気分障害があっても仕事は続けられる?特性に合わせて自分らしくはたらく方法
気分障害のある方がはたらく場合、その特性が大きな壁として立ちはだかります。感情や気分が不安定なままだと「仕事が続けられないのでは……」「こんな自分はわがままなのだろうか?」と不安に感じませんか。
気分障害は自分の意志でコントロールできる障害ではありません。しっかりと治療を受け、ストレッサーとのうまい付き合い方と、障害特性に合う働き方を見つけることが大切です。
この記事では、気分障害があると仕事が続かないといわれる要因を踏まえ、より良くはたらく方法を模索していきます。気分障害と診断され、今の仕事が辛いと感じている方は、ぜひご一読ください。
目次
-
・気分障害とは?
- ・気分障害の特性
- ・気分障害の種類
- ・気分障害の支援方法
-
・気分障害と仕事の関連性
- ・気分障害があると仕事に支障が出る理由
- ・気分障害における休職・退職の要否
- ・休職期間の過ごし方
-
・気分障害で仕事が続かないときに見直すべき3つの視点
- ・障害との向き合い方
- ・職場の環境
- ・ワークスタイル
-
・気分障害の特性に適した仕事を見極めるセルフチェックポイント
- ・ペース配分を自分で決められるか
- ・柔軟な働き方ができるか
- ・他者との関わりが多過ぎないか
-
・気分障害と仕事の両立をサポートする支援制度・サービス
- ・自立支援医療制度
- ・障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)
- ・就労支援機関
- ・気分障害がある方の仕事探しは「dodaチャレンジ」
気分障害とは?
気分障害とひとくちにいっても、その症状はさまざまです。まずは気分障害の特性や種類、支援方法を知り、理解を深めていきましょう。
気分障害の特性
気分障害とは、過度な抑うつや高揚、もしくはその両方の感情がある状態の総称です。感情障害とも呼ばれ、自分の意志では喜怒哀楽のコントロールがうまくできません。気分の上がり下がりは誰にでもあることですが、それに伴う行動が身体的・社会的・仕事上の大きな支障になっている場合に気分障害と診断されます。
気分障害の種類
気分障害に分類されるのは、主に次のような精神疾患です。
障害の種類 | 主症状 |
---|---|
単極性障害(うつ病) | 重度かつ持続的な悲しみおよび喜び・興味の減退もしくは気分が過度に高揚する躁状態 |
双極性障害 ・双極I型障害:激しい躁状態 ・双極II型障害:軽い躁状態 |
抑うつ状態と躁状態を交互に繰り返す |
持続性気分障害 ・気分循環性障害:軽い抑うつ・躁状態の繰り返し ・気分変調症(持続性抑うつ障害):軽い抑うつの継続 ・慢性軽躁病:軽い躁状態の継続 |
2年以上に渡り比較的軽度かつ短期間の抑うつおよび躁状態が続く |
実際の臨床現場では、気分障害として診断が下りるのではなく、上記のような病名がつくケースが大半です。また、持続性気分障害の一つである気分循環性障害は、双極II型障害の前触れとして現れる場合もあります。
それぞれ程度の違いはあるものの、すべての障害で落ち込み、疲労感、無気力感、罪悪感、食欲減退または過食、不眠もしくは過眠、希死念慮などが主な症状です。気分障害があるとアルコール依存や薬物依存などを誘発しやすく、それに伴う身体的・精神的なリスクも問題視されています。
気分障害の支援方法
気分障害の治療には、薬物療法や精神療法が用いられます。精神療法の種類は、大きく分けて認知行動療法と対人関係療法の2つです。いずれも考え方や他者との関わり合い方の癖を改善し、ストレスとのより良い向き合い方を身に付けます。
気分障害と仕事の関連性
気分障害と診断された場合、気になるのは「これまでどおり仕事ができるのか」ということでしょう。ここからは、仕事の支障になると考えられるポイントと休職・退職の必要性のほか、休職期間の適切な過ごし方も併せてお伝えします。
気分障害があると仕事に支障が出る理由
気分障害があると、通常より疲れやすい「易疲労性」と、あらゆる意欲が減退する特性により、仕事のパフォーマンスに支障が出る恐れがあります。自分自身も気分の上下に翻弄されている状態なので、スケジュール通りの進行を妨げる要因になりかねません。
また、自分の意志とは関係なく頻繁に気分が浮き沈みする特性は、心身への大きな負担です。特性のコントロールは難しく、モチベーションの維持も困難です。
気分障害における休職・退職の要否
前提として、休職・退職したからといって、必ずしも気分障害が治るわけではありません。そのため、気分障害の治療に休職・退職は絶対条件ではなく、業務上に支障がなければ仕事を続けることは可能です。
ただし、気分障害を引き起こす要因として仕事にかかわる要素が関与しているなら、休職・退職も視野に入れて考えるほうがよいでしょう。また、気分障害の特性の出方によっては周囲から甘えやわがままと捉えられることも多く、無理してはたらき続けると自分をますます辛い状況に追い込むことになりかねません。
現在の自分の状態とストレスとの関係を踏まえ、職場の上司や人事担当者、主治医などと相談しながら、休職の要否を判断することが大切です。
休職期間の過ごし方
気分障害で休職している期間は、主に医療機関による治療に専念することになるでしょう。自分にとってのストレッサーや気分変調への適切な対処法を身に付けながら、通院・服薬せず日常生活が送れる寛解状態を目指します。
治療の際は、自己判断で通院・服薬を止めてはいけません。通院治療の場合でも、医師の指導・助言に従い定期的に受診することが、気分障害から回復する一番の近道です。
気分障害があると復職が怖くなることも多々見受けられますが、復帰前後のプロセスを押さえて、焦らず自分のペースで進めればスムーズに復帰しやすくなるでしょう。
気分障害のある方が仕事を続けるうえで大切な3つの視点
気分障害を抱えながら仕事をする場合や、既往歴のある方は、次の3つの視点を大切にしてください。
- 障害との向き合い方
- 職場の環境
- ワークスタイル
障害との向き合い方
気分障害の特性を否定するのではなく、正しい知識を身に付け、受け入れることが重要です。感情の波が激しいことは、決してわがままではありません。一番辛いのは自分自身であることを受け止め、特性も個性だと認めてあげてください。そのうえで、十分な休養を取り、ストレス対策を考えるのが、気分障害との最善の向き合い方だといえます。
また、食事や睡眠、運動などの生活習慣が回復のキーポイントです。心身ともに自分を大切にして、行動を改善してみてください。
職場の環境
気分障害のある方がはたらくにあたっては、職場における「合理的配慮」が欠かせません。合理的配慮とは、障害のある方が健常者と同じようにはたらくための特性に応じた環境調整のことであり、企業側の義務とされています。
適切な合理的配慮を得るためには、職場からの正しい理解が必要です。自ら障害特性を理解し、周囲に十分に説明したうえで求めるサポートを具体的に例示しておけば、互いにはたらきやすい関係性が構築できるでしょう。
ワークスタイル
気分障害と仕事を両立させたいなら、業務内容や勤務時間、労働環境などをより良くはたらけるスタイルに変更することも考えてみてください。余裕のないスケジューリングや長時間労働、出張・転勤が多いなどの負担が大きな仕事は避け、必要に応じて休憩・休暇が取れる働き方に変えるとよいでしょう。
また、症状が重度の場合は、休職や退職も検討しなければなりません。社会復帰の際は、試し出勤や復職支援プログラム、転職などさまざまな選択肢があるため、自分に合う道が見つかるはずです。
気分障害の特性に適した仕事を見極めるセルフチェックポイント
気分障害があり、自分に合う仕事かどうか見極めたいときは、以下3つのポイントを基準に考えてみてください。
- ペース配分を自分で決められるか
- 柔軟な働き方ができるか
- 他者との関わりが多過ぎないか
ペース配分を自分で決められるか
気分障害があると、急な体調不良や気分の上がり下がりで、業務進行の妨げになることも珍しくありません。そのため、業務量や作業スピードなどのペース配分がある程度自らの裁量で決められる仕事のほうが適しています。
例えば、在宅ワークやフリーランスなど自分のペースではたらける仕事なら、気分や状態に応じてうまく対応できるでしょう。
ただ、自分の裁量だと、逆にはたらき過ぎる原因にもなりかねません。あらかじめ就業や休憩などの時間をある程度定たうえ、家族からの声かけやタイマーの活用などの工夫で、適切なペース配分に気を付けることが大切です。
柔軟な働き方ができるか
気分障害があると、定期的な休憩と通院が不可欠です。また、急な体調悪化の恐れもあるため、臨機応変な対応が可能な働き方が適しています。
フレックスタイム制や時短勤務など柔軟な働き方が選べれば、気分が安定しやすいため、安心してはたらけるはずです。障害特性により長時間の労働が難しい場合は、時短勤務も検討してみるとよいでしょう。
他者との関わりが多過ぎないか
気分障害になる方は、元来の性格が真面目で繊細な人が多い傾向にあるため、過度に多い対人関係は大きなストレッサーになる可能性が否めません。
従って、接客業やサービス業より、事務職やライン作業、Web系技術職などの仕事のほうが向いています。人と多く関わる仕事ではなく、最低限の人間関係で済むほうがストレスなくはたらけるでしょう。
気分障害と仕事の両立をサポートする支援制度・サービス
気分障害があっても仕事が両立できるよう、次のような支援制度やサービスが用意されています。
- 自立支援医療制度
- 障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)
- 就労支援機関
自立支援医療制度
「自立支援医療制度」とは、一定の条件を満たす方の心身の障害にかかわる通院医療費の自己負担額が1割に減額される制度です。気分障害も対象であり、外来およびその投薬、デイケア・訪問看護の医療費負担が軽くなります。
なお自立支援医療制度は、障害者手帳を持っていなくても申請可能です。ただし、入院治療や自由診療、障害と直接関係ない疾患などの医療費は対象になりません。申請の際は、まず各自治体の障害福祉窓口に相談してください。
障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)
障害者手帳とは、障害があると認められた人が取得できる認定証を指します。気分障害などの精神疾患のある方には、精神障害者保険福祉手帳が交付されるケースが一般的です。
精神障害者保険福祉手帳では、症状と活動制限の程度によって1〜3級に区分され、等級に応じた自立・社会参加のための支援が受けられます。サービスの具体例として挙げられるのは、公共料金の割引や税金の控除、障害者雇用枠の求人への応募権などです。また障害者手帳があれば、生活福祉資金貸付制度も利用できます。
申請・認定の窓口は、自治体の役場の障害福祉支援にかかわる課です。取得を希望する方は、あらかじめ問い合わせておくとよいでしょう。
就労支援機関
気分障害のある方が就職や転職を目指すときは、障害者専門の就労支援機関が利用できます。障害がある方の就労をサポートする代表的な機関は、主に以下の2つです。
- ハローワークの障害者専門窓口
- 障害者支援に特化した転職・就職エージジェント
上記の機関はいずれも、障害特性に適した働き方や就職活動に関する相談、障害者雇用枠の求人の紹介を行っています。なかでも仕事探しの手厚いサポートを求めているなら、障害者専門の転職・就職エージェントがおすすめです。
障害者専門の転職・就職エージェントでは、豊富な経験・ノウハウを有する障害者雇用・キャリア形成のプロが専任のアドバイザーとして付きます。求人の紹介から就職活動、就職後まで一貫したサポートが受けられるため、定着率が高いのが特長です。
障害者専門の転職・就職エージェントの利用や障害者雇用枠の求人に応募する際は、障害者手帳が必要です。障害者手帳の取得者もしくは申請中の方は、ぜひ利用を検討してみてください。
気分障害がある方の仕事探しは「dodaチャレンジ」
気分障害があっても、十分な治療を受けて寛解し、周囲からの合理的配慮が得られれば問題なくはたらけます。ただし、今の仕事が心身の負担になっているのなら、休職もしくは退職していったん距離を置く選択も視野に入れてみてください。
また休職・退職からの復帰には、強い不安を覚えるかもしれません。しかし、就労支援サービスを活用すれば、今の自分に最適な仕事がきっと見つかるはずです。
気分障害とうまく付き合いながらはたらける仕事を見つけたいときは「dodaチャレンジ」におまかせください。障害者雇用枠や非公開求人などの豊富で幅広い求人から、適性や要望にぴったりの仕事を紹介します。就職活動から入社後の定着までワンストップのサポートをすべて無料で利用できるので、ぜひお気軽にご登録ください。
まずは、キャリアアドバイザーに転職相談を
電話orオンライン
でお気軽にご相談ください
転職について不安なことも
障害者雇用の知りたいことも
キャリアドバイザーが親身にお話をうかがいます
公開日:2024/10/30
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士