大人の癇癪はなぜ起こる?原因と対処法を障害・病気との関連も踏まえて解説
大人になっても、些細なことで癇癪(かんしゃく)を起こしてしまう自分に悩んでいませんか。年齢にかかわらず、怒ることは誰にでもあるものです。しかし、感情を爆発させる頻度や、感情の振り幅が大き過ぎると、家庭や職場でのトラブルや不和の元になることもあるので困ってしまいますよね。
この記事では、大人の癇癪の定義や主症状について分かりやすくまとめました。日常的に感情を爆発させてしまう原因と背景を踏まえ、癇癪を抑えたいと考えている方が今日から実践できる対処法も解説します。
大人の癇癪とは
まず、大人の癇癪の基礎知識をみていきましょう。
大人の癇癪の定義
「癇癪」とは、激しい怒りや苛立ち、混乱などにより、感情が爆発した状態、およびそれに伴う激しい言動を指します。攻撃的な言動が、意図的でなく、感情に振り回されてしまった結果として現れます。自分にとって適応できない状況・環境・出来事などへの防衛反応だといわれており、正式な病名ではありません。
本来、癇癪は子どもの一般的な成長過程によく見られる現象の一つです。通常は、成長するにつれ、怒りを感じたときに無意識、もしくは意識的に感情を抑え、状況に適した言動を選択しようとする力がはたらくようになっていきます。
しかし、人によっては、さまざまな要因から、感情をコントロールする「情動調整」や、状況に適した行動を選択する「行動制御」がうまくいかず、大人でも癇癪を起こしてしまうことがあるのです。
大人の癇癪の特徴と子どもの癇癪との違い
一般的に、癇癪を起こすと、激怒のあまり我を忘れてしまい、攻撃的な言動を取りやすくなります。例えば、子どもの癇癪は「床に転がって泣き叫ぶ」「叩く・蹴る」「物に当たる」といった、直接的で単発的な表現が多いです。
一方、大人の癇癪は、子どもより間接的かつ長期的な言動につながることも少なくありません。大人によくある癇癪の症状の具体例として、次のようなものが挙げられます。
- 激しく怒鳴る
- 今やっている仕事を放り出す
- 皮肉や嫌味を言う
- 不機嫌な態度を取り続ける
- 特定の人を無視する
- 過去の出来事を蒸し返して怒り出す
- 物に当たる
また、感情を爆発させてしまったことにひどく落ち込むケースが多いのも、大人の癇癪の特徴だといわれています。後悔による自己嫌悪や自己肯定感の低下から、うつ病や適応障害といった精神障害・疾患を発症するリスクもあるため、癇癪に関する困りごとを抱えているなら早期の対処が肝心です。
癇癪持ちの大人が感情を爆発させがちなシーン
前提として、人それぞれ怒りの対象が異なるように、癇癪を起こすきっかけも一つには絞れません。あくまで一例ですが、日常生活や仕事上での次のようなシーンで、癇癪を起こしやすい傾向にあります。
- 業務上の指導・指摘を受けたとき
- 自分の意見・提案が否定されたとき
- 同僚や部下から追い越されたと感じたとき
- 想定外のトラブルが起こったとき
- 急な予定変更があったとき
- 他者と比較されたとき
- 正当な評価が得られなかったと感じたとき
- バスや電車が遅延して予定に間に合わなくなりそうなとき
- 人ごみや騒音、気温、体調不良などで不安定なとき
- 家族や友人などの身近な人と意見が合わないとき
- 責任を押し付けられるなど自分や周囲の人が理不尽な扱いを受けたと感じたとき
癇癪持ちの大人は、自分の評価やプライドが揺らいだとき、感情が昂り、コントロールが利かなくなりやすいといわれています。完璧主義の方や、有能でありたいという気持ちの強い方などに多い症状です。
また、自分の思い描く段取りが崩れ、自分でコントロールできない状況になったときなども、強い不安感から、癇癪を起こしてしまう方もいます。そのほか、正義感の強い方や、公平性に価値を置いている方などは、不公平や理不尽を感じたとき、耐え難いほどの強い怒りを覚えやすいです。
このように、癇癪を起こすシーンや対象は、個々の性格、考え方、こだわりの強さによって異なります。癇癪を起こしてしまった背景をしっかりと見つめ、原因に応じた対処法を見つけることが重要です。
大人の癇癪の原因とアプローチ
大人が癇癪を起してしまうのは、主に以下5つの要素に起因するといわれています。
生来の気質
世の中にはさまざまな気質を持つ方がおり、怒りやすさや物事への敏感さ、感受性の強さ、感情表現の仕方などは人ぞれぞれです。生まれつき怒りっぽかったり、攻撃的な感情表現をしたりする方もいるでしょう。
生来の気性を、完全に変えることは難しいかもしれません。しかし、環境調整や、感情をコントロールする学習・訓練をするといった工夫次第で改善が見込めます。まずは自分の気質を知り、癇癪を起こしやすい状況を踏まえて、物事へのアプローチやコミュニケーション方法を見直してみてください。
ストレス反応
心身のストレスは、脳機能の一部のはたらきを鈍らせ、感情のコントロールを利きにくくします。そのため、疲れやストレスがひどく溜まっているときは、普段なら我慢できるようなことにも過敏に反応し、些細な出来事や一言に癇癪を起こしてしまうのです。
こうしたストレス反応によって癇癪を起こしてしまう場合は、その根本的な原因を取り除く、もしくは減らすことで、症状も軽減する可能性があります。また、睡眠や栄養の不足も、自律神経のバランスに悪影響を与え、感情の波が激しくなってしまう一因です。1日7〜8時間程度を目安に十分な睡眠を取るとともに、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。加えて「適度な運動で心身を健やかな状態に保つ」「自分なりのストレス解消法を見つける」など、生活習慣を見直してみるのもおすすめです。
発達障害の特性
大人の癇癪は「発達障害」に起因することがあります。発達障害とは、脳の働き方の違いやアンバランスさにより、さまざまな発達特性が現れる障害です。そのうち「ASD(自閉スペクトラム症)」と「ADHD(注意欠如多動症)」は、特性により、癇癪に似た反応を示すことがあります。
ただし「癇癪=発達障害の特性」というわけではありません。状況への対応や、気持ちの切り替えがうまくいかずに混乱した結果、やり場のない感情を爆発させてしまうことが、癇癪のように見えるのです。
癇癪が起こるきっかけに規則性があり、感情の爆発の持続時間が長いことに加え、目安として症状が6ヶ月以上継続している場合は、発達障害に関連しているかもしれません。気になる症状があるときは、精神科・心療内科を受診してみてください。
診断の結果、発達障害があると分かったときは、障害者手帳を取得したり、障害福祉・支援サービスを活用したりすることで、生きづらさの解消につながるはずです。
その他の精神障害・疾患の症状
精神障害・疾患の中には、癇癪症状を伴うものも存在します。代表例として、以下のような精神障害・疾患が挙げられます。
| 障害・疾患名 | 主な癇癪症状と原因 |
|---|---|
| うつ病 | 心が疲弊し、感情のコントロールが難しくなることがある |
| 双極性障害(躁うつ病) | 気分の激しい変調があり、特に躁状態になると感情が爆発しやすくなる |
| 適応障害 | 特定の過度なストレスにより心のバランスを崩し、攻撃性が現れやすくなることがある |
| 不安障害 | 特定の物事や、予期せぬ事態への強い不安感が限界を超えると、感情をコントロールしにくくなる |
| 強迫性障害 | 特定の物事への強迫観念からパニックを起こしてしまい、感情のコントロールが利かなくなることがある |
| パーソナリティ障害 | 怒りや悲しみの感情のブレーキが利かず、激情に駆られることがある |
| PTSD(トラウマ) | 特性である過覚醒による攻撃性の現れや、トラウマへの防衛反応として、感情の爆発を起こすことがある |
| 間欠性爆発性障害(IED) | 怒りの感情と、それに伴う攻撃的な言動が制御できず、繰り返してしまう |
| 高次脳機能障害 | 脳の損傷により感情・欲求の制御が利かなくなり、衝動的な言動を取りやすくなる |
こうした精神障害・疾患に起因する癇癪には、早期の受診と治療という、医学的なアプローチが有効です。また、障害の種類や診断によっては、障害者手帳が取得できることもあります。
障害者手帳を持ち、働き方を変えることで、仕事上のトラブルや、過度な負担による症状の悪化を防ぐことにつながるので、必要に応じて医師や専門家に相談してみるとよいでしょう。
今日から実践できる!大人の癇癪に対処する3つの方法
大人になっても頻繁に癇癪を起こしてしまうことに悩んでいる方は、次の3つの対策を実践してみてください。
自己理解を深める
癇癪をよく起こしてしまう方は、まず「自分が感情を爆発させやすい」ということを自覚することが大切です。癇癪を起こしやすい状況・環境や、どのような症状が起こりやすいのかを把握しておくとともに、自分の考え方のクセを理解すれば、適切な対処法が見えてくるかもしれません。
また、怒りの感情や癇癪を起こしたときの状態を言語化したり、程度を数値化してみたりするのもおすすめです。自分ではよく分からないという場合は、身近な人や、医師・カウンセラーといった心の専門家に相談してみるとよいでしょう。
自分の怒りを客観視できれば、冷静さを取り戻しやすくなるとともに、癇癪を起こしやすい状況・環境を回避・調整することにもつながります。
物事の受け止め方を見直す
日常的に癇癪を起こしてしまう背景には「認知のゆがみ」があるかもしれません。認知のゆがみとは、物事を事実よりネガティブに捉えてしまったり、偏った考え方をしてしまったりする、思考の癖のことです。
この認知のゆがみを修正することを、心理学では「認知的再評価」といいます。物事の受け止め方を変え、怒りの感情をコントロールする方法です。
例えば、怒りを感じたときの状況や気持ちを紙やデジタルメモなどに書き出し、さまざまな視点から再解釈し、前向きに捉え直してみてください。同じ出来事でも、受け止め方や意味づけを少し変えるだけで、その後の反応も変わるはずです。認知の歪みを正せば、緊張感・不安感の解消や、情動調整・行動制御につながり、日常のストレスが軽減するでしょう。
アンガーマネジメントを学ぶ
日常的かつコントロールの難しい癇癪症状に困っている方は「アンガーマネジメント」を学ぶことをおすすめします。アンガーマネジメントとは、怒りや感情の爆発と上手に付き合うための心理トレーニングです。
一般的に、癇癪のピークは怒りの感情を覚えてから数秒間程度だといわれています。つまり、その数秒間を、いかにやり過ごせるかがポイントです。
怒りへの対処法の一例として「怒りを感じたらその場から離れる」「数を数えながらゆっくり深呼吸する」などが挙げられます。こうしたアンガーマネジメントは、独学も可能ですが、より適切な対処法を学ぶため、医療機関や専門の支援機関に相談するのも一つの方法です。
コントロール不能な大人の癇癪は働き方を見直すサインかも
大人の癇癪は、多くの場合、自分の考え方やこだわりといった特性と、今いる環境とのミスマッチがきっかけになって起こります。単なる気質や体調による癇癪なら、ちょっとした工夫や心がけで改善が見込めることもあるでしょう。しかし、大人の癇癪の裏には、発達障害や精神疾患が隠れていることがあります。精神障害・疾患に起因する癇癪は、自分の努力だけではコントロールできません。癇癪をたびたび起こしてしまい、職場や家庭でうまくいかずに悩んでいるなら、精神科や心療内科に相談することをおすすめします。
検査の結果、精神障害・疾患があると分かったときは、これまでの働き方を振り返ってみるのも良いかもしれません。自分に合わない仕事や働き方を続けると、心身に大きな負担がかかり続けてつらくなるばかりか、状態が悪化したり、より重篤な障害や疾患を引き起こしてしまったりすることも考えられます。
精神障害・疾患に起因する癇癪持ちの方が転職を検討する際は、障害特性に合わせた合理的配慮を受けながらはたらける「障害者雇用枠」という選択肢があります。無理なく、自分らしくはたらける仕事に出会える可能性が広がるので、障害者手帳の取得を検討するのも一つの方法です。 障害者手帳を持っている方で、障害者雇用枠ではたらきたいと考えている方は、ぜひ「dodaチャレンジ」にご相談ください。専任のキャリアアドバイザーと一緒に、あなたにとって理想の仕事を探しましょう。
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公開日:2026/6/10
- 監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
- 上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■障害者職業生活相談員
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