合理的配慮はわがままではない!職場で「甘え」「特別扱い」と思わせない伝え方

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「合理的配慮」は、障害のある方が特性に合わせて自分らしくはたらくために欠かせない要素の一つです。しかし、職場に配慮を求めると「わがままや甘えだと思われるかもしれない」「特別扱いだと反感を買うのでは?」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、合理的配慮について、無理なお願いやわがままとの違いも踏まえて解説します。職場への適切な配慮の伝え方も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

合理的配慮は障害者本人と職場全体をより良くするための措置

まず、合理的配慮の意義と、わがままとの違いを確認しましょう。

合理的配慮とは

結論として、合理的配慮は決して本人のわがままや甘えではありません。

そもそも合理的配慮とは「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」に明記される、障害者の権利の一つです。就労にあたって、特性による困り事を減らし、障害の有無にかかわらず活躍できる場を公平に提供するため、企業には業務内容や業務量、指示の出し方、デスクの配置など、個々に応じた変更・調整が義務付けられています。

障害のある方が企業から合理的配慮を得ることで、特性に合わせて無理なくはたらけるだけでなく、個性やスキルを発揮できる環境が整います。企業にとっても、個々の特性に応じた配慮や環境を提供することで、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できるようになり、結果的に生産性が高まる点がメリットです。

合理的配慮とわがままの違い

法律上、合理的配慮の具体的な内容や範囲については、明確に定められていません。合理的配慮とわがままの違いは「職場全体の公平を保つために必要かどうか」にあります。具体的には、次の3つの観点が合理的配慮とわがままを分けるポイントとなります。

  • 職場にとって無理な要求でないか
  • 一般的なビジネスマナーに反していないか
  • 自己対策があるか

そもそも合理的配慮は、仕事を円滑に進め生産性を上げることを前提としており、本人だけの居心地の良さを整えるものではありません。そのため、事業主や職場にとって、自己対策のない無理な要求や一般的なビジネスマナーに反することは「負担が重すぎる要望」「個人的なわがまま」などと判断されてしまい、提供の義務が免除されることがあります。また、正当な要求であっても、職場側の理解が足りないと「特別扱いだ」と反感を買うこともあるでしょう。

誤解を防ぎ、より良い働き方や職場環境を実現するためには、合理的だと判断される配慮の内容・範囲と、適切な伝え方を知ることが大切です。

「合理的配慮」と「企業の過度な負担となるお願い」の具体例

同じような内容でも、伝え方によっては、合理的配慮ではなく、単なるわがままだと受け止められてしまうことがあります。「合理的配慮」と「企業の過度な負担となるお願い」の違いが分かりやすいよう、以下にそれぞれの具体例をまとめました。

合理的配慮の例 企業の負担ととられる恐れのある例
安定して勤務を継続するため、就労は時短勤務でスタートしたい その都度、体調に合わせての早退を許可してほしい
特性上、通勤ラッシュが業務に支障が出るほど過度な負担となるので、フレックスタイム制を利用して調整させてほしい 朝起きられないので、職場全体の始業時間を調整してほしい
対人コミュニケーションに困難があるので、可能な範囲で回覧版や筆談にすることを認めてほしい 人と話したくないので、気を遣って必要以上に話しかけないでほしい
口頭での指示の理解が難しいので、マニュアルや指示書に沿って仕事を進めさせてほしい 口頭での指示は嫌なので一切受けない
指摘を受けることに敏感で、言われたことが頭に入りづらくなるので、ミスがあったときには静かな口調で具体的に教えてほしい 指摘を受けることに敏感なので、ミスがあったときには指摘せずフォローしてもらいたい
パニックなどで仕事の継続が難しい場合には、クールダウンのための時間が欲しい。長時間業務に戻ることが難しい時には早退させてほしい 早退すると親が心配するので、仕事の継続ができない状態でも職場にいたい
感覚過敏があり周囲の音で集中できないことがあるので、耳栓やイヤーマフの利用を認めてほしい 感覚過敏で周囲の音が気になるので音を一切立てないでほしい
近くに人がいる環境では集中できず、業務にきたす恐れがあるので、在宅勤務制度を利用したい ◯さんは苦手なので席を離してほしい

適切な合理的配慮を得るには、職場や周囲の理解と協力が不可欠です。特性上、自分の力だけでは対処できない部分を周囲にカバーしてもらうことは、障害者本人・企業の双方にとってより良い環境を築くための措置であり、決してわがままではありません。

しかし法律上、合理的配慮は「均衡を失した、または過度の負担を課さないもの」であることが前提です。上記の例のように「個人的なわがまま」だと判断されやすい要求は、受け入れてもらえないかもしれません。

社会通念上、求める配慮事項が適切かどうかを考え、職場とも相談のうえ、適切な範囲で調整することが合理的配慮の基本となります。

合理的配慮を「わがまま」と思わせない!面接での上手な伝え方

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自分の求める合理的配慮について伝えるベストなタイミングは「採用面接」のときです。特に、障害者雇用枠の仕事の採用面接では、必ず障害と配慮事項について質問されます。もし企業から配慮事項について特に聞かれなかった、伝えそびれたというときは、面接の最後に逆質問するとよいでしょう。

以下では、面接時の上手な伝え方を解説します。

必要な配慮事項とその理由をまとめておく

適切な合理的配慮を提供する前提となるのが、障害のある方本人からの意思表示です。本人による無理な要求だけではなく、企業側の独断による不必要な調整・変更も、合理的配慮とはいえません。

正しい理解のために障害のある方本人がやるべきタスクは、必要な配慮事項とその理由を、企業に分かりやすく伝えられるよう事前にまとめておくことです。配慮事項の整理にあたっては、障害理解を深めることが重要なプロセスとなります。企業に配慮を求める際、自分の特性と、自己対策だけでは対応できないことも併せて伝えれば、合理性と正当性が高まります。

特性によってできること・できないことや得意・不得意を踏まえ、障害への自己理解を深めましょう。自己理解には、医師・カウンセラーやキャリアアドバイザーなどの意見を参考にする「他己分析」も役立ちます。

提案ベースで双方の条件を擦り合わせる

企業に合理的配慮を求めるときは、極力謙虚な姿勢で、あくまでも提案という形で伝えることが大切です。合理的配慮の提供は、企業の義務ではあるものの、障害者本人が「配慮があって当然」というような態度だと、イメージダウンにつながりかねません。また、企業に合理的配慮の提供意思はあっても、経済的・環境的な理由から、障害者本人が求める内容・範囲での提供が難しいケースもあります。

適切な配慮の提供には、双方の合意と理解が不可欠です。求める配慮を提案するときは、障害のある方と企業側が互いに条件を擦り合わせ、代替案も踏まえて納得のいく着地点を模索していくことが求められます。自分で伝えるのが難しいときは、企業との橋渡しを担う就職・転職エージェントのサポートを得るのも一つの方法です。

相談窓口を決めておく

合理的配慮を伝えるときは、事前に配慮事項について企業としっかり話し合うのはもちろん、実際にはたらき始めてからの相談窓口をあらかじめ決めておくことも重要です。窓口やプロセスが明確になっていれば、万が一行き違いが生じたとき、誰に相談すれば良いか迷う心配がなくなります。

具体的には「いつ」「だれが」「どのように」相談に対応するのか、職場と話し合ったうえで担当者や窓口を詳細に決めておくとよいでしょう。

個々に応じた合理的配慮が受けられる「障害者雇用枠」という選択肢

合理的配慮の提供は、すべての企業・事業所に定められている義務の一つです。しかし先述のとおり、企業・事業所にとって過度な負担になる内容だと、配慮が得られないこともあります。

「わがままだと思われるかも」と強い不安を感じているなら「障害者雇用枠」の仕事を検討してみてはいかがでしょうか。障害者雇用枠は、障害開示と合理的配慮の提供が前提となる求人枠なので、個々の特性に応じた適切なサポートが得られる可能性が高まります。

グラフ:合理的配慮の提供の有無

出典:はたらく障害者の就業実態・意識調査2025 vol.2 就業意識と合理的配慮|パーソルダイバース

パーソルダイバースの調査によると、障害者雇用枠で合理的配慮を提供している企業は80.7%でした。一方、一般雇用枠で合理的配慮を提供している企業の割合は59.8%です。つまり、障害者雇用枠は、一般雇用枠の約3割強多い割合で合理的配慮が提供されているということが分かります。したがって、より確実に合理的配慮を得てはたらきたい場合は、障害者雇用枠が有力な選択肢だといえるでしょう。

合理的配慮は伝え方が肝心!

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合理的配慮の提供は企業の義務ですが、どのようなことでも求めて良いというわけではありません。また、はたらきはじめてから伝えるのではなく、採用面接時に双方で確認し、条件を擦り合わせておくことが大切です。業務や職場の人間関係の円滑化に向け、自分の努力だけでは対処できないことを、誠意をもって提案するよう心がけてください。

障害者雇用枠の採用面接で、合理的配慮をどのように伝えれば良いか悩んだときは、障害のある方のための転職・就職エージェント「dodaチャレンジ」にご相談ください。必要な配慮事項の整理と、理解してもらいやすい伝え方を、障害者雇用のプロがアドバイスします。障害のある方と企業の橋渡し役として、就職が決まるまで丁寧にサポートするので、ぜひ登録をご検討ください。

公開日:2026/2/24

監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■障害者職業生活相談員
  • dodaチャレンジで、専任のキャリア
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