失語症のある方が仕事を探すには?失語症の種類と、無理なくはたらく方法
失語症は「聞く」「話す」「読む」「書く」などの言語機能に生じる障害です。失語症がある人は、コミュニケーションに困難が出るため、仕事での困り事を抱えがちになります。
安心してはたらきつづけるためには、失語症の症状への理解が得られる職場を探すことが大切です。そこで本記事では、失語症の症状や仕事での困り事、無理なくはたらくための職場探しの方法などについて詳しく解説します。
失語症について
まずは失語症について、次のポイントから解説します。
- 失語症とは
- 失語症で障害者手帳を取得できる
- 失語症の種類
失語症とは
「失語症」は言語障害のひとつで、「聞く」「話す」「読む」「書く」といった、言葉に関する機能・能力に支障が生じている状態を指します。失語症は先天性のものではなく、交通事故・転倒などによる脳の外傷や、脳梗塞・脳出血・脳腫瘍などの脳疾患などによって、大脳の言語をつかさどる部分が損傷して発生することが特徴です。
ちなみに、先天的に読み書きが困難な状態を「ディスレクシア」と呼び、こちらは学習障害(LD)のひとつです。
失語症で障害者手帳を取得できる
厚生労働省の資料「失語障害がある場合の認定方法について」および「身体障害者障害程度等級表」によると、失語症がある場合は障害者手帳の交付対象となります。
障害の内容や症状によって身体障害の3級・4級に該当するか、高次脳機能障害として精神障害者保健福祉手帳の交付対象となるため、必要に応じてお住まいの自治体の窓口に相談してみましょう。なお、障害者手帳の等級やそれぞれの違いについては、次の記事も併せてご参照ください。
失語症の種類
失語症には次のような種類があり、症状も大きく異なります。
失名詞失語(健忘失語) | 会話はスムーズにできるが、人の名前や物の名称などの名詞が出づらい |
ウェルニッケ失語(感覚性失語) | 話す能力は問題ないが聞く能力が低下しており、相手の言葉をよく理解できない |
ブローカ失語(運動性失語) | 話す能力が著しく低下し、単語・短文での会話や言い間違いが多い |
全失語 | 「聞く」「話す」「読む」「書く」すべてに障害がある最も重度な失語症 |
失語症の主な症状
失語症は「聞く」「話す」「読む」「書く」といった幅広い場面で、次のような症状が出る障害です。
- 喚語(かんご)
- 錯語(さくご)
- 新造語
- 復唱障害
- ジャーゴン
喚語(かんご)
「喚語(かんご)」は、伝えたいことがあるにも関わらず、その内容が言葉として出てこない状態です。失語症のなかで最も多い症状であり、どの種類の失語症でも現れやすくなっています。
錯語(さくご)
「錯語(さくご)」は、自分が言いたいこととは別の言葉が出てしまう症状です。完全に別の言葉を言ってしまう「語性錯語」や、言葉の一部だけ間違う「音韻性錯語」などの種類があります。例えば、「猫」と言いたいのに「犬」という言葉が出たり、「めろん」を「めとん」と言ってしまったりするなどです。
新造語
「新造語」は錯語と似ていますが、こちらは意図する言葉が推測できないほど音が変化してしまう状態で、失語症に多い症状です。例えば、「ありがとう」と言おうとしたにも関わらず、「いわしんぐ」と言ってしまうなどです。
復唱障害
「復唱障害」は、相手が言った言葉を復唱するのが難しい状態を指します。例えば、相手が「鳥」という単語の復唱を求めたにも関わらず、「オオカミ」と言ってしまうなどです。
ジャーゴン
「ジャーゴン」は、言葉を流暢に話すこと自体はできますが、錯語や新造語が多く混ざってしまう症状です。自分では分かっていることを言葉として表現できないため、何を伝えたいかを相手が理解できなくなってしまいます。
失語症のある方が直面する「仕事での困り事」
何らかの原因で後天的に失語症を発症した方が直面する仕事での困り事として、主に次のようなものが挙げられます。
- 正確なコミュニケーションができない
- フラストレーションを感じてしまう
- 不安やストレスが精神の不調につながる
正確なコミュニケーションができない
失語症がある人にとって最大の困り事が、仕事のさまざまな場面でコミュニケーションに困難が生じることです。自身の意見やアイデアを上手く伝えられなかったり、誤った言葉で周囲に誤解や不快感を与えたりしてしまいます。これにより、後述するような精神的な困り事も生じてしまうのです。
フラストレーションを感じてしまう
失語症は、自分の頭の中では言いたいことや伝えたいことが分かっているのに、それを言葉としてアウトプットできない障害です。だからこそ、相手に伝わらないというフラストレーションが生じ、はたらくうえで極めて大きなストレスになってしまいます。
不安やストレスが精神の不調につながる
失語症でコミュニケーションがうまく取れないことにより、対人関係に不安を抱えたり自己肯定感が低下したりして、抑うつ症状が出ることもあります。それが悪化することで、うつ病や不安障害などの二次障害につながってしまうケースもあるのです。
失語症のある方が仕事をするためのポイント
現在就労中の方が後天的に失語症を発症してしまった場合、無理なくはたらき続けるためには、次のようなポイントを意識することが大切です。
- 無理せず休職してリハビリを行う
- 職場に合理的配慮を求める
- 転職時にはたらきやすい職種を選ぶ
無理せず休職してリハビリを行う
前述したように、失語症のある人は仕事で精神的なストレスを感じることが多いため、まずは無理せず休職することが大切です。専門家のもとで言語リハビリテーションを受ければ、言語機能を回復させることができます。失語症の症状が落ち着くまで休職し、焦らずに治療と回復に専念することで、復職できる可能性があります。
職場に合理的配慮を求める
失語症の方は、前述したような言語機能のさまざまな症状が出るため、失語症発症前と同じようにはたらき続けるのが難しいケースもあります。そこで職場に対して、「合理的配慮」の提供を申し入れることを検討してみましょう。
例えば文字でコミュニケーションが取れるようにしたり、会話をサポートできるツール・アプリの使用を認めてもらったりするなどです。それが難しい場合は、後述する転職支援サービスなどを活用し、はたらきやすい環境を探すのがおすすめです。
転職時にはたらきやすい職種を選ぶ
現職の継続や復職が難しい場合は、転職を検討してみましょう。転職時には、失語症があってもはたらきやすい環境と、現職の経験・スキルが活かせる仕事を探すことが重要です。次のような職種は、コミュニケーションの機会が少ないため失語症の方に向いているといえます。
軽作業 | 工場などでの仕分け・検品・梱包など |
事務職全般 | 総務・経理・OA事務・データ入力など |
Web系制作職 | Webデザイナー・Webマーケターなど |
IT技術職 | プログラマー・Webエンジニアなど |
失語症の方には、対人業務や細かな意思疎通が求められず、基本的に一人でタスクに取り組める業務が向いています。ただし、事務職であっても電話や来客対応を要する業務は向いておらず、IT分野でもシステムエンジニアはコミュニケーション機会が多いため避けるほうが無難です。主治医のアドバイスなども参考にすることで、自身に適した仕事が見つかりやすくなります。
失語症のある方が受けられる就労支援サービス
失語症がありながらも再就職・転職で社会復帰を目指す方や、よりはたらきやすい環境を探したい方に向けて、次のような就労支援サービスが提供されています。
- ハローワークの障害者関連窓口
- 就労移行支援事業所
- 障害者向けの転職エージェント
ハローワークの障害者関連窓口
全国のハローワークには、障害がある人のための「障害者関連窓口」が設けられており、障害のある方が就労に関するさまざまな相談ができます。専門知識がある担当者の対応が受けられるため、失語症の障害特性や症状に合う求人が見つかりやすいことが魅力です。履歴書作成や面接対策など、転職活動に必要なサポートも得られます。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、はたらくための知識やスキルの習得に加えて、就職・転職活動のサポートを障害のある求職者に提供している機関です。就職・転職後も「定着支援」として困りごとや悩みの相談ができるので、失語症の症状や仕事との付き合い方にお悩みの方も安心して利用できます。
ただし、就労移行支援事業所では求人紹介は受けられないため、転職活動はハローワークや転職エージェントなどを利用する必要があります。
障害者向けの転職エージェント
失語症で障害者手帳を取得された方は、障害者向けの転職エージェントが利用できます。失語症をはじめとする、さまざまな障害に関する専門知識と豊富なサポート実績があるキャリアアドバイザーから、あなたの希望に合った障害者雇用求人を紹介してもらえます。一人ひとりの障害特性や症状、個人の特性に合う働き方の提案が受けられるので、安心して転職活動ができるでしょう。
失語症のある方の就職・転職支援は「dodaチャレンジ」へ
失語症のある方は、仕事においてコミュニケーションの困難に直面し、それが精神的ストレスとなって二次障害につながることがあります。そのため、まずは無理をせずにリハビリに専念したうえで、職場に合理的配慮を申し入れてみましょう。それが難しい場合は、障害者向けの転職エージェントを活用して、はたらきやすい職場を探してみるのがおすすめです。
転職先を探すときは、失語症への理解が適切に得られる職場が見つかるかどうか不安があるでしょう。パーソルダイバースの転職支援サービス「dodaチャレンジ」では、さまざまな障害に関する専門知識があるキャリアアドバイザーが、一人ひとりに合わせたキャリアプランをご案内し、就労・社会復帰を志す失語症のある方を全力でサポートいたします。
dodaチャレンジのご利用者の約8割が「転職は期待どおり・期待以上」と答え、約85%が「今後もその職場ではたらき続けたい」と思うなど、満足度・定着率の高い転職を実現しています。納得のいく就職・転職の選択肢を一緒に探しましょう。
まずは、キャリアアドバイザーに転職相談を

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公開日:2025/7/31
- 監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
- 上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■障害者職業生活相談員