発達障害のある方が在宅ワークではたらくメリットとは?働き方の工夫や注意点も解説

在宅ワーク中の人

発達障害のある方は、日常生活や社会生活において困難を感じる場面が多く、仕事や職場に関する悩みを抱えることも珍しくありません。従来のオフィス環境ではたらくことが難しい場合の選択肢として、「在宅ワーク」が注目されています。

在宅ワークでは、はたらく環境や休憩の取り方を比較的フレキシブルに設定しやすいので、発達障害のある方も安心してはたらきやすくなるでしょう。そこで本記事では、発達障害のある方が在宅ワークではたらくメリット・デメリットや働き方の工夫について解説します。

在宅ワークではたらく発達障害の方が増えている理由・背景

近年では、在宅ワークではたらく発達障害の方が増えています。その理由について、次の2つのポイントから解説します。

  • 在宅ワークを導入する企業が増えている
  • 在宅ワークは発達障害者の方に向いている

在宅ワークを導入する企業が増えている

チャットツールやビデオ会議システムなど、IT技術の発達と普及により、オフィスではなく自宅でもはたらく環境を整えやすくなっています。また、多様な働き方を求める社会的なニーズや、新型コロナウイルス感染症の流行などにより、在宅ワークが急速に普及しました。

総務省が発表した「令和5年版 情報通信白書」によると、2020年度よりテレワーク導入率が急激に上昇し、2022年度では50%を超えています。

在宅ワークは発達障害者の方に向いている

発達障害の特性は人それぞれであり、また発達障害そのものに対する一般的な理解度も低いため、従来のオフィス勤務ではたらくことが困難なケースは珍しくありませんでした。

しかし在宅ワークの普及により、これまで出勤が前提である職場での就労が難しかった場合でも、チャレンジしやすい可能性が出てきました。在宅ワークの場合は、ラッシュアワー時の通勤によるストレスを軽減したり、自分が落ち着ける環境ではたらきやすかったりすることから、在宅ワークは発達障害のある方にも向いています。

発達障害のある方が在宅勤務・在宅ワークではたらくメリットについては、次の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみて下さい。

発達障害のある人が在宅ワークをするメリット

発達障害のある人が在宅ワークをするメリットについて、発達障害の種類ごとに詳しく解説します。

ADHDがある人の場合

ADHDがある人は注意力が散漫になりやすいため、一般的なオフィスでは業務に集中しづらい可能性があります。しかし在宅ワークの場合は、業務に関係のないものをデスクから遠ざけたり、ノイズキャンセリングヘッドホンなどで外部からの刺激を遮断したりして、自分で対処しやすいです。

また、在宅ワークは自宅でひとりで行うため、他人に話しかけられて気が散ってしまうことも少なくなります。コミュニケーションがチャットツールのようにテキスト主体の場合は、タスクや指示をあとから確認できるので見落としも防ぎやすいでしょう。

ASDがある人の場合

ASDの障害特性として「感覚過敏」が挙げられますが、これにより大勢の他人と接触する通勤や職場環境などで、大きなストレスを感じてしまいます。また、肌の感覚が敏感な場合は衣服の形状や素材もストレスになりますが、オフィス勤務の場合は衣服の選択肢が限られてしまいがちです。

在宅ワークでは、自室で自分のためのはたらく環境が整えられるので、ストレスを軽減してはたらきやすくなります。さらに、チャットツールなどの活用で対面での会話によるストレスも軽減できるため、指示の誤解や行き違いも防げることが魅力です。

LD/SLDがある人の場合

LD/SLDがある人は、「読む」「書く」「計算する」「推論する」のいずれかに困難を抱えていますが、これらは現代のITツールで改善できるケースが多いです。しかし、一般的なオフィスでITツールを導入しようとすると、理解や配慮の不足などから難しいことも珍しくありません。

在宅ワークであれば、例えば文字の読み上げツールや文字起こしツール、AIなどを活用して業務のサポートを得ることができます。また、LD/SLDの人は障害特性が影響するタスクに時間がかかる傾向がありますが、在宅ワークであればスケジュールを柔軟に最適化しやすくなるでしょう。

発達障害のある人が在宅ワークをするデメリット

発達障害のある人が在宅ワークをするデメリットについて、発達障害の種類ごとに詳しく解説します。

ADHDがある人の場合

在宅ワークの環境はインターネットやテレビなどの「誘惑」が多いため、ADHDがある人は特に業務の合間に気が散ってしまいやすい傾向があります。タスクを後回しにする「先延ばし癖」があるため、スケジュール管理に失敗して成果が出ないことも珍しくありません。また、外部とのコミュニケーション機会の減少により、孤立感や閉塞感が出てしまう可能性もあります。

ASDがある人の場合

ASDがある人は一般的に「こだわり」が強いため、スケジュール・タスク管理を行う上司が身近にいない環境では、仕事に時間をかけすぎて納期に間に合わなくなることがあります。

また、ASDの障害特性によりコミュニケーションが苦手な傾向がありますが、在宅ワークによる対面でのコミュニケーション機会の現象により、社会とのつながりを持つことがより困難になってしまうかもしれません。

LD/SLDがある人の場合

LD/SLDがある人の場合は、タスクや時間の管理に課題を持つ傾向があるため、在宅ワークで業務をこなすためにはITシステムの活用が欠かせません。また、ディスレクシア(読字障害)やディスグラフィア(書字表出障害)がある場合は、在宅ワークのチャットツールでのコミュニケーションに支障が出てしまう可能性があります。

発達障害のある人が在宅ワークをするための工夫

在宅ワーク環境

発達障害のある人が在宅ワークを行う際は、次のポイントを意識することで、よりはたらきやすくなるでしょう。

ADHDがある人の場合

ADHDがある人の場合は、とにかくデスク周りの環境づくりが大切なので、仕事とプライベートを明確に分けて業務に集中できるようにすることが大切です。

例えば、デスク周りから仕事以外のものを物理的に遠ざけるだけではなく、ブラウザやコミュニケーションツールのアカウントを公私で分けるなどです。また、タスク管理ツールでタスクの可視化およびリマインドを行うことで、抜け漏れや遅延を減らすこともできます。

ASDがある人の場合

ASDがある人は感覚が過敏な傾向があるため、「自分が何に敏感か」を把握して、不快な刺激を減らすことが大切です。例えば、光や騒音に敏感なのであれば、カーテンを閉めたりノイズキャンセリングヘッドホンを使用したりするなどです。

また、イレギュラー発生時にパニックを起こすこともあるため、タスクの時間割を作成して余剰時間を作っておくなどの工夫により、落ち着いて対応しやすくなるでしょう。

LD/SLDがある人の場合

LD/SLDの障害特性はさまざまなので、「何が苦手か」を把握したうえで、それを補うためのITシステムの導入が必要です。

ただし、ITシステムには情報漏洩のリスクもあるため、職場のIT部門やセキュリティ部門とも相談し、コンプライアンスの範囲内で利用することを意識しましょう。文字によるコミュニケーションが難しい場合は、電話やビデオ会議などの方法を活用し、積極的にコミュニケーションを取るようにすることが大切です。

発達障害のある人が在宅ワークをする際の注意点

発達障害のある人が在宅ワークをする際は、次のポイントに注意しましょう。

  • 仕事とプライベートを明確に分ける
  • 在宅ワークに適した職種を選ぶ
  • 各種支援機関や転職サービスで仕事を探す

仕事とプライベートを明確に分ける

過ごしやすい自宅ではたらけるのは在宅ワークの大きなメリットですが、公私を混同すると仕事が進まなくなってしまいます。

オフィスとは異なり、在宅ワークでは一人で作業することが多いため、強い自己管理能力が必要になります。障害特性によっては集中力に課題があるため、前述したように娯楽のような誘惑がない環境づくりや時間・スケジュールの管理が大切です。

在宅ワークに適した職種を選ぶ

在宅ワークは自宅でできる業務でなければ成立しないため、在宅ではたらける仕事を目指して転職する場合は、職種の選び方が大切です。例えば次のような職種は、パソコンを使って一人で課題に取り組む業務が主体なので、発達障害がある方が在宅ワークではたらきやすいでしょう。

  • 事務職
  • データ入力
  • テレアポ
  • ライター
  • デザイナー
  • プログラマー
  • Webエンジニア

ただし、職種によっては高い集中力や顧客とのコミュニケーションが求められるため、自身の障害特性に合わせて選ぶことが大切です。

各種支援機関や転職サービスで仕事を探す

近年では障害者雇用率の引き上げなどにより、発達障害のある方を対象とした障害者雇用も増えています。ただし、自身の障害特性や適性に合っていて、さらに在宅ワーク対応の仕事を自身で見つけるのはハードルが高いかもしれません。そこで、各種支援機関や転職サービスを活用してするのがおすすめです。

発達障害のある方が活用できる就職・転職サービス

発達障害がある方は、次のような就職・転職サービスを活用することで、在宅ワークに対応した「はたらきやすい環境」が見つかるでしょう。

  • 発達障害者支援センター
  • 就労移行支援事業所
  • 障害者雇用専門の転職エージェント

発達障害者支援センター

発達障害者支援センター」は、発達障害のある方を対象として、日常生活や仕事のサポートを提供する機関です。2024年時点で全国に90カ所前後あり、地方自治体・社会福祉法人・NPO法人などが運営しています。障害者手帳は必須ではなく、ハローワークとの連携もあるため、就職・転職について気軽に相談できるでしょう。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、はたらくための知識やスキルの習得、就職・転職活動のサポートを提供している機関です。転職後も定着支援としてスタッフと定期的に連絡ができるため、困ったことや悩みがある場合の精神的なサポートも得やすいことが魅力です。

なお、就労移行支援事業所では求人の紹介は行っていないため、転職活動は別途ハローワークなどで行う必要があります。

障害者雇用専門の転職エージェント

障害者雇用専門の転職エージェントは、障害者の就労に特化したサービスで、自身の希望や適性に合う求人の紹介が受けられます。キャリアアドバイザーに無料で相談し、自身の障害特性に合わせた適切な転職先について知ることが可能です。また、転職活動で欠かせない履歴書や面接などの対策サポートも受けられるので、安心して就職活動ができるでしょう。

発達障害のある方が在宅ワークではたらくにはdodaチャレンジがおすすめ!

在宅ワークをするプログラマ

発達障害のある方が在宅ワークではたらくことには、自身の障害特性に合わせた環境を整えて、ストレスを軽減できるというメリットがあります。一方で、スケジュールやタスクの管理などの管理には注意が必要です。在宅ワークではたらきやすい職種として、事務職やデータ入力、プログラマーなどが向いています。

発達障害がある方が在宅ワークに対応した仕事への転職を目指すときは、パーソルダイバースの転職支援サービス「dodaチャレンジ」がおすすめです。dodaチャレンジの転職支援サービスでは、発達障害について専門知識を持ったキャリアアドバイザーが一人ひとりの就職・転職を支援します。あなたに合った求人情報を探してご紹介するほか、面接・ 応募書類作成のサポートや面接対策、個別のご相談なども行いますので、安心して転職活動に臨めるでしょう。

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公開日:2025/2/28

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア開発支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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