発達障害と障害者手帳について|取得・等級判定の条件と手帳がもらえないケースを解説
「発達障害」とは、脳機能不全による、発達の凹凸を特性とする生まれつきの障害です。主に「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠陥・多動症)」「LD(学習障害)」の3種類があり、特性により日常生活や仕事に支障をきたすほどの困り事があると医療機関から診断を受けた場合、障害者手帳が取得できます。
この記事では、発達障害のある方が取得できる障害者手帳の種類と等級の判定基準、取得方法、メリット・デメリットを解説します。申請するかどうか迷っている方は、判断材料としてぜひお役立てください。
目次
発達障害のある方が取得できる障害者手帳の種類
障害者手帳には全部で3つの種類がありますが、発達障害のある方が取得できるのは「精神障害者保健福祉手帳」です。知的障害を併発している場合は「療育手帳」も同時に取得できる可能性があります。なお、療育手帳は、自治体ごとに取得条件が異なる場合もあるため、詳しくはお住まいの地域の障害福祉窓口に確認してください。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳とは、精神障害があり、制度上の一定の条件を満たすことを証明するための公的な認定証です。発達障害のほか、うつ病をはじめとする気分障害や統合失調症、てんかん、高次脳機能障害などの精神障害がある方に交付されます。
療育手帳
療育手帳とは、知的障害があることを認定し、適切な援助措置につなげるために設置された支援制度です。自治体によっては「愛の手帳」や「みどりの手帳」など、別の名称を採用していることもあります。
【手帳の種類別】発達障害における等級の判定基準
次に、精神障害者保健福祉手帳と療育手帳の等級の判定基準について解説します。
精神障害者保健福祉手帳の等級
精神障害者手帳では「精神疾患(機能障害)」と「能力障害(活動制限)」の2つの状態を総合的に鑑みて、1〜3級の等級に分類されます。なお、発達障害がある方の判定基準は以下の通りです。
| 等級 | 判定基準 |
|---|---|
| 1級 | 適切な日常生活や社会生活ができないほど高度な発達障害とその他の精神神経症状がある |
| 2級 | 高度な発達障害とその他の精神神経症状があり、適切な日常生活や社会生活には援助を必要とする |
| 3級 | 発達障害とその他の精神神経症状があり、自発的な日常生活や社会生活はおおむね送れるが、なお援助を必要とする |
なお、その他の精神神経症状は、感覚過敏や感情表現の乏しさ、手先などの運動障害、チックなどです。日常生活・社会生活における判定基準として、食事や清潔保持、金銭・危機管理、対人コミュニケーション、社会活動への参加などが適切にできるかどうかがチェックされます。
療育手帳の等級
厚生労働省の定める基準では、療育手帳の等級は「重度(A)」と「重度以外(B)」の2種類に分けられます。ただし、自治体によっては、A・B以外に独自に細分化した等級が設けられていることもあります。等級の判定基準となるのは主にIQの高さであり、それぞれ以下の通りの区分です。
| 等級 | 判定基準 |
|---|---|
| 重度(A) | ①知能指数がおおむね35以下で、日常生活に介助を必要とする、もしくは、問題行動がある ②知能指数がおおむね50以下で、盲、ろうあ、肢体不自由などの身体障害を併発している |
| 重度以外(B) | 重度を除く、知的障害のあるすべての方 |
発達障害があっても障害者手帳がもらえない4つのケース
注意してほしいのは、発達障害があるからといって、必ずしも障害者手帳がもらえるとは限らないということです。ここでは、発達障害があっても、障害者手帳がもらえない可能性が高い、代表的な4つのケースを見ていきましょう。
診断が未確定
発達障害の申請の第一条件となるのは、医師による確定診断です。特性の傾向や疑いがあったとしても、診断が未確定のうちは申請できません。まずは精神科・心療内科を受診し、確定診断を受けることが、障害者手帳を取得するファーストステップとなります。
初診日から6ヶ月未満
障害者手帳は、継続的もしくは頻繁に繰り返す障害があることで、日常生活・社会生活に支障をきたしている方を対象とする保健福祉制度です。目安として、発達障害による初診日から6ヶ月以上経過していることが交付の条件となります。
生活上の制限・困難の程度が軽度
前提として、精神障害者保健福祉手帳の審査は、精神障害があることで、社会生活や日常生活にどれほどの制約・困難が生じているかが重視されます。発達障害だと診断されていても、支障の程度が軽度だと見なされた場合、認定されないことがあります。
発達障害のグレーゾーン
発達障害の診断基準を完全に満たさないものの、特性が見られる状態を、一般的には「グレーゾーン」といいます。原則として、障害者手帳を取得するには、医師から確定診断を受けていなければなりません。そのため、基本的に、発達障害のグレーゾーンの状態では交付対象外になります。
ただし、発達障害の特性を背景に、うつ病や適応障害、不安障害などの二次障害を発症している場合は、その診断名で精神障害者保健福祉手帳の申請ができる可能性があります。
発達障害で障害者手帳を申請する際の手続き
障害者手帳の申請の際は、まず自治体の障害福祉の窓口に相談し、申請書類を受け取りましょう。その後、受け取った書類に記入し、必要な書類を添付のうえ、指定の窓口に提出してください。なお、障害者手帳の認定手続きには、医師の診断書が必要です。そのため、事前に精神科もしくは心療内科を受診し、発達障害の確定診断を受けておくと、その後の流れがスムーズになります。
なお、窓口に申請書類を提出してから交付が決定されるまでには、ある程度の時間がかかるので、余裕を持ったスケジュールで手続きを進めるとよいでしょう。また、精神障害者保健福祉手帳の有効期限は原則として2年間であり、更新を希望する場合は、期限切れの前に手続きを行わなければなりません。また、住所や名前など登録情報に変更が生じた際にも、すみやかに更新手続きを済ませる必要があります。
発達障害で障害者手帳を取得するメリット・デメリット
ここで、発達障害のある方で、障害者手帳を取得するかどうか悩んでいる方のために、手帳を持つことのメリットとデメリットを解説します。
メリット
障害者手帳を取得する最大のメリットは「経済的な負担の軽減」と「就労の選択肢の拡大」です。
例えば、公共交通機関や公共施設の利用料、NHKの受信料が減免されるほか、自治体によっては公共料金の負担軽減といった独自の制度が設けられていることもあります。また、一部の民間企業でも、携帯電話料金やネットスーパーの配送料、クリーニング料金といった生活関連サービスの利用料金が割引になることがあります。さらに確定申告を行えば、障害者控除が受けられ、所得税や住民税などの税負担が軽減するでしょう。
加えて、障害者手帳があると「障害者雇用枠」の求人に応募できるようになります。障害者雇用枠は、障害開示と合理的配慮の提供を前提としているため、個々の特性に合わせて自分らしくはたらける可能性が高まります。併せて、就職・転職活動の際、障害者手帳があれば、障害者雇用に特化した就労支援サービスが利用できるようになり、仕事や仕事探しの選択肢がさらに広がるはずです。
デメリット
障害者手帳を取得するデメリットとして、申請と定期的な更新手続きに手間と時間、受診料・診断書の発行料などの費用がかかることが挙げられます。また、障害者手帳を持っており、健康面や経済面での懸念があると見なされてしまうと、生命保険に加入しにくくなることがあります。
そのほか、障害者手帳の取得は、障害者であることの公的認定を受けることと同義です。そのため「障害がある」と公的に証明されることへの抵抗感や、障害開示への不安感を覚える方もいるでしょう。
とはいえ、障害者手帳を持っていることは、自分で伝えない限り、基本的に周囲にバレる心配はありません。また、障害者雇用枠での就労や合理的配慮の提供を希望しないのであれば、職場への障害開示も不要です。また、現時点で特に問題なく生活・就労ができており、困り事や悩みもないという場合は、あえて障害者手帳を取得するメリットは少ないといえます。
発達障害のある方が自分らしくはたらくには?障害者手帳を持たないときにできること
発達障害があっても、判定基準を満たさなかったり、取得を希望しなかったりなどの理由から、障害者手帳を持たないことを選択する方もいるでしょう。その際、障害者手帳のない方が特性に合わせて自分らしくはたらくための方法として、次のような手段が挙げられます。
- 自己理解や障害理解を深める
- 障害者手帳の有無を問わない就労支援サービスを活用する
自己理解や障害理解を深める
前提として、発達障害のある方がより良くはたらくには、障害者手帳の有無にかかわらず、自己理解と障害特性への理解を深めることが大切です。自己・他己分析を行い、個々の特性と適性、希望の条件を明らかにすることが、自分らしくはたらける仕事探しの第一歩になります。
障害者手帳の有無を問わない就労支援サービスを活用する
障害のある方が、障害者手帳を持たずにより良い生活や就労を実現するには、手帳の有無を問わない就労支援サービスを活用できるかどうかもポイントです。
例えば、ハローワークの障害者窓口は、障害者手帳の有無を問わず、障害がある方の仕事や就職・転職活動に関する相談・アドバイスなどを提供しています。発達障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターなど、地域の障害者支援機関と連携し、就労相談や職業評価、職業準備訓練といった専門的かつ包括的な支援が受けられます。
また、障害者手帳がもらえなくても、障害福祉サービス受給者証を取得すれば、就労移行支援事業所の利用が可能です。通所訓練を通し、基本的なビジネスマナーや職業スキル、職場でのコミュニケーションの取り方など、就労するうえで備えておくべき知識を身につけるサポートが得られます。
障害者手帳は発達障害のある方が自分に合った働き方・生き方を見つけるための選択肢
発達障害のある方は、障害者手帳を取得することで、生活上の負担を減らしたり、より良い仕事や働き方が見つけやすくなったりするなどのメリットがあります。とはいえ、重要なのは障害者手帳の有無ではなく、特性や困りごとに対して適切な配慮・支援が得られ、働き続けられる安心感を得られるかどうかです。制度や申請手続きについて理解したうえ、障害者手帳の取得によって自分の生活・仕事へ良い影響をもたらすと感じたときは、申請を検討してみるとよいでしょう。
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公開日:2026/2/20
- 監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
- 上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■障害者職業生活相談員
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