HSPの人に向いている仕事とは?適職の探し方やおすすめの職種を紹介
「HSP(Highly Sensitive Person)」の人はその繊細さゆえに、仕事に困り事を抱えているケースが珍しくありません。しかし、「HSPとは何か」を知ることで自身に適した仕事を探しやすくなり、精神的な負担を軽減しながらはたらけるようになるでしょう。そこで本記事では、HSPの特徴や向いている仕事、その探し方などについて詳しく解説します。
HSPの特徴
HSPは「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の略称で、公益社団法人「日本心理学会」の定義によると、「感受性が非常に高い人」「繊細で生きづらい人」を指します。HSP自体は、精神的な疾患や障害として診断されるものではありませんが、その気質ゆえに生きづらさやはたらきづらさを感じてしまうことが多いです。
そのため、HSPの人は自分に合った仕事を探すことが大切です。適職を探すためにも、まずはHSPの代表的な特徴である「DOES(ダズ)」について理解しておきましょう。
D(Depth of Processing | 深く考える |
O(Overstimulation) | 刺激を受けやすい |
E(Empathy and emotional responsiveness) | 共感力や感情の反応が強い |
S(Sensitivity to Subtleties) | 些細な刺激を察知する |
D:深く考える
HSPの人は、物事を深く考えてから行動することが多いです。「一を聞いて十を知る」というように、少ない情報からさまざまな物事を想像し、多角的な観点から考えることができます。そのため、何かを学習するときは深く掘り下げて豊富な知識が得られるようになる一方で、表面的な会話を好まない傾向があります。
O:刺激を受けやすい
HSPの人は外部からの刺激に敏感で疲れやすく、人混みや大きな物音が苦手なことも特徴です。また、他人の言動に対しても繊細であるため、過度に気にして傷ついてしまい、そのことを忘れられないケースが珍しくありません。
そのため、友人や仲間との時間を楽しいと感じても、気疲れしてしまいがちです。一方で、音楽や絵画など芸術に触れると、持ち前の繊細さから深く感動しやすいといえます。
E:共感力や感情の反応が強い
HSPの人は共感力や感情の反応が強く、これは言い換えれば「自他の境界線」が薄く、他者の感情の影響を受けやすいことを意味します。
例えば、他人が怒られているところを見ると、あたかも自分が怒られているかのように感じて、ネガティブな気持ちになってしまうでしょう。また、他人の仕草や表情・視線などにも敏感で、その人の機嫌や考えていることを察する能力にも長けています。
S:些細な刺激を察知する
HSPの人はさまざまな感覚が敏感なので、身のまわりの環境変化にも気付きやすい傾向があります。例えば、照明や日光などの眩しさが気になったり、電子機器・家電製品や時計などの音が気になったりして、作業に集中できなくなってしまうなどです。
またカフェインや食品添加物、衣類の素材やタグなどの刺激を不快に感じることもあり、日常生活や社会生活でストレスを感じてしまうことが多いです。なお、HSPのこうした特徴については、次の記事も併せてご参照ください。
HSPの「強み」を活かせる仕事
前述した特徴を踏まえると、HSPの人の長所は「他者への思いやり」「危機管理能力」「想像力」「丁寧さ」などにあります。そのため、HSPの人には次のような特徴がある仕事に向いていると考えられます。
- 他人の気持ちに寄り添う仕事
- 感受性や想像力を活かせる仕事
- 正確な作業が求められる仕事
- 対人関係や対面業務が少ない仕事
他人の気持ちに寄り添う仕事
HSPの人は、心の動きに敏感で共感力が高いため、他者の気持ちに寄り添ったり悩みを解決したりする仕事が向いています。例えば、心理カウンセラーやキャリアアドバイザーのほかに、マッサージ師・エステティシャン・セラピストなどが適職であるといえるでしょう。
ただし、他人の心と向き合う仕事の場合は、その強すぎる共感力で自分自身が疲弊してしまう可能性があるので注意が必要です。
感受性や想像力を活かせる仕事
感受性や想像力が優れているHSPの人は、クリエイティブな仕事にも向いています。例えばデザイナーやイラストレーター、画家やフォトグラファーのような仕事は、HSPの特性を活かして実力を発揮しやすいです。独自の視点から得られる世界観やアイデアを表現することで、ほかのクリエイターとの差別化を図り、優れた作品を生み出せる可能性があります。
正確な作業が求められる仕事
HSPの人は深い思考をもとに、慎重に物事を進めることが得意なので、緻密な作業の積み重ねが求められる仕事にも向いています。例えば、事務職や経理のような数字を扱う仕事や、ITエンジニアのように論理的思考が欠かせない仕事などです。
また、これらの仕事は在宅勤務が可能だったり、自分のペースでタスクに取り組みやすかったりするため、刺激の少ない環境ではたらきたい人にも適職だといえます。
対人関係や対面業務が少ない仕事
HSPの人は、他人との付き合いが苦手もしくはストレスを感じやすいため、対面業務が少ない仕事や人間以外の対象と向き合う仕事にも適しています。
例えば、軽作業・清掃員・司書などコミュニケーションの機会が少ない仕事や、トリマー・飼育員・ペットトレーナーといった動物と向き合う仕事は、他者を気にせずにはたらきやすいです。また前述したITエンジニアも、職種にもよりますが基本的に対人関係が比較的少ない傾向があるため、HSPの人に向いているでしょう。
HSPの人に向いていない仕事
HSPの人は環境変化や競争など、外部の刺激がストレスになりやすい傾向があるため、次のような仕事は向いていません。
- 競争やノルマが厳しい仕事
- 臨機応変な対応が求められる仕事
- 他者との接触が多い仕事
競争やノルマが厳しい仕事
HSPの人は、外部の環境や刺激の影響を受けやすいため、競争が激しい仕事やノルマが厳しい仕事は向いていません。例えば、保険会社や不動産会社などの営業職は、いわゆる「体育会系」の雰囲気が強く、競争やノルマに押しつぶされてしまう恐れがあるため、避けるほうがいいでしょう。
臨機応変な対応が求められる仕事
HSPの人は、慎重な検討を重ねたうえで行動に移すことを好み、臨機応変な対応は苦手な傾向があります。そのため、マルチタスクで素早く対応したり、さまざまタスクを一気に与えられたりするような環境は、HSPの人にとっては大きな苦痛となるでしょう。例えば、飲食店のようなサービス業は、イレギュラーな事態が発生しやすいため、特に向いていない仕事だといえます。
他者との接触が多い仕事
他者との接触が多く、コミュニケーションが求められる機会が多い仕事は、HSPの人が苦痛を感じてしまいがちです。例えば、ホテル・レストラン・店舗のスタッフや、看護師・介護士などの職種が該当します。HSPの人は相手の態度や言葉遣いに敏感なため、対人業務では「機嫌を損ねてしまった」「対応がまずかった」など、不安によるストレスが多くなってしまうのです。
HSPの人が自分に合う仕事を探すコツ
これまでに解説した点を踏まえて、HSPの人が「自分に合う仕事」を探すコツを検討してみましょう。次のようなポイントを意識することが大切です。
- 自身の特性や強みを理解する
- 苦手な環境を避ける
- はたらきやすい職場環境を選ぶ
自身の特性や強みを理解する
転職を考える際は、まず自身の「特性」や「強み」を理解することが大切です。これまでHSPの人の特徴や向いている仕事について解説してきましたが、HSPの特性は人それぞれ異なります。また、HSPの人は「自己評価」が低くなりがちな傾向があるため、信頼できる友人や家族などの意見を求めることで、自分の意外な強みが見つかるかもしれません。
苦手な環境を避ける
繰り返しになりますが、HSPの人は外部からの刺激に敏感なため、自分に合う環境ではたらける職場を探すことが大切です。無理して我慢しながらはたらき続けると、ストレスからうつ病や適応障害などを発症してしまう恐れがあります。騒音が苦手なら静かな環境ではたらける仕事、人付き合いが苦手ならコミュニケーションが少ない仕事を探すなどの工夫が必要です。
はたらきやすい職場環境を選ぶ
職場環境を慎重に選び、環境要因の影響を減らすことも大切です。「人間関係」は特に重要で、他人の感情と自身との関わりを過度に意識するという性質上、人と人とのつながりが円満であるに越したことはありません。また、環境が頻繁に変わることで不安要素が増えてしまうため、転勤や異動などが少なく同じ環境ではたらき続けやすい職場が無難です。
HSPの特徴を強みに変えて理想の仕事探しを!
HSPの特徴として、「深く考える」「共感力が強い」「刺激を受けやすい」などが挙げられます。そのため、感受性や想像力を活かせる仕事や、正確な作業が求められる仕事がHSPの人に向いているといえます。ただし、対人関係でストレスを感じることが多いため、対面業務が少ない仕事を選ぶのが無難です。HSPの特徴を長所や強みに変えて、無理せず有意義にはたらける仕事を探しましょう。
また、HSPの人は長期にわたる仕事上の不安や困りごとで、うつ病・適応障害・パニック障害などの精神疾患を発症してしまうことがあります。HSPがきっかけで精神疾患を発症したり、現在の職場環境で悩みごとが多かったりする場合は、まずは医療機関や職場に相談してみてください。そのうえで現職ではたらき続けるのが困難になるなど、障害者雇用での転職を検討される場合は「dodaチャレンジ」にご相談ください。
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まずは、キャリアアドバイザーに転職相談を

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公開日:2025/5/1
- 監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
- 上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■障害者職業生活相談員