知的障害と発達障害の違いとは?特性や仕事の困り事・転職支援サービスを解説

発達障害のイメージ

近年、「大人の発達障害」という概念が注目されています。発達障害には、脳機能の発達の偏りから日常生活・社会生活に支障が出るという特性があることから、知的障害と混同されがちです。しかし、両者には明確な違いがあるため、本記事では発達障害と知的障害の特徴や、仕事上の困り事・対処法などについて解説します。

知的障害と発達障害の違いと共通点

知的障害と発達障害には似た特性があるため、両者は混同されやすい傾向があります。ただし、両者は次のように明確に定義が異なっています。

  • 知的障害はIQと日常生活に困難がある
  • 発達障害は脳機能の発達に障害がある
  • 障害者手帳の種類にも違いがある

知的障害はIQと日常生活に困難がある

「知的障害」とは、知的機能および日常生活での適応機能について、著しい困難がある状態を指します。知能機能かどうかの判断は「IQテスト」で行われることが多く、これが70を下回ることが条件のひとつです。さらに、言語理解・意思伝達・対人関係・金銭管理・衛生管理などに制限があると、知的障害として診断されます。

ちなみに厚生労働省の資料によると、精神疾患の代表的な診断基準・診断分類である「DSM-5」では、知的障害は「知的能力障害」という診断名、すなわち発達障害の一種であるとされています。

発達障害は脳機能の発達に障害がある

発達障害は脳機能の発達に関する障害であり、次の3種類に分類されます。ただし、必ずしも前述した知的障害を伴うものではありません。

ASD(自閉スペクトラム症) 対人関係・コミュニケーションが困難で、こだわりや感覚過敏の傾向がある
ADHD(注意欠如・多動症) 集中力が続かない・忘れ物が多い・衝動的な言動が多いなどの傾向がある
学習障害・限局性学習症(LD・SLD) 読む・書く・話す・計算するなど特定の分野の学習に著しい困難がある

複数の発達障害を併発していることも珍しくなく、同じ発達障害がある人同士でも障害特性に差があることが特徴です。なお大人の発達障害については、次の記事も併せてご参照ください。

障害者手帳の種類にも違いがある

知的障害と発達障害は、障害者手帳の種類が異なります。知的障害がある人に交付される障害者手帳は「療育手帳」もしくは「愛の手帳」などの名称があります。一方で、知的障害を併発していない発達障害の場合は「精神障害者保健福祉手帳」となり、併発している場合は前述した療育手帳・愛の手帳などの交付対象となります。

知的障害・発達障害がある人の仕事における困り事と対処法

知的障害や発達障害がある人は、仕事において困り事を抱えやすい傾向があります。知的障害と発達障害で共通する困り事もありますが、その多くは対処法が異なるため注意が必要です。

知的障害がある人の困り事

知的障害がある人は、次のような悩みを仕事で抱えがちな傾向があります。

  • 言葉や概念を理解することが難しい
  • 口頭での説明や指示を理解しづらい
  • 仕事内容や知識を覚えるのに時間がかかる
  • 複雑な会話の内容を理解できず、他人とのコミュニケーションが難しい
  • 読み書きを適切に行ったり、金銭を管理したりすることが難しい
  • 自身の行動や感情のコントロールができなくなることがある

これらの困り事が重なることで自信を失い、精神的な問題を抱えてしまうことも珍しくありません。まずは自身の障害特性を把握して、どんなときに問題が生じるかを明確化することが大切です。例えば「ひとつずつ噛み砕いて説明してもらう」「テキストで要点をまとめてもらう」こと、「仕事内容や手順をすべてまとめておく」などの対処法が考えられます。

発達障害がある人の困り事

発達障害にはASD・ADHD・LD/SLDという種類があり、それぞれ次のような課題が生じやすい傾向にあります。

ASD(自閉スペクトラム症) ● 対人関係やコミュニケーションが苦手
● 対応できる分野・できない分野の差が著しい
● こだわりが強く作業に時間がかかる
ADHD(注意欠如・多動症) ● 臨機応変な対応ができない
● 注意散漫でミスが多い
● 遅刻や忘れ物などが多い
● マルチタスクが苦手
学習障害・限局性学習症(LD・SLD) ● 文章の読み書きや計算が必要な作業が困難

いずれの場合でも、知的障害がある人の場合と同じく、まずは自分が苦手とする場面を把握することが必要になります。そのうえで個々の障害特性に応じて、例えば「具体的な説明・指示をしてもらう」「支援ツールの使用許可をもらう」など、職場での合理的配慮を申し入れるのが効果的な対処法です。

知的障害・発達障害の自己判断や診断は難しい

カウンセリング中のイメージ

自身に知的障害や発達障害があることは、必ずしも子供のときに気付くわけではなく、大人になってから気付くことがあります。

かつては知的障害や発達障害などの認知度が低く、成績や言動などに大きな問題がなければ診断されないことがありました。しかし現在では、知的障害や発達障害が注目されるようになり、「もしかして自分もそうなのではないか」と考える機会が増えています。

そのため、大人になって社会生活を営むようになって困難を感じることで、初めて「自分が知的障害・発達障害かもしれない」と気付くこともあるのです。

自己判断ではなく専門家の診断を受けることが大切

ただし、前述したように知的障害や発達障害は異なる部分があり、発達障害にもさまざまな障害特性があります。仕事の困り事や対処法も異なるため、誤った自己判断は逆効果になりかねません。

そのため、医療機関で専門家の診断を受けて、適切な対処法を考えることが大切です。一般的には精神科や心療内科、もしくは発達障害者向けの専門外来などで問診・知能検査を受けることで、正確な診断結果が得られます。

知的障害と発達障害が併発することもある

知的障害と発達障害が併発しているケースもあります。冒頭で触れたように、知的障害は「知的能力障害」として、発達障害の一種であると見なされるような考え方も出てきています。だからこそ知的障害・発達障害の自己判断は難しいため、まずは専門家による適切な診断を受けましょう。そのうえで自身の症状や困り事を見極めて、仕事や働き方について考えることが大切です。

仕事上の不安や困り事は支援サービス・機関に相談する

知的障害・発達障害がある人は仕事で困り事が生じることが多いため、障害特性を踏まえた対処が必要です。障害と付き合いながらはたらき続けるためには、職場の合理的配慮、つまり職場の理解やサポートも欠かせませんが、必ずしも合理的配慮が受けられるわけではありません。現職ではたらき続けることに困難や不安を感じる場合は、後述する支援サービス・機関に相談してみましょう。

知的障害・発達障害のある方が活用できる転職支援サービス

知的障害・発達障害のある方が「はたらきやすい職場」を探すために活用できる転職支援サービスとして、次のようなものがあります。

  • 発達障害者支援センター
  • 就労移行支援事業所
  • 障害者向けの転職エージェント

発達障害者支援センター

発達障害者支援センター」は、発達障害のある方を対象として、日常生活や就労のサポートを提供する機関です。2025年時点で全国に約90カ所あり、地方自治体・社会福祉法人・NPO法人などが運営しています。なお、障害者手帳は必須ではなくハローワークとの連携もあるため、転職について気軽に相談することができます。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、はたらくための知識やスキルの習得に加えて、転職活動のサポートを提供している機関です。転職後も定着支援としてスタッフと定期的に連絡ができるため、困り事や悩みがある場合の精神的なサポートも得られます。なお、就労移行支援事業所では求人の紹介は行っていないため、職場探しの支援についてはハローワークや転職エージェントなどを別途利用しましょう。

障害者向けの転職エージェント

障害者向けの転職エージェントは、障害者の就労に特化したサービスで、ご自身の希望・適性に合う求人の紹介が受けられます。知的障害や発達障害に関する専門知識があるキャリアアドバイザーに無料で相談し、自身の障害特性に合う仕事を見極められることが魅力です。

ご自身の障害特性や症状を理解できれば、就労時に欠かせない合理的配慮に関する事項を明確化し、理想的な環境での就労をかなえることができるでしょう。もちろん、転職活動で重要な履歴書作成・面接対策などのサポートも受けられるので、安心して就職活動ができます。

知的障害・発達障害のある方の転職支援サービスは「dodaチャレンジ」がおすすめ

転職支援サービスのイメージ

知的障害は知的機能や日常生活での適応機能の障害、発達障害は脳機能の発達に関する障害である点が大きな違いです。両者の自己判断は困難なので、まずは専門医の診断を受けてから、職場への合理的配慮を申し入れましょう。もし現職で合理的配慮を受けることが難しいのであれば、ご自身の障害特性や適性に合う職場への転職を検討してみてください。

知的障害や発達障害がある方が転職を目指すときは、パーソルダイバースの転職支援サービス「dodaチャレンジ」がおすすめです。障害のある方が就職・転職を目指すときは、ご自身の特性や症状への理解が得られるか、それに適した就労環境が見つかるかどうか不安があるでしょう。dodaチャレンジでは、さまざまな障害に関する知識が豊富なキャリアアドバイザーが、一人ひとりに合ったサポートを提供しております。その結果、dodaチャレンジのご利用者の約8割が「転職は期待どおり・期待以上」と答え、約85%が「今後もその職場ではたらき続けたい」と思うなど、満足度・定着率の高い転職を実現しています。

dodaチャレンジは無料で利用できるので、転職をお考えの方はこの機会にぜひご相談ください。


公開日:2025/9/1

監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■障害者職業生活相談員
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