大人の発達障害とは?症状の特徴や対処法、二次障害への影響について

オフィスではたらくビジネスパーソン

近年、さまざまな場面で聞かれるようになった言葉に「発達障害」があります。テレビ番組などで取り上げられる機会も増え、「コミュニケーションが苦手」「さっき言われたことをすぐ忘れてしまう」など、その特徴を耳にしたことがあるかもしれません。もしかしたら自分にも当てはまるのでは?と感じたことのある方もいるでしょう。
この記事では、大人の発達障害の概要をご説明し、症状・行動の特徴や二次障害、対処法などについてご紹介します。

01.大人の発達障害とは?

発達障害とは、脳の機能のかたよりを要因とした行動に関する特性により、生活に支障が出ている状態を指します。この発達障害の特性による生活への支障は、「生きづらさ」ともよく表現されます。

幼児期や学童期に発達障害の傾向が見つかった場合には、専門医の診察を受け、治療にあたります。しかし、子ども時代には発達障害の傾向が目立たなかった事例や、傾向が見られていても何らかの事情で受診につながらなかった事例も少なくありません。成人後に社会生活を一定期間続けたうえで「生きづらさ」が顕著となり、発達障害の診断を受けるケースを「大人の発達障害」と呼んでいます。

大人になって初めて発達障害の傾向が分かるケースは、「発達障害の傾向が知能の遅れと関連しない」「発達障害の傾向が軽度で、周囲から『個性』や『癖』のように思われてきた」ことなどがおもな要因とされます。
また、何か抜きんでた特定の能力や技能、得意分野などを持っており、そちらが目立つことで発達障害を疑われなかったケースもあります。
しかし、発達障害によって「生きづらさ」を感じることは、大人になってから大きな精神的負担につながることがあります。日々の仕事や対人関係などで失敗を繰り返したり劣等感を覚えたりすることで、徐々に気分障害などの「二次障害」が引き起こされてしまう可能性があります。

発達障害外来も子どもの発達障害に対応して設けられている場合が中心で、大人の発達障害に対応している医療機関はまだ多いとは言えません。しかし、ご自身も周囲の方も「大人の発達障害に対処法はない」とあきらめず、適切な方法で「生きづらさ」を少しでも取り除くための試みに取り組むことが大切です。

02.大人の発達障害における症状の特徴

忘れ物をしたビジネスパーソン

発達障害はASD、ADHD、LDの3つに大きく分けられ、それぞれ特徴が異なります。また、2つ以上の傾向を併せ持っている発達障害のある方もいて、人によって特徴が異なります。ここでは、発達障害の3つの種類について、詳しく見ていきましょう。

ASD(自閉症スペクトラム障害・アスペルガー症候群)

過自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、過去に「自閉症」と呼ばれていた症状の特性がみられるものの、その特性と知能の遅れが明確に関連しないケースを指します。アスペルガー症候群は古い診断名で、現在はこのASDに含まれています。ASD特性を持つ方の知能の程度はさまざまです。
その特徴として、周囲の方と会話のやりとりができなかったり、相手との適切な距離感が分からなかったりなど、対人コミュニケーションに関して特徴的な傾向を持っています。また、興味や関心を持つ対象の幅が狭く、行動や動作などに強いこだわりがあるという特徴も挙げられます。
他にも、特定の音や匂い、物の触り心地などに敏感な方も少なくなく、その感覚の鋭さのために「生きづらさ」を覚えてしまう方もいます。

ADHD(注意欠如・多動性障害)

ADHDは、「不注意」と「多動性・衝動性」の2つの傾向があります。
不注意とは文字通り細部に注意を向けにくく、仕事などでのケアレスミスや忘れ物が多くなってしまいがちな傾向のことです。その一方で多動性・衝動性とは、常にさまざまなことに興味が向いてしまい、じっとしていられない症状を指します。
不注意の傾向があるとされるADHDの方も、いったん何かに集中すると寝食を忘れるなどなりふり構わなくなることがあります。それを、ADHD特有の「過集中」の特性であるとみなす場合もあります。
また、ADHDの方には、不注意の傾向が多く見られる場合もあれば多動性・衝動性の傾向が強い方もいますし、それら2つの傾向を併せ持っている方もいます。
多動性・衝動性の傾向が強い場合、子どものころに発達障害の傾向が見つかるケースも多いとされます。しかし不注意の傾向が強い場合、子どものころは「うっかりさん」などと見過ごされ、大人になってから気づくことも少なくありません。

LD(学習障害)

学習障害とは、知能の程度と関係なく、書くこと、読むこと、計算することなどの学習能力のいずれかが特異的に困難である状況を指します。具体的には「文章を順番通りに読み進められない」「簡単な足し算であっても暗算ができない」「何度練習しても漢字を正確に書けない」などの特徴が挙げられます。
ただ単純に「国語が苦手」「算数の成績が悪い」というものではなく、情報処理における様々な認知機能に何かしらの不全があり、結果としてそれが「書く」「読む」「計算する」などの学習上の基礎的能力の習得・使用の困難に結びついていると考えられます。
上記のような「読み書き障害」や「算数障害」は子どもの頃から現れますが、年を重ねて求められる水準が上がってから顕著になる場合もあり、ASDやADHDの傾向とも併発しやすいことが分かっています。

03.大人の発達障害は二次障害の併発要因となりうる

先に、大人の発達障害に対し適切に対処をしないことで、二次障害を併発する可能性があることを述べました。ここでは、発達障害が影響して発症することもある二次障害について、ご説明します。

二次障害とは?

発達障害の二次障害とは、発達障害の傾向にともなって感じる「生きづらさ」が常態化することで心身に不調をきたしてしまうことです。例えば、大人になってから社会人として失敗を繰り返した結果、自己評価が低くなることで、うつ病などの精神疾患を発症してしまうケースなどがあります。
大人の発達障害で二次障害を罹患している割合はADHDを例に見ると、実に86%に達するという研究結果もあります。
※引用:内閣府『ひきこもり支援読本』第2章より

二次障害の主な症状

大人の発達障害の二次障害としてよく見られる症状には「うつ病」「不安障害」「適応障害」などがあります。
うつ病の場合は、気分が常に落ち込んでしまい、何かをする気力も湧かなくなるなどの症状が見られます。不安障害とは、不安の強さでパニック症状を起こすパニック障害や、過去の出来事で受けた恐怖心がよみがえって心身に支障をきたすPTSDなど、不安による身体症状の総称です。また適応障害とは、現在の環境にうまく対応できず体調を崩したり、今までの職場ではたらけなくなったりする心身の症状を指します。

04.大人の発達障害への対処法について

大人の発達障害を疑う傾向がご自身に見られても、「単なるわがままなのでは」「メンタルが弱いだけ」と我慢し続けることは禁物です。ご自身の「生きづらさ」が明らかに日常生活に支障をきたしていると感じるなら、状況に応じて以下のような対処を検討することも1つの手でしょう。

医療機関へ相談する

発達障害の二次障害として併発のおそれがあるうつ病や不安障害は、放置すると余計に生きづらさを感じてしまいます。「生きづらさ」が心身の症状としてあらわれてしまっている場合は医療機関に相談し、必要に応じて治療を受けることを検討しましょう。近年は大人の発達障害に対応した外来を備える医療機関も徐々に増えているため、気負わずに相談してご自身に合った改善策を見つけることをおすすめします。

会社の上司へ相談する

もし現在の職場に引き続き長く勤めたいとお考えなら、職場の理解を得てご自身がはたらきやすい環境を整えてもらうよう相談することも一案です。思い切って相談することであなたの特性に合ったはたらき方を提案してもらえる可能性があるでしょう。

自分に合った就職先へ転職する

履歴書

上司や会社に相談しても解決しない場合や、明らかに現在のはたらき方がご自身の特性と合っていない場合は、発達障害に理解があり得意分野を活かしてはたらける職場を見つけて転職することもよい方法です。発達障害の傾向が見られる方は、「得意なことと苦手なことの落差が顕著」という特徴を持つケースもあります。そのような方は仕事においても得意分野に集中できることで、ステップアップを実現できる可能性があります。

05.大人の発達障害のある方におすすめな仕事の探し方

大人になってから発達障害が分かっても、すべてをあきらめる必要はありません。ご自身の特徴を活かした職業を見つけることで、極力「生きづらさ」を感じずに済む環境ではたらける可能性もあります。
ご自身に合うはたらき方を見つけるには、発達障害がある方の転職サポート実績が多く、幅広い知見を備えた転職・就職のプロによるサポートを受けることがおすすめです。

大人の発達障害のある方の転職成功事例

発達障害のある方の転職成功事例について、以下にリンクをまとめましたのでぜひご参考にしてください。

06.障害者雇用枠への転職サポートはdodaチャレンジにお任せください

ご自身だけでの転職活動は、何かと不安かもしれません。そのようなお悩みがあれば、dodaチャレンジの転職サポートを受けることもおすすめです。
dodaチャレンジでは、発達障害がある方の転職サポートを積極的に行っています。しっかりと事前にカウンセリングを行い、求職者の方一人ひとりに適した求人をご紹介しています。
面接対策なども含め、障害がある方の転職活動をしっかりサポートするdodaチャレンジまで、ぜひお気軽にお問い合わせください。

まとめ

発達障害の診断を受けたり、その結果を受け入れたりすることは、少し怖いことかもしれません。しかし、適した対応策を見つけることで、現在抱えている「生きづらさ」を軽減できる可能性があります。
特に、仕事の面で「生きづらさ」を感じている方は多いと思います。もっと仕事で得意分野を活かしたいと考えている方や、ご自身に合ったはたらきやすい職場を見つけたい方は、転職を検討することも一案でしょう。その際は、ぜひdodaチャレンジまでご相談ください。

公開日:2021/12/3

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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