機関の割引金額が等級によって変わるほか、各自治体が独自で定めた手当の金額も、等級によって変わる場合があります。お住まいの市区町村の窓口にて確認してください。
    なお、国による「特別障害者手当」の対象は身体障害者手帳の1、2級程度とされていますが、手帳とは異なる基準が別途定められています。

    療育手帳の等級について

    等級の区分と基準

    知的障害のある方が持つ療育手帳の等級は、おおむね重度を表す「A」と重度以外の中軽度を表す「B」に分けられています。しかし、地域によってはさらに細分化しているケースも。療育手帳の認定基準や支援内容は、各自治体が独自に定めて運用しているため、等級の区分や基準も地域によって違いがみられます。

    以下は自治体による療育手帳の等級区分の一例です。

    • 【東京都】1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)
    • 【埼玉県】マルA(最重度)、A(重度)、B(中度)、C(軽度)
    • 【神奈川県】A1(最重度)、A2(重度)、B1(中度)、B2(軽度)
    • 【名古屋市(愛知県)】1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)
    • 【大阪府】A(重度)、B1(中度)、B2(軽度)
    • 【札幌市(北海道)】A(最重度、重度)、B(中度)、B-(軽度)

    療育手帳の等級による違い

    療育手帳の等級によって、税の控除額が異なります。基本的にはA(重度)判定された方は「特別障害者」に、B(中軽度)区分の場合は「障害者」となり、それぞれの所得税控除は40万円、27万円と、異なる金額が設定されています。
    そのほか、身体障害者手帳や精神保健福祉手帳同様に、自治体や事業者独自で行なっている手当や割引もありますので、お住まいの市区町村の窓口にて確認してみましょう。

    精神障害者保健福祉手帳の等級について

    等級の区分と基準

    精神障害者保健福祉手帳の対象となる障害は、統合失調症、うつ病、躁うつ病などの気分障害、アルコール依存症や薬物依存症などの精神疾患のほか、てんかんや発達障害も手帳交付の対象です。ただしどのケースでも、初診から6ヶ月以上を経過している必要があります。

    精神障害者保健福祉手帳の等級は、1級〜3級に分けられています。統合失調症、気分障害の等級基準は以下のように定められています。

    ・統合失調症
    【1級】
  • 高度の残遺状態又は高度の病状があるため、高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるもの
  • 【2級】
  • 残遺状態又は病状があるため、人格変化、思考障害、その他の妄想幻覚等の異常体験があるもの
  • 【3級】
  • 残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくはないが、思考障害、その他の妄想・幻覚等の異常体験があるもの
  • ・気分(感情)障害
    【1級】
  • 高度の気分、意欲・行動及び思考の障害の病相期があり、かつ、これらが持続したり、繰り返したりするもの
  • 【2級】
  • 気分、意欲・行動及び思考の障害の病相期があり、かつ、これらが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするもの
  • 【3級】
  • 気分、意欲・行動及び思考の障害の病相期があり、その症状は著しくはないが、これを持続したり 、ひんぱんに繰り返すもの
  • 参考:厚生労働省 「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」

    精神障害者福祉手帳の等級による違い

    精神障害者福祉手帳の等級による主な違いは、税金の控除額です。所得税や住民税、相続税、贈与税などの控除額が、1級と2、3級では金額が異なります。また1級の方は、自動車税・自動車取得税の軽減対象にもなります。そのほか、自治体や事業者によって、公共料金の割引や手当の支給を行なっている場合があるため、お住まいの市区町村の窓口で確認してみましょう。

    障害者手帳を持つメリット

    税金の優遇などの公的支援を受けられる

    サポート

    障害者手帳の交付により、所得税や住民税の控除などの公的支援の対象となります。先ほどの「等級による違い」でも解説したように、各手帳の等級によって金額に違いはあるものの、経済的な負担が軽減できることは大きなメリットといえるでしょう。

    地方自治体の手当を受給できる

    国による支援のほか、各地方自治体でも、障害者手帳の所持者に対する手当の支給や公共料金などの割引を行なっている場合があります。主な内容は以下の通りです。

    • 医療費の助成(心身障害者医療費助成など)
    • 補装具費の支給
    • 公共交通機関の運賃の割引
    • 上下水道料金の割引
    • 公共施設の入場料の割引
    • 公営住宅の優先入居 など

    先ほど解説したように、手帳の種類や等級によって内容が異なる場合があるため、詳しい金額等は、お住まいの市区町村の窓口にて確認してください。

    障害者雇用枠での就職・転職ができる

    障害者雇用枠とは、障害者手帳を取得している旨を就職先に申告することで、職場でさまざまな配慮や支援を受けながらはたらく雇用形態のことを指します。
    障害のある方が能力を最大限発揮し、継続的にはたらける社会を目指す制度として、一定数以上の従業員を雇用する企業は、国が定める障害者雇用率を超えて障害者を雇用する義務があります。その対象が「手帳所持者」と定められており、障害者雇用枠ではたらくことで、障害特性に応じた配慮を受けやすい環境で就労可能となります。また、障害者向けの職業訓練や職業紹介、転職サービスなども、各手帳の所持や申請が条件となるケースが多くあります。

    障害者向けの転職エージェント「dodaチャレンジ」

    障害者向けの転職エージェントとは

    障害者向けの転職エージェントとは、障害に関する知識を持ったキャリアアドバイザーが、障害がある方の転職活動をサポートするサービスです。「障害者転職に特化した就職のプロ」が本人の特性や状態を適切に把握し、最適な求人を紹介しています。
    一般には公開していない求人も紹介しており、企業と転職を希望する障害者をつなぐ「架け橋」として、双方のメリットとなる転職活動をサポートする存在といえるでしょう。

    dodaチャレンジとは

    dodaチャレンジとは、総合人材サービスパーソルグループの特例子会社が提供している転職・就職エージェントです。長年の人材ビジネスのノウハウに加え、特例子会社としての障害者雇用の実績と知識を培ってきたからこそできる、障害者に特化した転職サポートを強みとしています。
    dodaチャレンジは転職ご支援実績No1(※2023年度厚生労働省「人材サービス総合サイト」)。経験豊富な障害者専任のキャリアアドバイザーによる丁寧なヒアリングも高い評価をいただいており、アンケートによる総合的な満足度は95%にも上ります。一人ひとりのニーズに合った最適な求人情報のご紹介と、障害に対する深い知識や理解で、みなさまの転職・就職活動をサポートいたします。

    まとめ:障害者手帳の取得後は最大限に活用を

    障害者手帳の等級は、身体障害者手帳は1級から7級、精神障害者保健福祉手帳は1級から3級、療育手帳は4段階もしくは3段階に分かれており、手帳の種類によってそれぞれ異なります。等級によって税金の控除額や手当受給の有無などの違いが出てきます。

    障害者手帳の交付を受けることは、経済的な負担軽減だけでなく、転職・就職活動においてもさまざまなメリットがあります。障害者向けの求人に応募が可能となり、障害に理解のある専任スタッフによる転職支援サービスも活用できます。
    一方で、必ずしも障害者手帳を取得しなければならない、手帳を取得していることを企業に伝えなければならない、というわけではありません。手帳の取得、情報の開示はご自身の意向が大切です。選択肢を広げるためのツールのひとつとして、障害手帳について知っておくと良いでしょう。

    公開日:2023/8/9

    監修者:木田 正輝(きだ まさき)
    パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
    旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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