ナルコレプシーとは?症状・原因や仕事・職場との付き合い方を解説
日中に耐えられない眠気に襲われてしまう「ナルコレプシー」は、一般的には認知度の低い疾患です。それだけに、業務において周囲の理解・サポートが得づらく、どうすべきか分からないこともあるでしょう。そこで本記事では、ナルコレプシーがある人がどのように仕事と向き合えばいいか、詳しく解説します。
目次
ナルコレプシーとは
ナルコレプシー(Narcolepsy)とは、日中に強い眠気に繰り返し襲われる疾患です。ナルコレプシーについて、次のポイントから解説します。
- 耐えられない眠気を日中に感じる疾患
- 有病率はおよそ600人に1人(約0.16%)
- オレキシンの濃度が原因と考えられている
耐えられない眠気を日中に感じる疾患
ナルコレプシーは、十分に睡眠をとっているにも関わらず、起きている時間帯に耐えがたい眠気に襲われる疾患で、睡眠障害のなかの過眠症のひとつです。
ナルコ(Narco)は「眠り」、レプシー(Lepsie)は「発作」を意味し、1880年にフランスのジェリノー医師によって名付けられました。日本では「居眠り病」と呼ばれることもあり、とにかく自身でコントロールできない眠気が特徴です。
有病率はおよそ600人に1人(約0.16%)
日本人のナルコレプシー有病率は、およそ600人に1人(約0.16%)と考えられており、これは世界平均の2000人に1人(約0.05%)と比較して優位に高いといえる水準です。
一般的にナルコレプシーは大人よりも青少年、つまり10代から20代前半に多い疾患であり、14~16歳が発症のピークだといわれています。ナルコレプシーの極めて強い眠気は、日常生活はもちろん学業・仕事に支障をきたすケースが珍しくありません。
オレキシンの濃度が原因と考えられている
ナルコレプシーの原因は、はっきりとは判明していませんが、近年の研究によりナルコレプシー患者の「オレキシン」の分泌量が低いことが指摘されています。
オレキシンとは、簡単に言うと覚醒状態を維持するために必要な脳内物質であり、この濃度が低下することで眠気が生じます。脳の視床下部にある細胞の働きが低下すると、オレキシンを作り出す細胞の機能が低下すると考えられていますが、その根本的な原因は不明です。
ナルコレプシーの症状と仕事における困りごと
ナルコレプシーの代表的な症状は次のとおりです。仕事における困りごとと併せて見ていきましょう。
- 眠気
- 情動脱力発作
- 睡眠障害
眠気
ナルコレプシーの代表的な症状が強烈な眠気で、起床時のさまざまな場面で耐えられないほどの眠気に襲われます。
食事中や歩行時だけではなく、例えば社内でのミーティング中や取引先との商談中など、時刻を問わず眠りに落ちてしまうことが特徴です。仕事の大切な場面でもこの症状が出るため、社会生活に多大な悪影響が出かねません。
情動脱力発作
喜怒哀楽などの感情の高まりがきっかけとなり、筋力が突然低下する「情動脱力発作」も起きることがあります。
例えば、笑ったときに腰や膝の力が抜けて体勢が崩れたり、手に持っている物を落としてしまったりするなどです。発作の時間は1〜2秒程度がほとんどで、長くても数分で回復することが多いですが、ビジネス現場において商談相手が驚くといった悪影響が懸念されます。
睡眠障害
起きているときに強烈な眠気に襲われる一方で、ナルコレプシーがある人は睡眠時に途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」が多い傾向があります。
長時間まとまった睡眠を取ることが難しいため、目覚めてもすっきりした感覚がなく、起きているときの眠気が悪化してしまいます。業務の遂行には適切な睡眠が欠かせませんが、それが不十分なため業務パフォーマンスにも悪影響が出るのです。
ナルコレプシーがある人が仕事と付き合うための対処法
先ほど紹介したような症状に悩まされている場合は、現在の仕事を続けるために、まずは次のような対策を取る必要があります。
- 医師の診断を受ける
- 疾患について職場に伝える
- 働き方への配慮を求める
医師の診断を受ける
ナルコレプシーは「疾患」なので、自助努力での改善には限界があります。そのため、必ず医師の診断と治療を受けましょう。また、後述するような職場での配慮を求める場合にも、医師の診断書は必須です。
ナルコレプシーへの理解はまだ進んでいないのが現状で、周囲に「怠けている」と誤解されてしまうこともあるため、医師の診断を受けて疾患として証明することが大切です。ちなみにナルコレプシーの治療方法には、生活習慣を改善する「非薬物療法」と、覚醒状態を強める「薬物療法」の2種類があります。
疾患について職場に伝える
ナルコレプシーの眠気は、場面や状況に関わらず襲ってくるため、業務や会議のときに眠ってしまうことがあります。しかし、ナルコレプシーは一般的に認知度が低い疾患なので、書類に要点をまとめたり医療機関のパンフレットを利用したりして、職場に伝えましょう。医師の診断書も合わせて提出することで、仕事内容や働き方などへの配慮も得やすくなります。
働き方への配慮を求める
ナルコレプシーがある人が仕事と付き合うためには、職場で働き方の配慮を求めることが欠かせません。例えば、自動車の運転・高所作業機械作業などの業務は、睡眠発作の可能性があることから危険性が高いため、別の業務を割り当ててもらう必要があるでしょう。また、例えば午前と午後に30分ずつの休憩を取るなど、変則的な休憩時間を認めてもらうのも効果的です。
ナルコレプシーがある人に向いている仕事
ナルコレプシーがある人は、まず治療を続けながら、現職で配慮を受けることが大切です。しかしそれが難しい場合は、ナルコレプシーがある人に向いている、デスクワーク関連の職種への転職を検討してみましょう。
営業職や接客業のように、不特定多数の相手と関わる必要がある職種の場合は、身体的・精神的な負担が大きいうえに、ナルコレプシーの症状に対する理解が得づらい傾向があります。そこで次のような、一人で課題に取り組むことが多い職種が向いていると考えられます。
- 事務職
- データ入力
- ITエンジニア
- Webデザイン
- Webライター
- イラストレーター
また上記のような職種は、在宅勤務やフリーランスという形で、自宅ではたらきやすいこともポイントです。職種による違いはありますが、オフィス通勤ではたらく場合と比べて、時間の融通がききやすいため、ナルコレプシーの症状と付き合いながらはたらける可能性が高まるでしょう。
ナルコレプシーに悩む方におすすめの転職支援機関・サービス
現職でナルコレプシーの症状と付き合いながらはたらくのが難しい場合は、次のような転職支援機関・サービスを利用して、転職を検討してみましょう。
- ハローワークの障害者向け相談窓口
- 就労移行支援事業所
- 障害者向けの転職エージェント
ハローワークの障害者向け相談窓口
全国のハローワークには、障害もしくは何らかの疾患がある方向けの相談窓口が設けられています。障害者雇用に関する専門知識がある担当者が対応してくれるため、ナルコレプシーの症状や体調に合う求人を紹介してもらえるでしょう。また、履歴書作成や面接対策など、転職活動に必要なサポートが受けられることも魅力です。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、はたらくための知識やスキルの習得に加えて、就労に向けた総合的なサポートを求職者に提供している機関です。転職後も「定着支援」として、困りごとや悩みの相談ができるので、ナルコレプシーの症状に悩む方でも安心して利用しやすいでしょう。
ただし、就労移行支援事業所では求人の紹介は行っていないため、転職活動はハローワークのような専門の機関で行う必要があります。
障害者向けの転職エージェント
障害者向けの転職エージェントは、障害者の就労に特化したサービスで、障害・疾患の症状や自身の適性に合う求人の紹介が受けられます。キャリアアドバイザーに無料で相談して、ナルコレプシーの特性を踏まえた「はたらきやすい職場」について知ることができるでしょう。
さらに、就職活動で欠かせない履歴書や面接などの対策サポートも受けられるので、安心して就職活動ができることが魅力です。
ナルコレプシーがある方の転職には「dodaチャレンジ」がおすすめ!
ナルコレプシーは、眠気・情動脱力発作・睡眠障害などの症状が出るため、仕事に大きな支障が出てしまうことがあります。まずは医師の診断を受けたうえで、職場に伝えて仕事内容・働き方への配慮を受けましょう。それが難しい場合は、ナルコレプシーの症状と付き合いやすい仕事への転職がおすすめです。
ナルコレプシーがある方の転職には、パーソルダイバースの転職支援サービス「dodaチャレンジ」がおすすめです。dodaチャレンジでは、さまざまな障害や疾患のある方が安心してはたらける企業の求人を紹介しています。キャリアアドバイザーへの相談も無料で行えるので、この機会にぜひご相談ください。
まずは、キャリアアドバイザーに転職相談を
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転職について不安なことも
障害者雇用の知りたいことも
キャリアドバイザーが親身にお話をうかがいます
公開日:2024/12/25
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士